悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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 前話でディバインアローの進化を間違ってV進化の方にしてしまったため、修正しました。正しくはディバインアロー改です。

 あと、余談ですがこの作品が日間ランキング14位に入っているのが確認できました。これからもよろしくお願いします。


勝者の雑談

 帝国との試合が終わったあと、私と世宇子の選手たちはゼウススタジアムに戻ってきていた。

 

 そして私とアフロディだけが、メインコントロールルームに呼び出されていた。

 部屋の奥の椅子に腰かけているのはもちろん我らがボスである総帥だ。

 

「さて、これが貴様ら世宇子の初試合だったわけだが、どうだったかね?」

「まるで虫けらのようでしたね。お話になりませんよ」

「フフフ、そうか……」

 

 アフロディの言葉に、総帥は満足そうにうなずく。

 

 帝国の選手たちはあの試合のあと、ほぼ全員が病院送りになったそうだ。

 運良く軽傷だったのはキャプテンである鬼道君のみ。

 それ以外は軒並み重症で、特に源田は酷いらしい。

 

 まあ彼、私の本気のシュートに直撃してたからね。

 でも罪悪感というものは湧かなかった。

 

 この世は弱肉強食。

 彼らは弱かったから、怪我をして負けたのだ。

 サッカーとはそういうものだと、私は思っている。

 

「さて、貴様にも聞きたいことがある」

「えー、鬼道君たちの感想? 源田が予想以上に頑張ってたね」

「違う。貴様の感想などどうでもいい」

「ひ、酷い!」

 

 アフロディには聞いておいて私のは要らないのかよ!

 ほんと腹立つなぁ! 

 これはパワハラだ! 今こそ抗議するとき! 

 私は力強い目線を総帥に向けた。

 

「貴様が壊したゴールと観客席に対する言い訳を聞きたいのだが?」

「まっことに申しわけございませんでしたぁ!」

 

 ダイビング土下座! 

 やっぱ逆らうもんじゃないわ!

 誰だよ抗議とか言ったやつ!? 

 

「修理代は貴様の給料から引かせてもらうとしよう」

「そんな、あんまりだよ! 夏コミが近いのに!」

 

 観客席とゴールだなんて、修理に何百万かかることやら……。

 最悪、今月の給料が諭吉数枚になってしまうかもしれない。

 それだけは避けなくては。

 

 でも、中々良い言い訳が出てこない。

 くそっ、なんで試合に勝ったのにこんな目に……。

 そもそもゴールが壊れるのが悪いんだよ! 

 

 ん……? ゴールが悪い? 

 そこまで思考したところで、私はある結論に思い至った。

 

「総帥、そもそもあんなやわいゴールを使ってるのが間違いなんじゃないですか?」

 

 逆に総帥に聞き返してみる。

 ズバリ、悪いのは私じゃなくてそもそも壊れたゴールなんじゃないか説だ。

 

「あれは去年の大会でも使われた、整備が完全に整っているゴールだ」

「いや整備とかそういうのじゃなくて、そもそも材質が悪いんだよ! 神のアクアで強化された人間のシュートを、たかがスチール製のゴールが耐えられると思う?」

「……」

 

 私の一見めちゃくちゃな、それでも的を得ている言葉に、総帥は沈黙で返してきた。

 これはあれだ、意地になってるね。

 私の言っていることが正しいと認めるのが癪だと。……子供か! 

 

 あとひと押し、あとひと押しなんだよなぁ。

 そう思っていると、となりに立っていたアフロディが口を開いた。

 

「お言葉ですが総帥、なえの言ってることは正しいと思います。僕も練習中にゴールを何回も壊していますし……」

「……なるほど、そういうことなら仕方がない。すぐに現モデルよりはるかに頑丈なゴールを作らせ、サッカー協会に提供しよう」

 

 おお、ナイスアフロディ! さすが神サマ! 

 でも付き合いの長い私よりアフロディの言葉でうなずくのはどうなのよ? 納得できないわー。

 ともあれ、これで減給は免れた。

 だがほおの緩んだ私を見て、総帥はとんでもないことを言い出す。

 

「開発費は貴様の給料から出すとしよう」

「嘘ぉ!? なんで!?」

 

 その後は抗議しても、取りつく島もなかった。

 こうなったらと、アフロディに目線を送る。

 彼はしばらく私と見つめ合ったあと、気まずそうに顔を背けた。

 

 頼みますからこっち見てー!

 そんな「僕にはどうしようもない」みたいな顔しないで! 

 

 ……ああ、終わった……。

 試合は勝利で終わったはずなのに、なぜか私の心には虚無感しか残っていなかった。

 ブラック企業死ね! 

