私のヒーラーアカデミア   作:鼠日十二

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最終回と相成ります


切除 後

「……え?」

それは誰の声だっただろうか。

 

「れ、恋!?大丈夫!?」

 

 

「クソ!待てそこの敵ッ!」

「げぶっ!?」

 

 

上鳴は全力でダッシュ、範囲内に入ったと判断すると同時に思い切り放電させ敵の意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

「ぐう、うっ……先ずは、血を止めなければ……。八百万さん、紐か何かを……八百万さん?」

 

 

「あ、あ……」

百は顔面蒼白で蹲っていた。その足元には恋の腕。

 

 

「……不味い、パニックを起こしている……?」

「ど、どうすればいい!?」

 

「上鳴さんは……八百万さんに声をかけ続けてください。深呼吸をするように、とも。耳郎さんは、私のバッグからハサミを取り出してくれますか?」

 

「お、おう、任せとけ。……八百万、大丈夫か?ひとまず落ち着いてだな……」

 

 

 

一方耳郎は。

「あった、これ?」

「そうです。ありがとうございます」

ハサミを取り出して恋に手渡した。

 

そして恋は頭を振り、三つ編みを前に持ってきて噛んだ。そして、

 

 

 

その三つ編みを根本からバツンと切り落とした。

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

「これを止血用の紐の代用にします」

 

そう言って恋はそれを二等分し左腕の肘の辺りと落ちていた腕を止血するようにきつく縛った。

 

「か、回復するんじゃダメなの!?」

「足りないんです」

「何が……まさか」

「そう、エネルギー不足。ただの傷を治すのならまだしも、ある程度の欠損が生じると桁違いのエネルギーが必要になる」

「そんな……」

 

「さて、私は今から水難ゾーンへ行きます」

「その腕で!?本気!?」

耳郎が叫んだ。目には涙すら浮かんでいる。

 

「ダメです。私にはまだ救わなければいけない人が残っている」

「ならウチも」

「耳郎さんは……上鳴さんと一緒に八百万さんを守らなければならない」

「ッッ!でも」

「大丈夫です。みんな助かりますから。では」

言うが早いか、恋は走り出してしまった。

 

 

 

残された耳郎は呟いた。

「そのみんなの中に恋は入ってるの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走りながら恋は思う。

 

(ごめんなさい耳郎さん……でも恐らく、()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

 

走る。間に合えと、その一心で只管に走る。

 

 

 

 

そして。

水難ゾーンの端で恋が目にしたのは。

 

 

 

死柄木弔に頭を掴まれ苦悶の声を上げ血を流す峰田と梅雨だった。

 

 

 

恋の心は、至極冷静に───狂化した。

 

 

 

 

 

 

恋は知らないことであるが、恋達の立ち回りにより思ったより簡単にやられていく敵連合のメンバーを見た死柄木弔はかなり苛立ち、オールマイトより先に子供をたくさん殺して溜飲を下げようなどと考えていた。故に、原作より遥かに早く、死柄木弔の標的は生徒に移っていた。

 

 

 

 

 

 

恋は激情のままに叫んだ。

「どぉぉぉぉけぇぇぇぇ!!!!」

 

「あ……?ガキか…脳無。それ離していいからあっちのやつ殺せ……どうせすぐ死ぬと思うけど」

 

 

 

脳無は出久を投げ捨て、恋の方に向かってきた。

 

それを視認した恋は腰のリボルバーを抜き……()()()()()()ゴム弾を放った。

 

脳無は自分に当たらない弾に意識を割くような高度な知能は持ち合わせなかった為、その弾が自身の足元を通るのを許し───

 

 

地面で跳ね返った弾のうちに2発が死柄木の腹に突き刺さり、その衝撃に死柄木は思わず手を離し腹を押さえる。

 

 

「ぐっ……痛ぇ……はーーー。脳無お前ほんと頭悪いな……貰い物じゃなきゃ壊してたぞ……しかも相手はケガしてるってのに……」

 

 

 

 

 

その隙を恋は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

「緑谷くん!!跳びなさいッ!!!」

「───!わかった!!」

 

 

 

 

個性による脚力の強化で地面を陥没させるほど踏み込み、出久が広場の方に二人を抱えて跳び去った。

 

 

 

 

 

 

 

