もしも八幡と雪乃が幼馴染だったら。   作:ヒロ9673

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サブタイ日本語おかしいかも。


比企谷八幡は、応える。

次の日。

早速戸塚の練習に付き合うことになり、早めに飯を食ってジャージに着替える。

戸塚も準備出来たところで、一緒にテニスコートへ向かった。

道中、何も話さない俺といるのが気まずかったのか、戸塚がおずおずと話しかけてきた。

 

「比企谷くん。その、怒ってる…?」

「え?なんで?」

「ほら、昨日のことでさ……」

 

昨日のこと、と言えば、俺と雪乃についてだろうか。むしろ不機嫌に見える要因はそれしかない。

だが、俺は別に怒っているつもりはない。むしろ、嘲笑や変な噂が立ってなくてホッとしているまである。

 

「別に気にしてねえよ。俺はガンジーよりも心が広い男だと自負している。というか怒ってすらない」

「そ、そうなんだ…」

 

戸塚が若干引いた目で見てくる。

あ、この視線いいかも。可愛らしい顔で蔑むような視線。……いかんいかん、新たな世界の扉を開けてしまうところだった。

 

「でも、比企谷くんと雪ノ下さんって本当に仲良さげだよね。昨日の部室でも下の名前で呼びあってたし」

「ああ、まあ、幼馴染だからな」

 

言われてみれば、いつの間にか下の名前で呼ぶようになったんだよな。

 

「やっぱり雪ノ下さんのこと、好きなの?」

「……さてな。他人の色恋沙汰とか、話のネタになるような事は話さないようにしてる。ホント、女子って恋バナ好きだからな……」

「そ、そうなんだ……。僕は男だけど」

 

おっと、一瞬勘違いしてしまった。

でも男でその顔は反則だと思うんですよ。

それ以外にも、腕も腰も脚も細く、肌は透き通るように白い。

由比ヶ浜が言っていたが、戸塚は女子の間で「王子」と呼ばれているらしいが、その理由が分かる気がする。

 

そこからは当たり障りの無い話をし、やがてテニスコートに着いた。

既に雪乃と由比ヶ浜は待機しており、俺たちの到着を待っていたようだ。

 

「皆集まったわね。それじゃ始めましょうか。戸塚くん、準備は良い?」

「よ、よろしくお願いします!」

 

さて、雪乃先生によるレッスンが開始した。

最初は当人である戸塚だけやって俺たちはエールだったりなんなりをすればいいと思っていたのに、雪乃先生は俺にも参加を強制させた。「できるでしょ?」って首をコテンと傾げられたら、うんとしか言えないじゃん。チョロすぎィ!

まずは体づくりから始めることになり、腕立て、腹筋、背筋、スクワットなどの基礎トレを数日間、体の限界までやらされた。もちろんその間はラケットに触らず。

……キツい。毎日家に帰ると筋肉痛で体を捩らせていたもん。

元々やる気だった戸塚や、基礎代謝を上げれば痩せる!と意気揚々に一緒に始めて早々にダウンした由比ヶ浜はいい。いやダウンするの早ぇよ。

でもホント、何故俺までやらされるのだろう…。

休憩のためにベンチに座っていると、雪乃が冷たいスポドリを持って隣に座ってきた。

 

「お疲れ様」

「おう。…な、なあ、これ俺やる必要ある?」

「かっこいい八幡を見たいという私の自己満足よ。ダメだったかしら?」

 

そんなこと上目遣いで言われたらやる気いっぱい!筋肉痛なんかクソ喰らえ!

