【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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 いつだったか……そう、冥府の技術班が魔術礼装《宝石樹》を開発した時だ。

 ドラ〇もんがひみつ道具を取り出すときの効果音を口ずさんでるガルラ霊がいた。

 その時は大概のことをスルーしなければ精神衛生上多大な被害が出る冥界という環境に慣れ切ったゆえの弊害で、特に気にせず流してしまった。

 言うまでもない当たり前のことであり、今更ながらに突っ込みを入れるような話ではないのだが…。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 当然の話が当然の話であるならばそれは前提そのものが逆転する。

 メソポタミアの冥界と俺がかつて生きていた時代、あるいは類似する世界は()()繋がっているのだ。

 ならば今も何かしらの媒体を通じて、冥界の危機を観測している()()がいてもおかしくはない…というよりもいるはずだ。

 死後、遠い未来から冥界にたどり着くまで必要なのは無限とも思えた道程を歩き続ける意志の力。

 その意志こそが冥府への片道切符となる。目標が無ければ、意志は持てない。

 例えば俺のような、メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生を送った俺の同類が()()にいるはずなのだ。

 ならば話は簡単だ。

 

(みち)があるならば広げればいい。声が届かないなら叫べばいい。助力が必要ならば助けを乞えばいい! 俺達ならそれが出来る! 俺達の声を聴いた()()は絶対に助けてくれる!」

 

 確信が、ある。

 自慢にならないが、戦いなど俺の領分ではない。

 いいや、俺一人で成し遂げたことなどほとんどない。

 何時だって、俺は誰かの手に支えられて、俺に出来ることをやってきた。

 だからまた同じことをしよう。

 今も俺たちを見ている()()に向けて、伝えよう。

 

「古代シュメルの至宝、万能の願望機たるウルクの大杯に願う―――」

 

 元より俺に出来るのは、誰かに向けて手を伸ばし、誰かにその手を取ってもらうことだけなのだから!

 

「いま冥府を観測する()()()者達に俺の声を伝え、助力を得るための(みち)を開け!」

 

 聖杯、万能の願望機としての機能を持つウルクの大杯ならばそれが叶う。

 細くとも路は通じているのなら、可能性はある。

 そして可能性があるのなら過程を無視して実現なさしめるのが聖杯だ。

 

「例え其処が時の果て、世界の果てだろうと!」

 

 これはただ()()()()()()()

 俺の叫びを聞いた()()が応えてくれる保証など無い一種の博打。

 だが強制力を持たない分、ただひたすらに俺の呼びかけを届かせる範囲をデタラメに拡大させる一種の極致。

 

「俺と同じ、頑張り屋なのに幸せになるのがヘタな女神様を助けたいと思ったあんた。この声が聞こえるのなら―――応えろ!」

 

 指に、淡い感触が触れて…消えた。

 呼びかけに答えた()()()の存在を感じ取る。

 声が届いた向こう側、薄皮一枚を切り裂いた先に、確かに指を引っかけた。

 

(ダメだ、まだ足りない―――!)

 

 このままじゃあ、引っかけた指が離れてしまう。

 やっと届いた希望の欠片が、虚しくこの手をすり抜けてしまう。

 だから、頼む。

 

 

 

 

 

「手を、伸ばしてくれ! 一瞬でいい、ほんの少しでいい! 頼む、あなたから一歩を踏み出して、俺の手を取ってくれ!!」

 

 

 

 

 

 千の願いを、万の思いを込めて、ただ助けてくれと祈る。

 俺と同じ思いを抱いた()()へと祈りを向けた。

 そして、永劫に思えた刹那が過ぎ去り…、

 

(あ…)

 

 確信する。

 確かにこの手を握る感触がある。

 

()()()―――!!」

 

 いいや、()()こそが俺の手を掴んで離さないのだ。

 握りしめた手のひらに渾身の力を込めて引き寄せる。

 世界の理、守るべき道理を蹴飛ばして、今この一瞬だけは無理無茶無謀を押し通す。

 

(次――ー)

 

 そして、もう一つ。

 聖杯で開いた(みち)はさして広くない。

 無力な霊魂の姿で現れるだろう援軍達に、(カタチ)を与える必要がある。

 故に、

 

いまだ遠き(コール:)―――」

 

 第二宝具、()()

 聖杯の力を使い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「―――幽冥永劫楽土(クルヌギア)!!」

 

 是なるは我が最強、我が必殺。

 あらゆる時間軸、あらゆる平行世界から俺と絆を結んだ魂魄を無制限に呼び招き、疑似英霊として(カタチ)を結ぶ魔法に近い域の大宝具『いまだ遠き幽冥永劫楽土(コール:クルヌギア)』である。