「…………お前さ、お前、何邪魔してくれてんの?腹立つ、あぁ……お前は確実に殺す、俺の手で殺す。この死に損ないが……さっきから一人も殺してないんだ、そろそろいいよな」

 

 

「脳無。死なない程度に甚振れ」

 

 

 

 

恋と脳無の視線が交差する。

瞬間、右に飛んだ恋が先ほどまでいたところに脳無の拳が叩きつけられた。

 

 

既に恋は、脳無を15秒以上視認していた。故に──第二スキルとも呼ぶべき個性が発動し筋肉の収縮から攻撃される方向を予測していた。

 

しかし、方向がわかるからと言って攻撃を全て避けられると言うわけではない。

 

「ぐぅっ!」

 

実際、恋は脳無の拳圧と叩きつけられ砕けた床の破片で横に吹き飛ばされた。

 

 

「まずい、目線を───」

 

立ち上がった恋が見たのは、既に拳を弓のごとく引き絞った脳無だった。

とっさに右手を体の前に持って行き、最低限の急所をガード────

 

 

しかし、ほぼ効果はなかった。

半ばアッパー気味に炸裂した拳は右手ごと恋の内臓に強烈な衝撃を加え、先程出久が跳び去った方に吹き飛ばした。

 

 

 

「俺が殺すっつってんだろ脳無…お前ほんと使えねぇ」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

緑谷出久は窮地に追い込まれていた。

両脇には頭から血を流す怪我人、自身の中指と足は既にズタボロ、さらに周囲は敵だらけだった。

 

今はまだ出久の個性を警戒し近づいてこないが、遠距離攻撃が可能な個性持ちがきたらその均衡は一気に崩れるだろう。

 

(まずいまずいまずい……!!腑労さんはあの怪力の個性と戦ってるし、増援は見込めない……!!どうする!?今度は拳を叩きつけて飛ぶか!?)

 

 

しかし、それもすぐに叶わなくなった。

 

何故なら、

 

出久のすぐ側に、

 

血塗れの恋が吹き飛んできたからである。

 

「腑労さんッ!」

「ゲッボッ、ゴボッ……あぁ、緑谷くんですか」

恋が血を吐きながら応える。

「喋っちゃダメだ!すぐに飯田くんが救援を呼ぶはずだから、それまで……」

 

「いいえ。いいえ、それではいけないのです」

「……え?」

 

「確かにいつかは救援が来るでしょう。しかしそれは30秒後?それとも5分後?それは不確定です。ならば……まだ、倒れるわけにはいかない」

 

「でも!腑労さんの体はもう……!!」

 

 

「大丈夫です。私が何の個性か知らないわけではないでしょう?」

 

そう言って、震える足を叱咤し、恋は立ち上がった。

内心で呟く。

(ごめんなさい、お父さん、お母さん……約束、破ることになりそうです)

 

 

そして叫んだ。

「最後まで諦めず、抗い続ける。そうである限り、道は拓けると……貴方は知っているはずです。私は武力としてともに戦うのではなく……貴方達が戦うことの後押しを、貴方達を最後まで治療しきることを───ここに誓いましょう。故に──────

 

 

 

 

 

模倣:我は全て毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)ッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

腑労 恋の個性は本来『ナイチンゲール』ではなく、『治癒』のみだった。

 

 

そのデメリットと本人の性格を鑑みた神様は、『治癒』を過剰に使わなくても生きていけるように……と、

 

 

怪我しにくい丈夫な体を。

前世の知識を活かし自身の個性を使わなくても人が救えるように、と人体の情報を得る手段を。

そして、それでも個性を限界まで使わなければならなくなった時のために、救済措置を。

 

 

一から概念を作り人に送るのは神としてあまりにも干渉が過ぎるし、最悪世界が拒絶反応を起こし崩壊しかねない……ならば、既に完成された概念を流用しよう、と言う理由で選ばれたのが『ナイチンゲール』と言う器だった、それだけのことである。

 

 

 

さらに、ナイチンゲールにはないデメリットを補うための救済措置……それは、

 

 

 

 

「自身の残存エネルギーをはるかに超える怪我を一度に治す場合、自身の生命活動に必要な最低限のエネルギーを残し、不足分を周りから無差別に奪う」

 

 

