【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
長らくお待たせいたしました。
黄金空想紀行 U-オルガマリー、更新再開いたします。
完結まで書き上げているのでラストまでノンストップ。
ありえざるルーラー、キガル・メスラムタエアがミクトランに現界した意味、U-オルガマリーが至る結末。どうぞご照覧あれ。
追記
本外伝は基本ダイジェスト方式となります。
このお話も前話から場面が飛びます。混乱されるかもしれませんが、ご容赦下さい。
大地を駆けていく。視界が揺れていた。
「おう、おう、おう! どうだぁ、乗り心地は!? キツくねえかぁ!?」
荒々しい胴間声とは裏腹に背に乗る私達を気遣う優しい声。
闘士ワクチャン。
恐竜王に謁見するために優勝目指して参加したサッカー大会(もうこのままでいいでしょ?)で出会い、オルガマリーにプロポーズ(!?)したナイスガイだ。
「大丈夫! それよりもっと急いで欲しい!!」
「仲間がピンチなんだってなぁ! 気持ちは分かるぜぇ! とはいえこれ以上はちょいとなぁ……」
彼の背に乗ってストームボーダー目掛けて最速で進む私達。
ひとえにボーダーの仲間達に危機が迫っているからだ。
その想いを汲んで最速で駆けてくれるワクチャンだが、私が限界に近いことに気が付いているらしい。
正直に言えば加速のGがキツくて内臓が口から飛び出しそうなくらい。でもここで足を緩めたら絶対後悔する!
「藤丸。一応言っておくわ。私だけで先行すれば確実に間に合うわよ」
疾走するワクチャンの横で宙を浮きながら悠々と並走するオルガマリー。多分彼女は善意から言ってくれていて、嘘はない。でもボーダー側が異星の神である彼女を見た時どう動くかは分からない。
最悪、いや、かなり高い確率で彼女を攻撃するだろう。
「……ありがとう。でも私達と一緒にいて欲しいかな」
「そう……貴方がそう言うのならいいけれど」
分かってる!
オルガマリーが単独先行を言い出すってことはかなりマズイ状況だってことだ。
このままじゃダメだ。だからってこの厄介な状況をスパッと解決する名案なんてない!
「先輩……」
「大丈夫だよ。マシュ。きっと……」
マシュも分かっているのだろう。私の戦闘服の裾を静かに握り締め、声に緊張が漂っている。
私はただ気休めの声をかけるしかなかった。
「――やむを得ませんな」
そこに、ルーラーの声が響く。地響きを立てて移動する中でも不思議と耳に届く落ち着いた声。
ワクチャンと並走する彼が厳しい顔で前を……いや、はるか遠くのボーダーを見詰めていた。
「私の千里眼でもカルデアの状況を捉えました。賭けに出るなら今が最後の機会です」
地底の太陽が照らす下なら全てを見渡すのだという特殊な千里眼の持ち主が言うのならいよいよのっぴきならぬ事態というやつだ。
だけどこんな状況で一体どうするつもりなのか。
「何かアイデアでもあるの!?」
「はい。できればやりたくはありませんでしたが」
問いかければ頷きが返る。
よほど取りたくない手段なのか。顔を伏せ、首を振る姿は沈痛ですらあった。
「何でもいい! 間に合うならやって、今すぐ!」
その様子に少なからずリスクがあるのだと理解して、即座に決断する。多少のリスクは今更だ。ボーダーの仲間達のためなら飲み込んでみせる。
「……その言葉、飲み込まないように。ワクチャン殿、止まって下さい!」
「おうよ! だがどうすんだい? 俺の足より速く走れる奴は早々いないと思うんだけどなぁ!」
急ブレーキからの急停止。なのに彼の背に乗る私達には全然衝撃が来ない。
やっぱり優しいな、ワクチャンは。U-オルガマリーに求婚したことといい人の目を見る目もあるし、なんて良い
「ルーラー、何をするつもり?」
その問いにルーラーは答えず、逆に問いかけてきた。
「
「それはもちろん覚えているけど」
思い返せば今も鮮やかに脳裏に浮かぶ親しみやすく、頼りがいがあってたまにトンチキだった大英雄。が、何故今彼の名が出るのかと首を傾げた。
ルーラーは質問に答えず自身の水晶弓を無数のビットにバラした。
「攻勢端末、セット」
短く、端的な言葉によって無数のビットが矢をつがえた巨大な弩に似た形状へと組み変わる。一部ゴテゴテに据え付けられたコレは……まさか
これで直接ボーダー目掛けて援護射撃するのだろうか?
