悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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天使(笑)と悪魔(笑)

「へっ、勝負だフィディオ!」

「今度も負けないぞ!」

 

 ペナルティエリア付近にて、フィディオとテレスが激しくボールを奪い合う。それにしてもすごい争いだ。高度すぎて周りがぜんぜん近づけてないよ。

 フィディオの持ち味は、『白い流星』の二つ名通りのスピードだ。だけどテレスも負けてはいない。先読みでフィディオよりも早く移動し、そのガッチリした体を使ってディフェンスしている。あれじゃあ、ボールを持ってる方は走り出した途端に、目の前に壁が出現したように見えるだろう。

 

 ご覧の通り試合は白熱していた。

 チーム分けはテレスとマーク、ディランが白組、私とフィディオとエドガーが紅組である。

 

 二人の勝負はテレスが勝ったようだ。そこからカウンターが始まり、リカがシュートを撃つも……。

 

「ザ・タワーV2!!」

 

 塔子のザ・タワーによって弾かれてしまった。

 技の進化はもちろん、二人は世界の選手たちに混じっていながらも、一選手として十分に活躍できている。強くなってるのは私たちだけじゃないってことか。

 そうやって感心していると……。

 

 

 突如、グラウンドに雷が落ちた。

 

 眩い光が一瞬、私たちの視界を奪った。

 な、なに? また円堂君が魔神でも呼び出したの?

 そう思ったけど、どうやら違うみたい。落雷の中から姿を現したのは、二人の男。

 片方は鳥っぽい白い翼を、もう片方はコウモリっぽい黒い翼がついた服をそれぞれ着ている。

 なにあれダサっ。コミケ会場はここじゃないですよー。

 

「ちっ、伝承の鍵の継承者が同じ場所にいるとはな。おかげでクソッタレ天使の顔を見ちまったぜ」

「ふっ、同感だな。汚らわしい悪魔を視界に収めることになるなんて不幸な」

 

 なんかぽかーんとしてる私たちを差し置いて、勝手に喧嘩を始めたんだけど。しかも天使とか悪魔とかすっごいワード出てきちゃってるし。察するに、お仲間というわけじゃないのかな?

 まあ厨二病コンビのバーンとガゼルみたいなもんか。

 

 私たちを無視して争っている状況に痺れを切らしたようで、円堂君が彼らに話しかける。

 

「えーと、お前らはなんなんだ? ここはイナズマジャパンのグラウンドなんだけど……」

 

 そーだ円堂君、ガツンと言っちゃって!

 

「うっせぇぞ人間! テメェの魂を食ってやろうか!」

「のわっ!?」

 

 怖っ! ものすごい痛い言葉とともに、ものすごい顔されたんだけど!? 苦手だわーあの人。できればあんまり関わりたくないよ。

 

「ちっ、まあいい。テメェらとの決着は、継承者を食らってから決めてやる」

「いいだろう。私もここでは争いたくなかったところだ」

 

 そう言って天使っぽい人はリカを見つめる。

 一方、悪魔さん(笑)が見たのは……私?

 ……おう、ジーザス。

 

「オラ、さっさと来い!」

「いたっ! ちょっ、いつの間に!」

 

 ちょっと目を離した隙に悪魔さん(笑)は私の背後に移動してきて、腕を掴んできた。

 それにしてもこの悪魔さん(笑)って長いし言いにくいな。適当に悪魔でいっか。

 

「って、いい加減離れなよ!」

「おっと」

 

 げっ、あの距離で私の蹴りを避けた!?

 警戒度を一段階引き上げる。

 ふざけた見た目に反してこの男、やるね。私の蹴りを避けたのもその証拠だ。あれは誰もが避けれるものじゃない。

 

「フィディオ、下がってて。ちょっと本気出すから」

「あ、ああ! 待っててくれ、今警察を呼ぶから!」

「ちっ、悪いがじゃれてる暇はないんだ。大人しく寝てろ」

 

 悪魔は手のひらを私にかざす。

 なにあれ、もしかしてあそこから波動弾でも出ちゃ……たり……し……て……。

 

 な……に? 急に意識が……。

 沈む沈む。眠気が急に浮上してきて、暗闇が私を飲み込む。そのまま耐えきれなくなり、私は目を閉じてしまう。

 

