悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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それぞれの新必殺技開発

『ついに日本にこの季節がやって参りました! 暑い夏よりなお熱い! 全国中学サッカーチーム日本一を決める、フットボールフロンティアの季節だァ!』

 

 マイクを握りしめ、角刈りのおじさんがカメラに向かって叫ぶ。

 

 今日は、フットボールフロンティアの対戦の組み合わせの抽選日だ。

 現在いる場所は、東京のとあるテレビ局。

 そこには私だけでなく、数十人ものサッカーチームの監督たちが今か今かと実況の人の話を聞いている。

 

 もちろんのこと、総帥は来ていない。

 あの人は案外人混みが苦手だ。

 今ごろ執務室で、のんびりこの中継を見ていることだろう。

 

 実況の人が、フットボールフロンティアのルールについて改めて解説しているが、全部頭に入っていることなので、あくびをしながら全部聞き流していく。

 

 フットボールフロンティア本戦に出るためには、各地区の予選トーナメントで優勝をしなければならない。

 しかし例外はもちろんある。

 それがサッカー協会によって選ばれる招待校だ。

 これに選ばれると無条件で本戦に出場できる。

 

 だけど、その決定権は日本サッカー協会副会長である総帥にある。

 選ばれるのはもちろん、総帥の息のかかったチームしかない。

 

 うん、セコイね。

 そのうちの一つが我らが帝国学園。

 もう一つは——。

 そこまで考えたところで、周りの監督たちから歓声が湧き、前を見る。

 

 どうやら、もうすぐくじ引きが始まるらしい。

 ステージ上には巨大なガチャガチャの機械のようなものと、二人のバニーガールさんが立っていた。

 彼女らは同時に機械についていた二つのボタンをそれぞれ押す。

 するとコロコロという音とともにボールが二つ転がった。

 バニーガールさんたちはそれを手にとり、私たちに見えるようにかかげる。

 

 二つのボールにはそれぞれ野生と、雷門と書かれていた。

 

『さあ、栄えある予選第一回戦の試合は強豪野生中だ! 対するは最近メキメキと頭角を現してきた雷門中! これは初めから面白い展開になってきたぞ!?』

 

 野生中か……。

 今回のトーナメントじゃ帝国の次ぐらいには有名なところだと思うけど、正直あんまり強かった印象はないね。

 まあ野生中得意の空中戦で、私がフルボッコにしてあげたからだと思うけど。

 それでも、円堂君たちにとってはつらい試合となるだろう。

 

 他のチームの試合がどんどん決まっていく中、帝国だけはその名が呼ばれることはなかった。

 なぜなら帝国はシード枠だからだ。

 つまり私がここにきた意味はほぼ皆無。なのにサッカー協会の奴らは出席だけでもしろと言ってくる。

 

 その後、心の中でブツブツ文句を言ってたらようやく全試合が決定した。

 そして実況の人が締めの言葉でくくったところで、抽選会は終わりを迎えた。

 

 

 ♦︎

 

 

「『イナズマ落とし』?」

「ああ、それが今やつらが完成させようとしている必殺技らしい」

 

 数日後、グラウンドで鬼道君が雷門の新必殺技について話してきた。

 彼らも今のままでは勝てないって理解しているようだ。

 それを打開することのできる必殺技らしいけど……。

 

「っで、肝心のそれはどんな感じの技なの?」

「さぁ? 秘伝書に書かれていた内容が送られてきたが、正直理解不能だった」

「へー、秘伝書ねぇ。なんて書かれてたの?」

 

 そう聞くと、鬼道君は黙ってしまった。

 しかし覚悟を決めたかのように、ゆっくりと口を開く。

 

「『一人がビョーンと飛ぶ。もう一人がその上にバーンとなってズバーン』」

「……は?」

「……そんな冷たい目をするな。どうやら本当にこれが書かれていたことらしい」

 

 り、理解できない……。

 なんだよビョーンとかバーンとか。ほとんど擬音語だけじゃん。

 イナズマイレブンの技だから期待してたけど、これじゃあ考えるだけ無駄になりそうだね。

 

「雷門の話はそこまでだ。俺たちは俺たちでやるべきことがあるだろ?」

「そうだな、佐久間。やつらが新必殺技を作るのなら、俺たちも必殺技を作ればいい。そのためにお前らには集まってもらった」

 

 私、佐久間、鬼道君。

 帝国のキック力トップスリーの三人だね。

 たしかに私たちが手を組めば相当な威力のシュートが撃てるだろう。

 

「必殺技はいいけど、具体的な案とかはあるの?」

「ああ、名付けて『皇帝ペンギン2号』だ」

「皇帝ペンギンってことは……まさか()()を改造するの?」

 

 アレとは帝国に伝わる禁断の技、皇帝ペンギン1号のことだ。

 威力は抜群。しかし撃つだけで使用者に再起不能レベルのダメージを与えることからコスパが見合わず、総帥自らが封印した。

 このことは代々のキャプテンたちにしか伝えられることはない。

 ちなみに私は帝国の闇に関わっているため、もちろん知っている。

 

 そんなわけで、このことを知らない佐久間君は一人首をかしげていた。

 鬼道君が例の話を伝えると、その顔は青ざめる。

 

「そ、そんな技を使って大丈夫なのか?」

「安心しろ。2号は威力を落とし、なおかつ三人で負担を分担することで安定して使えるようにするのが理念だ。さっき言ったような反動はない」

 

 小型のホワイトボードを鬼道君は取り出し、そこに具体的な説明を書き始める。

 図によれば、まず鬼道君が正面にシュート。追いかけるように私と佐久間が左右から走り込んでツインシュートを決め、さらにボールを加速させる。

 だいたいこんなもんらしい。

 

 イメージがまとまってきたところで、早速実践してみることにした。

 

「いくぞ、皇帝ペンギン——!」

 

 鬼道君が口笛を吹くと、彼の周囲の地面からペンギンが顔を出した。彼らはシュートとともにミサイルのように飛翔し、こちらに向かってくる。

 1……2……3……今だっ! 