 

「悪神の手を払い除け、幽冥たる冥府をいまだ遠き楽土へ繋げるために―――来たれ、我が同胞!」

 

 (おう)、と声ならぬ声が冥府の深淵に木霊する。

 一つではない、二つでもない。

 次から次へと、鳴り止まぬ潮騒のように、荒れ狂う嵐のように無数の声が響き渡る

 

「―――来た」

 

 ()()()()

 淡い黄金の波紋が、冥府を照らすかのように幾つも幾つも現れ始める。

 

「来た、来た、来た…来たぞ―――!」

 

 世界を、時間を切り裂いた黄金の波紋のただなかから、綺羅星の如き輝きを示す数多の魂が濁流の如く冥府に氾濫した。

 氾濫する霊魂は俺の宝具を受けて次々に真エーテルで出来た仮初の肉体を得る。

 続々と肉体を得た霊魂は冥府の大地に立ち上がり、確かな意志を瞳に宿してそれぞれに雄叫びを挙げた。

 これで、叶う限りの準備は整った。

 

「行くぞ、太陽神(カミサマ)

 

 我が背に控える総戦力―――魂魄流入継続中のため計測不能。

 ただ莫大、あるいは無数と称するのが正しい超戦力である。

 

太陽()権能(カガヤキ)は十全か?」

 

 この一幕を不敵に笑い、見守っていた太陽神(ネルガル)へ問いかける。

 冥界の戦力が爆発的に増加するのを黙って見逃がしたその真意は果たして…?

 

「クハハ―――貴様らのか細い魂の輝きを掻き消して余りある暴威(ヒカリ)。それこそが余である!」

 

 対し、輝ける太陽の神は寝かせた美酒の開封を待ち望むが如き、混じりけのない高揚を示した。

 敢えて冥府の戦力が整えるのを待っていたのも、ただの傲慢ではない。

 

「貴様らは群れ、余は配下を従えた一柱(ヒトリ)の神だ。だが貴様らという無数の小さな光を食らう巨大な一だ! ああ、これでこそ食らい甲斐があるというものよ! 貴様らの全てに打ち勝ってこそ、我が神威は一層輝く! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 冥府の全てを真正面からねじ伏せ、打ち倒すことで己が支配者たるに相応しいことを示す―――強大にして不遜、なれど誇り高き神の矜持である。

 

「良いだろう。この無数の(カガヤキ)を搔き消し、打ち倒せるというなら冥府の支配権を持っていけ」

 

 ああ、なるほどと俺の中で腑に落ちるものがある。

 俺は心の底からネルガルという神が気に食わないが…その誇り高さという一点は認めざるを得ない。

 これだけやっても負けならいっそ諦めもつくと言うものだ。

 もちろん、負けてやる気など一欠けらも無いけどな?

 





 いつだったか《個我持つガルラ霊》を当時のUA基準で十余万騎と記述していました。
 とはいえ冷静に考えるとその後もUAは増えていくし、純粋な読者の数も増えていくわけで…。
 そうなると十余万騎で区切ったのは失敗だったかなと考えまして(流石にそこまで読者人口はいないでしょうが、気分的に)。
 リセットも兼ねて、ウルクの大杯の力を借りて平行世界の隅々まで声をかけさせていただきました。
 募集制限も締め切りもなし。というわけでここまで読み進めた名誉ガルラ霊の皆さんは冥界までご招待だ!

 そしてようようネルガル神との決戦です。
 対ネルガル神討伐アイデア募集を正式に告知いたします。

 格好いいアイデアと格好いいセリフをガンガン投稿お願いします!
 そこから作者がなんか上手い感じに作品に落とし込むので。

 とりあえず世界観やこれまでのストーリーに沿うアイデアなら大概はオッケー。
 エレちゃんにも秘密で他所の冥界からパチってたケルベロスの幼体を育て切ったガルラ霊がいた()()()()()()()()し、冥府に敷いた溶岩流路の流れを変えて今回の決戦に用いても良い。
 事前準備(を描写の裏側で実施したというアリバイ)と聖杯というチートがあれば大概はなんとかなるやろ(慢心)。

 詳細な条件やアイデアを投稿する場所については、土ノ子の活動報告をご覧ください。
 感想などにアイデアを書き込まないようにお願いいたします。

 皆さんの神殺しメソッドをお待ちしております。
 それじゃ皆の衆―――最終決戦じゃあああああぁっ! 手柄首を挙げよっ!

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