悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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調教パーティ

 急なデザームの来襲から、一週間ほど。

 この間に、ビッグニュースが二つもあった。

 

 一つはなんと、雷門中がとうとうエイリア学園ジェミニストームを打ち破ったこと。

 このときばかりは私も特訓を中止して、テレビに食い入って見ていたものだ。

 実に魂を揺さぶられる、いい試合だった。

 特にすごかったのが雷門が誇るツートップ、染岡と吹雪ことシロウの活躍だった。

 

 なんでシロウが雷門中に? と思うかもしれないが、それは雷門が新しいフォワードを求めて北海道にやって来たからだ。

 どうやら情報によると、あの豪炎寺君がチームから離れてしまったらしい。

 彼ほどの人物が離れるとなると、かなり込み入った事情がありそうだが、あいにくと私はここまでしか調べていない。

 

 それで補充したシロウと染岡のシュートが、エイリアゴールに炸裂しまくったのだ。

 やっぱり雷門の成長速度は凄まじい。負けていられないね。

 

 そんで、二つ目が、この地下修練場の特訓コースを全てコンプリートしたということだ。

 これによって、私の約一ヶ月にも渡る地下生活は終わりを迎えることとなった。

 もう荷物もたたみ終わったので、今から真・帝国学園に戻るつもりだ。

 

 エレベーターから降りて、施設の外に出たとき、突き刺すような日光に思わずうなってしまった。

 ぐっ、久しぶりの外だな……まぶしい……。

 暖かい日の光とさわやかな風に触れ、しみじみと感じ入る。

 

 だけど、いつまでも余韻に浸っていはいられない。

 目が慣れてきたのを頃合いに、私は黒服たちについていって遊園地を出て、車に乗り込み、真・帝国学園を目指した。

 

 

 ♦︎

 

 

「……帰ってきたか」

「はいはい帰ってきたよー。総帥は私がいなくて寂しかった?」

「貴様がいない平穏に寂しさを感じているな」

「うわっ、容赦ない。もうちょっとこう、頑張った弟子を褒めるような言葉はないの?」

「あると思うか?」

「そこはもちろん」

「ないな」

「デスヨネー」

 

 久しぶりに会話したけど、相変わらず嫌な性格してるよ。

 

 私は真・帝国学園のメインコントロールルームにて、一ヶ月ぶりに総帥と顔を合わせていた。

 となりには不動もいる。

 

「さて、貴様の強化が終わると同時に、エイリア学園からも命令があった。雷門を潰せとな」

「へっ、ようやくかよ。たのしみだぜぇ、雷門と戦うのがよぉ!」

「うん? 不動ってそんなに雷門に興味があったっけ?」

「俺が会いてぇのは、あの鬼道有人だ。なんせうちにはスペシャルゲストがいるからな。そいつらと引き合わせたとき、どんな顔をするのかが楽しみで眠れねぇよ!」

「うわぁ、趣味悪っ」

 

 なんか幻想殺しが出てくるラノベ原作のアニメ並みに顔が凄まじいことになってるぞ。

 さすが顔芸バナナ。見事なキチっぷりである。

 

 一人で盛り上がって顔面崩壊してる人を置いて、話は進んでいく。

 

「現在、雷門は漫遊寺中に向かっている。その間にチームの調整をしろ。以上だ」

 

 総帥はそれだけ言うと私たちに背を向け、ディスプレイと対峙したまま動かなくなった。

 

 漫遊寺といえばサッカー業界に詳しい者でなければわからないほど、知られていない学校だ。

 その実力は、十分FF優勝を狙えるほど言っておこう。

 マイナーな表現では、表の王者が帝国、裏が漫遊寺とも称されることもある。

 だけど、彼らにとってサッカーとは自分を鍛えるものであって、他者と争うためではないという考えのため、FFを含め大会には参加していない。

 それが知られていない理由である。

 

 正直もったいないとは思う。

 サッカーは自分の魂と相手の魂を、命がけでぶつけ合うことこそが醍醐味なのに。

 彼らがやってるのはまるで、イチゴが乗っていないショートケーキを食べるようなものだ。

 

