悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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チャレンジャー

 一点先制したとはいえ、試合はまだまだ続いていく。

 

「やっぱり雷門は守備、攻撃両方ともレベルが高いな!」

「ああ。だけど俺たちだって負けちゃいられねえ。陽花戸イレブンのチームワーク、見せてやろうぜ!」

 

 戸田を中心にフォワードの三人が駆け上がってくる。

 土門は足に炎を宿すと、空気を切り裂くように横に振り切った。

 その勢いで刃状の炎が発射され、手前の地面で着弾。

 次には噴火するように、その場から炎の壁が出現した。

 

「ボルケイノカット!」

「くっ……!」

 

 戸田へその炎に巻き込まれ、ボールを失う。

 フォローに入ろうと別に二人が立ちはだかるも、土門は足のバネを生かして軽々と突破してみせる。

 

「栗松!」

「よし、俺も新技を試すでヤンス!」

 

 ディフェンスが栗松のもとに近づいてくる。

 しかし彼は進路を変えず、それどころかまるでお構いなしと言わんばかりにその小さい足を高速で動かし、加速し始めた。

 

「ダッシュアクセル!」

「のわっ!?」

 

 止めに入ったディフェンスは逆にその驚異的な突破力に押され、弾かれた。

 へー、さすがに私ほどじゃないけど、なかなかの速さだ。

 土門がガッツポーズをしながら、栗松に声をかける。

 

「栗松、できたじゃないか!」

「や、やったでヤンス! ……なえさん!」

「はいオーライっと」

 

 彼からボールを受け取った私は、青白い電気を身に纏いながら、ジグザグにドリブルをする。

 

「ジグザグスパークV3」

 

 近づいてきた陽花戸選手はそれに巻き込まれて、みんな感電してしまった。

 ふと前を見れば、さらに追加で三人ものディフェンスが来ていることに気づいた。

 さっきの得点で私が一番脅威だと判断されたのだろう。

 一人で突破できないわけじゃないけど、危険を犯す意味もない。

 ガラ空きになってる逆サイドへ、大きくセンタリングを上げる。

 

「しまった!」

「いくでダーリン! ラブラブシュートや!」

「前から思ってたけど何それ!?」

「決まっとるやないか。二人の愛の結晶言うたら、それはバタフライドリーム!」

「えぇ……!?」

 

 ラブラブシュートの正体ってそれだったんだ……。

 リカは手を伸ばすも、肝心の一之瀬の方は明らかに嫌そうな顔をしている。

 

「この際いいからやってみろ!」

「やれよ、ダーリン!」

「ヒューヒュー!」

「鬼道、土門、裏切ったな! それとヒューヒュー言ったの誰だ!?」

 

 もちろん私です。

 というか私を含めてみんな、意地悪い顔になってるなぁ。

 特に土門、お主も悪よのう。

 

「わかったわかった! やるよ!」

 

 ドリブル中という限りのある時間が彼を焦らせ、冷静な思考を奪ったのだろう。

 思考することを放棄したのか、髪をかきむしったあとそう叫んだ。

 そしてリカへと手を伸ばす。

 

「もうシュートは撃たせねえ!」

『ブロックサーカス!!』

 

 だけど、少し遅かったようだ。

 彼らがわちゃわちゃ揉めてた間に、敵の最後のディフェンスである筑紫と石山が迫ってきていた。

 筑紫のスライディングでボールをすくい上げ、空中に飛んでいた石山が両足でそれをガッチリと挟む。

 そして一回転して体勢を立て直すと、見事に着地してみせた。

 まるで曲芸のような動きだ。

 

「ああ、そんなぁ!」

「ほっ……」

「愛が壊れたね。ていうかもともとないけど。うしし」

 

 小暮が何やら残酷なことを言ってたけど、幸いリカには聞こえていないようだった。

 よかった。危うく死ぬところだったよ。……小暮が。

 あの恋に燃えるリカの耳にそんなの入ったら、どうなるかわかったもんじゃない。

 

 陽花戸はそのまま勢いに乗ってパスを回していき、再び松林のもとに渡る。

 足に虹色のオーラを纏わせ、ボールを蹴った。

 

「レインボーループ!」

「今度こそ、正義の鉄拳だ!」

 

