悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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 一瞬だけでしたが、この作品が日間ランキングに乗っているのを見ました。嬉しい限りです。
 これからも気合を入れて投稿していくので、今後もよろしくお願いします。


幕開ける雷門VS帝国

「総帥! これがあなたのやり方ですか!?」

 

 そう言い放ち、ドスドスと音を立てながら鬼道君が執務室に入る。

 ゴーグルで目が隠されているにも関わらず、彼が激怒しているのがわかる。

 私たちも後に続いて入室した。

 

「『天に唾すれば自分にかかる』。あれがヒントになったのです。あなたにしては軽率でしたね」

「……言ってる意味がわからないな。私が細工したという証拠はあるのかね?」

 

 鬼道君に正面から非難されてなお、総帥はとぼけてみせた。

 その顔には笑みが浮かび上がっていて、それが一層鬼道君たちを苛立たせる。

 悪い笑みだよありゃ。でも今回は分が悪いかもね。

 

「あるぜぇ!」

 

 大声とともに、何かが入ったビニール袋が総帥の机に飛んでくる。

 その中には溢れんばかりの大量のボルトが入っていた。

 

「あれは宍戸に落ちてきた……!」

「そいつが証拠だ」

「刑事さん!」

 

 投げつけたのは新聞おじさん、いや刑事のおじさんだった。道中聞いた話では鬼瓦と言うらしい。

 

 鬼瓦刑事はコートのポケットからトランシーバーを取り出し、総帥の方に向ける。

 

「どうだ?」

『はい、たしかにボルトが緩められています。これは明らかに人の手によるものです!』

「こいつが、帝国からの依頼で請け負ったと白状しました!」

「——というわけだ」

 

 次々と湧いて出てくる証拠の数々。

 後ろを振り向くと、ヘルメットを被った男が手錠をかけられて他の警察らしき男に捕まっていた。

 あーあ、もうダメっぽいわこれ。

 

「俺はもうあなたの指示では戦いません」

「俺たちも鬼道と同じ意見です!」

 

 鬼道君の宣言に源田たちが賛同する。

 

「勝手にするがいい。私にも、お前たちなどもはや必要ない」

「影山零治! 一緒に来てもらおうか。お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。四十年分、洗いざらい吐いてもらうぞ」

 

 ここまで証拠を出されたらさすがに言い逃れはできず、総帥は席を立った。そして鬼瓦刑事と一緒に退出していく。

 

「鬼道、最後に教えてやろう。人間の闇は無限だ。お前のその限られた視野では見通すことなどできやしない」

「なんだと……?」

 

 鬼道君が聞き返す前に扉が閉まった。

 うーん、実に詩的なセリフを残していったね。

 でもあれ絶対に私のことを指してるでしょ。

 最後に地雷投げつけてくんなし。

 

「闇だと……どういうことだ?」

「そんなことよりも試合だよ試合! 総帥もいなくなったし、これで自由! そんなわけでサッカーやろうよ!」

「……いやダメだ。俺たちは知らなかったとはいえ、取り返しのつかないことをしてしまった。その罪を償う責任がある」

 

 ふぁっ!?

 そりゃないよ鬼道君! 私はこの日をこんなに待ってたのに……! 

 

 鬼道君はそんな私の心境も知らず、円堂君と雷雷軒の店員——響木監督に頭を下げた。

 

「すみませんでした響木さん。俺たちに試合をする資格はありません。どんな処分でも受けるつもりです」

「……だそうだ円堂。お前が決めろ」

「そんなのもちろんやるに決まってるだろ! 俺たちはサッカーをしにここまで来たんだ! お前ら帝国学園とな!」

「……感謝する」

 

 円堂君ナイスだ! さすが私の見込んだ男! 

 

 この決定のおかげで、晴れて帝国学園対雷門中の試合は続行することとなった。

 帝国スタジアムのグラウンドはスタイルに合わせて様々な芝生に入れ替えられる仕組みとなっている。それを利用して鉄骨の突き刺さっているグラウンドを除けて、新たに人工芝のグラウンドをセットした。

 

 ちなみに監督は安西という先生に任せることとなった。

 私とは別で表を仕切ってた人だけど、暗部には関わっていないため彼も立場が危ういのだろう。媚びを売るようにして即決で引き受けてくれた。

 

 ちなみに頼みこんだ時の言葉はもちろん『安西先生……サッカーが、したいです……!』だ。

 

 そして各チームの選手たちがそれぞれのポジションについたところで、ホイッスルの笛が鳴った。

 

 

 ♦︎

 

 

