ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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第二十一話 宣戦布告

 

 

 

 

 

 妖精が全て説明し終えたと思ったようでそのまま消えてしまったあと。

 絶望している者。どうしたらいいのかと途方に暮れている者。

 鏡夜に対して、希望を見出そうとしている者達がいた。

 

(鏡夜は記憶がない……から、大丈夫なのか?)

 

 

 いうなれば入学式前の、俺が鏡夜に向かってゲーム知識について喋る前の状態だろう。

 ノートなどの情報があって、それで一応信じてもらえたとしても、信頼してくれているわけじゃない。

 

 

 それに俺の情報自体が間違っている可能性もあるし、それは鏡夜もわかっている。 

 だから余計に俺が鏡夜に頼っていいのかと迷ってしまった。

 

(どうしたらいい……俺は、何もできないのに……)

 

 

 攻撃方法も何もない。

 ゲームでは弓矢の攻撃だったけれど、それが何故効いたのかさえ分からない。

 

 

 ってああくそ。

 ゲーム知識なんて偽りの情報を信じるんじゃねえよ俺。そっちに意識傾けるより現実視なくちゃダメだろ!

 

 

 妖精が化け物が出てくる時間はまだあるといっていた。

 それがいつなのかは分からないけれど、少なくとも異変はあるはずだ……たぶん。

 

 この夜の空間自体が初めてだから、もしも間違っていたらどうしようかと不安で仕方がない。

 

 しかしそれを吹き飛ばすかのように、木刀を地面で叩く大きな音が響いた。

 

 

「ふむ。守りならば私たちに任せてくれ。戦えない者は背に隠れていろ!」

 

 

「まあそうなるよね……」

 

 

 

 ああ……赤組がやたらとやる気満々なのが良かったと言えるだろうか。

 というか赤組が居なかったら俺たち詰んでたよな……。

 

 なんとなくチラリと他の人たちを見た。

 赤組を見て安心している者。上級生もその赤組の頼もしい言葉によってか、即座に彼らの近くに寄っているようだし。

 

 天はなんだか頭を抱えていて、そんな彼の背を撫でる桃子がいた。

 

 

 ただ夏は鏡夜を見ていて。

 鏡夜はじっとクリスタルだけを見つめていて。

 

 

 

「鏡夜……これからどうする?」

 

 

「…………少し考えさせろ」

 

 

 

 鏡夜は俺からそっぽを向いて、考え事をしていた。

 見ているものすべてを信じたようだが、それでもなんだか納得が出来ていないような。

 ――――いや違う。なんだか懐かしいような顔をしていて、困惑してる?

 

 困惑。怒り。後悔。それと恐怖だろうか。

 

 

(あれ、何で俺鏡夜の顔見てそんなこと思ったんだろう)

 

 

 赤の他人の鏡夜だぞ。

 こいつの表情が分かりやすいわけじゃないけれど、なんだか心の奥底まで見えたような気がした。

 

 

 そんなときだった。

 ふと、横から桃子の声が聞こえてきたのだ。

 

 

「あらあら、困ったわねー」

 

 

「いやアカネちゃん、全然困ってないじゃないっすか……」

 

 

 それに思わず振り返って彼女を確かめる。

 よく見れば桃子の身体をしているが――――中身はどうやらアカネのままらしい。

 

 思わず近づいて彼女に向かって話しかけた。

 

 

「あの。い、一応聞くんですけど……神様だったらこういうのってどうにかなるんじゃ……」

 

「いいえ無理よ。だってここはあの寄生虫さんの領域ですもの。それに私は神様だからこそあまり好き勝手にできないのよ」

 

「できないって……」

 

「ああそれについては俺が説明するっすね」

 

 

 天がこちらを見て口を開く。

 その顔は何処か固く、青ざめているようにも見えた。

 

 

「神は神の領域があり、人は人の定められた生き方があるっす。大昔に定めたルールっすね。だから、神が人を勝手にしていいのは眷属か契約を果たした者のみっすよ。アカネちゃんの眷属で言うなら桃子ちゃんのことっすね」

