悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです 作:日差丸
デモンズゲートを抜け出してから数十分。私たちはずっと坂道を駆け足で上がっていた。
ひぇぇ。それにしてもおっかない場所だ。道は横幅三メートルあるかないかで、片側は断崖絶壁。落ちたらまず助からないだろう。そんな場所を走っているんだから、こんなふうに恐怖を覚えるのも当たり前だ。
「ねえ、まだなのー?」
「もう少しのはずだ。……ほら、分かれ道が見えてきた!」
フィディオの言う通り、たしかに私の視界には、二つの道が見えてきた。一つは地上行き。もう一つはヘブンズガーデン行きのものだろう。
そしてその道から、集団が降りてくる足音が聞こえてくる。
「円堂、無事だったか!」
「その様子だと、お前たちも勝ったんだな!」
鬼道君と円堂君がハイタッチ。
これで白組と合流できた。あっちもところどころボロボロな人がいるけど、おおむね無事のようだ。
あと、残す問題は……。
「よくぞたどり着いた、人間よ」
「千年祭は終わりを迎えた。この先の伝説の地では、その結果が待ち受けているだろう」
「ひぇっ、審判のおじさんが二人いる!? ドッペルゲンガーだ!」
というかいつからいたんだこの人たちは。少なくとも気配なんか全然感じなかったんですけど。
まあ深く考えても仕方ないか。そもそも天使とか悪魔の時点で十分ファンタジーだしね。
おじさんたちが手をかざすと、T字の真ん中にある壁が崩れ、その奥から荘厳な石扉が現れた。それはゆっくりと、重々しく開いていく。
「それで、どっちが勝ったの?」
「……行けばわかる」
「実はおじさんたちも今着いたばっかだからまた知らなかったり?」
「これ以上はなにも言わん」
むー、ダメか。やっぱデスタほど簡単に挑発に乗ってくれないか。
まあいい。行けばわかる。たしかにその通りだ。
私たちは扉をくぐり、伝説の地へと向かった。
♦︎
伝説の地はその壮大な名前に反して、あまり特徴がある場所ではなかった。
デモンズゲートのようにマグマだらけじゃないし、聞いたところのヘブンズガーデンみたいにお花畑でもない。ただただ鍾乳石みたいなつらら石がいっぱいあるだけの、なんの変哲もない洞窟だった。
そこの開けた場所にたどり着く。
そこにいたのは、別のユニフォームを着たデスタと、髪を三つ編みに編んだ男の人だった。
鬼道君がデスタの隣にいた人に反応する。
「お前は、セイン!」
「お知り合いですか鬼道君?」
「天使たちのキャプテンだ。しかし……」
「その割には趣味の悪いユニフォームをデスタと一緒に着てるけど。もしかしてサッカーを通じて友情に芽生えちゃった?」
「そ、そうなのか? それにしては様子がおかしいが……」
「鬼道君も私も友情に芽生えた側でしょ! 信じてあげなきゃ! きっと今の二人は肩を並べ合ってプリクラを撮ってるぐらいの仲になってるはずだよ!」
「俺は円堂とそんなことしたことないが……」
ほら見てこのセインさんの邪悪な笑顔。きっと無理に笑おうとしてあんなんになっちゃってるんだなぁ。不器用な人だ、スマイルスマイル〜。そう言ってニッコリ笑ったら唾を吐かれた。
うわっ汚なっ!
「ちょちょちょ鬼道君、これが本当に天使なんですか? 私の中でのイメージが音を立てて崩れちゃってるんだけど」
「いや、セインは俺たちへの態度は悪かったが、そこには品というものがあった。だが今のは……。何があった、セイン!」
鬼道君が問いかける。しかしセインはクックックと狂気にまみれた笑いで返答した。
「おめでたいやつだな。今の私が本当に天使に見えるか?」
「なに……?」
「千年祭の結果をテメェらに教えてやるよ。悪魔の勝利だ! これによって魔王様がとうとうこの世に復活したぜ!」
「なんだって!?」
みんながキョロキョロと辺りを見渡す。
あれ、でもそれっぽい人はいないようだけど……?
もしかして帰っちゃったのかな?
