ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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 ――――これは運命ではない。必然だった。






悪魔の取引=彼女を穿つ楔

 

 

 

【夕青白】攻略できない人集まれ!

 

 

 

296 ゲーム攻略したい名無し

初っ端からラスボスに挑むとか本当にクソゲーですねえ!!!

 

 

 

297 ゲーム攻略したい名無し

制作会社にクレーム言ってきたわ。

そうして出てきた一つのヒントに頭抱えたわ!!

 

 

序盤から詰んでいた朝比奈様とのアレより前から探索が足りないと知った俺たちの気持ちを知れ……!!

白兎を先に探せとか知るかあああああああ!!!

 

 

しかも神社とかに行ってもいねええええええええええええええし!!!!!!!

どこにいるんですかねえ!!!?

あと白兎死んでた夕青データのプレイヤー達はどう対処したらいいんですかねえええええええええ!!!??

 

 

298 ゲーム攻略したい名無し

いや違うだろ。「探索しろ」っていうヒントしか出てねえだろ。白兎を探すのが答えじゃねえよ。

それに俺たちも序盤から選択肢や台詞パートじゃなくて自由行動できるのが何故なのかって疑問に思えばよかったんだよ。

 

 

朝比奈様の実家とかにも行けたし、彼女が行方不明なこととかも知れたしな!!

五色町には行けましたか皆さん!?

 

 

 

299 ゲーム攻略したい名無し

行けません

 

 

 

300 ゲーム攻略したい名無し

行けないっす

 

 

 

301 ゲーム攻略したい名無し

夕黄のクリア条件ってなんだっけ?

夕青と同じだっけ?

 

 

 

302 ゲーム攻略したい名無し

基本的には生き残ること。

 

 

ただしおっぱいちゃんは絶対に生き残らせること。それぐらいかな。

一番本気出すのはホラーの方だから。幽霊の方だから……。

 

 

 

303 ゲーム攻略したい名無し

ハッピーエンドが生き残ること。ノーマルエンドが自分とおっぱいちゃんこと桃子ちゃんだけ。バッドエンドが己の死でありアカネ様の眷属化?

 

 

 

とりあえず神に縛られているのは夕青と同じって感じかな

 

 

 

304 ゲーム攻略したい名無し

ああああああまったくもってわかんねえわ。普通に大学謳歌してたわー。

鏡夜ちゃんがやりたいリストをアイテム欄に入れてたからその通りに行動してたわー。

 

すなわちあれ誘導トラップということですね!!!

 

 

隣町にはいけないけど、天くんたちには会ったよ!!

 

 

 

 

305 ゲーム攻略したい名無し

>>304 まじかどこで!?

 

 

 

306 ゲーム攻略したい名無し

え、天って普通に夕日丘にいるの!?

 

 

だってエピローグで「もう二度と夕日丘にはいかないっす……」って直感で何かを恐れて卒業に挑んだんだろ?

入学したのだって、そうしないと自分の命に危険が起きるって直感で分かっててのことだったみたいだし。

 

 

 

307 ゲーム攻略したい名無し

さっきの人とは違うけど、俺も天には会ったぞー!

 

 

普通に商店街の方にいたぜ。まあ話しかけようとしたら避けられてすぐさま逃げられちゃいましたがね!!

 

 

 

308 ゲーム攻略したい名無し

……逃げたってことはつまり鏡夜に会ったら危険が迫るということを察知したのか?

 

 

 

309 ゲーム攻略したい名無し

>>308 そりゃあ逃げますよねー!!! 次の夜には朝比奈様襲撃確定ですからねー!!

 

 

 

310 ゲーム攻略したい名無し

初日に自由行動できる、すなわちその間に何かしらのヒントを探せってこと。

もしくは誰かに会って守ってもらえってことだもんな!!

 

 

でもその自由行動がどこまでもいけるから辛い!!!

隣町にはいけねえけど!! 夕日丘って意外と大きい町だから!!!

 

 

 

311 ゲーム攻略したい名無し

やっぱり紅葉秋満に会った方が良いんじゃないか?

 

 

 

新キャラだし……。

 

 

 

312 ゲーム攻略したい名無し

でもあいつ、秋音の弟だぞ?

 

 

 

新キャラ紹介でもなんか不穏だったし、大丈夫なのか?

 

 

 

313 ゲーム攻略したい名無し

そもそも秋音の家が何処にあるのかすら知らねえ……

 

 

そういえば朝比奈様のお家についての事情って知ってる?

 

 

 

314 ゲーム攻略したい名無し

え、なんかあるの?

 

 

 

315 ゲーム攻略したい名無し

あああああ!!!!

 

 

行動パート短すぎるように感じる!!!

何度もリトライしないと探索できない歯痒い!!!

 

 

 

316 ゲーム攻略したい名無し

朝比奈ってなんか事情あったか?

いや、なんか凄い大金持ちの家に生まれた令嬢なのは知ってるぜ。

 

 

剣の道に進んだのは「先祖代々のしきたり」らしいし?