 そして次に起きた時には……。

 

 

「……おう、ジーザス」

 

 グツグツと煮えたぎるマグマ。赤く熱された岩々。

 そんな光景ばっかりの洞窟の中で、私は体のラインがくっきり出る赤い服を着せられて、鎖で縛られていた。

 

「……嘘だと言ってよバーニィ」

 

 しかし残念、現実である。

 

 

 ♦︎

 

 

「よお生贄、元気にしてたかぁ?」

 

 現実逃避でぼーっとしてると、さっきの悪魔が仲間らしき人たちを連れて、ゾロゾロと歩いてきた。みんな一様にあのキテレツファッションである。

 って、今なんか超不安なワードが出てきたんですけど。

 

「えーと、悪魔さん(笑)、生贄ってどういうことかな?」

「デスタだ! なんだそのふざけた呼び方は! 食っちまうぞ!」

 

 ギャー! 男らしい強姦宣言ですよ奥さん! しかし顔はいいけどファッションが台無しにしてるせいで、私の胸はぜんぜんときめかなかった。残念でした。

 

「ちっ、なんだこの人間。気持ち悪りぃ」

「ちょっ、女子に対して気持ち悪いとはなんだ気持ち悪いとは! もうちょっとデリカシーってものが足りないんじゃない!?」

「あーもうマジでうっせえな! おいこれ返品できねえのかよ!」

「無理ですね。伝承の鍵が彼女を認めてしまっているので」

「な、チェンジだって!? 勝手にさらって来ておいてその言い草はなんだい! 私に色気が足りないってのかー!?」

「……こいつ殴ってもいいか?」

「ダメですからね!?」

 

 その後、私が落ち着くまで十数分かかりましたとさ。

 私が言いたいことを全部言ったころには、デスタ一味は全員息切れ状態になっていた。はて、また私なにかやっちゃいました?

 デスタは面倒くさそうに現状を説明し始める。

 

「俺たち悪魔の目的はこの千年祭の時のみに蘇ることのできる魔王様を復活させ、この世界を滅ぼすことだ」

「……パードゥン?」

「魔王様復活のためには生贄が必要となる。それもただの生贄じゃねえ。とびっきりのうまそうな魂を持った生贄だ。んで、光栄なことにテメェはそれに選ばれたってことだ」

 

 うんうん。状況を整理して一言叫ばせてもらいたい。

 厨二病だこの人たちー! しかも手の込んだ人様に迷惑かけるタイプ!

 や、やばいぞ。頭のおかしいやつには頭のおかしいやつしか対抗できないって相場がある。この純真無垢ななえちゃんではこの変態たちに対処できないのだ。

 こういう手合いって、なにしてくるかわからないしね。不動呼ぶしかないか。

 

「あーはいはい。で、その生贄ってやつになったらどうなるの?」

「魔王様に食われる」

「嫌だー! こんなところで処女散らしたくないー!」

「そっちの意味じゃねえよ!?」

 

 やっぱり変態だよー! 助けてフィディオー!

 そんな私の願いが通じたのか、洞窟の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「待て! それ以上ナエに触れるな!」

「助けに来たぞ!」

 

 おおっ、フィディオに円堂君! 信じてたよマジで!

 やってきたのは紅組か。私とかエドガーがいたところだね。

 

「ミスター……いやミスだったのか、君は」

「げっ……こ、このことは内密に……」

「まあいいさ。可愛いレディの隠し事の一つくらい、騎士は見逃すものさ」

 

 おー、さすがエドガー、懐深い。

 ただアゴをくいってやるのはやめてほしいな。美少女なえちゃんとエドガーだったら絵にはなってるだろうけど、すっごい恥ずかしいし。

 

 円堂君はキリッとした目でデスタ一味を睨みつける。

 

「魔界軍団Z! お前たちの好きにはさせないぞ!」

「ブフッ!?」

「笑うなぁっ!!」

 

 いやなにその名前! ださい、さいっこうにクソださい。

 やばいぞ、まさか総帥以上にネーミングセンスのない人がいるとは……。

 

