悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです 作:日差丸
赤黒い嵐がおさまった時、まず起こったのは鉄骨の雨だった。
バラバラに分解されたゴールの部品が次々と降り注ぎ、グラウンドに突き刺さる。一つ突き刺さるごとに地面が揺れる。
ゴール前はまるで爆心地みたいに大きなクレーターができていて、そこに旋風型が刻まれている。
草一つ見当たらない。
そう、円堂君の姿までも。
まさか……!
最悪の想像をしてしまい、ドッと冷や汗が流れた。
自分でも顔が青ざめていくのがわかる。
「そ、んな……円堂君……!」
「……ーい」
「馬鹿な……円堂が……!」
「おーい……」
……ん? 何か聞こえたような……。
鬼道君の肩が震える。
豪炎寺君は見たこともないほど取り乱し、クレーターに駆け寄った。そして土を素手で掘り出す。
「どこだ円堂! どこにいる! お前はこんなところで死ぬやつじゃないだろ!?」
「だからここにいるって!」
急いで声がした方を向く。
ゴールの後ろ。いや上から聞こえたような……あ、いた。
観客席で、手すりから身を乗り出して手を振っていた。
全員が脱力してしまう。
まったく、この人は……。
「円堂君、大丈夫なの?」
「平気平気!」
「のわりには、あなたの背後に人型の穴が空いてるんだけど……」
「慣れてるから大丈夫だ!」
グッとサムズアップされて元気なことが伝わる。
数十メートル上空から観客席に落下して元気って、どんだけ頑丈なのよ。
まあ無事なのはいいことだけど。
ひょいっと手すりを乗り越えて円堂君が降りてくる。
「そういえば、ゴールはどうするんだ?」
「問題ない」
バダップはそう言って指を慣らした。
途端にゴールの破片が粒子になって消えたと思えば、それらが集まって新しいゴールを再構成した。
科学の力ってすげー。
「うわっ、これも未来の技術ってやつなのか? まあなんにせよ、これで試合が再開できるな!」
「だが円堂……大丈夫なのか?」
豪炎寺君の心配はごもっとも。
だけどデススピアーを見ても続けた時点で、円堂君の答えなんてわかりきってるだろう。
「俺……サッカーからだけは逃げたくない。ここで逃げたら限界ができてしまう。それだけはダメだ! 諦めないで立ち向かうからこそ、人は成長できるんだ!」
「……止めた俺が野暮だったな」
フッと豪炎寺君が笑う。
「それに、友達がサッカーに命かけてるんだ。ここで逃げたら、なんか負けた気がするだろ?」
「こんな時でもサッカーバカか。まあ、お前らしいがな」
やっぱり彼は不思議だ。
彼が大丈夫だと言えば、本当にそう思えてくる。
デスブレイクを見た時に湧きあがった恐怖もいつのまにか消えていた。
フィディオと視線を交わす。
(これ以上の失点は許されない。私たちも一旦下がるよ)
(耐えるんだね。カウンターでひっくり返せる、最高の盤面まで)
私たちボールで試合が再開する。
そこからボールはあっさり取られ、オーガの猛攻が始まった。
「『デスレイン』!」
「『ザ・マウンテン』!」
「『デビルボールV3』!」
「『スノーエンジェル』!」
「『シザース・ボムV3』!」
『『ホエールガード』!!』
息もつけないほどの必殺技の応酬。
イナズマジャパンは十一人全員が彼らのコートに残り、ひたすら攻撃に耐え続けていた。
いったい何十分そうしていたのだろうか。
息が苦しい。肺が捻じ切れそう。
久しぶりだよ、スタミナ切れなんて。
体力バカの私でさえこうなのだ。きっとみんなはそれ以上に苦しいはず。
でも、堪えなきゃ。実力差を気合いだけで埋めてきた私たちに、後半戦をフルで戦う力は残っていない。
一時。
たった一時に全てをかける他ないんだ。
「必殺タクティクス——『カテナチオカウンター』!!」
フィディオの指揮のもと、バダップの封じ込めが完成した。
だけどこれだけじゃ足りないのはわかり切っている。
だから、今度は四人で同時に襲いかかった。
私、フィディオ、鬼道君、虎丸。
四方を封じ込めたスライディングが繰り出される。
しかし、私たちの足よりも早くバダップの元にたどり着いた者がいた。
エスカバ……! てことは……!
