悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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星の使徒研究所

 早朝、雷門中の校門前にて。

 辺りはひんやりと冷たい朝霧に包まれていた。それを切り裂き、歩を進める。

 キャラバンに近づくにつれて、人影が見えてくるようになる。彼らは覚悟を決めることのできた者たちだ。

 

「おはよーみんな。これで全員?」

「いや、一之瀬たちがまだ来てないんだ」

「おおー! みんな集まっとるやないか!」

 

 誰が来てないか確認してたら、突然木の影からリカが現れた。

 ……その腕を一之瀬の首に引っかけながら。

 

「あの……一之瀬さん白目剥いちゃってるんだけど……」

「大丈夫や。ほら起きぃ!」

「ぶべらっ!」

 

 リカに背中をぶっ叩かれて、一之瀬は意識を取り戻した。しかしその視線はこちらに向けようとしない。なんかモジモジしちゃってる。まああんだけ来ない来ない言ってたのに結局来てるんだし、恥ずかしいのだろう。しかしらちがあかないと判断したのか、まずは頭を下げた。

 

「その……あのあと考えたんだ。目を逸らしちゃいけないって」

「一之瀬!」

 

 円堂君はブンブン一之瀬の手を振って大歓迎する。

 喜ぶのはいいけど、痛そうだ。千切れちゃいそうな勢いだし。

 その後ひょこっと一之瀬の後に続いて物陰から長身が顔を出す。

 

「俺もいるぜ」

「小枝……いたんだ」

「誰が不気味な小枝だ誰が!?」

 

 ぶっちゃけ木と同化しすぎてまったく気づかなかった。

 土門も来たってことは、これで全員か。結局誰一人戦いから逃げることはなかった。その事実に自然とほおが緩む。

 他愛無い話をしていると、瞳子監督がみんなの前に現れた。

 

「みんな……覚悟はいいのね?」

『はいっ!』

「……わかったわ。それじゃあイナズマキャラバン出撃よ!」

 

 私たちが席にそれぞれついたのを確認して、キャラバンは雷門中を出た。ここは東京なので、富士山までには数時間かかることだろう。嵐の前の静けさとも言うべき時間を、私たちはそれぞれ物思いにふけたりしながら潰していく。

 ふと隣にいるシロウを見る。俯いていて、昨日のことを引きずっているのが丸わかりだった。その奥にいる豪炎寺君の方は表情を固くしたまま目を瞑っていて何を考えているのかわからない。

 

「円堂さん、それはなんの必殺技ですか?」

「ああこれ? 最強の究極奥義『ジ・アース』。チーム全員の心が一つになった時にできる技なんだって」

 

 ふと通路を挟んだ隣の席でそんな会話が聞こえた。

 

「俺、これを見た時ビビってきたんだ。いつかこのチームでこれを撃ちたいって」

「できますよ、俺たちなら」

 

 立向居の言葉に、それを聞いてたみんなも同じように無言で頷く。

 チーム全員の心が一つに、ね。それはつまりそのチームが最高の状態になるということ。もし発動できたとしたら、それは、その時こそが地上最強チームの誕生となるのかもしれない。

 

 

 ♦︎

 

 

 やることもなくなって目を瞑っていると、突如不穏な気配を感じて飛び起きる。そして窓を見た時、それは映っていた。

 

 東京ドーム何個分と言えるほどの巨大な円盤状の建築物。それは下部から四つの足が伸びていて、本体を固定するように地面に立っている。建物の壁には規則正しくエイリア学園の旗と思われるようなものが飾られている。

 そう、その建物は私たちが知るUFOそのものだった。さすがにここまで人間の勝手に作り出されたイメージそのものが出てくるとは思わず、さしもの私も目を見開く。

 

「あれが……エイリア学園……!?」

「なんてデカいんだ……!」

 

 キャラバンはUFOの側で止まった。その壁には金属製の巨大なシャッターが何人たりとも通さんと言わんばかりに存在している。

 私たちは降りてじっくりそれを調べたけど、強引に突破するのは手持ちの手榴弾でも難しそうだ。

 

「どうする? 十分くらい時間もらえればハッキングできると思うけど……」

「犯罪系統になると相変わらず強いな……」

「一応犯罪者ですから」

「まあなんでもいいじゃないか。他に手はなさそうだし、それじゃあ頼むぜ」

「その必要はない」

 

 突然の聴き慣れない声に私たちは勢いよく振り向く。そこには総帥となにかと因縁のある響木監督がいた。

 いきなり予想外の人物の登場に全員が驚く。

 

