【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
世界が極光の白に染まる。
ORTの脅威故にその威力を際限なく跳ね上げた聖剣兵装の一閃は、確かにORTを消滅させた。世界を染める白が消えた後、その姿はどこにもなく、ストーム・ボーダーのあらゆる機器にその痕跡は検知されなかった。
「……倒れたのね。いえ、無理もないと言うべきかしら」
U-オルガマリーですら感嘆を覚える程の絶大威力。まさに世界を救うためにのみ振るわれるに相応しい決戦兵器だった。
(ここまで、か。もう少し何かあると思ったけど……いいえ、ルーラーのお陰ね)
莫大な魔力を供給し続けた代償に軽くない疲労が全身を覆っている。
これまでの莫大な魔力供給はあくまで一時的なもの。ルーラーの心臓を媒介にした第二の太陽とのパスが焼き切れれば終わる燃え尽きる蝋燭の火。だがU-オルガマリーの未来を繋ぐには十二分だった。
いずれこの三等惑星級の魔力は霧散し、相応の格に落ち着くだろう。異星の神だった頃には及ぶまいが、今の彼女には超級英霊が譲り渡した炉心がその胸に収まっているのだから。
「……ま、カルデアのトモダチには必要のない力だもの、ね」
彼女は『異星の神』であり、彼らのトモダチだ。自らを
トクトクと高鳴る鼓動。血と魔力を全身に巡らせる”彼”の心臓。二度と出会えずとも二人が離れることは……ないのだから。
「……管制室に帰ろう。マシュ、U。お疲れ様」
「はい!」
「ええ。行きましょう」
トモダチから声を掛けられ、踵を返してともに管制室へ向かおうとするU-オルガマリー。
そして最後にルーラーがいた場所を目に焼き付けるように一瞬だけ振り返り――水を差すかのようにトリスメギストスⅡから通信が入った。
空気が凍り、ゆっくりと砕けた。
「――――は?」
「――――――召、喚?」
ポカン、と全員が呆気に取られた顔をした。それほどにありえない光景がそこに在った。
「まさか――まさか、英霊召喚術式を応用したっていうのっ!? ORTが!?」
虹色の螺旋が渦を巻く。光が収まり、虚空に刻まれた召喚式の中心に佇むは異形のヒト型。ORTを無理やり人間サイズにまで押し込めたような、ありえざるサーヴァントだった。
その名はオルト・シバルバー。クラス、
人理そのものを弾丸として撃ち放たれた決戦兵器に完全消滅させられ、それでもなお当たり前のように生存の手を打ったORTの化身である。
『馬鹿な……フォーリナーの冠位? ありえない。それは正規七クラスだけの特別な地位だぞ!! よりにもよってORTがその位に就くなんて!?』
万能の天才をして理解不能だと叫ぶORTはまさに”怪物”だった。
怪物は言葉を喋ってはいけない。
怪物は正体不明でなければいけない。
怪物は不死身でなければ意味がない。
この三つの条件をこれほど徹底的に貫徹した存在はORTを措いて他にはいまい。
英霊召喚術式を解析、学習、模倣したORTは
「なに、よそれ――!!」
絶句。百戦錬磨の藤丸をして言葉を失う他ない。一から十まで理不尽が過ぎる。
流石の藤丸も心が折れかけ、悲鳴を上げた。いいや、全員が同じ思いだった。
「――丁度いいわ。鬱憤晴らしに足りなかったところだもの」
ただ一人、U-オルガマリーを除いて。
怖がり、ポンコツ、うっかり屋。だが激情型であり、感情を激発させた時の爆発力は類を見ない。
「ここから先は私の出番よ。下がっていなさい」
「ダメだよ、U! あの怪物には全員でかからないとダメ!」
「……ORTも一つだけ役に立ったわね」
藤丸の悲壮ですらある面持ちに何故かU-オルガマリーは少しだけ笑った。
どれだけ人間離れしていようと。どれだけ人の理で理解不能だろうと。ORT未満の人外をカルデアスタッフが”怪物”と呼ぶことはないだろう。
まあORTよりはマシというカテゴリーにどれだけ意味があるかは不明だが、なんとなく、ちょっとだけ救われた気がするU-オルガマリーだった。
(なんだ、意外と違わないじゃない。私も、あいつも)
確かに地球人類とU-オルガマリーは別種だ。決定的に違う生き物だ。
でもU-オルガマリー自身が思うほどには違わなかった。それが何故か、嬉しい。
「任せなさい」
大丈夫だと、頷く。藤丸を押しのけ、ORTから庇うように前に立った。
「戦いだ、ワン・ラディアンス・シング。星の防人に敗北はない」
『異星の神』の心臓で目覚めたORTとORTの心臓と繋がるU-オルガマリー。
ここにありえざるマッチアップが成立し、第七異聞帯最後の戦いが始まる。