【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
出来る限りアイデアは拾っていく…! それ以上は無理。すまんな…。
第四の戦場。
この戦場を差配する軍勢は最もガルラ霊の数が少なく、しかし保有する戦力において最も優れたる部隊だった。
「グ、ルルル…!」
「ガアアアァッ!」
「シュー…シャアアァ―――…!」
その中核を担うのが獰猛な咆哮を上げる数多の魔獣達。
自分達で飼えるから、ちゃんとお世話するから…! と、捨て犬を拾ってきたノリで嘆願された時には流石の《名も亡きガルラ霊》も呆れ果てたが、見事に躾し、戦場に駆り出すまで育て上げたのは素直に凄い。
挙句の果てにこの戦場の主力として期待されているのだから人生何が起こるのか分からないものだ。
流石は世界の果てまでイッテ
恐ろしく獰猛な気配を漂わせ、身も蓋もなく言えばとんでもなく喧嘩っ早そうだ。恐らく飼い主達から影響を受けたのだろう。
「ガッガッ、ガッガッ」
「ガウオオォッ―――!!」
先ほどから引っ切り無しに続く唸り声は、空腹を前に御馳走をお預けされた餓えた獣そのもの。
今この瞬間に戦の火蓋が斬られても躊躇せずに敵へ食らいつく獰猛な熱気があった。
「……………………」
一方魔獣達とは一線を画し、しかし同じ立場の者達がズラリと隊列を揃え、秀麗な容貌を無表情に固めて命令を待っていた。
整った顔立ちな容貌に作り物のような生気の無さと、だからこそ微かに淫靡な気配が香る彼女達。
どこかエルキドゥに似て、しかし彼/彼女よりもずっと非人間的な気配を纏う。
「
この戦場の指揮官騎が彼女達へ当座の間に合わせで与えた
彼女達の数は三桁に満たない少数でしかないが、凝り性かつ偏執的な一部のガルラ霊達が妥協を忘れて仕上げただけのことはあり、一体一体がかなり高性能だ。
特に能力に優れた三騎の黄泉乙女は惜しみなくリソースが注ぎ込まれ、高度な自立判断能力と神性に迫る程の戦闘能力を持つ。
「
と、肩口に揃えた黒髪に揃えた大人しそうな少女が。
「
淡い色合いの赤髪をふわりと揺らし、天真爛漫な笑みを浮かべる少女が。
「
長く美しい金髪を背中に流した生真面目そうな少女が、それぞれ個性の見える言葉で指揮官騎へ返事をする。
とはいえまだ彼女たちに個我、個性と呼べるものは生まれていない。
それぞれに設定された
上位個体の三人が高度な判断能力と権限を有しつつ、意識の奥底では全ての個体が繋がっている群体生物。
一個の巨大な意識が彼女達という群体を統率する、人間やガルラ霊達とは根本的には異なる新しい存在である。
彼女たちは
捕食遊星ヴェルバーの尖兵、白きセファールが聖剣の極光に斃れ、遺した欠片を
後代の北欧神話にて、オーディンが作り上げた
冥府のガルラ霊はある種エレシュキガル絶対主義であり、何処からともなく湧き出る妙な知識を有し、たまに倫理観を投げ捨てる悪癖がある。
それ故、冥府のためにとメソポタミアの神格ならば誰もが忌み嫌う禁忌にすら躊躇わずに手を出し、冥府の闇と泥から生まれた乙女達である。
「…………」
自身の指揮下にある強大な魔獣達と黄泉乙女達。
みな、自信を持って周囲へ誇れる子ども達である。その力、その信頼に一切の疑いはない。
故に後は命じるだけ。
正面から食い千切り、食い破るだけだ。
「全軍、進撃せよ」
そして指揮官騎が令を下す。
応じ、全ての魔獣が狂喜に満ち溢れた咆哮を、全ての乙女が静かな戦意に満ちた鬨の声を上げる。
『『『『『『『『『『『『―――――――――――――――――――』』』』』』』』』』』』
