ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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第■話

 

 

 横から覗いてみる記憶はあまり良いものではない。

 この記憶はリトライを繰り返して徐々に妖精の攻略法について考えていた頃の鏡夜だろうか。

 

 手鏡は記憶の元だから、思い出してもらうには手っ取り早いと思っていたんだけれど……まさかこんなものを用意しているとは恐れ入る。用意周到なのはいつものことか。たまに変な方向へぶっ飛ぶこともあるけれど……。

 

 

 ああでも、この彼は知らない。

 一番最初を覚えていないはずだから、察してはいるかもしれないが断定はしきれていないだろう。

 

 ホラーゲームの世界では、神無月鏡夜と私のほかにも転生者が二人いた。

 でも私のように特殊な力を持っているわけじゃない。私の能力――――すなわち、『海里夏』のゲーム設定にうまく救われたわけではない。

 鏡夜のように記憶を引き継ぐ手鏡を持っているわけじゃないだろう。

 

 だからきっと、妖精の手によってもう喰われているから、今は私たちだけだ。

 ……たぶん、きっと。

 

 

 ちゃんとした記憶を持った転生者は私と鏡夜だけ。

 だから今を失敗したらもう二度目はないと分かっている。

 

 

(あの一番最初に生まれ直した時とは違って、世界は歪に修正されている。妖精がやらかした問題点はそれだから……)

 

 

 一番最悪なのは、妖精が学習するといったところ。

 強いからと人を見下すことはするが、それ故に決して負けを認めない向上心の化け物。

 

 人間にとってのハッピーエンドは切り捨てられ、あいつらにとっての終わりを目指す。

 過去は捏造され頭を覗かれ表世界へ出ようとしている。それを止めるために鏡夜は必死に動いていた。

 

 だから彼は記憶を取り戻した瞬間から絶望するのだ。この世界がホラーゲームのハードモード以上に厄介なものだということを。

 

 

(一番きついのは、妖精より表に出てこないあの化け物共)

 

 

 複数の敵が分かった時だった。

 最初の転生。まだホラーゲームの世界だと思わず、夕日丘高等学校というのもあのゲームに偶然似たものかと思っていた頃だった。

 

 ――――全てが変わったのは、冬乃お姉ちゃんに会ってから。

 

 

「ッ――――」

 

 

 壊れた音がする。

 気が付けば視界は暗転し、いつの間にか過去の鏡夜による説明が終わっていつものように夢から覚めようとしてるのだろう。

 

 

 表へ引っ張り出されたら、その時は鏡夜から手鏡を受け取って紅葉秋音のもとへ向かわなくてはならない。

 彼女はきっと警戒するだろう。でも一周目の鏡夜だと思えば全然問題はないはずだ。

 

 

「……ん。なに?」

 

 

 なかなか目が覚めない私の視界が何故か一気に晴れる。

 手鏡の能力行使については問題なかったはずだ。いつものように、あの神が教えてくれた通りに従ってやっておいたから、失敗はしていない。

 

 だというのに今見えるのは夕日丘の景色。

 神社から見える景色じゃない。

 

 大きくて真っ赤なモミジの木々がある公園のベンチに座っているのか。視界は小学生ぐらいの目線だった。誰もいない――――とても寂しい場所だった。

 

 

「――――俺に協力してくれている者へメッセージを託す。……たぶん、これを見ているのは海里夏だろうが」

 

 

 私のことを名指しした声により察する。

 今見ている景色と声は、先程とは違うものなのだろうと。

 

 

「さて、これは■■が奇跡的に思い出したことによって使える一方通行の手紙のようなものだ。協力者がいない場合は自動的に消滅するようになっている……はず」

 

 

 幼い鏡夜の声がした。

 先ほどの鏡を壊したあの高校生ぐらいの彼ではない。

 

 別の時間軸の鏡夜なんだろう。

 

 

「……とにかく説明しよう。俺の考えが正しければ紅葉秋音が記憶を完全に取り戻すまで――――それまでに中途半端な時期に思い出して死ぬ可能性は高い」

 

 

 ……まあ、そうでしょうね。

 だからこそ、責められる覚悟はできていたんでしょうね。

 

 

「妖精は着実に力を溜めている。冬野白兎もそれに対抗して何とかしようとしてくれているが……リトライを繰り返すごとに戻ってしまうから手遅れになる。紅葉秋音が転生者の記憶を持っていると知られたら……それで、二周目に彼女と共闘して妖精を殺すことが出来たら次はきっと現実世界の彼女を狙うだろう。いやもう確実に狙っているはずだ」

 

 

(ええ、そうでしょうね……だから私は死んだんだから……)

 

 

 現実で死んだのは、ゲーム世界での私が鏡夜に協力して負けたからだと知っている。

 

 それに……自分で言うのもなんだが、元々は素直な性格で敬語を軽く使っていた。

 こんなにも捻くれたのは、何度も経験した死と怒りと復讐心によるものだから。

 

 もう安易な人助けによって殺されるのはまっぴらごめんだ。

 これは私が死にたくないためにやるだけの、自分優先で行う協力なのだから。

 

 

「多分そこで聞いているお前は……この神無月鏡夜の魂を冬野白兎が狙う理由は分かるだろう。妖精は最初は興味を持っていなかったが今はある程度狙ってくるようになったのも知っているな?」

 

 

 それは主人公だから。

 彼が居なければ世界は崩壊する。

 

 なんせ異世界の元となったのがホラーゲームなのだから。

 

 それを阻止したい妖精が何かしらやらかしているから、多分私のようにいろんな世界線へ飛ぶことが出来ているのだろうが……。

 

 

 

「まず結果から言おう。妖精の行動によっては――――俺たちは、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(はっ?)

 

 

 それは予想していなかった。

 私たちが元の世界に戻れる? そんな奇跡みたいなことが出来るわけないでしょう?

 

 

「策はある。俺の言葉を信じてほしい」

 

 

 

 そうして鏡夜は話す。

 確実にそうなるだろうと予想しているようで、ほぼ断定的に。

 

 

 それは――――。

 

 

 

 

 

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