ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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第五十七話 忘れてしまう時にいたのは誰?

 

 

 

 医者によって一時的な外出許可が出たため、俺は警察官に連れられて海里夏がいる場所へ向かっていた。

 車に乗せられ、そのまま走り出す。

 

 姉とあの秋満にはもうとっくに説明しておいたため、彼女たちはそろって溜息を吐き「後で戻ったらまた話をしましょう」ということになった。

 

 車の外の光景を眺めては酔わない程度に思考を回す。

 

 

 記憶が思い出せないでいる理由。

 俺の記憶喪失は――――何かしらの精神的なショックが原因であるとされている。

 

 頭に物理的な怪我を負ったわけじゃない。

 法外な薬を利用していたわけもなく、医師の判断からしてそう考えるのが妥当であった。

 

 妖精の何かが関わっていなければ、だが。

 

 

(仮にも俺の記憶を封じた奴がいるのであれば……記憶を思い出してほしい奴と、思い出して欲しくない誰かがいるはず……)

 

 

 動画の中で出てきたあの幼女の声が本当に妖精だった場合は彼女自身が俺の記憶を封じたわけじゃなくなる。

 思い出せない理由が俺自身にあるのであれば、記憶を忘れたくなるほどの何かがあったと考えられる。

 しかし自然に記憶を思い出せなくなった、または精神的なショックで記憶喪失になった可能性も捨てきれてはいないが、それならあの動画の『思い出して』の意味が分からなくなる。

 

 誰かが俺の記憶を思い出せなくしていたとしよう。

 それが妖精にとって不都合で、早く思い出して欲しいとあの動画を残したのかもしれないと。

 

 それに一番の気がかりなのは背後の音だ。

 女の子の声だけが重要であり、それ以外が必要ないということになるなら無音でもよかった。悲鳴や異音、何かを食べているような音なんて響かせるはずがない。

 

 その音は――――何か以前に、どこかで聞いたことのあるような気がするのだ。

 思い出せない中にある記憶の一部なのだろうか。

 

 もしかして無限ループしていた頃の記憶か?

 それともこれは俺が持つ紅葉秋音の記憶の一部だろうか?

 

 

(……あと、俺の記憶を封じた理由についてだ)

 

 

 妖精にとって必要で、それを封じる理由。

 あの妖精は言っていたじゃないか。自分の身が封印されて出ることが出来なくなっていると。

 

 俺たちを閉じ込めたのだって、ある意味それは外部の……夕陽の手があっての事だというように言っていたじゃないか。

 ゲームをして目覚めることが出来なくなった人々の魂を集める理由。俺をつけ狙っている理由。

 あの動画は誰が投稿したのか……。

 

 

「着いたぞ。ここだ」

 

「……」

 

 

 やってきた場所は俺がいた場所とはまた違う病院。

 その海里夏が入院しているらしい一室。

 

 

 中へ入ってみるとそこにいたのは、髪を肩まで伸ばした女性の姿がそこにあった。

 大人の姿をした海里夏がいたのだ。

 

 

「さて、話したいことがあったと聞いた。約束通り連れてきたぞ」

 

「……ああ、二人っきりにさせて。それで話させて」

 

「……そうしたら、お前はちゃんと話してくれるんだな?」

 

「もちろんだよ」

 

「……逃げないように監視だけはしておく。それだけは忘れるな」

 

 

 警察官が出入り口に立つようにして外へ出る。

 それらの意味。そして俺とはまた違う対応の仕方。

 

 つまり彼女は警察官たちにとって――――。

 

 

「想像している通り、アンタよりずっと容疑者の立場として怪しまれてるんだよ」

 

「……海里」

 

「ああ、そう呼ぶんだアンタは。まあ予想通りだと分かったからいいけれど……」

 

「どういう意味だ?」

 

「別に」

 

 

 あの世界にいた時よりよっぽど読みにくい表情をしている。

 無表情と言うよりは、人を小馬鹿にしたような態度と全てを諦めたような目になっているというべきか。

 

 

「アンタはどうだったの。妖精の中にいて……何か思い出したことはある?」

 

「お前もそれを聞くんだな……」

 

「当たり前でしょう?」

 

 

 俺はただ首を横に振って何も覚えていないという。

 そうすると海里夏は溜息を吐いて、また「想像通りだったわ」と言うだけ。

 

 

「じゃあ聞くけれど……過去については覚えてない?」

 

「だから何度も言うように、俺は何も覚えては……」

 

「あの妖精の世界で、アンタは家族と一緒に暮らしていたはずだろ? 偽りに満ちた家族だったけれど、記憶は大体そろっているはず。その過去の記憶も曖昧か?」

 

「……妖精がぐちゃぐちゃにしてくれたおかげで何も覚えていねえよ。覚えているのは高校が始まってからのあの日々だけだ」

 

 

 それも、紅葉秋音の記憶と神無月鏡夜の記憶が混ざった複雑なもの。

 これでよく正気を保っていられるなと自分の事ながらも思う。

 

 

「……何時からそうなったのか、覚えてる?」

 

「いつからって……」

 

「きっかけは必ずあるはずだよ。忘れた理由も、その時に誰かが必ず立っていたはずだ」

 

「だれか……」

 

「私はアンタに思い出してもらわなきゃ困るんだ。そういう約束をしたから……」

 

 

「ッ―――――誰と約束したんだ!? 妖精か!?」

 

 

 

 思い出してもらわなきゃ困る人こそ、もしかしたらあの動画に出てきた女の子かもしれないと……。

 

 そう思っていると、海里夏は俺が「妖精」と言った瞬間鼻で笑って馬鹿にしてきた。

 

 

「まあ妖精もそりゃあアンタには思い出してもらわなきゃ困るだろうね。でも私が約束したのはそいつじゃない。私とそいつが事件の犯人にされちゃうかもしれないから、思い出してもらわなきゃ困るってだけだよ」

 

 

 そうして彼女は話す。

 

 

「私が約束したのは紅葉秋音、アンタだよ」

 

「はっ?」

 

 

 

 

 神無月鏡夜たる俺に向かって、海里夏はそう言った。

 

 

 

 

 

 

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