 だけどまあ、そんな彼らでも今度こそは嫌でも戦うことになるかもしれないけどね。

 つい最近、漫遊寺にはエイリア学園イプシロンからの宣戦布告があったそうだ。

 イプシロン、そうデザームのチームである。

 

 この前いっしょにサッカーやってわかったけど、デザームは私によく似ている。

 もちろん顔のことではない。サッカーへの接し方だ。

 あいつからは、熱を感じた。

 私と同じ、サッカーに命をかけていると思えるほどの情熱を。

 私たちは強者との戦いを好む。

 漫遊寺を選んだのも、そういう理由だからこそだろう。

 そしてあいつはたぶん、目的のためなら手段を選ばないタイプでもある。

 もし漫遊寺が試合を断ったら……何をしてでも試合を受けさせるだろう。

 少なくとも、私ならエイリアボールで校舎を一つか二つぶっ壊して相手を煽る。

 

 まあその話はここまでにしといて、来るであろう決戦の前に準備を整えておかなければならない。すなわちチームの調整だ。

 でもなぁ……。

 ちらりと不動を見る。あの顔芸はいつのまにか収まっていた。

 

 信じられます? 

 こいつ、これでも真・帝国メンバーの中じゃ源田と佐久間を抜いて、一番まともなんだぜ?

 いや、今は佐久間もラリってるからわからないぞ。

 ともかくこの情報を聞くだけで、私が指揮取りたくなくなってくる気持ちもわかるだろう。

 

「んで、どうすんだ? 言っとくが、あいつらをまとめんのは一筋縄じゃいかねえぞ」

 

 お前が集めたんだろうがニワトリ頭。

 

 不動もそれを察していたのか、訊いてくる。

 チームとしての理想は雷門のように、絆で繋がることだけど、あいにくと私たちには時間はない。

 ならばどうやって問題児どもをまとめるか。

 ……はぁ、しょうがない。ここはもっと単純な方法でやるとしよう。

 私はあまり好きじゃないんだけどね。

 

 

 その後、メンバー全員をグラウンドに集めたんだけど、物の見事に全員がやりたいことをやっていた。

 一部はDSで遊んでる始末だ。

 

 だから、手初めに適当な一人に向かってシュートを撃った。

 

「ごがっ!?」

 

 うんうん、十メートルぐらいかな。ボールを腹部にもらい、無様に吹っ飛んだのは前に私にいち早く突っかかってきた弥谷という男だった。

 バックスピンをかけていたので、ボールはコロコロと私のもとへ戻ってくる。

 その瞬間、私を除いた全員が凍りつく。

 

「はいはーい! それじゃあみんな注目したところで、チームのルールってやつをまずは決めちゃいましょー!」

「ルールだぁ? んなもん誰が従うか!」

「はいそこ黙れよ」

 

 意見した巨漢——郷院の顔面に先ほど同様ボールをぶち込み、口を閉じさせる。

 郷院は鼻から血を流しながらその場にうずくまった。

 

「残念ながら、あなたたちに発言権はないよ? 次文句言ってきたら本気でぶっ潰すからね」

 

 これは彼らへの脅しだ。

 まじめに考えて、この人格破綻者だらけのチームが自然にまとまるはずがない。それぞれの個性が強すぎるからだ。

 でも、もしそこに彼らが霞むような巨大な力を投入したら? 

 ムッソリーニ、ヒトラー。歴史上の巨悪はいつだって、第三者から見れば明らかに悪であるにもかかわらず、強大な軍を従えることができた。それはなぜか? 

 答えは恐怖だ。

 圧倒的恐怖で反抗する者たちを片っ端から押さえつけたからだ。

 最初は不満があるかもしれないが、人はやがて慣れるものだ。

 そしてこの状況に慣れてしまえば、誰も逆らう気なんてなくなる。

 そう、私が今からするのは悪党の代名詞……恐怖政治だ。

 

「おっかねぇなぁおい! いい顔してるぜぇ!?」

「まずは礼儀を叩き込む必要がありそうだね。……不動」

「あいあいさー……っとぉ!」

 

 私から受け取ったボールを、不動はさっきの私みたいに適当なやつへ向かってシュートした。また一人が吹っ飛ぶ。

 跳ね返ったボールを、不動は弄ぶかのようにリフティングでキープする。

 

「今からゲームをしてあげるよ。ルールは簡単、私と不動からボールを奪うだけ。それができたら私はあなたたちにもう命令はしない。キャプテンの権限だってあげちゃうよ」

「ただし、負けた場合は服従だ! もっとも、終わるころには逆らう気なんざ起きねえだろうがなぁ!?」

 

 もちろんエイリアボールは使わない。

 あれはグラウンドの外に放り投げてある。

 さあ、特訓の成果を見せようじゃんか! 