二人が向き合ってボールを蹴り合い、時空が歪む。
『『キラーフィールズV 3』!!』
「しまった! ……がっ!?」
「くっ!」
「ゴホッ!?」
「うわぁぁっ!」
あわやスライディングが届く、と思ったところで、私たちは逆に時空の波によって押し返され、洗濯機みたいにかき回されたあと吹き飛ばされた。
っ……エスカバが来れた理由なんて知れてる。四人外れることでカテナチオカウンターが崩壊する一瞬を狙ってたんだ。
上の上をいかれた。
なんという戦略力。
バダップはそのまま押し進み、空中でボールをひねる。
同時に螺旋状に赤い風が渦巻き、巨大なドリルが射出された。
「『デススピアー』!!」
万事休す。
今の円堂君ではデスブレイクはおろかデススピアーでさえも止められない。
サポートもこの位置からじゃ無理だ。
私はただ黙って、槍がゴールに向かっていくのを見届け……その先に山が出現した。
「『ザ・マウンテンV3』!」
「無駄だ!」
「ぐっ……ごわぁぁぁっ!!」
壁山が食い止められたのは数秒だけ。
デススピアーの穂先は容赦なく山に大穴を空け、その時の衝撃波で壁山が倒れる。
「『真空魔V3』!」
さらに飛鷹が足を振り抜き、空間を切り裂いた。
壊れた空間は足りないものを補おうとする様に大気を急激な速度で飲み込んでいく。そしてその標的はデススピアーにまで及んでいる。
だけど、エネルギーはまだあちらの方が上だった。デススピアーは空いた空間と激突し、その膨大なエネルギーを持って強引に裂け目を消し飛ばしてしまう。
二人によるシュートブロック。
でもまだ足りない。今のデススピアーから感じられるエネルギーでも、ゴッドキャッチ以上に感じられる。
その時、ゴール前からより巨大なエネルギーが、落雷とともに発生した。
その発生源は円堂君。背後に控える雷神は、しかし今まで見たもの以上の輝きと圧を放っている。
「壁山たちが繋いだバトン……途切れさせるわけにはいかないんだ!」
円堂君はそう叫んで、両手を突き出した。
「『ゴッドキャッチG3』!!」
雷神の手と衝突した時、赤い槍は初めてその速度を停止させた。
槍は超高速で螺旋回転を続け、黄金の皮膚が溢れていく。
しかしそれは心部には至っていない。
槍はそれでも回転し続け、その代償に自らを構成する赤いエネルギーが霧散していく。
それでも両手は崩れない。
やがて燃料となるエネルギーをなくし、槍の回転数は徐々に落ちていく。
そしてそれがゼロになった時、円堂君の手にボールが収まった。
「な……なぜだ!? 明らかに今までのお前たちでは止められなかった! いったい何をした!?」
「なんだ……? さっきから力が湧いてくる……」
言われてみれば……私の超能力も回復してきてるような気がする。
てっきり円堂君も超能力に覚醒したのかと思ったけど、そうではないらしい。円堂君の言うように、力が湧いてくると感じる人がちらほら現れ始めたからだ。
こんないっぺんに超能力者が出てたまるか。
それに力が湧くと言っても、神のアクアみたいに外側から無理やり体を変えられる感じじゃない。内側から慣れしたんだエネルギーが増幅してるみたいだ。
ほのかに暖かいこれは間違いなく私が普段使ってるエネルギーだ。
その総量が急に増えたという感じ。
なんにせよ、チャンスだ。
「なえ、フィディオぉぉぉっ!!」
円堂君が振動するほど大地を踏み締め、体全てを使ってボールを投げた。
グングンと伸びていき、センターラインを通過。
カウンターのために動いていた私の胸に落ちる。
もちろん私を潰すためにオーガも動き出す。
三人ものディフェンスが取り囲んでくる。
だけど、動いたのは私だけじゃないんだよ?
