【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
そして戦いが終わり、最後に立っていたのは――、
「アイ アム チャンピオン!」
高らかに勝利を告げるククルカンだった。二人を地に沈めた傍らで勝利のポーズを取っている。
軽いテンションとは裏腹に凄まじい激戦だった。
振り切ったテンションで途中から自重を投げ捨てた彼女が光の巨人へと変身。グガランナの脚を千切っては投げ、千切っては投げ。U-オルガマリーの重力場も巨躯と身体能力で強引に振り切り、巨人のチョップが撃墜した。
そしてやっぱりというか地表でボーダーを撃墜したのはククルカンだったんだね。まあ異聞帯を切除に来た身で今更どうこう言うつもりはないけど。
「こ、この私が敗北だと……!?」
「信じられない。ほんっと信じられない。あんなポッと出の女神初心者なんかに負けるなんて――!」
一方地に沈められた二人は元気に負け犬の遠吠えを吼えていた。一目で分かるほど悔しそうだが命に別状はなさそうだ。
あ、ニンキガルの霊基が明らかに弱まってる。オルタ化は戻らないようだが、あの異常な規模の出力と刺々しい魔力は消え去っていた。
「しかも霊基がニンキガルからエレシュキガルのものに戻ってるぅ――!? うううぅ、私の花畑とカルデアへの帰還も代償にしたとっておきだったのにぃぃ」
……ちょっと??? 聞いてないよ、エレシュキガル。
涙目のニンキガルもといエレシュキガル・オルタをジーッと見つめると若干気まずそうに目を逸らしたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「……これは私にとっても一世一代の選択です。ただの冥府の女神では抗えない嵐に抗うための」
「嵐……?」
「ええ、その一端をあなた達はもう見ているのではないかしら?」
「ORT、だね」
「ええ、そうよ。これは女神の直感とでも言うべきもので、論理的に説明はできないのだけれど……『その時』になれば必要になると判断しました」
「そっか」
理解した。どうしようもなかったのだと。
「……もう、カルデアでは会えないの?」
エレシュキガルも苦渋の決断だったのだろう。だけれど、彼女との道が分かたれてしまう未来が悲しい。
寂しさを込めた問いかけは、だが少し気まずそうな苦笑とともに否定された。
「いいえ、悔しいけどあの
「エレシュキガル」
「分かっています。そちらに敗れた以上あの誓いを再び利用することはありません。元から濫用できるタチのものでもないですし」
生真面目な彼女らしい言葉に安心する。
「それにどうやら別のアテも出来たみたいだし」
「Oh、何故そこで私を見るのですか。エレシュキガル」
「あんたが私の魔力貯蔵庫から魔力をパクったり、へそくりで魔力を溜め込んでるのはお見通しよ! ジャンプしなさいオラッ!」
「助けて。とても助けて。皆さん、私がピンチです」
ドゥムジが無表情でヘルプコールを叫んでいるが全員華麗にスルー。容赦なくシバかれているが、誰も手を貸そうとはしなかった。みんな学習したな。
エレシュキガルの直轄地、天空に浮かぶオアシスで水を補給させてもらいながら私達は次の目的地へ向かう準備を進めた。
「これが最後になるかもしれないから忠告。自分の気持ちに素直にならないと手遅れになっちゃうかもしれないわよ」
「……余計なお世話よ」
「そうね。そうなったらいいわね」
その途中で顔を歪めたUと、苦い顔で笑うエレシュキガルが何かを話しているのを横目で見たけれど。聞くことはしなかった。立ち入ってはいけないと思ったから。でもルーラー、お前はちゃんとフォローはしろ。
私達はエレシュキガルと別れ、第三冥界を突破した。