「響木監督!? どうしてここに!?」

「俺はお前らがエイリアと戦っている中、ずっとエイリアのことを調べ続けていた。そしてようやく手に入れた情報で、俺たちの中に裏切り者がいることがわかったんだ」

「裏切り者!?」

「その驚くべき黒幕は……お前だ、瞳子監督!」

 

 ビシッとどこぞの身体は小学生の名探偵みたいに指を指す響木監督。

 

「……いや、みんなもう知ってるけどそれ」

「……なにっ?」

 

 私の冷えた一言でそれまでドヤ顔だった響木監督の表情が固まる。

 みんなの周りに、冷たい風が吹いた。

 

「いや、瞳子監督がエイリアと通じてるのはもう知ってるから。というか理事長に報告しなかったの夏未ちゃん?」

「いえ、したわよ。でも響木監督のほうは三日前から富士山に行ってたせいで、連絡がつかなくて……」

「まあ電波通じないしね、ここ」

「お、俺の今までの働きはいったい……?」

 

 ガクッと地面に膝をついて響木監督は崩れ落ちてしまった。

 なんというか、哀れだ。みんなもどう声をかけたらいいか微妙な表情をしてる。あの常時レイプ目で感情が全く見えない瞳子監督でさえ、今回ばかりは同情してるのがはっきりとわかる顔をしていた。

 響木監督はしばらくして無言で立ち上がり、数回咳をする。

 

「……裏切り者は瞳子監督だ。だからハッキングなどせずとも、彼女なら侵入方法を知っているはずだ」

「何事もなかったかのように話を戻したよこの人。というか瞳子監督選んだの響木監督でしょうに」

「ちっ……影山に似て嫌なところを突いてきやがって」

「なっ、失敬な! なんてことを言うのさ! 今まで受けた中で一番の侮辱だよそれは!」

「……影山、お前愛弟子からも人望なかったのか……敵とはいえ、哀れ」

 

 いやアンタの方が哀れだよ。

 なんなの? 黒グラサンかけてる人はロクデナシなんて法則でもあるの? 

 もっと言ってやりたかったけど、収集がつかなくなると鬼道君に止められたので、私はしばらく口を閉じることにした。

 

 先ほどの質問に、瞳子監督は答える。

 

「……ええ。私はこのシャッターのパスワードを知っています。それで扉を開けることができるはずです」

 

 瞳子監督は携帯を取り出してシャッターの方に向け、コードを打ち込んだ。それに反応してシャッターが音を立てて開いていく。

 

「みんな、バスに乗ってちょうだい」

 

 瞳子監督が開いた入口はイナズマキャラバンがそのまま入っても問題ないほどのサイズだった。中はメカメカしく、あちこちにパイプや機械があって落ち着かない。

 何よりも、エイリア『学園』と名乗ってるくせに宇宙人が一人もいないことが気になった。

 

 キャラバンはしばらく進んだ後、突き当たりのようなところにまで来た。どうやらここからは歩きで行けと言うらしい。

 金属製のタイルに私たちは降り立ち、各々がその周りにあるものを観察し始める。

 

「瞳子監督。ここはいったいなんの施設なんですか?」

「……ここは吉良財閥の兵器研究施設よ」

「吉良財閥?」

「日本を代表する大企業の名だ」

 

 頭上にはてなマークを浮かべた円堂君に鬼道君が補足説明してくれる。

 吉良財閥といえば宇宙を始め、さまざまな分野で有名な企業だ。たぶんテレビ見てたら誰でも知ってるぐらい知名度は高い。……円堂君は知らなかったけど。

 

「私の父の名は吉良星二郎。吉良財閥の総帥よ」

「自らの作り出した兵器で、世界を支配しようとしているという噂がある男だ」

「あーあの大仏さんね。昔裏取引で兵器購入してたから、その時に何回か顔合わせはしたことあるね」

 

 なにせ国内で兵器を生産している組織なんて希少だ。だからこそ、安い値段で買えたので帝国の暗部もよくお世話になってた。

 

「……一応、お前の近くに総理大臣の娘がいるんだけど」

「残念ながらデータはとっくに警察が押収済みだから意味ないよ」

 

 ちなみに押収されたのはゼウススタジアムの時である。

 

「兵器開発の研究所がどうしてエイリア学園と……?」

「地球の兵器が欲しかったんじゃないッスかね?」

「よく考えてくださいよ。エイリア学園の技術は見たことないものばかりで、明らかに現代の水準を超えています。それなのに地球の兵器を欲しがるのはおかしいですよ。万が一そうだとしても、兵器狙いだったら日本よりもアメリカとかの国の方が利益があるはずです」

「監督はエイリア学園の目的を知ってるんですか?」

「……ええ。彼らの目的は——」

 

 夏未ちゃんの質問に、瞳子監督がようやく答えようとした時。

 突然耳を引き裂くような警報とともに女性の声のアナウンスが聞こえてきた。

 

『侵入者アリ。侵入者アリ。侵入者アリ。侵入者……』

「ああもうタイミング悪いなぁ!」

 

 せっかくあの瞳子監督が話してくれると思ったのに!