 

「……天は?」

 

 

「俺は星空一族の先祖が神と契約して出来た上にいる子孫っす。つまり眷属というよりはただ関わり合いになれる程度の仲っすよ。まあ死んだら魂はアカネちゃんの物っすけどね。

 ――――つまり、アカネちゃんは何でも知っていて、人とは常軌を逸する神であるからこそルールに縛られているんすよ。じゃなけりゃあ人々は神の存在にすぐ気づくはずっすもん」

 

 

 ああ、と。

 そう言われて気づく。

 

 妖精の件がなければ誰もがそういった非現実的な存在に気づくわけがないということを。

 もしも神らが好き勝手にやっているのであれば、神様は常識として定められているはずなのだから。

 

 

(――――妖精は?)

 

 

 

「だからね。決められた範囲外で人の命を奪う行為も、その魂を自分のものにする行為もやったら神ではなくなってしまうの。それは神ではなくて堕神のやるべき行為だからね」

 

「まあそういうことっすね。んでアカネちゃんが神として守れるのは桃子ちゃんの身体と俺の魂ってわけ。まあ俺は魂だけっすから、死なないよう自分で何とかしなきゃいけないっすけどね!」

 

 

 彼女たちの言葉を聞いて、ただ恐る恐る口を開いた。

 

 

「あの、じゃあ妖精はどうなるんだ?」

 

「神ではないわ。ただ神の力を得た愚か者。それと同じく、ルールを超えて何かをやらかそうとしている馬鹿ね。だから寄生虫と私は呼ぶの。あれがあっ君や桃ちゃんを個人的に狙っていたなら私の物を奪う行為だから消滅させることも出来たんだけれどね……」

 

 

 疲れたように肩をすくめたアカネが、その大きなおっぱいを揺らす。

 

 

「まあそれでもあっ君を一部狙っていると思うから、確定したら潰すけど」

 

 

 俺の質問に対して、神様は冷めた目をした。

 殺してもいいと、踏み潰してもいいと思えるような虫けらを見るような目。

 

 背筋がぞっとする。寒気というか殺意というか。

 ここにいていいのかと思えるような雰囲気を放つアカネに対して、天は引き攣った笑みを浮かべながらも口を開いて言った。

 

 

「狙ってるってどういうことっすか? そもそも俺らは巻き込まれたようなもんでしょ?」

 

「あら、言っていたじゃない。あの寄生虫が……ほら、ここは自分の領域だって。

 ――――あれは私に向かって宣戦布告したようなものよ。神である私を前にして、神の目の前で好き勝手にやってやるっていうね。わざわざ口にしたってことは、邪魔すんなって遠回しに私に向かって言ってきてるのよ」

 

 

 それでも天や桃子の身体に何かがあれば潰してやるのだと。

 こちらの神の領域内を侵すのであれば、こちらも容赦はしないのだと。

 

 

「……神無月だなんて、そんな神のいない夜に喧嘩を売っているとしか言いようがないわね……ああ、反吐が出るわ」

 

 

 

 そういう風な口調で――――アカネはただ呟いたのだった。

 

 

 

「……ああそうだわ。ねえ秋音ちゃん」

 

 

「ふぁい!?」

 

 

 びくっと体を震わせた俺に対して、アカネは苦笑する。

 そうして俺の腕を引っ張って、その頬を撫でてきたのだ。

 

 

「ここは妖精の領域内。すなわち貴方たちにとって一番望んでいた事態よ。薄紫の鏡を思い出してみればわかるはず」

 

「えっ?」

 

「現状をどうにかしたかったんでしょう? 頭が弄られて幽霊を見るようになって、そういうのをどうにかしたいんでしょう?」

 

 

 にっこりと笑ったアカネは言った。

 

 

「今がチャンスだよ。私は何も出来ないけれど……。行動するなら鏡夜くんを連れていきなさいな。それでとっとと終わらせてきなさい」

 

 

 

 

 

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