「そもそもZってなにさ。なにか意味はあるの?」

「そ、それはだな……」

「それに魔界軍団って、いくら悪魔っぽいからって安直すぎじゃない? しかも微妙に長くて言いづらいし」

「ぐっ、ぐぅぅっ!!」

「な、ナエ、そのくらいにしておくんだ! いくらなんでも可哀想だろ!」

 

 いやフィディオ、最後のあなたの言葉も十分凶器になってる気がするんだけど。

 

「あいつ一人でよかったんじゃないか?」

「こら染岡君、聞こえてるぞ」

 

 まったくなんてことを言うんだ。今の私は囚われのお姫様、正真正銘のゴッドプリンセスなんだぞ。男だったらさっさと助け出さないか。

 

「囚われの姫よ! 今こそ私の騎士の剣で、必ずやあなたを救い出してみせましょう!」

「ああ、騎士エドガー! わたくし信じておりますわ! あなたが私を魔の手から救い出してくれることを!」

「誰だあいつ」

「しっ、染岡さん。キンタマ砕かれますよ。うしし」

「へー木暮君。この姫がそんなことをするとお思いで?」

「いえ、なにもっ!」

 

 とりあえずこの二人はあとでお仕置き決定ね。

 それで私を取り戻すための戦いは、サッカーだ決めることになったらしい。まあ普通そうだよね。

 紅組は円陣を組んで気合いを入れている。

 

「みんな、これはなえの命がかかった試合だ。絶対に勝つぞ!」

「命って、そんな大袈裟な。相手はただのコスプレ軍団Zじゃない」

「魔界軍団Zっ!」

 

 デスタがすかさずツッコミを入れてきた。

 

「なえ、そいつらはコスプレなんかじゃない。このライオコット島の伝説に出てくる本物の悪魔なんだ」

「……マジ?」

 

 円堂君が言うには、昔神と魔王による戦争がこの島であったらしい。それに勝利した神は魔王を封印したあとに自らも力尽き、そして深い眠りについた。

 その魔王を復活させようとしてるのが、彼らコスプレ……じゃなくて魔界軍団Zらしい。

 もう一度言おう。

 

「……マジ?」

「マジマジ」

 

 円堂君の目は真剣だ。

 ……。

 

「あのーデスタさーん? この試合、私って出れたりしないんですかー?」

「生贄は黙ってそこで眺めてろ」

「ちょっおまっふざけんなよマジで! 一番の戦力を試合出さないなんてあもりにも卑怯すぎるでしょ!」

「あー聞こえねーなー」

「あ、待っていやマジで待ってくださいさっきまでの無礼は謝るからいや待ってぇー!!」

「それじゃあ始めようぜ! 魔王様復活の儀を!」

 

 こいつ絶対許さん。

 私は鎖に縛られたまま、石造りの掲示板の真ん中に置かれ、試合が始まった。

 

 

 

 ♦︎

 

 

 いやぁ、魔界軍団Zは強敵でしたね。

 激闘の末、勝ったのはイナズマジャパンだった。デスタの必殺シュート『ダークマター』とか、相手の動きと認識を限りなく遅くしてしまう必殺タクティクス『ブラックサンダー』なんかが炸裂したけど、フィディオやエドガーの活躍もあって立て直し、最終的に2対1で勝利となった。

 

 試合を決定づけるホイッスルがなった時、私の鎖も砂になって外れた。自由だー! 自由なんだー!

 そんなことを叫びたくなる気持ちをグッと抑え、グラウンドで膝をついているエドガーに話しかける。

 

「なんかその、悪いね。私のせいで足折っちゃって」

 

 エドガーの足は真っ青に腫れていた。

 彼はジャパン戦で染岡君の『ドラゴンスレイヤー』を撃ち返したように、デスタの『ダークマター』を撃ち返そうとしたのだ。その結果、点は取れたものの、彼の足は折れてしまった。

 しかし彼は苦しそうな顔を一切見せず、私の髪を触りながら笑いかけてくる。

 

「憂うことはありませんよ。レディが無事であること。それが私の喜びなのですから」

「……うん、あなたが人気な理由、わかったかも」

 

 これは惚れるわな。だってかっこいいもの。この私でさえ今のには不覚にもクラッと来てしまったほどだ。純粋な少女たちならなおさらだろう。

 