と言うものだった。

 

 

 

 

これは恋自身も気づいている。

きっかけは見舞いに来た猫をはねたドライバーの話。

違和感を感じた恋は、検証を重ねて自身の個性の異常な点を見つけた。

 

検証については……ハンマーと大量の虫を使ったかなり悍しいものだった、とだけ説明しておこう。

 

 

 

 

恋はこれをうまく利用できれば相手のエネルギーを枯渇させることも可能だ、と考えていた。

 

 

つまり、

 

治療に必要なエネルギーを回収→治療対象の体力は個性で無理やり回復→結果、見かけ上は敵だけエネルギーが奪われる

 

 

 

言ってしまえばゴリ押しである。

 

 

 

当然、体にはかなり負担がかかる。

さらに言えば、かなりシビアな条件が必要だった。

まず、自身含め周囲にある程度の怪我人が必要な事。軽過ぎては効果が長続きしない。

次に、自身のエネルギーがある程度枯渇している事。そもそも自身のエネルギー貯蓄で足りるならこの効果は発動すらしない。

更に、発動中は意識を保ち続ける必要があると言う事。

 

しかし一度発動すれば、意識が持つ限りそこは一種の聖域となる。

 

そして、その思惑通り────

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽

 

 

出久は目を見開いた。

「これは……?」

 

 

向こうの方で倒れているイレイザーヘッドと自分、さらに倒れ臥す二人に宿る緑の光は恋の個性であろう、しかし

 

 

「おい……なんだこりゃ……!?」

「体が思うように動かねぇぞ……!?」

 

 

何故敵達は膝をついているんだ?

これも腑労さんの個性なのか?

 

 

と思考に耽る出久を恋の声が現実に呼び戻した。

 

 

「立ちなさいッ!まだ戦いは終わっていないッ!」

「!」

 

「よく聞きなさい。私のおよそ半径10m以内で貴方の傷は回復し続けます。つまり……貴方は個性を自由に使って良い」

 

「それは……!!でも、腑労さんに負担が……」

 

()()()()()()()()()()。緑谷 出久……貴方は戦わなくてはならない。貴方の背中には……護るべきものがあるはずだ!ならば行けッ!抗え!この絶望を……覆してみせろッッ!!!」

 

 

出久の心に火がついた。それは赤く、真っ赤に輝く炎(バスターアップ)だった。

 

 

 

────すなわち、第三スキル『天使の叫び』。

 

 

 

 

 

「うああああぁぁぁあ!!!!」

出久が叫ぶ。全身に光を纏い、脳無へと急接近する。

 

 

脳無は声なき声をあげ、拳を引き絞った。

 

「────────!!!!!」

 

 

「DETROIT……SMASH!!!!!!!」

 

 

 

拳同士がぶつかり合う。

その瞬間ごとに、衝撃が吹き荒れる。

恋はもはや感覚のない手足を必死に操って立ち続けていた。左腕にちぎれたその先をあてがう。一際大きな光が宿り、数十秒もすれば腕は繋がっていた。

その間も、その目は──眼光衰えず、出久を、脳無を見ていた。

 

 

 

出久の傷は恋が、脳無の傷は脳無自身の超再生が治していく。

出久と脳無の間で、攻撃こそが最大の防御とでも言わんばかりのラッシュが繰り広げられる。

 

 

 

故に均衡を破ったのは───恋の声だった。

 

 

 

()()()()()!!」

 

 

出久の後ろから恋の声がした。

なにも聞き返さずとも出久は直感でわかった。

 

 

 

 

 

「はっ!」

大きく振られた脳無の右の拳を気合とともに押さえ込んだ出久は、

 

 

────かっちゃんの時と、同じ!!!