 

 

 

********

 

 

 

まさに鬼だろ、雪乃さん。

由比ヶ浜にコートの端に投げるように指示し、戸塚はそれを打ち返し、雪乃はフォームや打ち方を徹底的に指導する。

やっていることは普通なのだが、とにかく雪乃が厳しい。まるでテニスの経験者かのようにプロみたいな指導を行うのだ。

いや、実際経験者ではある。

昔一緒にテニスをやった時、三日でコーチに勝っちまったから直ぐに辞めたんだっけか……。

元々どんな事であれ三日もあれば大抵の事は覚えられる雪乃の事だ。この数日で自身の経験だけでなく、プロの試合の動画を見たりして、ある一定のレベルまでの最適解を導き出しているに違いない。

…自分で言っといてハテナだが、とりあえず言えることはゆきのんはしゅごい!マジで尊敬するわ。

 

「ゆきのん、すごいね……」

 

由比ヶ浜は恐ろしいものでも見るかのような目で雪乃の事を見ていた。まあ、普通の人からすれば当たり前の反応だな。この場合の「すごい」は、恐らく純粋な意味でのすごいではなく、怖い、といった意味を持っていると思われる。

俺が過去に振り回されすぎたことでこれが普通みたいな感覚に陥っているが、傍観者である由比ヶ浜でさえこんな心情だ。恐らく当事者の戸塚はもっと辛いだろう。

だがそうまでして雪乃に付き合ってもらってるのは、自分の自己満足ではなく、他の部員のため、テニス部のためだ。他人のために努力するなんて最早アッパレとしか言いようがないな。

 

「あいつはやると決めたことはとことんやるからな。妥協なんて一切しない。おかげで昔は俺もヒーヒー言ってたよ」

「はぇー、やっぱ詳しいね」

「そりゃあ、俺が一番一緒にいる時間が長いのは、妹を除けばあいつだからな」

 

俺のプライベートな時間はほとんど雪乃と一緒にいた。学校のある日はもちろん、休日だってそうだ。

大抵はどちらかの家に行き、日が暮れるまで遊び尽くす。今考えると、よく話題が尽きなかったとつくづく思う。

いや、それだけ雪乃といる時間が楽しかったのだろう。それだけ雪乃といるのが当たり前になっていたのだ。

………それだけ、引き離される苦しみも大きいのだ。

もう離れたくない、これからも一緒にいたい。そう思うのは、烏滸がましい事なのだろうか。

 

「………ヒッキー?」

 

……またいつものように深く考え事をしてしまった。

 

「ああ、いや、何でもねえ。ほら、そろそろ雪乃と交代してやれ」

 

ボールを投げるのも疲れるしな、と乾いた笑みを浮かべながら付け加えると、由比ヶ浜は若干不満げな顔をしながら雪乃の元へ歩いていった。

と、そこに。

 

「あれ、テニスしてんじゃーん」

 

声の主は、俺と由比ヶ浜、戸塚が所属する我が二年F組の女王、三浦優美子。

よく見ると三浦の後ろには、隼人やいつもつるんでいるリア充グループもいる。

めんどくせぇ時に来たもんだな。

 

「ねえ戸塚、あーしらも遊んでいい?」

「み、三浦さん、僕は遊んでるわけじゃ……」

「え、何?聞こえないんですけどー」

 

聞こえないんじゃない。聞こうとしないんだろ、お前の場合。由比ヶ浜の時も似たような感じだったしな。

女王らしく威圧するその態度は、戸塚を縮こませるには充分な威力があった。

 

「ユイたちもいるし、別に男テニとして使ってるわけじゃないんでしょ?だったらいいじゃん、あーしらも混ぜてよ」

 

それはごもっとも。ごもっともなんだがちょっとこう、違うんだよな……。何が違うのかはよく分からんが。

 

「優美子、今は戸塚くんたちが使ってるんだから、また今度にしないか?テニスはいつでもできるだろ?」

「えー?あーしは今したいんだけど……。そうだ!だったらあーしと試合しようよ。あーしが勝ったらここで遊ぶけど、どちらにせよ練習の成果も発揮できるでしょ?あーし、テニスちょー得意だからさ」

 

