悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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 注意!
 この話は本来最終話のあとにちょこっとおまけで投稿するつもりのものでした。しかしストーリー的にここで挿入した方がいいと判断したのでこのタイミングで出させてもらいます。

 ノーマルエンドとありますが、なえちゃんの物語はまだまだ全然続きますのでご安心ください。
 では、正史の世界をどうぞご覧ください。


ノーマルエンド:愛しき私の桃源郷

 暗闇の中から意識が浮上していき、『彼女』は目を覚ます。

 ……懐かしい夢を見た気がする。それは少女が生きることを決意した、大切な大切な記憶。

 しかし何故だろうか。最近はその夢さえも見ることができなくなってきているような……。

 

 まあいいだろう。

 少女は腰掛けていた玉座から立ち上がる。それによって、地面に届くほど長い絹のような髪がスルスルと揺れる。

 

 西洋の謁見の間を模して作られたこの部屋は沈黙に満ちていた。

 それも当然だろう。ここには彼女しかいないのだから。

 

 少女は指を空中へスライドさせる。すると半透明なホログラムがいくつも空中に浮かび上がる。

 そこに映っていたのは、荒廃した都市だった。

 アスファルトは剥げ、建物は整備する者がいないのかボロボロ。しかしそんなことに彼女は目を向けない。向けられているのは、その映像にところどころ映り込む無数の人間たちだ。

 

『死ねっ! 死ねっ!』

『消えろぉぉっ!!』

『ハハハッ!! ざこがっ!』

 

 彼らが一心不乱に追いかけているのは一つのサッカーボール。

 そう、彼らはサッカーをしているのだ。しかしその内容は凄惨を極まる。

 

 敵も味方も全員が血まみれになっており、ボールを追いかけるその目は血走っている。かけ声は殺気を帯びており、プレイはラフという言葉では言い表せないほど過激だ。

 女、子供、老人、見境なくそんなプレイをくらわされる。そしてそんな彼らも明らかに限界を超えて、同じように相手を殺すつもりでボールを蹴る。

 しかし異様なのは、どんなに傷ついても彼らが笑っていることだ。まるでサッカーをしていることが幸せすぎるかのように。その反応は薬物中毒者のようにも見える。

 

 そんな光景が、少女が映し出したホログラムの全てに映し出されていた。一つのホログラムに映し出される街並みは別々で、それぞれ外国であることは確かなのに、起きていることはどの場所でも同じ。

 少女は人形のような無機質な瞳で、それを眺め続ける。

 

 そうしていると、部屋の扉が突如弾け飛んだ。

 煙が巻き上がる中、サッカーボールがコロコロと玉座へ転がってくる。それを抱き抱えるように拾い上げ、少女は光なき瞳をそちらへ向ける。

 

「お久しぶりですね、円堂君。それに皆さんも」

「……なえっ」

 

 煙が晴れ、侵入者たちが姿を表す。

 その先頭に立っているのはオレンジ色のヘッドバンドをつけた男。それは先ほど少女が見た夢の中の人物よりも、遥かに成長している。

 それだけではない。少女がこれまで出会ってきたライバルたち。世界レベルの選手たちの大人の姿がそこにあった。

 その中にはもちろん、少女の大切な『彼』もいる。

 

「フィディオ……」

「どうして……どうしてこんなことをしたんだ!?」

「……必要なことだからですよ」

 

 少女は目を伏せる。まるで仕方がなかったというように。その様子はどこか神秘さを醸し出している。

 

「生きると決めたあの日から、私は今まで以上に特訓を重ねました。努力して努力して努力して……おかげで15歳でプロに入ったその年で世界最優秀選手賞も取ることができた。……でも私は、強くなりすぎてしまった」

「……っ!」

 

 最後の言葉に全員が顔を歪める。

 彼女の言っていることは事実だった。それは長年サッカーに関わってきた彼らが十分に知っていた。

 

「円堂君。5年前……私の引退した年の、私の得点数を覚えていますか?」

「……126点。一試合で10点以上を決めている計算だ」

「そうです。私はプロになった時から引退まで、世界中の賞と優勝トロフィーを手に入れ続けた。しかしサッカー協会はそれでは商売にならないと、あらゆる大規模な大会から私を追放したんです。私は何もしていなかったのに……ただサッカーをやってただけなのに……」