 

 

その腕ごと脳無を背負い投げ飛ばした。

 

ワン・フォー・オールの力で投げ飛ばされた脳無はそのまま吹っ飛び続け……

 

 

USJの扉に叩きつけられた。

 

しかしその程度では脳無の傷など無いに等しく、すぐに立ち上がりこちらを見据えて飛びかかろうとし──

 

 

 

「SMASH!!」

一発の拳によって宙に打ち上げられた。

 

 

 

──その姿は、希望の象徴だった。

 

 

 

「もう大丈夫」

 

 

 

「──私達が来た!!!!!」

 

そこには、飯田天哉とオールマイト、そして雄英高校の教師が揃っていた。

 

 

 

「あぁ、クソがクソクソクソ……脳無全然役に立たねぇし……ゲームオーバーだ。帰るぞ、黒霧……ヒーラーがいるなんて聞いてねぇぞ……回復役は最初に潰すのがセオリーだってのによ……」

 

死柄木が、黒霧が消えてゆく。

 

それを見て、個性を解除した恋は、そのまま前のめりに───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れこもうとしたところで、後ろから抱きしめるように支えられた。

 

「梅雨、ちゃん?」

「また無茶したのね」

「いったでしょ?」

「?」

 

「梅雨ちゃんの傷は私が個性を使って治すって」

 

それは、受験当日の朝の何気ない一言だった。

 

 

 

 

「……そうね」

「あ、梅雨ちゃん、私のバッグの中からプラスチックケース取ってくれる?」

「ええと…………これね。中身出す必要あるかしら」

「お願い」

「わかったわ……これは……錠剤?」

「栄養剤よ」

 

 

そう言って恋は錠剤を口に流し込み、無理やり噛み砕いた。

 

 

「ふぅ……これで一息つけるわ……梅雨ちゃんあったかいね。少し眠くなって……」

「膝貸すから寝ても良いわよ」

「そう?じゃあ……梅雨ちゃんが無事で、よかっ………」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

梅雨は自分の上がってしまった体温が伝わったことに多少の気恥ずかしさを覚えつつ、呟いた。

 

 

 

 

「助けられてばかりね……恋ちゃんは気づいてないと思うけど。貴女、とっくに私の────

 

 

────ヒーローなのよ」















これにて本作は完結となります。
まずはお礼を。ご覧いただきありがとうございました。
初めはこんなにアクセス数が増えると思わず狂喜乱舞しておりました……

※今見たけど日間乗ってたんですね。やったぜ


さて。続編如何については前の話でぐだぐだと言い訳したので、ここからは蛇足です。



実は、初期プロットでは梅雨ちゃんはヒロインではありませんでした。というのも、今作のオリ主は割とゆるいところがありますが、初期はガッチガチのバーサーカー、FGOのキャラそのまんまみたいな感じでした。描いてて途中であまりにも高校生感がなくなったので急遽ヒロイン枠に梅雨ちゃんを設定したのですが……思ったよりぴったりでしたね

あとオリ主の個性。これは欠損治せません。オリ主自身が欠損したものが新しく生えてくる事はない、と前世から判断している為です。もしかしたらなんか成長して生やすこともできるようになるかもしれませんが、作中でも言った通りアホみたいにエネルギーを食って多分周りが死にますので本人は使わないでしょう。


あと作中で伏せた恋の虫を使った実験。詳しくは……
①バナナと酒を混ぜて1日おいたものを用意します
②昼間公園に仕掛けます
③夜に集まってきた虫の中から目当ての虫を回収します。……この虫が問題でした。生命力に溢れ割と身近なアレです。素早いやつ。
④ハンマーで腕を叩きすぐ治療します。隣には虫かごの中にあれを入れたものを用意します。
⑤意識を失ったら虫が何匹動きを止めたか確認しましょう。やったね!個性の限界が見えるよ恋ちゃん!

以上です。異常です。


ちなみに最終回ではオリ主の女性っぽいところを割と怪我させたりしています。髪とか腕とか。傷跡は残るでしょう。…………性癖です。終わった後いろんな人に心配されて本人がさほど気にしてないのがまた一層周りを締め付けたりするの……良くない?そのあと爆豪あたりが「お前らが弱いのが悪い」とか言って周りが感化されて特訓したり……それでも怪我してオリ主に頼ることに引け目を感じたり……良くない?(二度目)



個人的には腕を失った辺りはアンデルセン神父を思い出しています。
ナイチンゲールとかもそうですがああいう信念のために殉じるタイプのキャラ好きなんです。



さて、長々と書きましたが……この作品は作者の性癖をこれでもかと詰め込んであります。ですので、この作品を読んだ方が少しでもts百合や自己犠牲主人公いいなと思ったり書いてみようと思ったりしてくれると幸いです。では。


……別に続き書いてくれてもいいんですよ?(チラッ
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