【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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 警告
 これより先は鬱寄りの展開があります。
 気になる方は本作が冠位時間神殿ソロモンまで完結した状態での一気読みを推奨いたします。
 
 追記
 作者はハッピーエンド主義者です。





 

 冥界に花が咲く。

 花の魔術師、一世一代の大仕掛けによって戦場の均衡は持ち直した。

 

『A――――Aaaaaa、aaaaaaaaaaaaaaaa――――――!!!!』

『■■■■■■■■■■■■――――――――――――!!!!』

 

 ティアマトとグガランナの戦いは均衡し、とんでもない怪獣プロレスを背景にマーリンを交えた最後の作戦会議が始まる。

 だが奇跡の仕掛人たるマーリン当人に油断の欠片もない……いや、その顔には悲壮さすらあった。

 

「ここまで君達は最善を尽くした。王の命と女神の意地を糧に冥府へ誘い込み、そして貯めに貯めたありったけの手札を叩きつけようとしている。僅かな勝機を探り、導いた手腕は見事としか言う他ない」

 

 冥府神エレシュキガルと眷属たるガルラ霊、更に冥府の天牛二代目グガランナ。

 エレシュキガルに次ぐ最大戦力、異邦の主神ケツァルコアトル。

 ホームグラウンドでこそ最大の力を発揮する冥府の太陽キガル・メスラムタエア。

 そして守りの要、心が負けぬ限り何者にも侵されない盾を誇るシールダー、マシュ・キリエライト。

 これだけで一つの特異点全ての戦力を平らげて足る豪華絢爛な面子だ。ティアマトにもけして見劣りすまい。

 

()()()()()()()()。奴はまだ死を知らない。天敵を知らない。このままでは獣の命に届かない」

 

 窮地を救った援軍当人が絶望的な事実を告げる。その悲報に全員が血相を変えた。

 

『ハァっ!? どういうことだ、マーリン! 説明しろ!?』

「冥府に落としても逆説的復元の概念防御は健在ということだよ。弱まっているのは確かだがあと一押しが必要だ」

『ふざけるな、そんな手があったらとっくに使ってる! 勝ち目はないのか、マーリン。どんな小さな可能性でもいい。何か……!?』

「安心したまえ。手はある」

 

 一転、マーリンは笑う。胡散臭く、底知れない笑みを()()()

 

「神話とは頓知だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 つまるところ概念同士のマウント合戦だ。絶対無敵と思えた概念防御も意外な隙を突かれ、崩されるのは世界各地の神話でもよく見られる光景である。

 

「……どういうこと? そんな都合のいい切り札がないからアレだけ悩んでたのに」

「いや、あるとも。そうだろう、キガル・メスラムタエア。いや、敢えて名も亡きガルラ霊と呼ぶべきかな?」

 

 場が不穏な空気を孕む。

 マーリンが語る”手”はどう受け取っても()()()ではありえないと誰もが確信した故に。

 

「アーチャー?」

「…………」

 

 問えば、目を逸らされた。そのことがオルガマリーに確信させる。

 

「……心当たりがあるのね。そして言えない理由がある」

 

 己のサーヴァントがどう思考するかは概ね読めている。間違いなくオルガマリーか、カルデアのためだろう。

 

「言って」

「……それは」

「言いにくいなら僕から伝えよう。これは彼を犠牲にした捨て身の一撃だ。それも不可逆で決定的な」

「えっ?」

「黙れ、マーリン!!」

 

 口ごもるアーチャーを他所にマーリンが語り出すのを怒声を上げて遮る。滅多にないアーチャーの怒鳴り声に皆が目を見開く。それほど事態は尋常ではない。

 

「いいや、言うとも。君は少し過保護に過ぎる」

「――ッ」

「オルガマリー、《冥界の物語(キガル・エリシュ)》を読破した君なら彼が一度()()()()()逸話を知っているだろう?」

「え、ええ。もちろん」

 

 マーリンが語る一幕は読者であるオルガマリーやマシュにとって馴染み深いもの。

 かつて親友の死に涙し、それ故に悪霊へ堕ちかけ、王の慈悲と親友の遺志に引き戻された物語屈指のハイライト。

 だがその裏側で世界が一度滅びかけ、救われていた事実を知る者は少ない。

 

「この逸話を基点に生まれた《名も亡きガルラ霊》のオルタ(if)。シュメルの神性特攻呪詛とも言うべき復讐騎(アヴェンジャー)へ彼は()()()()()つもりだ」

 

 神代に生きた人類の憎悪と呪いを一身に束ねた集合的対神呪詛。古代シュメルの神性をただ一柱の例外もなく絶滅させる、()()()()()()()()である。

 そんな代物をぶつければいかにビーストⅡといえど無事では済まない。必ずや”死”の概念を不死の女神へ刻み込むだろう。

 

「成り果てる? 特異点で消滅してもカルデアの霊基グラフで再召喚すれば――」

「できない。存在自体が呪詛の塊だ、パスを通じてマスターにも侵食する。君には殊の外効くだろうね」

「……矛盾よ!? アーチャーがそんな手を選ぶはずがない。有り得ない!!」

()()()()()()()()()()()()。君に呪詛が及ばないよう、再召喚すら叶わないくらい徹底的に」

 

 つまりは、と続ける。

 

「君とキガル・メスラムタエアはここで別れ、二度と巡り合うことはない」

 

 その決定的な一言にオルガマリーは、

 

「え……え? ――――――――、え?」

 

 何を言っているの分からないと、困惑と涙を滲ませた()()()顔で首を振った。

 カルデアの面々も絶句し、最早反応すらない。

 

(ッ、こんな)

 

 だから言わなかったのだ。こんな顔をさせたくなかった。いや、見たくなかったから。たとえそれがアーチャー自身のエゴと知っていても。

 

「うそ」

「……僕も嘘と言いたかったのだけど、ね。これが彼の隠していた真実だ、オルガマリー」

 

 最後にもう一度だけ繰り返そう――運命(Fate)とは、出会いと別れの物語だ。

 

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