 

 それはあまりにも異例のこと。彼女が現れるまでこのような処置に遭うなどとは誰も考えたことなどなかっただろう。

 サッカーとてビジネスだ。客がいなければ大会も開けないし、選手も増えない。初めは賞賛を受けていた彼女も、一人で試合を決定してしまうその力のせいでやがて人々には退屈がられ、憎まれていった。

 出せば必ず勝てる選手など誰も望んでいなかったのだ。

 ビジネスにならない選手に価値はない。サッカー協会が下した処分は世間一般で見れば正しかったのだろう。

 ただし、そこにその少女の気持ちを加えなければ、だ。

 

「私は今は亡き師のためにも輝き続けなければいけません。だから思ったんです。世界中のサッカーのレベルを、私のところまで引き上げればいいんじゃないか、と」

「その結果がウイルスか……!?」

「ええそうです。人間は誰もが強くなる可能性を秘めています。それを最大限引き出すのがこの『サッカー狂ウイルス』。これがあれば王も貴族も大統領も総理大臣も関係ありません。今では七十億人もの人々が仕事を忘れ、日夜強くなるために己を鍛え続けています。素晴らしいことだと思いませんか?」

 

 彼女の問いに鬼道が怒りの声をあげる。

 

「どこがだ! 世界は今働く人間がいなくなり、食糧危機に陥っている! このままでは人類は全滅だ!」

「……? この世界は今やサッカー選手にとっての理想郷になったはずですよ。なのになぜあなたたちが怒るんですか?」

「違う! サッカーは楽しくやるものなんだ!」

「……彼らは楽しんでますよ?」

 

 理想郷。彼女はこの地獄と化した世界をそう称す。それが理解されていないのが不思議でたまらないというように、無表情のまま首を傾げる。

 

「それに……有象無象がどれだけ減ろうが関係はないんです。十一人、私と戦うための十一人が揃えばそれで……」

「……円堂、フィディオ。あいつはもうダメだ。聞く耳を持たない」

「ああ、わかってる。だから俺たちがここに来たんだ」

「……君の目を今度こそ覚まさせてみせる」

 

 円堂は仲間たちに目をやる。彼らが頷いたのを見ると、彼は来ていた上着を一気に脱ぎ捨てた。

 露わになるのは黄色と赤の見慣れないユニフォーム。胸には地球を剣で突き刺したような、これまた見たことがないエンブレムが刻まれている。

 

「勝負だなえ! 俺たち『世界選抜』と!」

 

 円堂が宣言すると同時に、他の仲間たちも上着を脱ぎ捨てる。彼らのユニフォームも円堂とは配色が違うが、同じエンブレムが刻まれている。

 『世界選抜』。普通なら実現することは決してないドリームチームが、世界の危機に誕生したのだ。

 

 しかしそれを前にしても彼女は動揺一つ見せない。

 

「わかりました。教えてあげましょう。私とあなたたちの力の差というやつをね」

 

 少女はパチンと指を鳴らす。

 するとどこからともなく黒い光が集っていき、それらが人間の形を作り出す。そしてあっという間に、彼女の背後に十人もの選手ができあがった。

 

「っ、なんだこいつらは……!?」

「『デュプリ』……まあ私の力で生み出した選手たちです。実はFFI以来、超能力らしきものが使えるようになりまして……今では手も使わずに物を動かせるようになったんですよ?」

 

 「ほら、この通り」と少女が言うと、玉座に立てかけてあった彼女の杖が一人で浮かび上がり、彼女の手の中に収まった。

 その非現実的な光景に呆然とするが、驚きはまだ終わらない。

 

 先ほどデュプリを作り出した黒い光が、今度は彼女を覆い尽くす。そしてしばらく経ったあと、中から現れた彼女はさっきまで着ていたウェディングドレスのような純白のドレスではなく、動きやすそうな黒いドレスを身に纏っていた。