 円堂君は再びノートに書いてあった通りにエネルギーを溜めて、拳を前に突き出した。

 でもやっぱりダメだった。

 先ほどと同じようにエネルギーは霧散し、残ったシュートが彼の体に当たってゴール前を転がってしまう。

 

「うぉぉぉぉ!!」

「もちもち黄粉餅っと」

 

 こぼれ球を陽花戸キャプテン戸田がシュートする。

 だけど、再び私が作り出した餅の鞭がボールの勢いを殺し、失点を防いだ。

 

「サンキュー、なえ!」

「気にしなくていいよ。バックアップは私に任せて、円堂君は自分の挑戦を続けていって」

「ああ。だけど……やっぱりギューンってなんなんだ……?」

 

 手を見つめながら、円堂君はそう呟いた。

 ギューンか……。見当もつかないな。

 パンチング技だから、格闘技とかのパンチに似てるのかもと思ってたけど、あれはどっちかというと繰り出す際はギューンと伸びるというよりもスパッと空気を切り裂くような感覚に近い。

 

 私たちが悩んでいると、ちょうどホイッスルの笛が鳴った。

 ハーフタイムか。

 とりあえず体を休めて、それからまた考えればいいかな。

 雷門のベンチがある方へ歩いていった。

 

 

 ♦︎

 

 

「さすが究極奥義だ。そう簡単には掴めないな」

 

 私たちを見渡しながら、円堂君は正義の鉄拳の感想を言う。

 みんなは少しでも役に立とうと必死に考えているけど、いい考えが浮かんだ人はいない。

 

「未完成ね……円堂大介はなんでそんなものをノートに残したのかな」

「やっぱり自分の技を完成させられる人を期待してたんじゃないか?」

 

 私の呟きに風丸が答える。

 その考えに、首を振った。

 

「でも、仮に円堂大介が円堂君みたいな人だとしたら、あとを託すんじゃなくて、意地でも完成させるように特訓してると思うんだけど」

 

 なにせあの総帥が見るたびに青筋を立てるほどなのだ。

 円堂君はそうとう円堂大介に似ていると思って間違いはないはず。

 うーん、ダメだね。

 考えれば考えるほどドツボにはまっていく。

 

 瞳子監督もそんな私たちの雰囲気に気づいたのだろう。

 両手を合わせて大きな音を出し、みんなの意識を底から引きずり出した。

 

「とにかく円堂君、今日のところはやるだけやってみなさい。必殺技に近道はないわ」

「はい!」

「あー、提案-。みんな、後半からは私に積極的にボールを集めてくれない? ちょっと試してみたいことがあるの」

 

 それはもちろん例の総帥が残した必殺技のことだ。

 やっぱり実際やってみたほうがいいだろうしね。

 特に判断する理由もなかったので、みんなはすぐにうなずいてくれた。

 

 そしてハーフタイムが終わり、試合が再び動き出す。

 

「フレイムダンス!」

 

 開始早々、一之瀬の炎の鞭がボールを絡めとった。

 鬼道君がパスを受け取り、敵コートへ走る。

 

『ブロックサーカス!!』

 

 だけど、相手のミッドである志賀と道端が、なんと前半でも使ってきた技を使ってきた。

 私は真ん中をすり抜けたけど、あれは私の体が小さくて、なおかつスピードもあったからできたことだ。

 どちらの条件も当てはまらない鬼道君が出した答えは——かかとでのバックパスだった。

 

 なるほど。

 ブロックサーカスは上下のコンビネーションで相手を封殺する技だ。

 しかしそれは歯みたいに、ボールと上下の人間の位置が重なっていないと発動することはできない。

 ボールが離れていったので、彼らの技は不発に終わった。

 

「吹雪!」

「えっ、あ、うんっ!」

 

 ボールを持ったのはシロウ。

 ブロックサーカス失敗の影響で身動きが取れないうちに、ゴールへ向かって駆け上がっていく。

 だけどやっぱり、いつもより遅い。

 

「もらった!」

「っ!」

 

 ディフェンスの位置まで下がっていた戸田に、シロウはボールをあっさりと奪うとられた。

 

「しっかりしろ吹雪!」

「いつものあんたなら一気に抜けてたじゃん!」

「くっ……!」

 

 そのあまりにらしくなプレーに、みんなも思うところがあったのだろう。

 だけど仕方がないことなのだ。

 シロウは本来ディフェンダー。

 フォワードはアツヤの仕事なのだから。

 グチグチ思ってても仕方がない。

 取られたら取り返すだ。

 