 

 

 ♦︎

 

 

「はぁ、なんで私ばっかり……」

「そんなにため息ばっかりついていると、幸運が逃げてしまうよ?」

 

 自室でがっくりとなえはうな垂れる。

 彼女の財布事情がどうなっているかアフロディには分からないが、彼にできるのは落ち込むなえをなだめることだけだった。

 というのも、なえとアフロディでは立場がそもそも違うのだ。

 

 アフロディたち世宇子の選手は、影山によって才能があると認められて全国から集められた孤児だ。

 幼少期より影山支配下のサッカークラブに入れられ、厳しい特訓を耐え抜いてきた、いわば精鋭といっても過言ではないだろう。

 そして今は私立世宇子中学校という、影山が掌握している学校に通う身となっている。

 

 対してなえは、影山直属の配下だ。

 サッカーしかできないアフロディたちとは違って、様々な裏の任務を遂行する暗部に所属している。

 

 そういうわけで、同じ人物の下には着いているものの、別々の組織に所属しているアフロディとなえはお互いの事情を詳しくは知らない。

 そもそも初めて会ったのも中学に上がったときなので、付き合いが短いというのもあるが。

 

「ん、なーに? 顔になんかついてる?」

「……いや、ただ髪がまた荒れてるなって思っただけさ」

「いーよ髪くらい。サッカーには必要ないんだから」

「君は女の子なんだから髪を大切にしなくちゃ。ほら、整えてあげるよ」

「えぇ……めんどくさい……」

 

 渋る彼女を無理やり鏡の前に座らせて、アフロディはクシを取り出す。

 それでゆっくりと、丁寧な手つきで髪をすいた。

 

 なえはサッカーにしか興味がなく、オシャレにはこだわらない。

 ゆえに彼女の髪の手入れは雑で、よく跳ねてしまっている。

 アフロディが慣れた手つきなのは、よく彼女の髪を整えてあげているからだ。

 

 この様子を見てわかる通り、なえとアフロディの関係は良い方だ。

 最初は世宇子のキャプテンを巡って一悶着あったが、今ではお互いを認め合って友人として接している。

 

 昔のことを考えていると、なえの髪の手入れが終わった。

 鏡に映った彼女の髪はどことなく艶が増し、ピンク色がいつもより明るく見える。

 

「ほら、終わったよ」

「わーい! アフロディお姉ちゃんありがとー!」

「僕は男だ!」

 

 思わず叫んでしまった。

 たしかにアフロディは女性に間違えられるほど整った顔立ちをしている。しかし決して男であることを捨てているわけではない。

 彼女もそれを知っているのだろう。

 なえはニヤニヤと、人をからかうような笑みを浮かべている。

 

「……ん? あれはなんだい?」

 

 その視線に耐えられなくなって顔を背けると、壁に何枚かの写真が画鋲で止めてあるのを見つけた。

 

 だいたいは有名なサッカープレイヤーだ。

 彼らの顔には赤い色でバツが引かれており、まるで捕まえられた指名手配犯を記しているように見える。

 その中には前試合で倒した帝国の鬼道のものもあった。

 

「あーこれ? これは標的ってやつだよ。といっても有名どころはほぼ倒しちゃったんだけどね」

 

 彼女の言う通り、貼り付けられた写真でバツ印が引かれていないものは少なかった。

 アフロディはその中の一つである、オレンジ色のバンダナを巻いた少年に興味を持つ。

 

 知らない選手だ。

 少なくとも去年のフットボールフロンティアで見かけることはなかった。

 

「彼は誰なんだい?」

「これは円堂君だよ。雷門のキャプテン。決勝で絶対に戦うと思うし、アフロディも覚えておいたほうがいいよ」

「雷門……総帥が気にしているチームか。でも、本当に決勝まで上がってくるのかい?」

「断言できるよ」

 

 そう言ってみせた彼女の目は真剣だった。

 本当に雷門が勝ち上がってくると確信しているのがわかる。

 

 そんななえの様子に、アフロディは少し驚いた。

 なえがそのように他人を評価することなど、一度もなかったからだ。

 

 改めて円堂という選手の写真に目を向ける。

 自分よりも上の相手にそこまで言わしめる選手。

 

 ——少し、興味が湧いてきたね。

 

 いいことを思いついたというように、アフロディはなえに見えないところで密かに笑みを浮かべた。




 イナイレのゴールってほんと謎ですよね……。
 破壊されたかと思えば、次の回では普通にそのシュートを受け止めたり。
 やっぱりゴールも進化してるってことなんでしょうか。
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