「フィディオもお疲れ」

「大丈夫か? どこか痛いところは?」

「大袈裟だなぁ。ただ捕まってただけじゃない。それよりも私としてはみんなの方が心配だよ」

 

 なにせ魔界軍団Zはガチっガチのラフプレーが得意なチームだったからね。不動とかいたらよかったんだけど、あいにくと紅組は気性の激しい選手が少なかったため、大変苦戦した。

 

「とにかく、君が無事でよかったよ」

「……こういう時は積極的になってくれるのね」

「え、なにか言ったか?」

「いいえ、なーにも」

 

 さーて、味方の安否確認は終わったし、あとは……。

 今の私は大変素晴らしい笑顔を浮かべているだろう。拳を鳴らしながら。

 

「やあやあデスタ君。よくも私を参戦させてくれなかったねえ?」

「あ、そっちなんだ」

「ぐっ……まだだ! まだ終わっちゃいねえ!」

 

 おっ、まだやる気か?

 腰を深く落として構える。

 対するデスタは立ち上がると……私たちに背を向けて走り出した。

 

「へっ?」

「今は撤退だ! どうやら天使のバカどもも女を失ったらしい! だったら正面衝突で天使を打ち破って、魔王様を復活させるまでだ!」

「って、コラ! 逃げるな!」

 

 くそ、なんて見事な逃走フォームだ。あまりにも急すぎて一瞬思考が止まってしまった。その隙に悪魔たちは洞窟のさらに奥に走っていき、石の扉で道を封じてしまった。

 

「逃げるな卑怯者ー!」

 

 石をバンバン叩くけどビクともしない。取手も鍵穴も存在しないし、力で強引に破るしかないか。

 こうなったら……。

 私が捕まってた場所の近くにあった私服をあさり、ピンポン玉サイズの黒い球体を取り出す。それに力を込めると球体はどんどん大きくなっていき、立派なエイリアボールができあがる。

 円堂君は目を丸くしてそれを見ていた。

 

「え、エイリアボール?」

「これぞ我らブラック企業KAGEYAMAの化学の結晶だよ!」

「科学の力ってスゲー!」

 

 どっかで聞いたことあるなそれ。

 ともかく、私はエイリアボールを蹴って石扉に叩き込んだ。

 ドゴォンッ!! という耳をつんざくような轟音とともに、土煙が巻き上がる。そしてそれが晴れたあとには……傷ひとつついてない扉がありますね、はい。

 

「うそーん」

「ほっほっほ。そいつは悪魔のみが入れる扉。力だけでは壊れんよ」

「あ、審判さん」

 

 フードを被ったヨボヨボのおじさんが話しかけてくる。

 塔子曰く、どうやらこの人が伝承の鍵を与えた張本人らしい。試合の時はどこからともなく現れ、審判をしていた。

 

「……どうやら天使と悪魔の戦いが始まったようだ」

「天使っていうと、白組が向かった方?」

 

 さっきデスタが『天使も女を失った』って言ってたし、あっちもおそらく勝ったのだろう。ちなみにあっちではリカがさらわれてしまったようだ。

 

「お前さんたち、『伝説の地』に向かうといい。そこで千年祭の決着が見られるだろう」

「『伝説の地』?」

「ヘブンズガーデンとデモンズゲートのちょうど境目にある場所じゃ」

「えーと、どこ?」

 

 まったく知らない土地なんですが。と思ってたら、円堂君が説明してくれた。どうやら今いるここがデモンズゲートで、白組が向かったのがヘブンズガーデンらしい。

 

「白組も試合が終わったのなら、そこに向かってるかもしれないな」

「よしみんな、次の場所は伝説の地だ!」

『おうっ!』

 

 まあ行くしかないか。私はみんながデモンズゲートを出てったのを見計らってさっさと着替え、彼らのあとを追った。




 それぞれのチームの向かう先をアニメとは逆にしました。
 まあフィディオいるんだったら助けに来させるよね。正直鬼道とか不動がいる白組にフィディオだけ入れ替えようと思ったけど、エドガーとの絡みも欲しかったのでこうしました。
 ちなみに書いたあとに、フィディオ、エドガーとディラン、マークを入れ替えればよかったんじゃ……。って思ってしまいましたw
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