「もちもち黄粉——」

「オオウチワ!」

「ぷはっ!?」

 

 私が餅を振り回すよりも早く、戸田はどこからか身の丈以上もあるうちわを出現させると、一気にそれを振り下ろしてくる。

 その時の突風に体が浮かされ、私は轢かれたカエルみたいに仰向けに倒れてしまった。

 

 くっ……今のは私の判断ミスだ。

 もちもち黄粉餅は出現させてから振り回すことで縄みたいに伸ばす過程があるので、若干のタイムラグが生じるのだ。

 今のはスピニングカットなら間に合っていた。

 

 先ほどシロウがボールを持ったことで攻撃のチャンスだと思い込んでしまい、雷門メンバーは大半が前に上がってしまっていた。

 その隙を突いて、どんどん陽花戸のパスが回っていく。

 さすが雷門の大ファンを名乗ることはある。

 こっちのフォーメーションや弱点は研究済みってことか。

 

 最後にボールはレインボーループの男、松林に渡った。

 虹色のオーラを足に纏わせ、再三同じ技を繰り出す。

 

「レインボーループ!」

「通させないッス! ——ザ・ウォール!」

 

 だけどこちらには最後の砦、壁山がいる。

 前半を見た限り、未完成の正義の鉄拳で弾けるくらいだ。

 シュート力はあまり高くないと見ていいだろう。

 壁山のザ・ウォールなら止められる。

 と思った束の間、戸田が松林のそばを通る過ぎるのが見えた。

 

「ダイナマイトシュート!」

 

 まさかのシュートチェイン!? 

 戸田はレインボーループの高さまで跳び上がると、オーバーヘッドキックをボールにくらわせた。

 そして壁山のザ・ウォールとぶつかった時、ボールは激しい爆発を起こす。

 

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

 さすがの壁山も二人分のシュートには敵わず、ザ・ウォールは砕け散ってしまった。

 倒れた彼の頭上をボールが通過していく。

 

 あのシュートはチェインされている分、威力もスピードも高い。

 決して未完成の正義の鉄拳では間に合わないだろう。

 そう円堂君も判断したのか、彼は拳を突き上げるのをやめると、腰を深く落として魔神を出現させた。

 

「真マジン・ザ・ハンド!!」

 

 ボールが再び爆発する。

 だけどイプシロンのガイアブレイクすら止めてみせたこの技は伊達じゃない。

 魔神の右手はびくともせずに、ボールを受け止めてみせた。

 

「よっしゃ! 反撃だ!」

 

 スローされたボールはセンターラインの近くまで届いた。

 それを胸でトラップし、風丸は風を纏いながら走り出す。

 

「疾風ダッシュ改!」

 

 空気を切り裂くかのような鋭く、それでいて素早いドリブルに陽花戸選手たちはついていくことができない。

 そうやってコーナー近くまで切り込んだあと、センタリングを上げてきた。

 

「ナイスパス!」

 

 大きく弧を描くようなセンタリング。

 普通なら落ちてくるのを待つしかないけど、私なら天空でもボールを受け取ることができる。

 高く跳躍してボールをトラップ。

 そのままサマーソルトの要領でボールを蹴り上げ、地面に着地すると同時に再びそこを蹴って、ボールよりも高い位置に跳び上がる。

 

 ボールは私の黒いオーラを纏って、どんどん巨大化していく。

 しばらく経ったら、漆黒の満月の出来上がりだ。

 禁断の書には黄金って書かれてたけど、できないものは仕方がない。

 とにかくやってみるのみだ。

 完成した月に向かって、右のかかとを振り下ろす。

 

 そして、空で爆発が起きた。

 

「あ……が……っ!!」

 

 受け身なんて取る余裕もない。

 爆風をもろにくらった私は、背中から思いっきり地面に叩きつけられた。

 

 みんなが心配して近寄ってくる。

 けどそれよりもシュートのことだ。

 私が蹴ったボールはどうなったのか。

 視界に映ったのは、弱々しくもゴールへ向かうボールだった。

 明らかに、威力がダークサイドムーンより下がっている。

 よくてディバインアロー程度だろうか。

 失敗だ。

 完璧な失敗だ。

 

