ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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第五十四話 姉と弟

 

 

 

 

 リハビリを終えて、身体を休めてくれと言われベッドの中で購買で買った情報誌を読む。

 暇つぶしとして買われたそれは、ありきたりな雑誌だ。報道のほかにいくつかの娯楽、芸能人についてのインタビュー記事など、誰かが買ってもあり得るもの。

 記憶のない俺にとっても、周囲から見れば記憶を思い出すために必要なものとして買ったのだと思われるはず。

 

 ニュースだけでは足りない。というか、俺がテレビでそのニュースを見たら必ず検診で記憶について問われるため、むやみやたらにニュースを見るのは良くない。

 だがこのままではいけないのは確かだろう。ゲームについても調べないといけない。

 

 周囲が察知できるほど派手に探すのは良くないため、情報誌を買って娯楽をという風に装う。

 最近思ったんだが、どうにも俺の扱いは――――完全な容疑者として扱われているとは感じられないからだ。以前会話の中で「彼以外にも目覚めた人は多い」と言っていた。そちらの対応もあるのか、監視の目は緩くなっている。

 それにあの男どもは無理やり俺と話をしようと言う意志はまだないようだ。

 

 

(雑誌のニュースの記事はっと……)

 

 

 ぺらぺらとめくって、その記事を見た。今までの雑誌と同じく情報を集めた。

 

 俺が調べた内容をまとめれば――――とりあえず、世間で騒ぎになっているのはユウヒシリーズのゲームによる集団昏睡事件のこと。

 この雑誌に書かれていたのは被害者についての状況だった。

 何人もの人たちが昏睡状態に陥り、目覚めないらしいということ。それも原因不明であり、全ての共通点から夕青のゲームをやっていたこと。

 それと同じく、ユウヒシリーズを全て始めてから、夕青白のプレイ途中で意識を失って倒れたということだった。

 

 ネットで検索すれば履歴などからバレる可能性があるため無理だったが、雑誌での情報だけでもかなりたくさん集められた。

 ゲーム状況を再現するためにとある番組でユウヒシリーズをやってみたはいいものの何も起きず、妖精によるちょっかいも起きず、普通にクリアできたらしいということ。

 

 容疑者になっているのも――――ユウヒシリーズを手掛けたシナリオ製作者である夕日丘夕陽が原因不明の死体として発見されたのが発端らしい。

 

 昏睡状態のまま意識を失っていたわけじゃない。

 心臓発作と言うには心臓が何かの衝撃を受けたのかかじり取られたかのように抉られていたこと。心臓以外は何も傷がなく、心臓を覆い隠すあばらや素肌でさえ無事だったこと。

 まるで心霊現象かと思えるような状況にオカルト的な扱いをされてはいたが――――そこから殺人事件へ方針を決めて容疑者として扱われるようになったと見える。

 

 しかし彼らの考えは分かる。ユウヒゲームシリーズと書かれたそのゲームによって、無差別による攻撃が行われているのではないかと。

 無理な理論を立てるなという批判の声もあるようだ。ユウヒシリーズのゲームが共通点なのは偶然ではないかと言うのもある。だから表向き、夕日丘夕陽の殺人事件の容疑者として取り扱われているような状態として扱われているのだろう。

 

 

(……でも、集団昏睡がどのような状況で行われているのか分からないというのに容疑者扱いとして断定されることはないはず)

 

 

 ゲームの協力者は夕日丘夕陽以外にも必ずいるはずだ。

 なんせ俺が知っているのは夕青と夕赤、そして夕黄のみ。夕青白なんて最新作のゲームは知らない。

 しかしシナリオをすでに完成させていた夕日丘夕陽の最後の作品として売り出された『ユウヒ―青白の反撃戦―』は俺がこの現実世界で昏睡状態となった後に発売されたらしい。俺が眠りについてしまったのは半年前であり、夕日丘夕陽が死んだのはそれより前だと調べてある。

 

 だというのに、わずか一か月前の最新作ゲーム――――。

 その当時は制作会社について詳しくは知られていなかったようだが、事件が起きてようやく夕日丘夕陽という女性について明かされたらしい。

 

 とにかく、制作会社は何かを知っている可能性が高い。同じく、敵である可能性だって……。

 

 

 

「っ――――」

 

 

 誰かが突然扉をノックしてきた。それに慌てて雑誌を引き出しの中へ仕舞いつつ、声をかける。

 

 部屋の中へ入ってきたのは、黒髪の女性。

 俺と似た顔をした――――彼女は。

 

 

「……姉さん?」

 

「ああよかった。覚えているのね鏡夜! 目が覚めたっていうからあわてて仕事引き継いでもらって日本に帰ってきたのよ。まったく心配かけて!!」

 

「いや……老けたな?」

 

「はぁん? なんつったゴラァこの愚弟! 半年も経ってたら少しは老けるわ!!」

 

 

 違う。そうじゃない。

 まだ記憶が混乱していてゲーム知識の設定として認識してしまう。

 

 神無月鏡夜に姉はいる。神無月夜空という名の見目麗しい女性。黒髪青目は鏡夜と変わらず、ただくるりとカールした髪をまとめて一つに結んでいる姿と活発そうな姿はある意味、紅葉秋音を思わせる。

 ゲームの中にいる彼女は大学生で、海外留学を目指していくつか勉強を重ねつつ学生生活を謳歌しているとされていた。そういう知識だけは覚えていた。

 

 現実にいる彼女は、大学生の頃とは違い変貌していた。

 慌ててきたのだろう。日本にやってきたというからおそらく海外で仕事をしていたのか……。

 薄い化粧に隠された濃い隈。ぼさぼさの髪の毛はベリーショートにまで切られており、その雰囲気などからして、大人になったと思える印象があった。

 というか、これは決して口に出して言えないが母さんのような顔立ち。すなわちちょっとおばさんになったなと。

 

 ――――そういえば、鏡で見た時の俺の顔立ちも高校の頃と比べるとかなり変わっていたような気がした。だから最初誰なのかわからなかった。

 背も高くなっていて、ひげもあって。剃ったこと。やつれている身体と「神無月さん」と呼ばれたこと。昏睡状態でいたためかなり変わったのではと思っていた。

 情報入手といういろいろと忙しい状況もあり、童顔であることも重なって分かりにくかっただけかもしれない。

 年齢と言う確かな答えは、確認を怠っていた。

 

 

「……なあ、俺って今何歳なんだ?」

 

「それは覚えていないのね……とにかく、それも含めて話をしましょうか。ほら入って」

 

「ん?」

 

 扉の奥にどうやら人がいたらしい。

 ゆっくりとやってきたその人は夜空姉さんより大きく、男性だと分かる。

 大学生くらいの男だった。短髪で少し焼けた肌。鍛えているのか体格も良く、しかしなんだか疲れ切った顔をしていた。

 

 スーツ姿であるため警察かと一瞬警戒したものの、目の前にやってきた男は見知った姿をしていた。

 

 

「……久しぶり。それとも初めましてと言った方が良いか?」

 

「えっと」

 

「紅葉秋満。秋音姉さんの弟だ」

 

 

 

 

 

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