【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
『――たとえ何時かどうしようもなく終わる時間だったとしても、”今”を諦める理由にはならない』
◆
空想樹海決戦、オルト・シバルバー。
デイビット・ゼム・ヴォイドが奪った
その正体は侵食固有結界『空想樹海』。異聞帯の物理法則を塗り替え、全域にある樹木を一瞬で空想樹に作り替える理を敷く悍ましき世界である。
ミクトランの原生生物を既に9割以上死滅させながら地上を目指す規格外の怪物に対してカルデアは第三冥界で最終防衛ラインを構築。
エレシュキガル・オルタが敷いた天鳴神殿による結界を下敷きにした特別なバックアップのもと、総勢363騎の英霊部隊による総攻撃を敢行。
ドゥムジをして『文明を刈り取る遊星の先兵であっても撃退していただろう』と感嘆させる超戦力で迎撃、撃滅した。
『なにあれ……UFO?』
……
『馬鹿なッ! では今まで我々が相手にしていたのはただの
『魔術協会の伝説も話半分、なんてものじゃない。
ORTの本体にして真の姿が顕れる。
これまで戦っていた蜘蛛型の体は本体ではない。それらの部分は人間でいう爪や髪でしかなく、UFOに似た金色の円盤こそが本体だったのだ。
『挙句の果てに核融合? 生物が!? どこまで常識を無視する気だ!!』
いい加減にしろとボーダーのコンソールを殴りつけたゴルドルフ所長を咎める余裕がある者は誰もいなかった。
だがORTの本領はむしろそこからこそが始まりだった。
ORTが引き起こす毒々しい極彩色に輝く破壊の嵐である。生命体に有害な宇宙線を振りまき、超重力場で空間を捻じ曲げ、百万度を優に超える超高熱で世界を焼き払う。
満身創痍だったとはいえ直撃したエレシュキガル・オルタが一瞬で蒸発した程の桁違いの破壊だった。
最早破壊の
「女神から伝言を――『最後まで戦えなくてごめんなさい。でも、カッコ良かったでしょ?』」
「あの嵐を前にして、微塵も怯まず。英霊召喚への魔力提供によって指先から崩れ行く霊基のまま、誇らしげに」
「花を一輪、お渡しします。彼女が夢を捨てた時、私がこっそり隠しておいたものです」
エレシュキガルを象徴するような鮮やかな赤の花弁を受け取った藤丸は力を取り戻す。
儚くも力強く散った冥府の女神は末期までカルデアを信じ、託して逝ったのだ。肩を落としている暇はないと。
「ルーラー、あなたにも伝言が――『さようなら。会えてよかった。見知らぬキガル・メスラムタエア』。以上です」
「……真名を、お伝えしたことはなかったはずですが。ドゥムジ殿。あの方は――いえ、忘れてください」
彼と彼女は最後まで行きずりの顔見知り。胸の内を秘めた善意の第三者でしかなかった。
だがそれでよかったのだとルーラーは愛おしそうに微笑んだ。
「……ッ」
その
すぐそばにいるはずの男との距離が遠ざかった気がした。
「そうするのがいいでしょう。どの道私に答える時間はないので。私の
消滅寸前と言いながら最後の最後までとぼけた顔のドゥムジだった。その霊基が指先から少しずつ魔力の光へと還っていく。
「頑張って。とても頑張って。あなた達は冥府の女神が夢見た勇者なのですから」
そしてドゥムジは逝った。最後に滅多に見せない微笑みを零し、魔力の光となって英霊の座へ還った。
「ORT、再進撃! とんでもない速度です!」
そして再起動したORTもまた
アダムスキー型円盤そのままの本体が極彩色の嵐を撒き散らしながらオセロットの都市に迫った。奪われた太陽遍歴を、仔細不明だが裏切ったはずの
テノチティトランの宝具、
そしてORTは第二冥界に到達。迎撃ラインに到達したORTへ二人の冥界の番人が牙を剥く。
「止めたぁっ! 今よ、私ごとやれ! 紅閻魔!」
「見事なり
プロテアが止め、紅閻魔が斬る。
古今東西無双を誇る力と技の合わせ技により破壊の嵐はその発生器官を破壊され、さらに”死”の概念を付与されることで封じられた。
キングプロテア・ソチナトルと朱瑞鳥・紅閻魔、大殊勲であった。
宇宙嵐が停止、さらに少なからずダメージも負わせた。
今が絶好機!