数多の魔獣、数多の乙女の叫びが折り重なり、如何なる音となったか……その戦場を知る者は黙して語らず。
ただ指揮官騎の耳が潰れるほどの狂奔であったと、後に『冥界の物語』に伝わる。
獣達は地を疾走する。
乙女達は空を進撃する。
戦端を開き、片端から襲い掛かり、斬り払う。
無慈悲に、呵責なく、蹂躙する。
数に勝る敵軍に対し、士気の高い少数精鋭で挑む。
冥府の軍勢は数で言えば決して多くはない。
だが個の力で言えば敵をはるかに圧倒している。
特に魔獣達は一体一体が神話に名を残す強力な魔獣の
その戦力は『十四の病魔』と比較して尚劣ることはない。
そんな化け物がかれこれ十数匹揃ったこの第四の戦場で敗北は愚か苦戦すら発生することもない。
勝利は当然のようにガルラ霊の手に渡った。
第四の戦場―――貪食。
◇
第五の戦場。
その趨勢は既に定まりつつあった。
「ンんんんん―――! たぁ―――――のしぃ―――――っ!」
のっけから頭のおかしい叫びを上げるのはこの戦場の指揮官騎。
言動の通り頭とノリが極めて軽そうなガルラ霊だ。
「大☆殲☆滅!! 超☆殲☆滅!! フゥーハハハァ―――(⤴)!! やはり何事も暴力で解決するのが一番だな!!」
調子に乗りまくって語尾を上げた高笑い、邪悪な敵役としか思えない台詞を大声で誰憚ることなく叫ぶ指揮官騎。
その指揮に従うように《宝石樹》から射出された
端末から射出される無数の閃光がネルガル神の眷属達を無造作に蹂躙していた。
「クゥハハハハハァ―――(⤴)! 主人の光に焼かれる気分はどうだぁ―!?」
ネルガル神の眷属達を蹂躙する閃光エネルギーの供給源は太陽神ネルガルが振るう太陽の神力だ。
《名も亡きガルラ霊》とネルガル神が対峙する本陣で《玻璃の天梯》を用いて吸収した太陽エネルギーの逆利用。
冥界全土に張り巡らされた《宝石樹》を介し、遠く離れたこの戦場でも
それも後先考えない全力放射。
吸収したものは放出されねばならない。
でなければ冥界全土に張り巡らされた陽光エネルギーの容量限界を超えてしまうのだから。
もちろん冥府が蓄える陽光の許容限界は普通に運用していれば百年経過しようと限界の半分にも達しないだけの容量がある。
だがネルガル神が振るう太陽の神威はその懸念を懸念のまま済ませないだけの凄味があった。さながら大地を飲み込む大海嘯が人が備えた壁を、守りをあっさりと呑み込んで何もかもを突き崩していくように。
そう、だから溜め込んだ太陽エネルギーを
……自身の
だが
その指揮官としての統率力は各戦場においても随一。
実はこの
それ故端末一つにつき、一体のガルラ霊が専属で操作することで解決。
そして指揮官騎はさながら楽団の演奏を取り纏める指揮者の如くその一挙一動で指揮下のガルラ霊達を従える。
その振る舞いは頭のイカレた射撃狂いそのものだが、指揮官騎と指揮下のガルラ霊達による連携は見事の一言。
地味に超絶難易度の連携を当たり前のようにこなし、万を重ねて中位神性相当の戦力として暴れまわる連携の怪物である。
その戦力は劣化したネルガル神のソレに近い。
閃光が眷属を撃ち抜き、熱波が軍勢を焼き払い、極大のゴン太ビームが無慈悲に『十四の病魔』を屠った。キチガイじみた高笑いとともに。
その圧倒的な蹂躙性能に所詮眷属程度が勝ち得るはずもなく…。
第五の戦場―――照滅。
◇
第六の戦場。
『■■■■■■■■■■■■――――――――――――!!!!』
天地鳴動。
地の底にて吼える
その心胆寒からしめる咆哮を皮切りに闘争の火蓋が切られ…。
結果、
ソレは十万に迫るネルガル神の眷属を瞬く間に壊滅せしめた。
第六の戦場―――蹂躙。