「どこを見ている?」
「教えてやろう! 俺たち悪魔と天使が融合した姿こそが、魔王だったんだよ!」
デスタから語られる衝撃の真実。それに私は……。
「えー、ないわー」
ものすっごいうさんくさい顔で彼らを見ていた。
「そのうぜぇ顔をやめろ! ていうかなんだそのイマイチな反応は!? もっと驚けよ!」
「いや、驚いたよ? たしかに魔王崇拝してた人が実は魔王だったなんて、誰にも思いつかないけどさ。それって言っちゃえばすごいマヌケじゃない? 自分の正体ぐらいちゃんと覚えてなよ」
「うぐっ!」
「それにライバル同士だったチームが組むって前にもあったことだからさ。イマイチ驚きに欠けるというか……」
「やっぱこの女嫌いだ!」
むしろ勝手に人さらってくるようなやつが好かれると思ってたのかこいつは。
デスタの絶叫を聞き流してると、今度はセインがさっきまでとは打って変わって苦しそうな声を出してきた。
「すまない鬼道っ……我々は敗北してしまい、精神を支配されてしまった……! もう自分の中の黒い感情を抑えきれない……!」
「セイン……! やはりそういうことか……!」
「た、たのむっ、我々を倒して……ぐあああああっ!!」
あ、悲痛そうな顔を浮かべたあと、さっきみたいな邪悪な顔つきに戻った。と思ったらまた叫び出した。
「ハッハッハ! 人間どもよ! お前たちを根絶やしに……ぐううっ、負けるかぁっ! して……させるかぁっ! くれる……がァァァっ!!」
「あのーデスタ君。壊れたラジコンみたいになっちゃってるんだけど?」
「ちっ、そういえば電池入れ忘れてたか……じゃねえよ! 悪魔の洗脳をそんなチープなもんで例えるな!」
お、いいノリツッコミ。芸人スキルに磨きがかかってきてるねぇ。
その後セインはデスタにさんざんボコられて、元に戻った。
ラジコンじゃなくてテレビだったか。こりゃ失敗したな。
「さあ人間どもよ! 俺たち魔王の生贄となれ! 我々が選んだ、最も魂の輝きが強い者が試合の参加選手だ!」
「異議あり! 一方が対戦相手の出場選手を決めるなんて、フェアじゃないと思います!」
「またお前か! フェアもクソもあるか! これは魔王のための儀式だ!」
「おや、魔王様は人間と対等にすら戦えないんですかぁ?」
「ああん!? なんだと!」
典型的な田舎のヤンキーみたいな反応どーもありがとう。
あらあらまあまあ、青筋がピクリと浮かんじゃって。野蛮極まりないですわ。
挑発に乗って今にも条件を呑み込みそうなデスタ。しかしとなりのセインは冷静に彼を諌めようとする。
「待てデスタ。冷静になれ」
「黙ってなよ二重人格もどきの厨二病」
「なんだと貴様ァ!」
「うっ、僕の胸まで急に苦しく……っ」
あ、沸点こっちも低かったみたい。
そしてシロウごめん! そっちにも飛び火するとは思ってなかったの!
「いいだろう! そこまで言うならその条件、呑んでやる! どちらにせよ、試合後にこの場の全員を喰らえばいい話だ!」
「……なえがいて助かったな」
「あのクソアマのだる絡みはクソうぜえからな。同情するぜ」
てことで彼らの了承ももらったので、メンバー決めをすることになった。
その結果がこちら。
「さあ、嘆き苦しめ人間ども! 俺たちダークエンジェルがテメェらの魂を食らってやるぜ!」
「ブフッ! か、カッコいいタル〜!」
「だから笑うな!」
審判は例のおじいさんたちがやってくれるらしい。
そして巨大な砂時計が反転し……試合が始まった。
同時に、デスタとセインがものすごいスピードで駆け上がってきた。
「っ、速っ!?」
「魔王となったことでパワーアップしているのか! ——ぐわっ!?」
「豪炎寺、なえっ!」
ぐぬぬ、あの悪魔(笑)、わざと私を狙ってタックルしてきたな。小悪党め。
でも、たしかに強くなっている。さっき一戦したのがかえって災いしたのか、突然の変化にみんなもついていけず、次々と抜かれてしまっていた。
「くっ、開始早々で一点取られてたまるか! 『アイアン……っ!」
「邪魔だ!」
「ぐおっ!」
とうとう最終ラインのテレスまでもが抜かれてしまった。
残るは円堂君のみ。
