【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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投稿初日なので5話ほど投稿します(3/5)




 

 説明しよう、エレちゃんポイントとは俺が主人(マスター)に求める基準である!

 

 該当人物の性格(キャラクター)がエレちゃん様に近ければ近い程高く、さらに高い程俺のテンションが上がり、業務効率がアップする素敵ポイントだ。

 参考値としてある種双子に近い関係のイシュタル様のエレちゃんポイントは50点と言ったところ。基本的性格は共通しつつも、残り50点は真逆と言えるキャラなのでこの数値である。

 なお別に低くても問題はない。仕事は仕事なのでそこは割り切っている(社畜並感)。

 

(責任感はある。それでいて自分に自信がなく、承認欲求も強い。他にも(etc.)他にも(etc.)

 総計してエレちゃんポイント50……55、いやツンツンに見せかけて気弱ヘタレ属性も装備しているだと!? プラス20で75点! 歴代トップ記録を更新した!?)

 

 素晴らしい逸材だ、絶対的基準にして不動の100点であるエレシュキガル様を除けば歴代トップの人材である。死後は是非我らの冥界に迎えたい、イカン本体が頬をギリギリとつねられている気がする。

 

(この少年も決して悪くない。いやむしろマスターとしてアタリの部類だ。だが……)

 

 少年の顔をじっくりと見分する。

 冥府神としての経験から顔を見ればある程度その性格を掴める特技を持つ俺からすると、ありふれた善意とくじけない芯を持った好ましい人類(ヒト)だ。

 

(だが惜しいなぁ、残念だなぁ)

 

 少女の方がマスターだったならやる気がさらにもりもり湧いてきたのだが。

 マスター換えも一瞬だけ検討したが、何かの呪いかと疑うレベルでマスター適性が無い。これを覆すには肉体(カラダ)を丸ごと取り換えるレベルの荒療治が必要だろう。流石にそこまでの執念は俺にはない。それに本来のマスターにも失礼だろう。

 

「……アーチャー? ええと、みんなを紹介してもいいかな?」

 

 おっといけない。召喚されてから食い入るように少女を見ていたらマスターが困惑した声を上げている。それに少女からも相当に不審な視線を向けられている。つらい。

 

「失礼、彼女が自慢の妻に似ていたものでつい……。不作法にご容赦あれ。今は有事、この異常の解決を優先しましょう」

「うん、まずはお互いに自己紹介からでいいかな?」

「もちろん」

 

 謝罪の意を込めて胸に手を置き、軽く頭を下げると事態が進んだ。なおまともなことも言えるんだという視線は丁重に無視させていただいた。

 

「なら、まずはあなたの真名を聞きたいわ。それでさっきの不作法はチャラにしてあげる!」

 

 腕を組んでフンと鼻息荒く問いかける少女にほっこりとした気分になる。こう、小動物が精いっぱい威嚇しているような可愛らしさと言うか。

 

「……なによ、何がおかしいの!?」

「いえ、他意はありません。重ね重ね失礼を」

 

 余裕がないところについ昔のエレシュキガル様を思い出し、思わず頬が緩んだところを見咎められ、噛みつかれる。

 ただエレシュキガル様の場合は外ではなく内、自分に向けて内罰的になるタイプだったな。そこは違うが、逆に愛嬌にもなっていると思うのは贔屓目が入りすぎか。

 

「フンっ! こんな弱腰なサーヴァントをどこまで頼っていいのかしらね、期待外れじゃないといいのだけど!?」

「所長、折角召喚に応じてくれたサーヴァントなんですからそれくらいで」

 

 ツンケンしている少女へモニター越しにやんわりとたしなめる青年。柔らかそうな髪と軽い雰囲気の、人好きのしそうな青年なのだが、妙な違和感を覚えた。

 

(んん……?)

 

 見覚えは全くない、ないのだが……何故だ、何が何だか分からないが悪印象が湧き上がってくる。こう、「理由は分からないがコイツが悪い」という理不尽な感覚だ。それでいて”敵”という感覚は全くしない。

 まあ、いいだろう。少なくとも今は取り沙汰するような違和感ではない。

 

「では期待外れにならないように奮闘させて頂きましょう。ああ、そうそう。私の名でしたね。では一つ自己紹介をば」

 

 不思議な感覚に興味を覚えつつ、実務的に話を進めていく。

 外套を翻し、胸を張り、堂々と俺の名を名乗る。

 

「我が真名はキガル・メスラムタエア――我が妻より冥府の右の座を、我が義兄より真名と太陽の権能を、我が親友より泥の躯体(カラダ)を授かりし者。かつて暗き地の底を照らした光であり、今はあなたの手に握られた弓と思し召せ、マスター」

 

 俺自身に誇れるところはなくとも、俺という存在を形作った”みんな”の名誉を貶めないためにみっともない名乗りはできないのだから。

 

『……………………』

 

 名乗りを上げ、一礼すると……空気が凍った。一人マスターだけが凍った空気を訝しむように周囲を見渡している。

 

(……流石にマイナー過ぎたかな? そうだよな、俺の活躍年代って現代から見て大分前だし……。英雄王(ギルガメッシュ)天の鎖(エルキドゥ)に比べればクッッッッソ地味だろうなぁ)

 

 仮に名前を知ってても俺の戦闘経験ってネルガル神相手くらいだけなんですよね、そもそも職分が文官というか宰相な訳で。戦闘はそもそも専門外なのだ。

 あれ、おかしいな。緊急事態に勇んで召喚された訳だがひょっとすると他の英霊に席を譲った方が良かったのでは……と思いかけたところで。

 

「神代の、それもまごうことなき大神じゃないっ!? なんでこんなビッグネームが英霊召喚でホイホイ現れるのよ!」

「待った、そもそも純粋な神霊の召喚は英霊召喚術式の範疇外だ。ありえない! だがこの霊基年代は確かに神代のそれ……興味深いな、この天才の好奇心をくすぐる実に興味深いケースだ」

「む、むむむ……! かつての愛読書の登場人物がここに……敵役ですが、しかしとても興味深いです。時間がある時にお話を聞かせてもらえないでしょうか*1

 

 なんか、爆発した。

 俺はマスターと一緒に耳を抑え、ちょっと予想外の反応に困惑の視線を交わしたのだった。

 

 

*1
《冥界の物語》は後世に不完全な形で伝わっている

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