 キックオフで始まり、ボールを持った豪炎寺君がぐんぐんと駆け上がってくる。

 それを止めようと最前線の私が立ちふさがったけど、雷門のミッドフィルダーたちとパスを回されてあっけなく突破されてしまった。

 

 まあいいよ。どうせ本気で取る気はなかったし。

 その後攻められているにも関わらず、一人雷門側のコートへ走っていく。

 

「ドラゴン——」

「トルネードッ!!」

 

 そうこうしていると染岡と豪炎寺君の連携シュートが放たれた。炎を纏った竜がゴールに迫る。

 だけど源田は不敵な笑みを浮かべると、その場で跳躍し、拳を地面に叩きつけた。

 

「パワーシールド!」

 

 衝撃波の壁が発生。ドラゴントルネードは弾かれ、ボールが源田の手に収まる。

 

「その程度でパワーシールドは破れん! ……なえ!」

「しまった、カウンターだ!」

 

 源田が大きく蹴り上げ、ボールを雷門コートまで押し上げる。

 

『ボールは伸びてゆき、白兎屋へ! ああっと! だが雷門の選手三人に囲まれている!』

 

「へっ、もらった!」

「パスは通らせないでヤンス!」

「……甘い甘い」

 

 松野に栗松に宍戸だっけか。が私を取り囲む。

 しかし私はまるで兎のように天高く跳躍し、雷門の選手たちが届きもしないような高さでボールを受け取った。

 

「なっ、野生よりも高いなんて……!」

 

 そのまま三人を飛び越え地面に着地。途端に口元を歪ませる。

 ——さあ、狩りの始まりだよ。

 

 稲妻を思わせるほど鋭く、素早いドリブルでぐんぐんとコートを駆け上がっていく。

 途中で土門という雷門ディフェンスが出てきて、私の前に立ちふさがる。

 

「キラースラ……」

「そんなところにいると痺れるよ? ——ジグザグスパーク!」

「うわぁ!」

 

 体から青白い電気を発生。そのままジグザグにドリブルして、近づいてきた土門に電撃を浴びせた。

 その隙にゴール間近へと走っていく。

 

 ここまでで相手の右ディフェンスは全て抜いた。あとはゴールを目指すのみ。

 しかし右を案じた壁山がボールを奪おうと近づいてきた。

 

「うぉぉぉっ!! シュートは打たせないッス!」

「安心しなよ。私は撃たないからさ」

「へっ?」

 

 けど壁山が来たってことは逆サイドはガラ空きってことだ。

 真横に鋭いパスを出す。その先には鬼道君と佐久間が走り込んで来ていた。

 鬼道君がボールを受け取り、最後の壁を突破せんとボールを上に蹴り上げる。

 

「いくぞ円堂!」

 

 上に行ったボールをすぐに佐久間がヘディングで下に落とす。

 鬼道君はダイレクトでそれを蹴り、ボールをさらに加速させた。

 

『ツインブーストッ!』

「うぉぉぉっ! 熱血パンチ改ッ!!」

 

 熱血パンチ改!? 

 円堂君の右手に、以前見たときとは桁違いの気力が集中していく。そして赤いオーラを纏ったままボールを殴りつけ、弾き返した。

 

「どうだ! 俺たちだって成長してるんだ!」

「ふっ、今のは小手調べだ。本当に帝国の恐ろしさ、見せてやろう」

 

 二人はそれぞれ喋ったあと、別れる。

 ボールは風丸が拾っていた。自慢のスピードを活かしてドリブルしていくけど——。

 

 

 ——すでにその目の前に、私は立っていた。

 

「なっ……!?」

 

 風丸が目を見開いて驚く。いや風丸だけじゃない。状況を見てた雷門選手の全員が驚いていた。

 

 そりゃそうだ。

 さっきまで私は雷門から見て右サイドのペナルティエリアギリギリにまで近づいてたんだもん。

 それがボールがクリアされたときには逆サイドのハーフラインまで戻って来ている。

 

 じゃあどんな手品を使ったんだって?