デスタとセインは邪悪に笑うと、二人して連携シュートを放つ。
「恐怖しろ!」
「そして魂に還るがいい!」
「「『シャドウ・レイ』ッ!!」」
デスタが悪魔の力を込めて落としたボールを、セインがオーバーヘッドキックで解き放つ。すると白と黒が混ざり合いながら、一筋の閃光がゴールを襲った。
「『真イジゲン・ザ・ハンド』! ——ぐああああ!!」
円堂君の張った結界は早々に破られ、一点が決まってしまった。
……単純に、強い。もしかしなくてもチーム・ガルシルド以上だ。しかもこっちの場合は改造とかじゃないから弱点とかないしね。
……ふふっ。
「……なにを笑っている?」
セインが問いかけてくる。
そりゃ笑っちゃうさ。なんたって……。
「こんなにも強い相手と晴れ晴れした気持ちで戦えるって思うと、ワクワクしちゃってね」
思えばライオコット島に来てからガルシルドばっかりが頭の片隅に浮かんでいて、純粋に試合を楽しめたことは少なかった。
だけど今は違う。憎しみもなにもなく、純粋な気持ちで戦えている。それが私はなによりも嬉しかった。
「虚勢はよせよ。命がかかってるんだ、恐怖しねえわけがねえ」
「私はサッカーに命を捧げた身。サッカーで灰になれるなら本望だよ」
「……っ、ムカつく顔だ。俺はテメェらの絶望した魂が見たいんだよ! あくまでその仮面を被り続けるっていうのなら……その皮の下を剥ぐまでだ!」
絶望? なぜ絶望するのかな?
サッカーは希望に満ちたもの。ならばサッカーの中での死すらも、幸福なもののはずなのに。
っと、私がセイン、デスタと喋っているうちに円堂君たちも立ち直ったようだ。再びボールが中央にセットされる。
そしてキックオフ。私がボールを持ったとたん、目の前の二人組が襲いかかってくる。
「ならば、まずはお前から絶望を教えてやろう!」
「さあ、苦痛でのたうち回る姿を見せやがれ!」
「ふふっ、野蛮だなぁ」
微笑みながら、私は足を止める。すると足が、腕が、体が徐々に溶けていき、代わりに無数の光子が現れる。それらは流れ星となって、デスタたちを一瞬で追い抜いた。
「『フォトン・スターダスト』」
光子が集まっていき、元の私の体が現れる。
どーよ新技! 私の超能力もここまできたのです! 最近は大型家電製品ぐらいなら宙に浮かせるようになってきたし、このままだったら超能力者としてテレビでデビューできるかもね。実験動物にされたくないからやらないけど。
イナズマジャパンの反撃が始まる。豪炎寺君、フィディオとボールがつながっていく。
「『ゴー・トゥ・ヘル』!」
「くっ!」
「『デーモンカットV3』!」
「ぎゃぁっ!?」
「ナイスだナエ!」
フィディオがボールを奪われたのをすぐさまサポート。そしてセンタリングを上げたその先には、アメリカのゴールデンコンビが走り込んでいる。
「魔王に俺たちの力、見せてやろうぜベイベー!」
「ああ、いくぞ!」
「「『ユニコーンブースト』!!」」
二人が同時にシュートすると、ボールは紫色のオーラを纏って地を駆けるユニコーンとなる。その鋭いツノを使った突進の威力は世界中の知るところだ。
しかしダークエンジェルのキーパーはそのプレッシャーに晒されながらも涼しい顔をしていた。そして左手を添えて、右手を軽く突き出す。
「『ジ・エンドV2』」
闇のオーラに包まれ、ユニコーンの動きが止まる。その状態でキーパーが手首を捻ると、それと連動してユニコーンの体が湾曲し、闇に押し潰されて爆散してしまった。
「what!?」
「まさか……ユニコーンブーストがこうもあっさり……」
ぐ、グロテスクなもの見ちゃった。生物型のシュートに使っていい技じゃないねあれ。
強くなっているのはデスタたちだけじゃないってことか。あのキーパーの必殺技も進化していた。あれを突破するにはかなり苦労しそうだ。
ダークエンジェル戦はまだまだ、始まったばかり……。
壁外の雪原マジで許さんぞお前ェェェェ!!
てことでダークソウル2クリアしました。今回はボスが多かったから、全部倒すのは苦労しました。
それとお知らせです。4月から新生活が始まるせいで私もしばらく忙しくなりそうなので、1、2週間ほど投稿を休むかもです。