おっと、こちらが勝った時のことは考えないのですね。これはさすがの隼人も苦笑い。

こいつは由比ヶ浜とは違ったベクトルのアホだな。目先のことしか考えないから、後がどうなるか知ったこっちゃないみたいな。

結局は三浦の自己満足なんだろう。ただ遊ぶにしても、試合をするにしても、三浦の『テニスがしたい』という欲求は満たされる。面倒くさ……。

そもそも三浦たちはこのテニスコートを使う資格を持っていない。テニスコートを利用するには教師の許可が必要だ。

今は当然、俺たち奉仕部が利用許可を貰っている。

あ、よくよく考えればそれが違和感の原因か。まったくごもっともじゃないじゃん。

そして、三浦の言葉に思うところがあったのか、雪乃はしばし考え、やがて口を開く。

 

「いいわ、その勝負、受けましょう。ダブルスで構わないかしら」

「へー、雪ノ下さんてテニスできるんだ。言っとくけどあーし、結構強いよ?」

「それが何か?」

 

あっけからんとした態度の雪乃に対し、三浦は見るからに怒りをふつふつとさせている。ホント、雪乃の煽りスキルは高いよな。たった一言二言でこうも相手を怒らせるのだから。

……仕方ないな、戸塚は練習で疲れてるだろうし。向こうは隼人と三浦の男女でペアを組むのだから、こちらも男女でやるしかあるまい。当然俺と雪乃のペアとなるわけである。

雪乃と三浦がテニスウェアに着替えに行ってる間、俺は手招きして隼人を呼び寄せる。

隼人は、申し訳なさそうに俺を見る。

 

「悪いな、優美子が我儘言って」

「別にそれはいいんだけどよ……、分かってるよな?」

「ああ。適度にやって、ギリギリで負けたと演出すれば良いのかな?」

「そんな感じで頼むぞ。ここで負けたら戸塚に申し訳ないしな」

「分かったよ」

 

そうこうしてるうちに隼人目当てに観客がぞろぞろと現れ始める。どこから嗅ぎつけやがったんだ、こいつら。

多分優に二百人は超えている。二年生が主だが、なかには一年生も交じっており、ちらほらと三年生の姿も見える。

……やっぱすげえや、こいつの人望。

そんなこんなで二人はテニスウェアを着て戻ってくる。どうやら三浦は校舎へ向かったことから恐らくトイレかどこかで、雪乃はテニス部の部室横で着替えたらしく、別々にやってきた。

 

「HA・YA・TO!フゥ!HA・YA・TO!フゥ!」

「雪ノ下さん、頑張ってー!」

 

やはりほとんどが隼人と雪乃を応援している。中には「ヒキタニくんも頑張ってー」なんて声が聞こえてくる。誰だよヒキタニって。仮に、本当に仮に俺の事を言っているのだとしたら、名前間違えんな。ヒキガヤだ、ヒキガヤ!

 

俺が前衛にたち、雪乃が後衛。隼人側は隼人が後衛、三浦が前衛にたつ。

あとは察してくれるであろう雪乃が、隼人の方にバカスカ打ち込みまくってやればいい。三浦が打ったとしても、俺が打ち返してやればいい。

例え三浦が超強かったとしても、こっちには超超強い雪乃がいる。何の問題もなければ、無事に勝てるだろう。……あ、やべフラグだ。

 

 

 

********

 

 

 

案の定だった。

途中までは順調にいっていたのだ。雪乃のサーブを隼人が打ち返す。三浦が打ってくる時は俺がなんとかカバーする。

おかげで得点は俺たちが二点リードし、後一点で勝利できるところまでは持っていけたのだ。

 

「こんのっ!」

 

三浦が不機嫌さを隠すことなく、勢いに任せてラケットを振る。

いつも通りなら難なく打ち返す雪乃だったが、今回は違う。雪乃はボールに反応することなく、その場にへたりこんでしまった。……マジかよ。

流石に心配になり、駆け寄って手を差し出す。雪乃は俺の手を取り、申し訳なさそうに俺の顔を見る。

……今なんかキャー!って聞こえたのは幻聴だと信じたい。

 

「おい、大丈夫か?」

「……ごめんなさい、八幡。私、体力は致命的に欠けているの」

 