そういうの夕赤で過去パートにやってたもんな。探索してたときに朝比奈の日記が出てきてなんか侍か軍人か何かだっていう大昔からいたものすごい一族で、その生まれを卑下していたけど……

 

 

 

317 ゲーム攻略したい名無し

「女に生まれてしまって、ごめんなさい」

 

 

あれって本当に朝比奈の日記だったの?

いやアイテム欄に記載されてた名前はそうだけど、強気で素敵な朝比奈様の日記とは思えないぐらい親に見捨てられて自分が生まれてはいけなかったって嘆いてる悲しい女の子の日記にしか思えなかったんだが

 

 

 

318 ゲーム攻略したい名無し

夕赤で朝比奈の両親が出てこないから察することなにも出来ないもんなぁ。

世話役はモブだし、燕がほぼ一緒だし。

 

 

朝比奈家の事情っていっても話しかけた人物はそこに仕えてるモブキャラで、噂話でしかないようなもんだけどな

 

 

319 ゲーム攻略したい名無し

……なあ、俺たちもう一度夕赤プレイした方が良いんじゃねえかな?

 

 

もしかしたら行動パートで探索足りてなかった可能性があるぞ

ついでにいうと夕青も

 

 

 

320 ゲーム攻略したい名無し

……またやるのか。あの地獄の攻略を

 

 

 

 

321 ゲーム攻略したい名無し

ああああああ!!!!

しょうがねえからやってやるよ!!!

 

 

じゃねえとプロローグクリア出来ねえし!!

仕方ねえからな!!!

 

 

 

322 ゲーム攻略したい名無し

プロローグクリアしても完結はしてないしまだ序盤っていう……(ボソッ)

 

 

 

323 ゲーム攻略したい名無し

それ言うなよ馬鹿!!!!

 

 

 

 

・・・

 

 

・・

 

 

 

 

 

 

 スレが荒れている。

 でもそれはある意味予想通りだった。

 

 妖精に言われた通りの場所。

 数か月もの時間がかかった。妖精はそれでも何も文句は言わない。ゲームは起動してもしなくても同じになっていた。妖精も映らない。暗い画面のまま。

 

 しかし――――妖精に言われた通り、中古の夕青を売った男を探していた。

 事故で重傷になり眠ったまま起きなくなったらしいとのこと。

 とある妹によって、そのまま眠り続けてもらっているらしいとのこと。

 

 調べてようやくたどり着くことが出来たある病院。

 その一室の前、私はそこで立ち止まる。

 

 入院中の患者が歩いているのが見える。

 お見舞いに来た人もいるらしい、看護師もいて少しだけ騒がしい音がする。

 

 でも私だけ……この一室の前に立っている私だけが、なんだか別世界に来たような気がした。

 

 

「……この中にいる」

 

 

 ごくりと喉を鳴らして中へ入る。

 やるべきことはその完全クリアを果たし、眠り続けている男を殺すことではない。

 

 ただ会ってほしいと言われた。

 一瞬だけ躊躇してしまったが――――扉を開いて中へと入る。

 

 そこにいたのは、ベッドの中で眠り続けている黒髪の男。

 そして……。

 

 

「……ようやく来ましたね」

 

 

 あの妖精の顔に似た、一人の少女だった。

 身体は人間。力もなにもない、ただの少女にしか見えない。

 あの眠っている男の妹なんだろう。

 

 しかし、その顔を見ただけですべてが現実だったのだと確信する。

 

 ゲームのシナリオででたらめを言っていたわけじゃない。

 眠っている男も演技をしているわけではないし、少女だってなんだか普通とは違う気がする。

 

 

「本物?」

 

「うふふ。失礼ですねー。私はちゃんとここにいますよー」

 

「でも、ゲームに……」

 

「そちらの私は、ちゃんとあなたを認識してくれたんですね。つまりは次元を越えて見ることが出来た。……私達の作戦は成功ということです」

 

 

 私達と示したのは、彼女と私のことではないはずだ。

 眠っている男にも、何かあるのか。

 神無月鏡夜が死んでいないといったのは何だったのか。

 

 にこりと笑った少女が口を開く。

 

 

「はじめまして、そしてこれからもよろしくお願いしますねー。……さあ、共に神を殺しにいきましょうか」

 

 

 差し出された手に向かって、戸惑いなんて何もなかった。

 

 にっこりと笑った少女が、部屋から出ていく。

 それに私は慌てて――――眠っている男を一瞥してからすぐさま彼女を追いかけた。

 

 病院の外で待っていた彼女は、私が追い付くとまた歩き出す。

 その後ろについていく。

 

 

 何の説明もなく、ただのんびりとした歩調のまま。

 

 

「あなたは私のこと、怖くないんですか?」

 

「怖いよ。だってまだ何が起きているのか分からないし、知らないことだらけなんだから」

 

「あらあら、うふふ……恐怖を感じていてもなお、私についてくるだなんて愚かですねぇー」

 

「でも、私がいてもいなくても何かが起きていたはずでしょう?」

 

「……それはどうでしょうね」

 

「え?」

 