「フィディオ!」
「よしきた!」
ディフェンスの間を縫うようにダイレクトでパスを出し合う。見事なワンツーが決まった。
だけどまだペナルティエリア手前。そこにもディフェンスはいる。
大根みたいな白い肌と髪をした巨漢だ。それがオーラをみなぎらせながら近づいてくる。
「『真パワーチャージ』!」
まるでトラックか何かだね。
ぶつかったら無事では済まなそうだ。
だけど私は何も心配していなかった。
笑みを浮かべながら指をチョンチョンと下に向ける。
それに釣られて私の足元を見て、彼は驚愕とともに急ブレーキした。
私はボールを持ってはいなかった。
代わりに背後から掛け声が聞こえる。
「「「『グランドファイアG3』!!」」」
豪炎寺君、虎丸、ヒロトが炎を纏いながらバックパスを撃ち返した。
こっちも円堂君同様進化してる。その熱は背後からでもジリジリと感じられる。
だけどまだ終わらないよ。
私たちは大根の人を追い抜くと、二重に重なった魔法陣を出現させる。そして背後から迫り来る炎に合わせて、ボールを蹴る。
「「『グランドクロス』!!」」
——シュートチェイン。
十字の斬撃は炎を纏い、フィールドを焦がし尽くしながらゴールに迫っていく。
金と桃と赤。
三色で彩られたそれは、撃った私でさえ見惚れてしまうほどに幻想的だ。
シュートブロックはない。
必殺技を出そうとした瞬間に彼らは炎に抱きつかれ、次々と倒れ伏していく。
このままゴールごと燃やし尽くす——そう確信した時、ゴールから耳を引き裂くような落雷が落ちた。
円堂君じゃない。
金ではなく、青色の雷。
それがキーパーの両手に抱えたものから発せられ、ペナルティエリア全体を照らしている。
その手にあったもの。
それは、それぞれ額に+と-の文字が描かれた、小鬼のように小さなディフェンスたちだった。
彼らとキーパー。それぞれのエネルギーが完全に融合して、凄まじい量の電気を生み出しているんだ。
「ここで終わらせるわけにゃ……いかねぇぇぇっ!!」
「ゲゲゲッ!」
「ブブブッ!」
キーパーは限界いっぱいまで両腕を引き伸ばし——二人の頭を叩きつける。
瞬間、失明しそうなほどの青光とともに、ペナルティエリア全体を覆ってしまいそうなほどの電磁バリアが張られた。
「『ハイボルテージG5』ッ!!」
『うっ、ガァァァァァァッ!?』
十字の斬撃は、蝋燭に息を吹きかけるように一瞬で消え去った。
閃光爆発。
バジジィィッ! という音を立てながらボールは黒焦げになり、大きく跳ね返される。
同時に私たちも電撃を受け、ペナルティエリア外に弾き飛ばされた。
ボール は高く、高く空を飛んでいく。
その落下地点は——ッ!
背筋がゾッとした。
バダップ、ミストレ、エスカバ。
三人が揃っている場所に、ボール は向かっていた。
動け、動け動け動けぇぇ……っ!
必死に命令を繰り返し、手足に力を込める。
しかしピクリとも動かない。
さっきの電撃……!
おそらくそれで、体中が麻痺してしまっているんだ。
立て! 立って、お願いだから! ここで渡すわけにはいかないの!
