【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
何を言っているか分からないと思うが俺も何が起こっているのかまるで分からなかった。
いや、正確には人類絶滅……否、人類史の焼却という未曽有の大災害が行われたカラクリと仕掛け人の存在は理解できた。正体と動機についてはサッパリだが。
一応は大神級の神霊である俺と比べても底が知れないとしか言えない圧倒的な霊基出力と毒蛇の如き策略、そして執念に似た
だがどんな裏事情があろうと俺がやることに変わりはない。
「エレシュキガル様」
「分かっています」
冥府の歴史は人類の歴史に等しい。死は何時だって人の傍らにあるものなのだから。
人類史の焼却はすなわち俺達が積み重ねてきた努力の否定だ。
敢えて言おう、
俺達は極めて個人的な理由からこの暴挙に抵抗すると決めた。
「行きなさい。行ってこの蛮行を押し留めなさい。我が夫にしてかつて人だった者よ」
「委細承知!」
真正の神霊であるエレシュキガル様と異なり、元はどこにでもいる人間だった俺ならば英霊の枠に収まる霊基で顕現できる。
丁度渦中のど真ん中にいる少年が必死に助けを求めている声が聞こえる。それも自分以外の誰かを案じての声だ。
マスターと仰ぐのに不足はなさそうだ。むしろ俺の方こそ愛想を尽かされないよう気張るとしようか。
さて、少々強引だが少年が手繰る英霊召喚術式に呼び込まれるとしよう。
正規英霊の枠ギリギリまで霊基を削り、押し込め、なんとかエーテルの肉体を形作る。今思えば現地が神代に匹敵するほどの魔力密度だからこそ成しえた無茶だろう。
だがその甲斐あって霊基出力だけならばギルガメッシュ王やエルキドゥにも劣るまい。無論歴戦の猛者である彼らと戦って勝てるかは別として。
「サーヴァント、『冥界の』アーチャー、ここに。現状は概ね把握しているので、どうか十全に使って頂ければ。私はともかく、私が授かった宝具はなかなかのものですよ」
無茶な召喚の余波でエーテル風が荒れ狂い、バタバタと外套がはためく。
ゆっくりと立ち上がればマスターらしき少年の期待を込めた視線が向けられ、俺は精々不敵に見えるよう笑った。
無理もない。この大災害、かつての俺達が乗り越えたネルガル神の冥府侵攻と比べても洒落にならない脅威だ。どれほど戦力があっても足りるということはあるまい。
ならば彼らを安心させるために少々格好つけた物言いも許されるだろう。
「ところでマスター、そちらの我が妻によく似た大変魅力的で放っておけなさそうな淑女は紹介して貰えるので?」
とはいえまあ、そんな配慮もマスターの後ろにいた一見気の強そうな少女を見るまでだった。
稲妻に打たれた心地でこう思う。
この少女、中々のエレちゃんポイントをお持ちだ。
そうして俺は二度目の