悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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 お久しぶりです。今日からまた投稿再開していこうと思います。前回からちょこっと経っているので、あらすじ的なものを下に置いておきますね。


 〜前回までのあらすじ〜

 リベロになった円堂を活かすため、鬼道が提案したのは帝国の必殺シュート『デスゾーン』の取得だった。さっそく帝国学園で練習を始める一同。しかしタイミングは合っているはずなのに、なぜか『デスゾーン』は完成しない。
 疑問を抱えたまま、前半終了のホイッスルが鳴り響いた。


雷門のデスゾーン

 前半が終了し、鬼道はベンチに座り込んだ。

 ……わからない。なぜ完成しないのか。

 スピードもタイミングも、帝国の時と一致している。しかしなぜかエネルギーが分散してしまう。これではゴールに着く前にただのシュートに戻ってしまう。

 

 あれこれ試行錯誤すること十数回。さすがの円堂たちもここまで撃てば疲れが出るようで、玉のような汗を流しながら地面に座り込んで、水筒をガブガブあおいでいる。

 そうやって他人を見ていると、その視線は自然に帝国の仲間たちのもとへ注がれるようになる。

 辺見、洞面、咲山、万丈……その他の帝国のみんな。

 彼らは変わっていなかった。鬼道が久しぶりにプレイしても違和感が生まれなかったのがその証拠だ。アイコンタクトなしでも息をする様に全員の動きがわかる。その感覚に懐かしさを覚えた。

 

 帝国の仲間たちとボールを蹴るのは心地よい。だからこそ、決着をつけたかった。

 ……実は、円堂たちには話していないが、帝国学園を訪れたのにはもう一つの理由がある。

 思い返すのはFFの千羽山戦。あの時、響木監督に誘われて、ゼウスを倒し敵を取るため雷門のユニフォームに身を包んだ。そのこと自体に後悔はない。

 だが、時々ふと思うのだ。本当に自分は敵を討ちたかっただけなのだろうか。自分は仲間を見捨てたのではないか、と。

 円堂のサッカーに惹かれていけばいくほど、影のようにその疑問は膨らんでいくばかり。

 だから確かめたかったのだ。ジェネシスとの決戦の前に。

 

「——なーんて、君は考えてるんだろうね」

「……驚いたな。いつの間に読心術を覚えたんだ?」

 

 思わず目を見開いた。考えを寸分違わずに当てられたのだ。それもあのサイコパスな気があるなえに。

 

「鬼道君が分かりやすいんだよ。帝国の技だからといってわざわざ帝国に行く必要なんてあるわけないしね。円堂君はころっと騙されてたけど」

「なえにわかるぐらいだ。もちろん俺たち全員、わかってたぞ」

 

 なえに加えて、隣にいた佐久間がそう告げる。

 見れば、帝国の仲間たち全員が笑みを浮かべながら鬼道を見つめていた。

 

「今日久しぶりに帝国の鬼道が見れて嬉しかったよ。だけどやっぱりお前は雷門にいる時の方が自分を出せている気がするんだ」

「佐久間……」

「グラウンドの外からだとよくわかるんだ。雷門のやつらは常にお前を刺激してくれる。引っ張ってくれるんだ。だから行け、鬼道。迷うな。俺たちはいつまでもお前を応援している」

「……ああ!」

 

 ちょうどその言葉を皮切りにホイッスルが鳴る。

 鬼道は勢いよく立ち上がり、前へと進んだ。

 もう迷いはない。闇は晴れた。

 ゴーグルが映す景色が、わずかに霞んで見えた。

 

 

 ♦︎

 

 

 鬼道君もようやく肩の荷が下りたって感じだね。

 後半戦開始からしばらくして。彼の動きは明らかによくなっていた。いや、勢いづいたという方が正しいか。

 しかし、問題はまだまだたくさんある。

 

『デスゾーンッ!!』

 

 三角形の魔法陣から紫の弾丸が放たれる。が、それはゴールにたどり着くことなく描き消え、ただのボールに戻ってしまった。

 

「くそっ、これでもダメなのかよ!?」

 