世界がスローモーションに変わる。
まるで私たちをあざ笑うかのように、ゆっくり、ゆっくりとボールが落ちていく。
そして、バダップの足がそれに触れた。
「さらばだ。白兎屋なえ……円堂守……そしてイナズマジャパンッ!」
「「「『デスブレイク』ッ!!」」」
あ、あぁ……。
棘の生えたボールが地面に落とされると同時に高速回転し、赤黒いトルネードを引き起こす。
それは前にあるもの全てを飲み込んだ。地面も、選手も、観客席でさえも。そしてあらゆるものを粉砕し、そのまま突き進んでいく。
誰にも止めることができない。
最強最悪のシュート。
あらんかぎりの声で、私は叫んだ。
「避けて円堂君ッ! 避けてェェェェッ!!」
「……いいや、逃げない!」
円堂君はきっぱりと、そう言った。
その目に迷いは微塵もない。目に炎を宿し、迫り来る厄災、その奥底に隠されたボールを睨み続ける。
彼は本気で、この厄災に立ち向かおうとしている。
涙交じりに彼を見つめて、気づいた。
……笑っている?
「俺さ、スッゲーこえーけど、同じくらいスッゲーワクワクしてるんだ! こいつのシュートを止めたらどんなに気持ちいいだろうかってさ!」
っ……そうか、そうだよね。
君はそういう男だ。
だったら私は信じて見届けよう。君のその姿を。
世界最高のサッカーバカの勇姿を。
その時だった。
円堂君からグラウンド全てを照らすほどの、黄金の光が発せられた。
暖かい。
痺れはいつの間にか消えていた。私だけでなく、倒れ伏していたみんなも立ち上がり始める。
「円堂君!」
『円堂っ!!』
『キャプテンっ!!』
「バダップ! お前がサッカーのせいで辛い目にあったのはわかった! だから俺が受け止めてやる! 俺が本当のサッカーをお前に教えてやる!」
「っ、知ったことを、言うなァァァァッ!!」
デスブレイクのオーラが増す。
円堂君は右手を天に掲げた。
そこに黄金のエネルギーが集まり、巨大な手を作り出す。
それはゴッドハンドに限りなく似ていた。しかし全く違う。
違っていた点。それは右手がゴールを覆い尽くすだけでは足りず、スタジアムの天井にまで届きそうなほど巨大化していること。
その光景には一種の神秘さがあった。
黄金の手から感じられる凄まじいエネルギーに、私の心が歓喜で震える。
ああ、円堂君。 君って人は本当に……!
「未来に届け!」
——『オメガ・ザ・ハンド』ッ!!
神の手と死の竜巻が激突。
一瞬、世界から色と音が消えた。
全てが真っ白。
全てが静寂。
その世界が元に戻ったのは、溢れるエネルギーが大地を割った時。
信じられないことに、神の手は竜巻と拮抗していた。
私たちも唖然としているが、一番ショックを受けているのはバダップみたい。
彼は見たこともないほど目を見開いている。
「なっ……なぜだ……!?」
『これは……『時空の共鳴現象』かっ! こんな時に……っ!』
「ヒビキ提督、なにが起こっているんですか!?」
『『時空の共鳴現象』。通常未来は一つだけだが、分岐する時がある。そう、タイムトラベルだ。今回お前たちが過去に干渉したことで運命の束は崩れ、無数のパラレルワールドが発生した』
「それがなんだと言うんです!?」
『……つまり、同じ時間軸に無数の同一人物が世界を隔てて存在することとなる。そいつらが互いに共鳴し合って、通常以上の能力を引き出しておるのだ』
「なんだと……!」
……?
