【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

180 / 204
 これはありえざる黄金の空想(ユメ)、正史ならざる空想の紀行(キオク)


黄金空想紀行U-オルガマリー

 6600万年前、天から二度目の招かれ星がやってきた――ミクトランは滅びた。

 ミクトランに二つ目の太陽が生まれた。その光はミクトランを照らした。

 そしてまた太陽はミクトランを照らす――。

 

 ◆

 

 地球大統領、U-オルガマリーは困っていた。

 どうやら自分は予期せぬ事態に遭遇し、再起動の負担を少しでも軽くするために自身を初期化したようだ。

 お陰で今の自分は精々自分の名と使命以外はぼんやりとしか分からない。

 

 自分が地球大統領、U-オルガマリーであること。

 彼方からの呼び声を聞き、地球人類を支配(指導)するためにやってきたこと。

 

 当座の行動指針としては十分だ。流石は私。

 さらに覚醒直後に私の傍にいた知的生命体二個体と会話し、急遽地球との親善大使に任命したところ彼らは私の支持者となった。なにか上手くいきすぎて怖いような……いやいや、これも私の優秀さの賜物だろう。

 道中も道中で様々な出来事があったがそこは私。そして知的生命体……藤丸やマリーン、途中で合流したマシュやテペウも悪くない。

 能力は足りずとも善性があり、異物である私を受け入れる度量がある。彼らに不足するものは私が補えばいい。

 

(そこは教導者として私が度量を見せるべきところだものね)

 

 意識して頬を緩むのを抑える。

 彼らと同行する旅はトラブルに見舞われながらも順調で……そして、楽しかったのだ。

 

()()()()()()()()()()()、U-オルガマリー地球大統領閣下」

 

 そして差し掛かった地底世界ミクトランを分かつ境界線、四つの冥界。その第一冥界であるトラトラウキで私達はキングプロテアと出会う。

 分かたれし自我(アルターエゴ)。正規クラスにあるまじき異質なクラスの彼女はしかし無垢で純真であり、藤丸をとても慕っているように見えた。

 流石は私の支持者、人望がある(フンス。

 

「僭越ながら申し上げます。蝙蝠の王、恐るべきカマソッソ。強大なる彼の者に囚われた娘御を救う術を私は有しております」

 

 だがプロテアの背に乗せてもらい大河を渡る途中、カマソッソと名乗る不審者が襲撃。

 どういう経緯か不明だが藤丸から奪った令呪を利用し、キングプロテアを強制的に反転(オルタ化)した。異形の仮面に黒のボンテージとインパクトのある外見に変質した彼女は正気を失い、私達に襲い掛かった。

 

「閣下に号令を頂ければその力を振るうに躊躇なく。どうか、ご命令を」

 

 私達は体勢を立て直すために一時撤退。そして対岸奥の森の中で事後の方策を練っている途中。

 この、果てしなく怪しい(イロ)をしたサーヴァントと出会い、忠誠を押し売りされた。

 私はとても困った。

 

 ◆

 

 藤丸立香(♀)(わたし)は困惑していた。

 

(誰!? いや、本当に誰!?)

 

 記憶を失ったUオルガマリーと出会い、旅をし早数日。Uの言動の端々に潜むオルガマリー所長っぽさにほんわかしつつも楽しく旅をしていたら全く突然に立ち塞がったカマソッソ。そしてカマソッソの手で変質させられたキングプロテア。

 悩み、立ち往生する私達へ突如として現れた”彼”。

 これまでの旅で見たことがない、全く異質な気配をした男。

 その身に纏うはカルデア職員服に似た意匠の服装。現代的な見かけだが纏う魔力は尋常じゃない。間違いなく人間ではなく――英霊(サーヴァント)だ。それもこれまで巡った異聞帯の”王”達に近い格の。

 

「私は()()()()、キガル・メスラムタエア。どうか御身の傍で働かせていただきたく」

 

 だがその強力なはずのサーヴァントは恭しく地面に膝を付き、異星の神であるU-オルガマリーに仕えようと口上を述べていた。

 あからさまなその行動から間違いなくリンボ達の同類、異星の使徒……のはずだ。その割にこちらを排除しようとしていないのは気になるが。

 

(怪しい……怪しすぎていっそ怪しくないんじゃないかと思えてきた)

 

 困った。

 だって、とても善い人に見えるのだ。本当に嬉しそうな顔で私やUを見て笑うのだ。その見ていて気の抜ける笑顔はいつか失った面影に似ていて……。

 

「……藤丸? どうしたの? こいつになにかされた? それなら――」

「ううん、違うよ! ちょっとね、この人が知ってる人に似てて……それだけ」

「そう……ならいいけど」

 

 私を気遣わしげに見るU-オルガマリーに、目じりに浮かんだ涙をこっそりと拭った。

 視線が合うとすぐに気まずそうに視線を逸らした。彼女はとても人の感情に敏感みたいだ。

 

「さて、どうも複雑な行き違いがあるようでなさそうですが……あなたは私達を手助け頂けるということでしょうか?」

「もちろん、そのつもりですとも」

 

 言葉に詰まった私達に代わってテペウが前に出て会話を始めた。この異聞帯の霊長である恐竜人(ディノス)。私達が初めて出会った彼はとても賢くて、穏やかで、()()()だ。

 たまにお茶目で天然でトンチキなところもあるけど、その人を見る目は信頼できると思う。どうしても色眼鏡をかけてしまう私やマシュの判断よりも今はテペウの目を信じたい。

 

「なるほど……」

 

 キガル・メスラムタエアと聞き慣れぬ真名を名乗るサーヴァントを見、さらに私達をチラリと見るテペウ。数秒の沈黙で考えをまとめた彼はやがて穏やかな声で見知らぬサーヴァントの提案を前向きに勧めてきた。

 

「ひとまず彼を受け入れてはどうでしょう。私達だけでは手詰まりなのは確かですし、彼が嘘を言っているようには見えません。今は彼が突破口となることを期待したいところです」

 

 無理にとは言いませんが、と一歩引いたのは私達の様子に配慮したからか。

 だがテペウのいう通り選択肢はあるようでない。

 カマソッソによって背を切り裂かれたプロテアの悲痛な叫びは今も耳にこびりついている。彼女が今も苦しみ、消滅に近づいているのかと思うと居ても立っても居られなかった。

 

「……よろしくね、ルーラー。それともキガル・メスラムタエアの方がいいかな?」

「呼びやすい方で結構ですよ、藤丸。そして一度旅の伴となった以上、あなたのことも全力で守ると我が真名に賭けて誓いましょう」

 

 視線を合わせると穏やかで理性的な言葉が返ってくる。意を決して握手を求めれば本当に何事もなく握手は終わった。マシュもホッと息を吐いている。

 ……参った。本当に敵とは思えない。さて、この人とどう付き合っていこうかと私は少し迷った。




 黄金空想紀行 U-オルガマリー、開幕(?)。需要があれば書きます。

 なお原作からの変更要素としては下記。
 ・原作二部七章にうちのガルラ霊がエントリー。
 ・神父はね、”転校”したんだ。
 ・ここの藤丸(♀)は本作第二部の藤丸(♂)とは別人です。
 ・いつもどおりのご都合主義。
 ・一点、ただ一点!(勇者王ボイス)

 追記
 Burn my universeはいいぞ

需要ある?

  • ある
  • ない(もっと別のが欲しい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。