 土門が悪態をついていると、立向居の顔面にボールがクリーンヒットしてしまった。

 あっちもムゲン・ザ・ハンドの練習をしてるけど……進捗はなさそうだ。考えるあまり集中力が落ちてしまっている。

 私も何か力になってあげたいけど、できるのはボールを鬼道君たちに集めることぐらい。歯痒さに拳を握りしめる。

 

「なあ鬼道、タイミングはこれで合っているのか?」

「ああ。帝国の時と全く同じだ」

「……全く同じ?」

 

 なんか妙に気になる。

 その言葉を盗み聞いて、さっきの佐久間の言葉が脳裏に蘇る。

 

『だけどやっぱりお前は雷門にいる方が自分を出せている気がするんだ』

 

 ……そうだ。雷門にいる時の鬼道君は帝国の鬼道君とは違うんだ。

 思えば今まで彼らのデスゾーンを見てきて、違和感があったんだ。

 なんというか、まるで荒れ狂う激流を無理やり箱に押しとどめようとしている感じというか……。とにかく、タイミングや回転はバッチリだったものの、円堂君や土門は実はやりづらそうにしていたのだ。

 その原因が、タイミングや回転にあるとしたら……?

 そこまで考えた時、私は鬼道君に声をかけていた。

 

「ねえ、もしかしたらさ——」

 

 私は今考えたことの全てを彼に伝えた。それで納得したようだ。焦燥に染まっていた表情が鋭い笑みを取り戻す。

 

「円堂、土門、次で決めるぞ!」

『おうっ!!』

 

 鬼道君からの作戦を聞いた彼らは気合十分に返事をする。

 それに呼応するように、両陣から声が上がった。

 

「鬼道にボールを集めるんだ!」

「やられっぱなしじゃいられない! 雷門の意地を見せるぞ!」

 

 そして試合は激しく揺れ動く。

 今まではデスゾーンのこともあってどこか遠慮気味だった雷門メンバーが、雷の如く襲いかかってきたのだ。

 やっぱり彼らもサッカープレイヤーということなのだろう。

 それを捌き、防いでパスを回す私たち。しかし一瞬の隙を突いたスライディングによって、ボールは豪炎寺君に渡る。

 

 豪炎寺君の激しいドリブルに誰もがついていけてない。

 追いつけるのは——私ぐらいだ。

 

 ボールを挟んで両者の右足が激突。炎が噴き上がり、打ち上げられた花火のようにボールは反動で真上に飛んでいく。

 私たちは同時に飛び上がった。ジャンプの高さなら負けなしの私だが、残念ながらボールが打ち上げられた最高点は豪炎寺君にも届く距離だった。故に差がつくことはなく、私たちは再び足を交差させて火花を飛び散らせる。

 

「前から気になってたんだよね。雷門最強のストライカーは誰なんだって」

「ふっ、面白い。そう言われると黙ってはいられない、なっ!」

 

 お互いの闘志剥き出しの笑みが見えたのは一瞬。

 二つの人影がかき消え、途端、目にも止まらない蹴りのラッシュが二つの方向から炸裂した。

 側からはまるでマシンガンの応酬にも見えることだろう。それほど間髪なく私たちはボールに蹴りを入れている。

 しかし重力というのは万物に働くもの。せめぎ合いに決着がつかないまま、私たちは落下していき——衝撃波で浮き上がった砂煙が、辺りを包み込んだ。

 

 みんなは固唾を飲んでその決着を見守っていた。

 そして砂煙を突き破って、中から出てきたのは——私だ。

 

 あの時、互いに地面に打ち付けられたあと、体勢を崩したまま根性で伸ばした足が豪炎寺君のよりも早く届いたのだ。力を入れすぎてキラーパスじみた速度で進んでいるボールに追いつき、急ブレーキをかけるようにトラップ。

 現在地は——ペナルティエリア前。

 

「ハァァァァァァッ!!」

「なっ、そのまま撃った!?」

 

 さっきまではずっと攻撃のチャンスがあっても鬼道君たちに回していた。だからだろう、反応が遅れてしまったディフェンス陣は、それでもボールを止めようと動き出す。

 だけど、残念。あいにくと今日の目的ぐらい覚えてるんだよ。

 