どうやらバダップは、あの急激なパワーアップの正体を知ったようだ。おそらくあの耳についている機械で聞いたのだろう。
バダップは認められないというように円堂君を睨み、叫ぶ。
それはまるで世界の理不尽さに絶望したかのような声色だった。
「俺たちの世界は散々だったっ! サッカー、サッカー、サッカーっ! 誰もが気が狂ったように叫び、何十億もの人間が死に絶えたっ! 父も母もだっ!!」
竜巻から黒い電撃が無差別に発せられ、地面を、観客席を破壊していく。
それは円堂君のもとにも降り注いだ。
黒煙が舞う。
しかし無傷。
周囲の地面がクレーターとなるが、彼の体は黄金のオーラで守られ、傷ひとつついていない。
「なら、俺たちが変える! そんな未来が来ないように、俺たちがしてみせる!」
「戯言をっ!」
「やってみなくちゃわかんねえだろ!」
「っ……円堂ォォォォォッ!!」
「バダップゥゥゥゥッ!!」
二人の叫びに呼応して、衝突の激しさが一段と増す。
その凄まじいエネルギーの放出により、空は昼と夜を繰り返し、空間は歪み始める。
だが、転機が訪れる。
神の手が包み隠すように、竜巻を握り潰したのだ。
指と指の間から黒雷が暴れ狂う。
神の手も必死に食らいつく。
そして数十秒の攻防の末、拳の中から悪魔の断末魔を思わせるような、ひどくおぞましい叫び声が聞こえ——黄金の光が、世界に満ちた。
まぶたの上から強烈な熱を感じる。
それが薄れてきて、恐る恐る目を開ける。
そこには——ボロボロになりながらも、突き出した片手でボールを掴んでいる円堂君がいた。
「ハ……ハハっ」
やっぱり……円堂君はすごいなぁ。
「やった。やったぞぉぉぉぉーーーっ!!」
ブンブンとボールを振り回す様はまるで子どもだ。
……いや、子どもだから止められたのかもね。
人間というのは諦めて進んでいく生き物だ。
能力には限界がある。だからこそ他を諦めて少ないことにエネルギーを注いでいく。それが大人になるということ。
でも、逆に言えば子どもは無限の可能性を秘めている。
身体的な話じゃないのだ。精神面でもそれは同じ。
最後の最後で、私は逃げろと言ってしまった。
円堂君は逃げないと言った。
その差がこれだ。
私は諦めてしまった。
円堂君は諦めなかった。
ああ……悔しいなぁ。実に悔しい。
まさかサッカーへの愛情で私が完全敗北しちゃうとはね。
悔しすぎて、過去に戻れたら数分前の私を半殺しにしてあげたいほど悔しい。
だから、次は負けないよ。
サッカーへの思いなら誰にも負けない。
それこそがこの私『白兎屋なえ』なんだから。
そのためにも、私は生きる必要がある。
「円堂君」
「ん、なんだ?」
「……行こうっ!」
頭に浮かんだいろんな言葉を飲み込む。
今はこの一言で十分だ。
「ああ! ——みんなぁぁーー!! 『サッカーやろうぜ』ぇぇぇっ!!」
『おうっ!!』
円堂君の声は波動となってフィールド全体に広がった。
その声に火がつく。
私たちのイナズマ魂に。
同時に凄まじい力が心の奥底から湧いてきた。
傷も癒えた。体力も戻っている。
見渡せば、みんなにも同じ現象が起きているようだ。
あれだけ苦しそうにしていたのに、次々と立ち上がり始めている。
もう倒れている者はいない。
全員がイナズマのオーラを纏いながら、円堂君を真ん中に私たちは駆け出した。
「これは……全員上がってくるだと……!?」
「みんなで攻めてみんなで守る! それが俺たちのサッカーだ!」
走る走る。
後のことなんて考えない。
全員が同じ気持ちだった。そして全員が同じ方向に疾走している。
上から見たらさぞ爽快なことだろう。
私たちは戦場の兵士の如く、押し寄せる波の如く土煙をあげながら攻めていった。
「運命が俺たちを拒むというのなら! その運命ごと食い尽くしてやる! 俺たちは負けん!」
オーガの士気も最高潮だ。
喉が引き裂けそうなほどの雄叫びをあげ、獣のように迫ってくる。
そしてラストプレイが始まった。
「壁山!」
「飛鷹さん!」
「虎丸!」
「吹雪さん!」
襲い掛かるオーガたちの牙を避け、パスが繋がっていく。
「綱海君!」
「ヒロト!」
