だからあとはそれまでの経過をどうにか文字起こしするのみ
治療
「……ここは?」
辺りは真っ暗だった。
確か仮眠を取っていたはずだが……?
「貴方はお亡くなりになりました」
後ろから声がする。
振り向くと、そこには鈍く七色に光る球体が浮いていた。
「突然すみませんね。私はあなたたちのいうところの神という高次元的思念体の一種です。この度はご愁傷様でした」
「えっ?俺死んだの?」
「ええ、過労死です。……覚えていますか?生前あなたは大病院の医師で、とある感染病のために不眠不休で働いた結果、仮眠と同時にそのまま亡くなられました」
まじかー。
「で、ですね。私、人間界の発展を管理する役職に就いておりまして。貴方が治療した患者の中に、人類史におけるブレイクスルーを起こす方がいたんですね。まぁ言ってしまえば大功績です。先ほども説明しましたが私思念体なので、肉体的な救済措置が取りにくいんです。まぁ、私は貴方に恩がある、と思っていただければそれで」
「なるほど……詳しくわからんけど、一先ず。俺に何用です?もう死んだならやることはないと思うんですが……輪廻転生とかですか?」
「近いです。ここは母親の産道であり生命の起源ですから。で、私は貴方への恩を二度目の人生、という形で返したいと思っております」
「生き返るってことです?」
「元の世界、というわけには行きません。確かに生命は円環を廻り続けていますが、それは巨大で一方通行ですから」
「なるほど……?まぁ早い話が異世界転生ってやつですね。となると大体の場合こう……特典みたいなのがあったり?」
「ええと……転生先の世界のある程度の方向性なら決められますが」
「というと?」
「私貴方の他にも転生させてる方が何人かいらっしゃるんですが、その方達は漫画とかゲームの世界を選択されました。既存の世界線の方が一から作るより楽なので、私もこちらをお勧めしております。まあ、あくまで方向性だけなので、この漫画がいい!とかはあまり確約できないのですが……」
「どの辺まで詳しく絞れるの?」
「ジャンルが精々ですね。少年、少女、青年、成人など」
成人もあるんだ……
「じゃあ少年か青年で」
「承りました。それではここらでお時間です」
「早いな」
「先ほど申し上げた通りここは産道でもあるのです。では、良き人生を」
そして俺の意識は闇に落ちた。
……さて、彼が転生した世界は……と。おやおや。これはなかなか……そうですねぇ、このまま何もなければ彼はまた医者になるでしょう。なんせ致命的なまでの献身こそが彼の本質ですし。すぐ戻ってこられても困りますし……軽く調整して、と。では、これを特典という形にしましょうか。この程度なら誤差の範囲内でしょう………
▽▽▽▽▽▽▽
────光が見える。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
────赤ちゃんからスタートか……。これ演技力大丈夫か?
「おめでとうございます!元気な
────ゑ?
混乱する
「お疲れ様。よく頑張ったね」
「ありがとう、あなた」
「名前は決めているのかい?数日前から悩んでいたみたいだけど……」
「決めたわ。男の子ならはす、という漢字の
そうして、
▽▽▽▽▽▽▽▽
少し月日が流れ。
そして、わかったこと。
まず、この世界には個性と呼ばれる異能が殆どの人間に備わっていること。………つまり、ヒロアカ世界であった。
次に、両親は開業医であること。地元密着型で、呼ばれれば学校なんかで検査もした。割と人も来る少し大きめの医院である。ちなみに父親の個性は『触診で痛みの理由がわかる』、母親が『半径10メートル以内の傷の治りが早くなる』である。
私の個性は未だ不明だ。髪が薄くピンクだったり、目が赤いから『体が赤くなる』個性かなとも思ったりしたが、他の部位は赤くならないので多分違う。
さて、小学生となった私であるが、放課後は専ら家、つまり腑労医院にいる。通院中のおじいちゃんおばあちゃんからは孫のように可愛がられている。これも前世で鍛えた会話スキルとか今世での努力の賜物だ。
……別に友達がいないわけじゃない。
ここは小学校の生徒もよく来るのだ。つまり生徒の殆どは面識がある。当然仲のいい子もいる。ほら、今日も───
「いらっしゃい。きょうはどうしたの?」
「ちょっと風邪気味なの……寒くなってくると体温が下がっちゃうのよ」
この子は蛙吹 梅雨ちゃんだ。私の2巻までしかない原作知識でもギリギリ知ってる子。そして、今の私の友達でもある。
「今度生姜湯の作り方教えてあげる。私のは効くよ」
「助かるわ……」
「じゃ、ちょっと待ってて。診察表やらなんやら持ってくるから」
「ん……」
彼女の個性は『蛙』である。その性質上、冬は寒くてあまり動けないのだとか。あと肌がスベスベ。ちょっと羨ましい。
その日の夜。
「お母さん、何か手伝うよ」
「あら、恋。そうねぇ……じゃあ人参の皮、剥いてくれる?はい、ピーラー。怪我だけはしないようにね?」
「任せて!」
人参の皮をむいていく。お母さんがジャガイモ切ってるから今日はカレーかな、などと考えていると。
「痛っ」
「お母さん、大丈夫!?」
「平気よ、ちょっと切っちゃっただけだから。恋に注意しといて私が怪我するのちょっと恥ずかしいわね……恋、救急箱取って来てもらえる?」
「棚の二番目の引き出しの?」
「そう、それよ」
お母さんの指に消毒液をかけていく。
「手際いいのねー」
「お、お母さんのやり方とか見てたから」
前世?知らない子ですね。
絆創膏を貼って、最後に。
「いたいのいたいの、とんでいけー!」
お母さんの指に、緑の光が灯った。
「「え?」」
しばらくすると、光は消えた。
お母さんが、指先をじっと見たあと……絆創膏を剥がした。
「お母さん!?」
「……やっぱり、治ってる。恋?もう一度、お願いね」
言うが早いか、お母さんは包丁を手に取り指先を軽く切った。
「何やってるの!?え、えい!」
今度も、指先に緑の光が、正確には傷口にのみ、現れた。
数秒後、光が消える頃には、傷は残っていなかった。
「恋……よく聞いて。あなたの個性はおそらく、『傷を治す』物よ。私とお揃いね!」
「ほんと?これで私もお父さんとお母さんの仕事を手伝えるかな?」
「無理に使う必要はないわ。でも、その時が来たらお願いね」
「うん!」
───私の個性は、傷を治せるらしい。思えばこの時、既に私の姿について気づいても良かった気はする。
個性 『白衣の天使』
第1スキル「鋼の看護」
対象の傷を治す。ただし、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。