ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ   作:かげはし

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第七十三話 こどく

 

 

 

 私はきっと、運が良い。

 いいえ。私は絶対に、幸運に恵まれた!

 

 だってそうでしょう。

 そうじゃなきゃありえない。

 

 だって世界とやらはこんなに広い。

 国だってたくさんあると知った。何億と人間がいることも知っている。その中で私が欲しいたった一人が、偶然傍に来るとかあり得ると思うの?

 

 きっと、白兎のあの運の良さが私にも備わったせい。

 まだ白兎の力を思う存分使えるわけじゃないけれど、それでもやれることはある。

 

 私は世界を超える。この世界に縛り付けられるつもりはない。だって数々の世界の可能性を見てきた。夕青のゲームをしている以外にもやれることはある。夕陽という魂と身体を手に入れれば、私があの夕青シリーズのゲームを作り上げて、それを縁にしてプレイヤーたちをおびき寄せることぐらいは可能……。

 いいや、そんなまどろっこしいことをしなくてもいい。そう、あの白兎を半分だけ食らった時のように!

 周りにいた人間たちを食べた時のような、そんな絶望を味わうんだ!

 そう私は心に決めた。

 

 だからあとちょっと。あと一つの境界線────。

 たった一つの魂を食らってしまえば、もっと力を付けることができる。

 

 この鏡世界から出たらどうしようか。

 まずは私を縛り付けた赤色の怪物を私が食らってやろう。そうして自由に生きてやる。

 

 ああ、もうちょっとだ。

 私が超えるべき境界線。最後の一つである魂は目の前に存在する。

 

 私が並行世界から引き寄せた夕陽の魂────それが、ゲームの登場人物に似た姿でやってきた紅葉秋音の子供の姿で来たのだから。

 

 最後の一つである、あの夕陽は男だった。

 ゲームをしている知識はあれど、それ以前の生前での生活についてはあまり覚えていない様子だった。

 そうじゃなければ私を見た瞬間逃げ出すでしょうから。

 

 それにしても、本当に面白い。

 これは偶然と呼べるのか否か。

 

 それとも私がたくさんの呪いを振りまいてしまったせいでこの世界は夕青ゲームに近くなったのかしら?

 

 私の知る夕青ゲームの登場人物たちがこんなにたくさんいる。

 いや、別シリーズのゲームだったっけ。その人たちも幼少期の姿でここにいる。

 

 彼ら、彼女らは私を警戒していた。

 声で誘導して、なんとか鏡を壊してくれたけれど────それでもやはりというべきか、私は本体そのものが外へ出ることが出来なくなっていた。

 

 魂を分離させ私の一部たる『妖精ちゃん』として外に出ることは可能だけれど、本体が自由に移動できないなら意味がない。

 

 やはりこの目の前にいる夕陽の魂そのものである紅葉秋音を食らうしかないか。

 

 ────そう思っていたら面白いことが起きた。

 死体となり長い年月をかけて滅んだと思ったはずの白兎……いいえ、あの半死半生の死にぞこないは冬乃といったかしら。彼女の目玉が何故か干からびることなく地面に転がっていた。

 

 それを手にした神無月鏡夜らしき男の子が、それを飲み込んだのだ。

 私を見て発狂した? それともその目玉を食べれば何とかなると思った?

 子供だから何を考えていたのかは分からない。

 

 でもそんなのどうでもいいことだ。

 だって面白い現象が起きたのだから。

 

 ああそうだとも。そうでしょうとも。

 目玉はあの赤色の化け物の欠片。つまり、干からびることなく存在したそれは、異形の力そのもの。

 それを呑み込もうとしたのはきっと、私に対抗するためでしょう。

 

 まあ、もう遅いけれど。

 

 子供達を私の中へ取り込んでみて初めて分かったことだけれど、この外側の世界で冬乃姉さんと呼んでいる人がいるらしい。転生した少女がいるのだと────。

 そいつも私が食らってやろうと思い、魂の抜け殻となった子供の身体に私の一部を混ぜたものを入れて動かすことにした。そのまま放置していたら肉体が死んでしまうからもったいない。

 

 とりあえず紅葉秋音の身体を使ってやる。どうせ前世の夕陽の魂が入っていたもの。つまり私の身体として使っていいモノでしょう。

 

 この身体を使えばきっと、冬乃に会える。

 そうして食らってしまおう。

 

 誘導するのだ。この地下に。

 子供たちが倒れて動けないから助けてほしいと────。

 

 ああ、冬乃は生まれ変わっていた。

 私が知る冬乃の魂がそこにいた。半分だけで病弱で、それで記憶がない状態のまま愚かにも私に近づいて……。

 

 

 

「……あきねちゃん?」

 

 

 

 聞こえてきた声を最後に、その肉体を貪り食った。

 紅葉秋音の背後から飛び出してきた妖精の私に吃驚したのだろうか。その表情は驚愕のまま固まり動かなくなった。

 

 

 私の願いは見事に叶った。

 

 

 魂が混ざり合うような感覚。

 最後の境界線は超えた。次はあの赤色をと思ったけれど────。

 

 

「うーん……よし、止めましょう! 妖精ユウヒちゃんは猪のように猪突猛進に突撃はしない良い子なのですからねぇ!」

 

 

 なんせ、神無月鏡夜が飲み込んだあの目玉が気になった。

 彼の魂を食らっても、力が飲み込むことができない。消化が出来ない異物だった。

 

 ならばと私は魂をまぜこぜにして私が食らえるまでその力を馴染ませる。

 どうせなんだし、夕青ゲームでもやろう。暇つぶしならいっぱいできる。登場人物に似た顔をした子供たちがいっぱいいたのだから、彼女らを使ってゲームをしよう。

 

 私が作る。私のためだけの────最高の娯楽を!!

 ふざけているようでご都合主義いっぱいの、チート行為ありありの展開を貴方たちの手にゆだねましょう!

 

 ついでにいろいろと記憶を弄って、玩具のように扱って、そうして最後に食らってやろう。

 私の魂たる夕陽が前世であった紅葉秋音の魂と異物を飲み込んだ神無月鏡夜。二人を特に混ぜ合わせて料理したらどうなるのだろうか。

 それとも他の魂を使ってやろうかな? ああ、未雀の魂はよく馴染む。まるでスパイスのようにちょうどいい。

 

 この暇つぶしは、目玉の中に眠っていた力を食べるため。

 白兎も冬乃も私が食べてしまったけれど、それらを使うための力はきっと彼女らの手に入っている。だから神無月鏡夜に冬野白兎の魂も混ぜてやろう。

 

 混ぜて、殺し合って。また作って。

 壊れたら私が直そう。私が作り上げる最高傑作を見せてほしいから。

 

 私が美味しく食べてあげる。そうして自由に外に出られたら────ああ!!

 冬野白兎の力でもってあの赤色の化け物をぶっ殺してもいいかもしれない!

 

 

 さあ、どんな蟲毒ができあがるのかな!

 

 

 

 

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