 

「キラースライド!」

「はい、ざんねーん」

 

 竺和だったっけか?

 ディフェンスが繰り出したスライディングを軽々と避け、空中からその顔面にボールを叩き込んでやった。

 

「なめるな! サイク——ぐがっ!?」

「遅い」

 

 不意を突こうと、帯屋というディフェンスが足を振り上げて風を起こそうとしたけど、その前にシュートを腹に入れてやった。

 それだけでは済ませず、一瞬で懐に侵入して、ボールごしに後ろ蹴りを叩き込む。

 

「真ジャッジスルー」

「がハァッ!!」

 

 帯屋は口から空気を吐き出しながら、派手に地面に転がる。

 

「ほいパス」

「おらおら、来ねぇのかぁおい? 来ねぇなら、こっちからいくぜぇ!」

「ひっ……!?」

 

 言葉とは裏腹に、不動が繰り出したのはパスだった。

 戸惑いながらも、彼の目の前に立っていた目座はそれを胸で受け取る。

 しかし、ここからが不動の本領だ。

 

「ジャッジスルー2! ヒャハハハハッ!!」

「あがっ、おごっ、ぐがっ、がっ……!!」

 

 不動はスライディングの勢いを利用した蹴りを、ボールごしで目座の腹にめり込ませた。

 だが、悪夢はここから始まる。

 まるでマシンガンのように連続で蹴りを、不動は繰り出したのだ。

 目座は口から血を吐き出しながら派手に倒れて、そのまま動かなくなった。

 

 いやぁ、映像で見たとおりだけど、ほんとに酷い技だねありゃ。

 見てるこっちが痛々しくて目を逸らしたくなるよ。

 当の本人はそれを笑いながらやってるせいでさらに凶悪な印象がある。

 さすが、悪魔をも打ち砕くと言われる男だ。

 

 

 その後はまさに、地獄絵図だった。

 逃げ惑う真帝国のメンバーたち。

 だけど事前に総帥には話は通してあり、グラウンドから出れないよう出口を封鎖してもらっている。

 まるで大量の狐を狩る狩人の気分だ。

 そんな彼らに向かってひたすらボールを撃ち込む。泣こうが倒れようがお構いなしだ。

 

 いやー、スッキリ! 

 前回の借りはこれで返せたわけだ。

 特に、最初に突っかかってきたやつらに関しては入念に潰しておいた。

 悲鳴が心を洗い流してくれるよ。あー楽しい。

 不動も大満足だったらしい。

 トサカがいつもよりツヤツヤしてた。

 

 んで、この調教パーティーは私たち以外の全員が気絶するまで続いた。

 とりあえず、今日はこんなところでいいだろう。

 あとは定期的に逆らったやつを見せしめで潰すだけだ。

 それだけで恐怖によって抑圧された、組織的なチームが完成する。

 

 これでも雷門とやりあうには足りないが、そこは私や佐久間、源田の個人技で補うしかないだろう。

 ちなみにうちの司令塔は不動である。

 こいつ、意外にもゲームメイク能力は鬼道君レベルで高いのだ。

 ただ、あの性格からたまに作戦に私情が入っちゃうのが欠点だけど。

 

 そんな風に愉快な動物たちを調教しながら、私は来る日を待つのであった。




 アニメでは出れなかったジャッジスルー2解禁。
 唯一ジャッジスルー3だけ登場できましたが、当時アニメしか見てなかった人は目が点になってたでしょうね。いきなり3だもの。
 まあアレスではジャッジスルーがようやく出てきましたけど。個人的には全体重こめてボールごと相手の腹を押し潰すあっちのモーションの方が好みです。
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