「まあともかく、あなたのようにゲームを現実だと受け入れる馬鹿がいてくれて良かったってことですね!」

 

 

 少女がこちらに向かって振り返る。

 そうして、あの夕青ゲームのアニメーションにて出てきた妖精がウインクしてきた時のように、キラッと星を出すような笑みを浮かべて言うのだ。

 

 

(ゲームを現実だと受け入れる、か……)

 

 

 人間とは、見たもの全てをきちんと受け入れ信じる者と信じない者がいる。

 これは夢なんだと思い込み現実逃避する者はいるだろう――――私の身に起きているすべてを、他人が共有するとすればだけれど。

 

 

「そうだ、聞きたいことがあるんです!」

 

「ん?」

 

 

 くるくる回ってから前を向いて歩き出した少女が問いかけてくる。

 その言葉に私は首を傾けた。彼女は楽しそうにしながらもまた口を開いた。

 

 

「神という存在について、何か思うことはありますかー?」

 

「……いや別に。私から見れば神というのは……ただ人間にとっての心の拠り所のようなものとしか思えない」

 

「うふふ。そういう正直なところ好きですよー」

 

 

 私の言葉にクスクスと笑う妖精に似た少女は、私より年下に見える。

 楽しそうな表情を止めようとしないからか、より無邪気で幼く感じてしまうのだろうか。

 でも、実際はどうなんだろう。

 

 この少女がゲーム世界に繋がっている存在だとしたら、何かしらの力を使える人物だったとしたら……。

 

 

(こんなこと、他の人に言ったら頭がおかしくなったって思われるかな……)

 

 

 それでも私は信じてしまう。

 少女が妖精と同じ存在であるということも、ホラーゲームのあの世界がこことは異なる世界であるということも。

 

 それらすべてを教えてくれたのは――――今目の前でどこかへ向かって歩いている少女なのだけれど。

 

 

「この世界には確実に冬野白兎……あのゲームの設定にある神がいるはずなんですよー」

 

「えっ?」

 

「本当はあの世界で対処出来たらよかったんですけどねー。実際、数多ある世界の私はそうやってきて失敗してしまったでしょうから」

 

 

 その言葉の重さに思わず立ち止まる。

 最初に言われた時は理解がしきれなかった。しかし何度も思考を回してその境地へ至る。

 

 

「ゲームは数百……いや、下手をすればそれ以上もの人がプレイしていることになる。それら全てが、数多ある世界の一つってこと!? あれら全部が、現実で起きていることなの!?」

 

「半分不正解でーす!」

 

「えっ?」

 

 

 にっこりと笑った少女が言う。

 

 

「人生においてリセットなんて存在しません。戻ることは許されません。それは現実と同じですよー」

 

「……じゃあ、ゲームのリトライとかリセットとかは」

 

「パラレルワールドってご存知です? あなたがゲームをやらなかった世界。あなたがゲームを現実だと受け入れない世界になっていた場合、こんな風に動くことあり得ませんよねぇ?」

 

 

 クスクスと笑いながら、少女は話す。

 まるで親に向かって何かを自慢する子供。もしくは得意気に披露するエンターテイメントのようだ。

 

 

「あなたのゲームにいる私は……いいえ、こちらの世界を見た私は、きちんと全てを見通した筈です。私だったら絶対に彼女をここへ誘導してやりますよ」

 

 

 それは決意の証なんだろう。

 絶対に成し遂げてみせるという確信でもあり、覚悟の目をしていた。

 

 

「……ねえ」

 

 

 それでも分からないことがあった。

 私は何度もホラーゲームをリトライしてきた。分からない部分も多いし、ゲームシステムに四苦八苦することだってあった。

 ただスレの忠告通りに動いたり、キャラクターの有能性について調べたりを繰り返しただけだ。

 

 私はすべてを知らない。

 でもゲームでのバッドエンドの数々は知っている。

 

 

「冬野白兎は妖精によって殺されたバッドエンドもあったはずでしょう? それなのに失敗したの?」

 

「ええ……だって冬野白兎は真名ではありませんから……私が欲しいのは、その中にいる彼女だけ。私たちをこうして縛り付けて楽しんでいる……福の神などと名乗る神々のうちの一つ」

 

 

 それ以上は話そうとはしなかった。

 額に青筋を立てて怒っている様子がわかる。でも笑う。空を見上げて、何かについて嘲笑っている。

 

 そうして――――彼女はふと、何かを思い出したかのように笑うことを止めた。

 風によってひらりと舞うスカートを手で軽く押さえながらも。

 

 

「……さて、具体的に質問しますねー」

 

 

 立ち止まった少女が、私に向かって話しかけてきた。

 それが事実であるかのように。

 

 質問というよりは、確認をするためのものであるかのように。

 

 

 

「あなたの名前は紅葉秋音でよろしいですか?」

 

 

 

 その質問に、私は小さく頷いた。

 

 

 でも私は、あの紅葉秋音とは違う。

 黒髪青目で全く異なる見た目をしているから同姓同名の別人だろうと思っていた。

 

 ――――そう、思い上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 


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