悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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鋼鉄の男『デザーム』

 地下修練場で特訓を始めてから三週間のときが過ぎた。

 そう、今日がイプシロンと戦う約束の日なのだ。

 

 私たちは地下修練場にて彼らを待っていた。

 スマホを見る。残り15秒。……14、13……。

 そしてカウントが0になったと同時に、眩い光が私たちの目を包み込んだ。

 

「時は来た。一ヶ月もやったのだ。どれだけ強くなったのか、見せてもらおうか」

 

 光が消え、代わりに現れたのはイプシロンのメンバー。

 さすが時間に正確な変態。ジャストタイムである。

 

 デザームが腕を振るうと、修練場全体が揺れ始める。

 これは……仕掛けが作動したのか。

 その予想は正しかったようで、デザームについてきた私たちの前にはゴムチップが敷かれた立派なグラウンドが出現していた。

 このグラウンド、普段は地下に隠されているのだ。それを知らなかったみんなは口を開けて驚いている。

 

「我々エイリア学園の強さを、改めて地球の民たちに知らしめるときが来た。この試合を通して、我々に歯向かうことの恐ろしさを噛みしめるがいい」

 

 前回のジェミニの時と同様に今回の試合も全国放送されるらしい。

 デザームはいつの間に用意していたカメラに向かって高々とスピーチを行なっている。

 

 それをしている間に、私たちはベンチで今回の作戦を練ることにした。

 と、その前に。重要なお知らせが一つあったんだ。

 なんとリカが雷門に加わることが決まったのだ。彼女は今背番号7にユニフォームを身に纏っている。

 

「頼りにしてるぜ!」

「任しとき! うちのシュートで宇宙人なんかぶっ飛ばしたるわ!」

 

 なんて力こぶを見せつけるようなしぐさをしてるけど、正直彼女のシュートじゃあのデザームは打ち破れないと見るべきだろう。

 それだけデザームは強い。圧倒的に。

 

 瞳子監督はそれぞれの選手名と配置が描かれたボードを私たちに見せつけてくる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「フォワードは浦部さんとなえさん、吹雪君はディフェンスに回ってちょうだい。この一戦で全てが決まる。この戦いを最後にするのよ」

『はい!』

 

 みんなが返事をする中、シロウだけは声を出していなかったのを私は見逃さなかった。

 瞳子監督のポジション配置は納得できる。

 まずは様子見として、ディフェンスもできる彼を最後の砦に置きたいのだろう。

 だけど今はアツヤの影響で、彼は不安定になってしまっている。

 私が変わってあげるか? いやだめだ。そんなことをしたらアツヤだったら絶対に怒り狂う。

 結局私は、シロウが暴走しないのを祈ることしか出来なかった。

 

 全員が配置につき、ボールがセンターラインに置かれる。

 そしてキックオフ。

 先陣を切ったのは扇風機みたいな頭をした少女、マキュアだ。

 

「いかせないよ! スピニングカットV3!」

 

 まずは挨拶代わりだ。

 衝撃波の壁が発生。

 マキュアは弾かれ、ボールが真上に舞う。

 しかし彼女は受け身を取って体勢を立て直すと、なんと空高く跳躍した。

 そのままオーバーヘッドキックをボールに叩きつける。

 

「メテオシャワー!」

 

 瞬間、ボールが流星群に変化。

 隕石が次々と私たちに降り注いだ。

 

 ちっ、やられた。さすがに一筋縄じゃいかないか。

 私は全部の隕石を避けることには成功したものの、周りにいた塔子やリカたちは巻き込まれて倒れてしまった。

 その隙にマキュアはどんどん前進していく。

 

 だけど彼女の前に風丸が立ちはだかった。

 左右の切り返しでうまく避けようとしてるけど、彼はマキュアの移動コースに先回りして完全に動きを封殺してみせる。

 マキュアは堪えきれなくなったのか、走りこんできているゼルへパスを出した。

 彼はペナルティエリア外にも関わらず、すぐに必殺技の体勢に入る。

 

「ガニメデプロトン!」

 

 かめ●め波じゃねーか!?