 彼女はブーツを軽く踏み鳴らすと、周囲の景色が一変。謁見の間から気がつけばサッカーグラウンドに彼らは立っていた。

 

「さあ、サッカーをしましょう」

「っ……望むところだ!」

 

 さすがにここまで非現実的な光景が続けば世界選抜といえど動揺してしまう。しかしそれを落ち着かせる間もなく、試合は始まってしまった。

 

「みんな落ち着け! まずはボールを奪うことから始めるんだ!」

「そんな悠長にしていていいんですか?」

「へっ……がっ!?」

 

 ホイッスルが鳴った直後、円堂が指示を出していた時、その声は突如横から聞こえた。

 次に襲いかかってくるのは感じたことがないほどの衝撃。そのあまりの威力にグラウンド全体が地震の如く揺れ動く。円堂はわけがわからないうちに倒れていた。

 

 その一部始終を断片的に見た鬼道が、震える口でつぶやく。

 

「馬鹿な……現役時代でもここまでの動きはしていなかったはずだ……!」

「……やはりこの程度ですか。残念です」

「ぐっ……まだまだだっ!」

「その折れた右腕で何ができるというのですか?」

「っ……!」

 

 隠すように左手で右腕を抑える。

 円堂の腕は間違いなく折れていた。それに失望し、少女は自軍のコートへ帰っていく。

 

 そこから先はまさに地獄だった。

 痛めつけるような怒涛の攻撃。少女ほどではないとはいえ、デュプリたちもそれぞれが世界選抜の選手たちを上回っており、過激な攻撃の前に彼らはなされるがままとなる。

 

 とうとう開始十分。世界選抜の選手たちは誰もが立ち上がれなくなってしまっていた。

 掲示板に表示されているスコアは34対0。

 もはや彼らに勝ち目はない。

 

「……終わりですか」

「まだっ……まだぁっ……終わってねぇぞっ……!」

「いいえ、終わりです。私がそう決めました」

 

 ふわりと、少女はボールとともに宙を浮かぶ。そして天空に彼女が手をかざすと、その上にあったボールを黒いオーラが包み込み、グラウンド全体を足しても足りないほど巨大な黒球が生成された。

 

 そこから感じるエネルギーは規格外と言ってもいい。あまりの量に周囲の空間が歪み、嵐や地割れなど数々の災害が巻き起こる。

 手を振り下ろし、少女はつぶやく。

 

「……ディザスタームーン

 

 そして、グラウンドは崩壊した。

 黒い炎と稲妻が周囲の大地を埋め尽くす。それはまさしく災害で、周囲の都市までもが余波だけで消し飛んでいく。

 

 闇に閉ざされたグラウンド。そこにはもう生命の息の音は聞こえない。

 少女は地面に降り立ち、ある亡骸に目をつける。

 それは夢の中で見た少年の、大人になった姿だった。

 

「……ふふ、大好きでしたよフィディオ」

 

 少女はそれを聖母のように穏やかに抱きしめる。

 その時初めて、少女の顔に笑みが浮かんだ。

 

 




 ——ルートロック解除条件『未来からの刺客』を達成。

 ——『●●●●エンド』と『●●エンド』のルートが解除されました。



 『蛇足コーナー』

♦︎闇なえちゃん
 公式大会から追放され、絶望したまま成長したなえちゃん。幼少期の無理がたたり、身長は中学時代からほとんど伸びていないことに実はコンプレックスを抱いている。

♦︎なえちゃんの超能力
 GO2のセカンドステージチルドレンと同じです。ただなえちゃんの場合は力に体が耐えられてしまうので、長生きできます。また力の大きさもSARU以上、たぶん規模で言うなら映画のフランとかと同じくらいはあるんじゃないでしょうか。

♦︎なえちゃんのユニフォーム
 『混沌の魔女カオス』のアームド姿だと思っておいてください。

♦︎ここに来てなんでGO要素?
 申し訳ありません。ですがあくまで本筋とは関係ない話ですし、いいかなぁーって。これからも化身とかは出ることは決してないので、無印しか知らない人たちも安心してください。
 ……えっ、デュプリって化身の一種じゃ?
 そこ、タグ詐欺とか言わない。
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