知ってるよ。昔から運動自体は得意なのに体力が無いからどれも続かなかったしな。流石にテニスの一試合もたないのは予想外だったが。

しかしまずいな。1対2となると流石に不利だ。さすがの隼人もどうするか決めあぐねているようだが、手を抜きすぎると三浦やワーワー騒いでる観客に怪しまれてしまう。

それに。

 

「へぇ………」

 

三浦が勝ち誇ったような顔でこちらを見ている。ふえぇ…、その視線は萎縮しちゃうよぉ…。

などとふざけてる場合ではない。県大会出場もしている三浦と、ただ単に運動神経が少しいいだけの俺。その差は歴然だ。このままでは九十九パーセント負ける。ではどうするか。

 

「…………貸し、一つだからな」

 

雪乃にだけ聞こえるような、そんな小さな声で言った。

一瞬だけキョトンとした雪乃だったが、俺の言った意味をスグに理解したらしく、微笑みながらコクリと頷いた。

 

「由比ヶ浜、ベンチに運んでやってくれ」

「う、うん、分かった…」

 

少し戸惑いながらも雪乃に肩を貸す由比ヶ浜。そんな由比ヶ浜は、不安げな眼差しを俺に向けてくる。

ごもっともである。

だが、この世に絶対なんて存在しない。どれだけ強い相手でも、必ず勝機を見いだせるものだ。

 

「そいっ!」

 

投げ上げたボールにラケットを打ちつける。さして速くもない速度のボールを、あの三浦が取れないはずはない。

 

「っしゃあ!」

 

それを狙ったのだ。

俺は一年間、ここのすぐ近くでよく昼飯を食っていた。おかげで、どうでもいい事だって覚えてしまった。

三浦、お前は知らない。

ここ総武高校は、臨海部に位置する。

昼下がりのこの時間帯のみ、発生する特殊な潮風のことを、お前は知らない。

その風の影響で、打球は三浦が走っていった予想落下地点を大幅にズレる。

他の誰でもない、俺だけが打てる魔球。

誰もが口をつぐみ、静かにそれを見守っていた。

だが、静寂はやがて歓声に変わる。

 

「そ、そういえば聞いたことがある……!風を意のままに操る伝説の技、その名も風精悪戯《オイレン・シルフィード》!!」

 

空気を読まない材木座だけが大声を張り上げた。

勝手に名前つけんな。恥ずかしい。

 

「ありえないし……」

 

三浦が驚愕のあまり呟く。

ギャラリーの皆様も「風精悪戯……?」「風精悪戯…!」なんて声を上げ始めた。いや受け入れるな。そんなんじゃないから。

 

「……驚いた。まさに『魔球』だな」

「だろ?」

 

実際は賭けでもあった。全て上手くいくとは思わなかったし。それでもまあ、戸塚と、奉仕部のメンツは保たれた。

落ち込み気味だった三浦を隼人がそっと励ますと、直ぐに元気になり一緒に校舎へ入っていった。……恋する乙女ってやつか。

目的の隼人がいなくなったことでギャラリーもぞろぞろと皆一様に帰っていく。残ったのは俺と戸塚、由比ヶ浜の三人。……雪乃はテニスの部室の方でも行ったのか?

 

「比企谷くん、さっきのすごかったね!」

「確かに!あの優美子によく勝てたね」

「あ、ああ、まあな」

 

純粋な尊敬の眼差しを受けるのは慣れていない。美少女二人間違えた美少女と美少年を見るのが何だか気恥ずかしくなり、雪乃がいるであろう場所へ。

 

「おい雪乃、だいじょ……あっ」

 

思いっきり着替え中だった。

ブラウスの前ははだけ、まさかの黒い下着が強い主張を俺へ向けている。

白い肌は美しく、下着とも美しくマッチしている。

……と、こんなに分析するには数秒のスパンは必要なわけで。

雪乃はまじまじと見る俺の視線に気が付き、みるみる顔を紅潮させ、一言。

 

「………えっち」

 

変態ではなくえっちと言われました。

これで貸し借りは無しかな!




これにて一巻分は終わり!
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