 ゼルはどこかで見覚えのあるエネルギーの溜め方をすると、そこからビームのようなものを出した。ボールはもちろんその中である。

 たぶんゼルは前に戦ったときの雷門なら、この距離からでも入ると計算したのだろう。

 だけど、彼はその数式の中に私たちのパワーアップを入れていなかった。

 

「マジン・ザ・ハンド改!」

 

 雷を纏った魔神の張り手が、エネルギー波をあっけなく消し飛ばした。

 ボールは円堂君の手のひらへ。

 ゼルは今起きたことに目を見開いている。

 

「やれる、これなら勝てるぞ……!」

 

 円堂君の勇姿を見て、みんなの雰囲気が明るくなった。

 いいペースだ。気持ちが乗れば試合にも乗りやすくなる。

 

 円堂君からのスローイングはリカへ。

 そのリカから一ノ瀬へ。

 彼はしばらく進むと、ファドラとかいういかにも宇宙人な選手と一対一となる。

 

「フォトンフラッシュ!」

「イリュージョンボ——ぐわっ!」

 

 必殺技同士のぶつかり合いは相手に軍配が上がった。

 一ノ瀬は鬼道君直伝のイリュージョンボールで抜こうとしたけど、それよりも早くファドラから発せられた光が彼の視界を塗り潰したのだ。

 ファドラはボールをマキュアへとパスする。

 その前に私が再び立ち塞がる。

 

「マキュア、学習しないやつって大嫌い」

「じゃあ新必殺技をお披露目してあげるよ!」

 

 体からエネルギーを放出。

 衝撃波じゃだめだ。弾いたあとで拾われてしまう。

 だったら必要なのはボールを離さない粘着力。

 つまるところ、イメージするのは——餅だ!

 

「もちもち黄粉餅ー!」

「きゃっ、……って、そんなのあり!?」

 

 エネルギーで形作った餅をブンブン振り回し、カウボーイのようにボールを確保。餅はその後ボールごと私の頭に乗っかった。

 ふふっ、これぞ私の『もちもち黄粉餅』だ!

 真・帝国対雷門戦でスピニングカットを破られてから、私はその弱点を克服するべく特訓を重ねていたのだ。

 その完成形のビジュアルがこれになったのは、どうしてか私にもわからない。

 

 ともかく、私はマキュアを抜かして前進していく。

 相手のミッド陣は私に追いつけず、置いてけぼりとなった。

 センターディフェンスの二人がそれぞれの必殺技を出そうとする。

 

「アステロイドベルト!」

「グラビテイション!」

「遅い——ライトニングアクセルV3」

『ぐおわぁぁっ!!』

 

 背が高く痩せ果てたような緑髪の男、ケイソンは数十ものを石礫を、ゴーグルのような物をした巨漢タイタンは重力を強める結界を張ろうとした。

 だけど、さらに速くなった私には通じない。

 石礫はジグザグに全て避け、重力フィールドは完成し切る前に勢いで通り抜けた。

 そのときの衝撃波で二人はぶっ飛ぶ。

 

 残すはデザームのみ。

 やつは大胆不敵に笑いながら、シュートが来るのを待ち構えていた。

 

「さあこい! この私を楽しませろ!」

「お望みとあらば!」

 

 宙返りしながらボールを天高く蹴り上げる。

 ボールは黒いオーラを纏い、漆黒の満月へ。

 しかしそのサイズは真・帝国戦のときよりも一段と大きくなっている。

 

「おおっ……! いいぞぉ! さあ、早くそれを私に味わわせろ!」

「闇夜に沈め——真ダークサイドムーンッ!!」

 

 進化した黒月を、奈落の底まで落とす勢いで叩き蹴る。

 対してデザームはいつかのときのように、不気味な光を纏った手で円を描いていき——。

 

「ワームホール!」

 

 あらゆる技を異空間へ放り込む光の網が放たれた。

 黒い月を網は包み込もうとする。

 とたんに凄まじいエネルギー同士がぶつかり合ったことで、火花を通り越してスパークが発生した。

 一進一退。まさに互角。

 

「おおおおおおぉぉぉぉっ……!」

「勝つのは……私だぁぁぁっ!!」

 