「抗脅威反応弁、開放! 魔力循環を全開。スペクトル、艦首刀身に向けて重ね!」
「誤差角補正、シバからの命中補正セーフティ解除を確認! ――照準、敵宇宙侵略体ORT中心に
「ORT、距離20㎞からさらに接近! 18、16、14――有効射程距離に到達したぞ!」
世界を救う神造兵装の一振りが露出する。
ストーム・ボーダーの前半艦首部分が左右に分割展開。2本の導線の間にビーム上の聖剣が形成される。言うなればストーム・ボーダーの船体を砲身とした巨大な聖剣だ。
「カウントダウン。3,2,1――」
「主砲、
エネルギーを充填された砲身が黄金に輝き――巨大な一閃の光となってORTを貫かんと撃ち放たれる!
《
それを――ORTは道理を蹴飛ばした力尽くで退けた。
結果、無傷。そして再チャージの時間はない。
推測、損傷した発生器官を復元ではなく次世代スペック相当まで
所感、何度でも繰り返そう――なんという、デタラメか。
『――――』
絶句。
幾たびの死地を超えた百戦錬磨のカルデアスタッフをして絶望が浮かぶ程の窮地。
「――うろたえるなぁ!
かつてなく狼狽するカルデアスタッフを叱咤したのは――ボーダー甲板に立つU-オルガマリー!
スタッフの精神波動を敏感にキャッチし、大統領パワーで全員の耳元へ音波信号をダイレクトに叩き込む。手加減抜きの大音声はスタッフに耳鳴りを引き起こす程であり――強制的に全員の意識を切り替える!
「ありがと、U!」
「愚かな地球人類を導くのが私の務め。私は私の務めを果たすだけよ!」
なんという皮肉な絵だろうか。
ありえたかもしれない美しく残酷な
「次善の策だ――地球大統領の力を見るがいい!」
U-オルガマリーの総身から魔力が奔り、波のように世界を駆け抜け、塗り潰していく。次の瞬間、藤丸達の視界から色が抜け落ち、世界が停止した。
全員が異常を悟る。ORTの宇宙嵐に揺れ続けていたボーダーの震動すらピタリと止まったのだ。
『ORTを除く視界全ての物体が停止……。まさか、固有時制御を世界規模で!?』
「違うな、そんなローカルで時代遅れな代物ではない。地球大統領の七つの超権能の一つ、
中々にハイセンスな名前を自信満々に告げるU-オルガマリー。
ちなみに命名者は当の地球大統領本人である。自信満々に胸を張る彼女を見る周囲の目はホッコリしていた。
『タキオン……なるほど。時間を停止するのではなく、私達自身が光速より速く動いている。疑似的な時間停止という訳ですか」
「その通りだ。理解が早いな、シオン・エルトナム・ソカリス」
『作戦はありますか?』
「この疑似時間停止状態ならばORTの再生はほぼ止まる。最悪でも低下するはずだ。藤丸達がORTを足止めしている間に私がヒュームバレル再装填の魔力をチャージする。三度目はない、必ず当てろ」
『みんな、どう?』
U-オルガマリーの立てた作戦に藤丸が総意を問えば、
「「「「「「「「「「――任せろ!」」」」」」」」」」
全てのスタッフから一秒も迷わず力強い答えが返る。
『異星の神』とカルデアが結んだ逆縁を超え、絆を繋ぎ直したからこそ得られたU-オルガマリーとカルデアの功績だった。
「――――フハハハハハハハハハハハハハッ、ゴホッ、ゴホッ……。ならばよし! 行くぞ、カルデア!!」
その意気やよしと高笑いを返すU-オルガマリー。最後に笑いすぎてせき込んでいる姿をスタッフは微笑みながら見なかったことにした。
【新作紹介】
カクヨムで新作の投稿を開始しました。
文明崩壊ダンジョンライバーズ!
※タイトルをクリックすれば直接作品ページへ飛べます。
迷宮災害で滅びゆく現代ダンジョン世界に生まれた最強な”だけ”の主人公がヒロインの厄ネタを暴力とダンジョン配信で殴り倒してハッピーエンドを掴む人間讃歌の物語。
こんな人におススメです!
・今にも滅びそうな現代ダンジョン世界を明るく楽しくちょっとイビツに楽しむ 非日常の冒険を読みたい人。
・障害を乗り越えて掴むハッピーエンドが好きな人。
・厄ネタ薄幸ヒロインが幸せになるのを見たい人。
・掲示板、配信要素多め。
・一風変わったダンジョン配信モノを読みたい人。
・『エレちゃん』が好きな人(作品の根底に流れるエッセンスは非常に近いです)