「鬼道君!」
「豪炎寺!」
繋がる。
みんなの思いが、魂が繋がっていく。
円堂君から始まったパスのバトンは、繋がっていくたびに緑色の輝きを増していく。
まるでみんなの魂が注入されるように。
それは偶然か、パスの軌道はフィールドにあるものを描いていた。空から見下ろせば、よく見えるだろう。
彼らをつなぐ、イナズマシンボルが。
もしここに未来でマスター・Dと呼ばれる老人がいたのなら、この光景をこう呼んだはずだ。
——必殺技タクティクス『グランドラスター』と。
「フィディオ、円堂、なえっ!」
そして豪炎寺から蹴り上げられたボールを、胸で受け止めた。
瞬間、緑色の雷がスパークする。
伝わってるよ……みんなのこの思い。
いや、ここにいる十一人だけじゃない。
不動たちベンチのメンバー。
そして世界を超えて無数に繋がる、無限の私たち。
それら全ての魂がこのボールに集束している。
ボールからは様々な感情が感じられる。
暖かく、激しく、厳しく、甘く。
楽しいこと。
辛いこと。
一見何気ないように思えること。
それら全てが今の絆を形作っている。
「円堂君、フィディオ」
ずっとずっと、言いたかったことがあった。
私はほおを若干赤くし、はにかむ。
しかし次の瞬間にニッと笑う。
「その……ありがとう!」
「ふふっ、当たり前だろ」
「だって俺たち」
『——仲間だろ!』
緑色の球体が天高く昇っていき、塔となる。
その頂上ではみんなの魂が一つになった球体が、風船を膨らませるようにどんどん大きくなっていく。やがてそれはスタジアムの空全てを覆うほどにまでなる。
膨大なエネルギーはそれだけで天気すら変化させる。雲を一気に吹き飛ばし、暖かな日の光柱が何本もグラウンドに差し込む。
私たちはその球体の真上にいた。
互いに手を繋ぎ、一筋の隕石となって急降下。球体のエネルギーの中に潜り込み、その奥で輝くボールを同時に蹴った。
「『ジ・アースッ——!!」
『——
みんなの声が重なって聞こえた。
瞬間、球体のエネルギーは大きく振動し、オーガのゴールに向かって超極太のレーザーを発射する。
大地が震え、空間が悲鳴をあげる。地球すら破壊できてしまうのではないかと錯覚するほどのエネルギーを私は感じた。
「止めろっ! 止めろぉぉぉーーーっ!!」
『ガァァーーーーッ!!』
オーガの選手たちは食らいつくように閃光に飛びついていき、次々と飲まれていった。その光景を見ても、他の選手たちに怯えはない。獣のような雄叫びをあげ、火の中に飛び込むように突進していき、全員光に消えていく。
「『ハイボルテージG5』ッ!! ウゴォォォーーッ!!」
先ほどシュートを止めた電磁バリアが張られる。
だが閃光は止まらない。まもなくバリアには特大の大穴が空き、キーパーは両手に持ったディフェンスごと飲まれていった。
そしてレーザーがゴールネットを貫く——その数秒前に、三つの足がゴールラインの前に差し込まれる。
『『デス……ブレイク』ッ!!』
「バダップ!?」
「俺は負けられない……負けられないんだァァッ!!」
バダップたちの足からはおびただしいほどの血が流れていた。
もう立つこともできそうにない。それなのに彼らは血反吐を吐きながら、歯を食いしばって必死に閃光に食らいつく。
その決死の姿に、迷いなく閃光に飲まれていった選手たちの姿が思い浮かぶ。
貴方たちにも守るべきものがある。
そんなことはわかってるさ。
だけど、だけどそれでも私は——。
「私はみんなと、生きたいんだァァァァッ!!」
「ッ!?」
私の叫びがスイッチとなり、閃光はさらに勢いを増した。
バダップたちもこれには耐えきれない。
一人、また一人と弾き飛ばされていき——。
「未来を救うのは、俺たちなんだァァ!!」
バダップの姿を飲み、ゴールは消し飛んでいった。
『時空の共鳴現象』
イナイレGO2で出た概念。簡単に説明するとタイムトリップで未来を変えようとすると、敵が強くなる。GO2での円堂はこの現象のおかげでサッカー部創設前なのにも関わらずゴッドハンドが使えたり、化身も出せたりした。
個人的には世界の修正力的なものとして考えてます。哀れバダップ。