【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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 U-オルガマリーが正式に仲間になった……というか、共闘することになった。

 ルーラーを連れた彼女の呼びかけでカルデアのスタッフ全員を呼び集め、短く提案を告げた。

 

 ”私は『異星の神』として活動していた頃の記憶を喪失している。カルデアと敵対していたことを含めて”

 ”それには相応の理由があったはずだが、現在の私には不明である”

 ”しかし今の私から見てその理由が見当たらない。カルデアは『異星の神』の使命、人類の支配の障害足り得ない”

 

 一部言葉足らずで空気が悪くなりかけもしたけど、ルーラーが翻訳してくれたお陰で空気が和んだりもしたっけ。

 

 ”よってその理由が分かるまで『世界を救う』カルデアの任務に協力してもよい。判明した理由如何によっては敵対する可能性もあるが、その場合人道的な配慮を約束する”

 

 要するにカルデアに咎があればそれを糺すが、決して酷いことはしないよと表明したのだ。

 そんな悪い奴らには見えないから、との副音声が聞こえたスタッフのみんなが「これはもう()()()()()()」と苦笑していたのが印象的だった。ちなみに私とマシュは諸手を挙げて賛成した。

 怖がっていた人、戸惑っていた人も怖がりながら、戸惑いながらもU-オルガマリーを受け入れてくれた。後はもう互いに協力し、共有していく日々が溝を埋めるのを期待するしかない。

 

 ”よろしく頼む、U-オルガマリー。願わくばこの関係が永く続くことを切に願う”

 

 代表のゴルドルフ所長がちょっとビクつきながら握手を求め、U-オルガマリーもそれに応じた。

 

 ”それはあなた達――と、私次第よ”

 

 最後に自分のことも勘定に入れるあたりは彼女の公平性とやや卑下しがちな自己評価の賜物だった。なおスタッフのみんなからの好感度は上昇した。

 カルデアと『異星の神』。前代未聞の共闘関係だけど、私は嬉しくなってUに抱き着いた。マシュも一緒になってもみくちゃになり、最後にはスタッフみんなで笑ったっけ。ムニエルが「尊い……」とか呟きながら眼鏡を涙で光らせていたのはちょっと引いたけど。

 そうして問題はあるけど順調に進んでいった――そう思われていたある日、事件が起こった。

 

 ◆

 

 チチェン・イツァー郊外の樹海、昼。

 穏やかな日差しの下でボーダーの修復が急ピッチで、しかし賑やかに進んでいく中に唐突な悲鳴が響く。あれからU-オルガマリーと仲直りし、順調に進んでいたと思っていたところに飛び込んできた凶報だった。

 それはディノス達が零す恐怖と狂騒の叫び。

 マイナスの興奮に囚われた彼らが騒ぎ出し、安全な場所を求めて我先に駆けていく。

 その恐怖の源は――、

 

「カマソッソ、カマソッソ、カマソッソ!」

「蝙蝠がやってきた。死の影がやってきた。太陽は健在なのに、夜を待たずにやってきた!」

 

 太陽が陰る。吹き付ける死臭。寒々しい死者の気配が立ち昇る。

 生い茂る原生林の影に気配を感じた次の瞬間だった。土に濡れたヒト型生物の骸がボーダーや手伝ってくれていたディノス達目掛けて襲いかかってきたのだ。

 

「ディノス達が……。なにこれ、カマソッソの仕業なの?」

「カマソッソはミクトランで唯一ディノスを上回る生命体。そして気紛れに死を振りまく夜の蝙蝠。故に彼はディノスにとっても恐怖の対象なのです」

 

 テペウの言葉に少し違和感を感じる。

 あらゆるものに大らかな……それこそ自分達の死に対してすら寛容極まるディノス達の()()()()()姿。いっそ恐怖を付与する魔術でもかけられたかと疑うほどの大騒ぎ。ディノス達が蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。

 

「先輩、死霊たちは向こうの方角からやって来ているようです。恐らくそこにカマソッソがいるのではないかと」

「ふむ、この方角はカーン王国の跡地ですね。チチェン・イツァーより古い古代都市です」

「分かった。まずはそこに行こう!」

 

 テペウが言うチチェン・イツァーから離れた位置にある古代都市、カーン王国の跡地にカマソッソが陣取っていると推測。屍体の群れを撃退しながら私達はまずそこへ向かうことにした。

 

「あの、気のせいかさっきから骸骨兵の数が増えていませんかっ?」

「気のせい、かなぁっ!? ああ、また来た! 数は十二!」

「いえ、戦闘と敵の数は確実に増えています。着実にカマソッソへ迫っているということでしょう」

「テペウは冷静だねっ! 私はちょっと余裕がないかな!?」

 

 カーン王国を目指して森の奥底へと進めば武具を備えた無数の骸骨が統制もなく迫りくる。とんでもない数、まるで津波のような圧力だ。

 一当てされた衝撃を総力で以て押し返し、叩き伏せる。だがすぐに第二陣、第三陣が待ち受けていた。まさに終わらない波濤のような圧力だった。

 

「キリがないっ!?」

「ま、まともに相手をしていてはダメです!」

「誰か手はありませんか。私もいつまで保つか」

 

 いまはテペウが生体電流を使った電磁障壁 (!?)で骸骨兵の津波を防いでくれている。だけどいつまでもそれに頼ってもいられない。

 誰でもいいからとヘルプコールを叫べば力強い答えが返ってきた。

 

「ここは私にお任せを。得意分野です」

「ルーラー!?」

 

 別行動を取っていたルーラーが合流しに来てくれた。正直、頼もしい。

 そしてルーラー自身が語る彼の来歴によればその権能は――、

 

「迷える魂を祓い、浄め、葬送(おく)ることもまた我が職掌! 眠りを忘れた者よ、地の底の光に照らされ、揺り籠に眠れ」

 

 敵を害する熱を持たない、温かく優しい光が躍る。蛇の如くのたくりながらも無数の死霊の合間を縫うように這いまわり、包み込み、温めていく。

 骸骨兵達は穏やかな橙色の炎に巻かれるや立ち尽くし、歓喜とも虚脱ともつかないうめき声をあげて骸が崩れていった。冥府の神が手繰る鎮魂の炎は得意と誇る口ぶりに相違なく、倒しても倒しても復活する骸骨の戦士達を鎮めていく。

 

「やった! ルーラー、凄い!!」

「はい、お見事です!」

 

 頼れる援軍にもろ手を挙げて歓迎を叫ぶ。これならカマソッソの元まで辿り着ける!

 私達は再びカーン王国跡地への足取りを急いだ。

 

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