 コォォォンッ!! と甲高い悲鳴を上げてゴールが震えた。

 私が狙った先。それはゴールのバーだったのだ。シュートには逆回転がかけてあり、ボールは勢いよく来た道を戻っていく。

 その先にいるのは、もちろん鬼道君たちだ。

 

「しまっ……フォーメーションが……!」

「砦は崩しておいた。今だよみんな!」

『ああっ!!』

 

 力強く鬼道君はボールを蹴り上げ、そして彼、円堂君、土門が回転しながら飛び上がる。しかしその回転は今までとは打って変わって、速度がバラバラで歪なものだった。

 だけど、これでいい。全員がそれぞれのフルスピードで回っており、心なしか気持ちよさそうだ。

 そしてエネルギーが十分ボールに注入されたと見るが否や、三人は同時にボールに飛びかかり、ボールを蹴る。

 

『デスゾーンッ!!』

「これは……!?」

 

 再び放たれた紫の弾丸。それは明らかに先ほどよりも濃いオーラを纏っており、かつ途絶える雰囲気は微塵も見せていない。

 デスゾーンの完成だ。

 

「シュタタタタタン、ドババババーンッ!!」

 

 さらに変化は立向居の方にもあった。

 叫んだ割には構えることもせず、デスゾーンは立向居の横を通り過ぎていく。

 だけど一瞬、ほんの短い刹那の時間だけ。私には彼の背中から複数の青い手が出現したように見えたのだ。

 結果的に見れば失敗。だけど彼は満足そうな顔をしている。どうやら出来上がったようだ。技のイメージってやつが。

 

「鬼道、やったな!」

「だけどよ、なんでスピードがバラバラだったのに完成したんだ?」

 

 ま、そりゃ当然の疑問だ。さっきのデスゾーンは今までの理論から言えば明らかに失敗になるはずだったのだから。

 鬼道君はニヤリとニヒルに笑いながら口を開く。

 

「タイミングだ。帝国と雷門は別のチーム。帝国には帝国のタイミングがあるように、雷門には雷門のタイミングがある」

 

 要するにだ。帝国は組織的なサッカーチーム。お互いが機械レベルで意識を合わせることで力を増大させていく。

 対して雷門は、言うなれば個人技のぶつかり合いのようなチーム。特技も身体能力も、全員が全員でバラバラ。その真価はお互いの力を無理に合わせるのではなく、全力で衝突させることで生まれるのだ。

 

「そっか、俺たちのタイミングで撃ったから成功したのか!」

「ああ。佐久間の言葉となえの閃きのおかげだ」

 

 くふふっ、そんな褒めないでくれたまえ! まあその通りではあるんだけど! アッハッハ!

 なんて考えてたら、笑い声が漏れていたのか、すぐに褒めたのは失敗だったかみたいな顔をされた。解せぬ。

 

「だが鬼道、これで終わりじゃないんだろう?」

「どういうことだ?」

「デスゾーンはたしかに強力な技だ。しかしエイリア学園に通用するかどうかは疑問が残る。だから、この技を進化させる」

「進化?」

「ああ。ここからが本番だ。さっそく練習を始めるぞ!」

「げぇっ、俺ちょっと休憩しても……」

「面白そうだな! やろうぜ!」

「おい嘘だろ円堂……」

 

 あ、枯れ木が救いを求める子羊のような目でこちらを見てきた。

 そんな君にこのジェスチャーを送ろう!

 にこやかな笑顔でサムズアップしたあと、すぐさま手首を翻して親指を下に向けてやった。

 

アリーヴェデルチ(さようなら)!」

「ちっくしょぉぉぉぉっ!!」

 

 土門は泣く泣く体を引きずっていく

 この後ボロ雑巾みたいになった彼に、木暮と一緒に激辛ドリンクを作ってやったら、就寝時間になるまで追っかけられた。

 なんだ元気じゃん。




 はい、ちょっと最近リアルが忙しかったけど、ようやく再開できそう。どれくらい忙しかったと聞かれれば、毛が抜けまくったり前髪が白髪になったりするほどでした。おまけに投稿前に仮眠を取ったら、ホラゲーで出てきそうな黒くて丸っこい顔しか存在しない化け物の群れが襲ってくる悪夢を見て全身汗ビッチョリになりましたw
 あー怖かった……。
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