 

「っ、見つかったみたいね!」

「おい、なんだよありゃ!?」

 

 土門が指さした扉の方を見る。そこは自動で開いており、その奥には黒光りする人型のシルエットが複数あった。

 あれは……ロボット!? うそん!?

 ロボットたちはガチャガチャと音を立てながら、こちらに向かって走ってくる。

 

『侵入者排除。侵入者排除。侵入者……』

「おいやべぇ! 逃げ……」

「死ね」

 

 投げつけられた球状の物体がロボットの一体に当たる。

 瞬間。ドッゴォォォォン!! という音とともに爆発が起きた。

 もちろんやったのは私です。持っててよかった手榴弾ってね!

 初撃で動きが鈍ったところで、スカートの下から追加で三つ取り出し、すかさず投げつける。それだけで大半のロボットは汚い花火となって砕け散った。

 

『シ……シンニュ……シャ……ハイ……』

「はいそこうるさい」

 

 それでも生き残りはもちろんいたので、取り出したハンドガンで顔面を寸分違わず撃ち抜いていく。そこでようやく全てのロボットが停止してくれた。

 銃口から上る煙にふっと息を吹きかける。

 

「じゃあ行こっか」

「何事もなかったみたいに言ってんぞあいつ……」

「こ、怖ぇぇ……!」

「うち、今度からあいつ怒らせんようにしとこ」

「なんか言った?」

『いえ、何も!』

 

 上から順にツナミ、土門、リカがそんなことを言ってたので、銃口を動かしたらそれだけでビビってくれた。

 まったく、失礼しちゃうよ。誰のおかげで突破できたと思ってるのか。

 

「銃刀法って知ってるか?」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ」

「一応この国のトップの娘がいるんだけどなぁ……」

 

 それさっきも聞いた。

 塔子はもうどうにでもなれと言わんばかりに遠い目をしている。

 

「……まあこの際仕方がないだろう。新手が来る前にこのまま行くぞ」

「じゃあ私が先導するから、みんなは後からついてきて」

「大人としては子供を前に行かせたくはないのだがな……」

 

 だって私が一番戦闘能力高いからね。それを理解しているようで、渋々だけど響木監督がうなずく。

 そこから先は私が安全確認をした後、ハンドサインで合図を出して進んでいく。途中警備ロボがまたいたけど、パイプのようなものが人間でいう首や関節に当たる部分に見えたので、後ろからスニーキングしてナイフでサイレントキルしといた。

 ふっ、他愛無い……。

 しばらく歩いていくと、またもや閉じられた扉が見えた。

 耳を扉に当てて中を探る。

 何も聞こえないな……。と思ったら、まるで誰かが見てたかのようなタイミングで扉が横にスライドする。おかげで体が傾いて鼻から地面に激突するハメになる。

 

「……なえ、大丈夫か?」

「やめて円堂君。なんも反応しないで。今は君の優しさがトゲになっちゃう」

 

 ふつふつと殺意が湧き出していると、闇に閉ざされていた部屋が突然明るくなった。中は円形のスペースとなっており、警備ロボの姿はない。

 と思ったら、なんか目の前に大仏が現れた。

 迷いなく引き金を引く。

 

『撃った!? 躊躇いなく撃ったぞこいつ!?』

「ごめんごめんついカッとなっちゃって」

 

 でも意味はなかったようだ。弾丸は現れた男の頭部を()()()()()奥の壁に当たった。

 立体映像か。ちっ、目の前に現れてくれたらぶん殴れるものを。

 その大仏みたいな男は、私の憤りを無視して自己紹介をする。

 

『日本国首脳陣の皆様、そして雷門イレブン諸君、こんにちは。私は吉良星二郎。吉良財閥を導く者です。本日は私からあなた方へとあるプレゼンテーションをさせていただきます』

 

 そう、その人物こそ、瞳子監督の父その人であった。




 余談ですが、なえちゃんの武器はスカートの下、というよりも太ももに付けているレッグホルスターから取り出されています。エロい……エロくない?
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