 その均衡を破ったのは、私の月だった。

 ブヂブヂッ、と光の網が千切れていく音が聞こえる。

 ワームホールがあまりのエネルギーとそのサイズに耐え切れなくなったんだ。

 次の瞬間、まるで花火のように光の網は弾け飛び——デザームを巻き込んで、月がゴールに刺さった。

 

 得点。雷門の。

 しかもあの、デザームから。

 

「やっ「よっしゃぁぁ! 先制点だ!」……」

 

 嬉しさのあまり柄にもなく叫ぼうとしたけど、その声は円堂君によってかき消された。

 それを皮切りにみんなも大声をあげて喜び合う。

 ……いやまあいいけどさ。別にキャラじゃないし。

 

「よーし、この調子でもう一点決めるぞ!」

 

 もう一点か……それはちょっと厳しそうだよ。

 雷門コートに戻る途中、ふと後ろを振り返る。

 遠く離れていても、デザームの目が刃物のように冷たく、そして炎のように激しく輝いているのが見えた。

 

 私の勘が告げている。

 まだ何かあるぞと。

 それがなんなのかはわからないけど、とてつもなく嫌な予感がする。

 杞憂であればいいけど……。

 

 試合が再開。

 マキュアは私の『もちもち黄粉餅』を警戒してか、私が近づくとすぐにボールをゼルに渡した。

 だけど、周りをよく見るべきだったね。

 右サイドにはフィールドの魔術師、一之瀬がいるのだから。

 

「フレイムダンス!」

「なにっ! ……がはっ!」

 

 彼はブレイクダンスでもするように激しく回転し、炎を発生させる。

 それが鞭となってゼルを弾いた。

 

「なえ!」

「任せて! ——ライトニングアクセルV3!」

 

 すぐさま一之瀬は私にパスを出す。

 そして先ほど同様稲妻の如きスピードで走ってディフェンスを振り払い、デザームと相対する。

 

 だめだ。寒気がしてくる。

 だけど撃たなきゃ始まらない。

 私はボールを蹴り上げ、漆黒の月をまた作りあげる。

 

「真ダークサイドムーン!!」

 

 落ちてくる月に、デザームは目を瞑りながらまたもや不敵な笑みを浮かべていた。

 ただ楽しんでいるだけではない。

 一点を決められて笑えるということは、まだ奥の手があるということ。

 

「くるか……ならば私も応えよう!」

 

 カッとデザームの双眸(そうぼう)が開眼される。

 右手が天に掲げられる。

 そこに膨大なエネルギーが集中していき、黒光りする鋼鉄が形成された。

 それは、デザーム自身を覆い隠して余りあるほどに巨大なドリルだった。

 ドリルは螺旋状に風を纏いながら高速回転し始める。

 

「ドリルスマッシャー!」

 

 衝突。

 エネルギーの奔流が眩い光となって散っていく。

 次に目を開けたとき、漆黒の月には巨大な風穴が空いていた。

 

 月は形を維持できなくなり、霧散。

 爆発が起きる。

 戦場跡のように炎と黒煙が上がる中、その奥でデザームがボールを掴んでいるのが見えた。

 その光景に、私はただ、

 

「嘘でしょ……」

 

 そう、呟くほかなかった。




 知ってる人が大半だろうけど、円堂時代しか知らない人のための解説。

 ♦︎『もちもち黄粉餅』
 言わずとも知れたあの大人気キャラクター、菜花黄名子ちゃんの代名詞とも言える必殺技。
 なえちゃんに装備させた理由はなんとなくです。
 だって兎ときたら月で、月ときたら月兎で、月兎と言ったら餅でしょうがぁ! まあ兎が作るのには黄粉なんてついてないんですけど。そこら辺はご愛嬌ということで。
 その他に両方とも言葉がなまっていたり(うちの悪なえは別です)と、共通点が多いので登場させました。

 ちなみに黄名子ちゃん、製作陣の性癖の歪み具合がはっきりわかる設定を持っています。ネタバレになるので、知りたい方はご自身で調べてみてください。
 え、私ですか? ……二次元ロリはだいたい好物です。
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