 答えは簡単、()()()()()()()()

 

「くっ、疾風ダッシュ!」

「遅い」

 

 風丸よりもさらに速く動き、ボールを掠めとる。

 雷門ディフェンスはさっき円堂君がクリアしたばっかで全然整っていなかった。

 そのままドリブルしていき、楽々円堂君と一対一となる。

 

「さあこい! 絶対に止めてみせる!」

「あのときとどう違うか、確かめてあげる!」

 

 電気を纏った両足でボールに連続で蹴りを叩き込んでいく。

 

「ディバインアロー!」

 

 最後に回し蹴りを当てると、ボールはまるで光の矢のように高速でゴールに飛んでいった。

 

 いくら進化した熱血パンチでもこれには威力負けするだろう。

 ならばと、円堂君はなんと両手に気力を貯め始めた。

 

「これが俺の新必殺技! 爆裂パンチだっ!!」

 

 円堂君は目にも止まらぬ速さで延々とボールを殴り続ける。そして勢いが弱まったところでアッパーを繰り出し、先ほどよりも大きくボールをクリアした。

 

「ひゅー、やるねぇ。まさか私のシュートを止めるなんて」

「お前こそすげぇよ! どうやってあんなところまで移動したんだ?」

「私、こう見えて超足速いの。たぶん陸上でも中学生レベルなら、軽く全国一にはなれると思うよ」

 

 そう、これこそが私の真価。

 攻め上がっているときにボールを奪われても、すぐにディフェンスに参加することができる。

 

 故に、私のポジションは『自由(リベロ)』。

 もっとも本来の意味は攻撃にも参加するディフェンスということなので、私とは真逆ではあるけど。

 

 ボールは雷門ミッドの半田へ。

 それを奪おうと巨体にヘルメットと同化したゴーグルという不恰好な姿をした大野がその場で飛び上がり、必殺技を発動する。

 

「アースクエイクッ!」

「ぐがっ!?」

 

 体重を生かして地面に着地することで衝撃波を撒き散らし、半田を吹っ飛ばす。そのこぼれ球を、半田の後ろから迫っていた染岡が気合で奪い取った。

 大野は必殺技の反動で少し反応が遅れてしまう。

 その隙に染岡はゴールは一直線に走る。

 

「ドラゴンクラッシュッ!」

「無駄だ! パワーシールド!」

 

 ドラゴントルネードですら破れたのだ。単独のドラゴンクラッシュが通用するわけがない。

 その予想通り、ボールは勢いを弱めて空中に跳ね上がった。

 

 ただ予想外なのが一つ。

 ボールの行き先に、豪炎寺君がいたことだ。その足には炎がすでに宿っている。

 

 なるほど、連続してシュートを撃つことで源田の反応を遅らせるつもりか。

 でも残念。()()()()()()()()

 

「ファイアトルネード!」

「スピニングカット!」

 

 前線から戻ってきた私は源田の前に立ちはだかり、右足に気力を込める。そして足を振ってエネルギーの壁を発生させ、炎のシュートを止めてみせた。

 

「なにっ!?」

「ディフェンスはできないと思った? 残念、全部できるからこそのリベロなんだよ」

 

 ボールは私からディフェンス、ディフェンスからミッドフィルダーへ。そしてミッドフィルダーから私へ。

 マークしようにも、あまりの速さに誰もついていけていない。

 

 なんとか止めようと雷門ディフェンスが目の前に集結する。

 でも私はかかとでボールをバックパスし、後ろにいた鬼道君に渡した。

 

「いくぞ円堂! これがゴッドハンドを破るために編み出した必殺技だ!」

 

 鬼道君の指笛とともに地面から複数のペンギンが出現する。そしてシュートされると同時に飛行した。

 

「皇帝ペンギン!」

 

 そのボールに私と佐久間が両サイドから走り込み、同時に蹴りを入れる。

 

『二号ッ!!』

 

 ボールはさらに加速し、瞬く間にゴールへと迫る。

 円堂君は右手を天に掲げていた。ゴッドハンドの構えだ。

 

「ゴッドハンドッ!」

 

 手のひらの形をしたエネルギーの塊がボールを受け止める。

 しかし続くペンギンたちのくちばしが突き刺さり、ゴッドハンドは砕け散った。

 ボールはその奥にいる円堂君ごと押し込んでネットに入る。

 

 ゴール。これでようやく一得点だ。

 

「ぐっ……なんてパワーだ……!」

「策略など必要ない。これが帝国の実力だ!」

 

 珍しく鬼道君が声を昂ぶらせて叫んだ。まるでここにはいない総帥に、なによりも自分に言い聞かせるように。

 円堂君はその鬼道君の熱い一面を見て、ニヤリと笑う。

 

「へっ、ますます止めたくなってきたぜ、このシュート!」

 

 それでこそ、円堂君だ。

 ここで前半終了のホイッスルが鳴り響く。

 私たちは後半に備えるため帝国側のベンチまで戻っていった。





 この作品でのなえちゃんは攻守万能なリベロです。
 もちろん原作通り陸上の記録を塗り替えられるほど足が速いですし、なんなら影山の下で猛特訓を重ねたおかげで原作以上にかなり強化されています。

 風丸すまん、お前の影も薄くなってしまいそうだ……。
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