内心首を捻る私にルーラーはサラリと指示を出した。
「乗って下さい」
「……なんて?」
私は真顔で聞き返した。のる? そる? ……えっ、これに乗れって?
「
「……ま、まさか――アーラシュさんの!?」
「はい」
マシュの顔から血の気が引いていた。多分私の方も似たような顔色だろうと思う。それを見て頷くルーラーはどこまでも真顔だった。
私とマシュに少なからずトラウマを刻み込んだ『アーラシュ空を飛ぶ事件』が私達の脳裏にまざまざと浮かぶ。
ダメだよアーラシュ! 矢は飛ばすものであって矢に乗って自分も飛ぶものじゃないんだ!? どっかの物理法則無視した殺し屋じゃないんだからさ!!
「間に合うなら何でもいい、とのことでしたが?」
だけど畜生! これじゃないと間に合わないのも本当だから畜生!!
「……OK。女に二言はない! やって、ルーラー!!」
「せ、先輩……! はい、マシュ・キリエライトお伴致します!」
「その言葉が聞きたかった!」
やけっぱちに叫ぶとマシュも覚悟を決めた顔で頷いた。それでこそマイラブリーエンジェルで後輩なマシュだ! 道連れ確保完了なんて思ってないよ!!!
私達は重い足取りを無理矢理動かしてルーラーの矢に跨った。
「それと閣下には飛行中の藤丸の保護をお願いしたく。着陸後も藤丸のフォローも」
「任せなさい。どちらも地球大統領なら容易いことよ!」
「私はワクチャン、マリーンを連れて遅れて向かいます。そちらの戦力で間に合わない場合援軍をお待ちください」
ルーラーとオルガマリーも準備万端と頷きあっている。畜生嬉しそうだなぁ!
若干ルーラーとともにマリーンを残していくことが心配だが、
「うん、大丈夫。ルーラー、悪い人じゃないと思うよ」
当の本人は私からの心配の視線に、力強い笑顔と頷きでそう保証してくれた。
さらにこっそりUの方を見ながら私の耳元へひそりと囁く。
『わざわざ僕に頭を下げてさ、どうかU-オルガマリーと仲良くしてくれって。変だよね。でも僕は好きだよ、ルーラーのこと』
私達がチチェン・イツァーに潜入していた初期、街の外で一緒に待機していた時に仲良くなったらしい。
明るく笑う顔に影はない。
ならあとは私の心の準備だけか。と、想ったところで私を載せて矢を飛ばす(何度聞いても頭のおかしい表現だ)準備ができたらしいルーラーがこちらへ鋭く問いかける。
「覚悟は万端?」
「オールオッケー!」
嘘だけど、この期に及んでノーとは言えないでしょ!
跨った巨大弩弓には姿勢を安定させる取手と足場が作られており、万が一の際はオルガマリーがフォローしてくれる。お気遣いは万全。なお私達のテンションは急降下中だ。
「――飛べ!!」
私達が跨った”矢”の
視界が高くなる。太陽の向こう側にある逆側の地底が近くなる。そして――私の目にもボーダーが見えた。
「おっしゃ、行くぞぉぉぉ――っ!!」
ヤケになって叫ぶ。その日私は地底の空を翔ける流星になった。
キガル・メスラムタエア(ルーラー)
アーチャーの霊基で召喚されたキガル・メスラムタエアがとある要因によって変質した霊基。第七異聞帯でのみ許されたその姿は異聞帯の王にも匹敵する代わりにある代償を負った。
クラスが変質し、霊基出力が大幅に向上した以外の能力は基本的にアーチャー時に準じる。