 それに対して立向居はなんと、先ほどの円堂君と同じ構え方をした。

 青いエネルギーが彼の体から溢れ出す。

 それは徐々に形を作っていき、彼の背後に薄っすらとだけど魔神を出現させる。

 

「マジン・ザ・ハンド!」

 

 青い魔神はシュートに向かって張り手を突き出す。

 だけどその手はボールに触れたとたん、ガラス細工のように砕け散ってしまった。

 

「ぐあああああっ!!」

 

 障害物が消え、ボールは立向居に突き刺さり、ゴールに入る。

 だけどこれは意味のないゴールだ。

 鬼道君が手を差し出してきたので、掴んで立ち上がる。

 

「今のはなんだ?」

「新必殺技。まあ失敗しちゃったけど」

「あんた、ヘーキなんか? メッチャ思いっきり地面に落ちてたけど」

「こーゆーのは慣れてるからね。それよりも、心配してくれてありがとう」

「べ、別に心配しとらんわ! ただエイリア戦前に仲間が一人いなくなったら困るだけや!」

 

 素直じゃないねぇ。

 リカは若干ほおを赤らめながら去っていってしまった。

 普段からあれくらいの恥じらいを持っていれば、一之瀬も振り向くかもしれないのに。

 

「さあ、どんどんボールを私に集めて。円堂君も立向居もチャレンジしてるんだ。私だけ置いてけぼりにされるわけにはいかないよ」

 

 ユニフォームについた砂を払う。

 そりゃあれだけの高さから落ちたら痛いに決まってる。

 だけど弱音を吐いている場合じゃないのだ。

 なにせ、私は円堂君のライバルなんだから。

 

「その立向居のことなんだが……正直どう思う?」

 

 鬼道君はゴール前で尻もちをついている立向居に、目をやりながら聞いてくる。

 彼が言っているのは、先ほどのマジン・ザ・ハンドのことだろう。

 彼への評価を包み隠さず伝える。

 

「一言で言って天才だと思うよ。円堂君だって猛特訓を積んでも、世宇子戦の前半じゃ魔神すら出てきてなかった。でも彼は原理すら考えずに、ただ構えを真似しただけで出すことに成功してる」

「だな。円堂を努力の秀才と言うならば、立向居は天性の天才だろう」

 

 もちろん、今はまだヘッポコ同然だ。

 だけどあれは、例えるなら掘り出されたばかりの宝石の原石。

 磨き上げれば、相当なものができるに違いない。

 立向居の才能は、そう思わせるほど眩しいものだった。

 

「おーい、お前らー! もうすぐキックオフだぞー!」

「あ、ごめんごめーん! すぐ戻るよ!」

 

 ゴールからでもその声は聞こえてきた。

 私たちはそれぞれのポジションに移動し、試合が再開する。

 

 その後も、シュートが撃たれるたびに円堂君は正義の鉄拳を、ボールが回されるたびに私と立向居はそれぞれムーンライトスコールとマジン・ザ・ハンドを試し続けた。

 だけどいっこうに完成する気配はない。

 とうとうホイッスルの笛が3回なってしまう。

 そしてついに、必殺技が完成することはなかった。




 意外とゲームをやったことのない人がいるかもしれないので、補足としてアニメじゃ出てこなかった技を今後は紹介していきたいと思います。
 それでは記念すべき第一回はこれらの必殺技です。


 ♦︎『オオウチワ』
 巨大な団扇を取り出して、相手を吹き飛ばすディフェンス技。
 陽花戸といったらこれという人も多いはず。
 なのにアニメで使われることはなかったです。


 ♦︎『ダイナマイトシュート』
 オーバーヘッドで撃ち落としたボールがゴール前で爆発する。
 超マイナー技。一応初代からあるが、ほとんど目にしたことはないです。
 調べてみて戸田が覚えるらしいので、採用してみました。


 あと、5月14日にドラクエ10 のオールインワンパッケージが発売されるので、今後しばらく投稿頻度が下がるかもです。
 個人的にはこれでドラクエのナンバリングタイトルを全制覇することとなるので、ワクワクしています。
 体験版は既プレイなのですが、ラーの鏡やヌーク草、グレイナルといった、ドラクエファンならニヤリとしてしまうような単語もけっこう出てきたりするので、興味があったら買ってみるといいかもです。
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