 私は右足を、佐久間は左足を伸ばしてボールに叩きつける。

 

『2号ッ!!』

 

 蹴った瞬間、ボールを中心に爆発が起こった。

 あまりに突然のことで、私と佐久間は左右に吹き飛ばされる。

 

「いたたっ、大丈夫?」

「ああ……なんとかな……」

「皇帝ペンギン2号は横のつながりと縦のスピードが重要になってくる。失敗したのは蹴る角度がズレていたのと」

「走りこみのスピード不足、か……」

 

 苦々しい顔を佐久間はする。

 私と佐久間では私の方が圧倒的に足が速い。

 だからこそ、彼に合わせてボールを蹴ったんだけど、それが逆に仇となった。

 だからボールに伝わるエネルギーがコントロールできず、爆発してしまったのだろう。

 

「なえは一切スピードを緩めるな。佐久間は逆にスピードを上げることを意識しろ。またやるぞ」

「おうっ!」

「はいはーい」

 

 その後は何十回も撃ったんだけど、成功することは一度もなかった。

 ただ蹴っているうちに角度の方は安定してきたみたいで、精度が初めと比べてかなりよくなっているのがわかった。

 あとは佐久間のスピード次第。

 とはいえまだ初日ということもあり、今日はこのまま練習を切り上げることとなった。

 

 

 自室に戻り、シャワーを浴びて汗を流し、いつもの黒いダッフルコートとミニスカートを着た雪国風衣装となる。

 

 自室を出て、執務室に向かう。

 

 これからパソコンとにらめっこすることになると思うと、ちょっと気分が下がるよ。

 でも仕方ないか。

 数年前から研究してた()()()が完成間近なのだから。

 こことは別の場所で、さらにブラックな労働体制で研究している人たちよりかはマシだと心の中で言い聞かせ、目的の部屋に入った。

 

 不気味な笑みを浮かべながらパソコンを見ている総帥を無視して、自分のデスクににのろのろと座り込む。

 

 そっから先は夜の九時ぐらいになるまで、ずっとキーボードを叩き続けていた。

 ぐぉっ、頭がズキンズキンする……! 

 ゴッドブル、ゴッドブルを飲まなきゃ……! 

 

 ようやく仕事が終わったので、総帥に話しかける。

 

「そういえば総帥、雷門中がイナズマ落としって技を身につけようとしてるらしいんだけど、どういう技か知らない?」

「イナズマ落とし? ほう、懐かしい名前だな」

 

 珍しく総帥は話に興味を持ったようだ。やっぱりイナズマイレブン関連の話だからだろう。

 

「秘伝書は見つけたんだけど、内容がよくわからなくてさ。ビョーンだったらズバーンだったり」

「円堂大介の秘伝書は全部そのような言葉しか書かれていない。解読しようとするだけ無駄なことだ」

 

 ほんと、国語の成績どうなってんだよ円堂君のおじいちゃん。

 小学生でもまだマシな文章書けると思うな。

 

「ねえねえ、イナズマ落としって結局どんな技だったの?」

「頑丈な体を持った一人が跳躍し、もう一人が最初の人間の肩を足場にすることでさらに高く飛んでそのままオーバーヘッドキックを決める。これがイナズマ落としだ」

「なるほど……シンプルそうだから、案外練習すれば私たちでもできそうだね」

「ただ、この技にそこまでの威力はない。あくまでヘディングでも勝てない相手に勝つことをコンセプトにしているためだ」

 

 そっから先は言わなかったけど、私には伝わった。

 つまり、帝国には必要がないってことか。

 

「必殺技といえば、貴様らは皇帝ペンギンの改良を行っているようだな」

「そーですね。ボッカンボッカン爆発はしてたけど、あの調子なら予選決勝までには完成すると思うよ」

「貴様が皇帝ペンギン1号を使えば済む話だ」

「またまたごジョーダンを。あれ結構痛いんだからね? 昔使ってたからよく知ってるけど」

 

 あれは私が総帥に引き取られて間もないころだったな……。

 当時は投げやりになっていて、なんでも壊す威力と体に襲いかかる激痛が心地よかったんだっけな。

 試合じゃ毎回限度の二回をすぐにぶっ放して相手キーパーともどもベンチ送りになってたのはいい思い出である。

 ……さすがにもう撃ちたいとは思わないけど。

 

「さて、私もそろそろ寝なきゃな。もうすぐ一回戦だし」

「その話なのだが、研究所から人手不足だという報告があってだな。貴様に管理を任せることにした」

「へっ? ……いやいやダメでしょ。明後日には一回戦なんだよ?」

「安心したまえ。決勝まで貴様は使わん。そうすれば仕事もはかどるだろう」

「嘘だドンドコドーン!?」

 

 ちくしょー、やっぱブラック企業だわここ! 

 拒否権なんてもちろんあるわけがない。

 私は泣く泣くこの話を受け入れ、増えた仕事と格闘していくのであった。

 




『ゴッドブル』
キャッチフレーズは『あなたに翼を提供する』。
なえちゃんがブラック企業な職場での労働に耐えるために開発した、超すんごいエナジードリンクです。どっかで聞いたことがあるのは気のせいでしょう。

ちなみに余談ですが、一応イナイレ世界に実在します。
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