使徒ってそっちの使徒ですか!?   作:かます

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友「お前何見てこれ書いたんだ?」
私「ありふれ、エヴァ、ポケモン、ジパング、ドルフロ」
友「闇鍋かな???」



第壱話 さよなら、日常


 南雲ハジメには親友がいる。

 その彼女とは中学一年からの付き合いであり、きっかけは書店でたまたま同じ本を探していたというありふれたモノ。お互いに俗に言う“オタク”であり、方向性も(香ばしい方向に)似通っていた二人が良き友となるのはある意味必然であったと言えよう。そこに性差があったとしても、それぞれの周りからの評価がどんな物であっても、彼らが側から見ていてとても良き友人同士であることは一目瞭然だった。

 

 まず南雲ハジメ。現在高校生の彼の校内での扱いは、劣悪とは言えないが、悪い。ハジメがただのオタクの少年というだけなら、学校で悪いことも起こらなかっただろう。普段から清潔にはしているし、もちろん極端な体型をしている、というわけではない。なら何故、彼の立場はあまりよろしくないのだろうか。その原因は、単に学校のマドンナ、二大女神と称される少女の一人、白崎香織に好かれている、という所にある。

 要するに嫉妬とやっかみだ。一例を挙げるとすれば、香織に想いを寄せるクラスメイト、檜山大介とその取り巻き。彼らを中心にハジメは軽い暴行などを受けている。また、両親がそれぞれゲーム会社社長、少女漫画家という境遇からクリエイター気質で将来の展望もある程度存在しており「趣味の合間に人生」という座右の銘を貫いているその様が不真面目な生徒に見える、というのも、多くの女子生徒から冷ややかな視線を受ける主だった理由となってしまっている。

 

 しかし彼は特別それを気にすることもなく、普通に、ましてや楽しそうに登校できている。それは何故か?もちろん、いつも隣にいてくれる親友の女性……柚希(ゆずき)雪華(せつか)

のおかげである。

 

 柚希雪華。現代日本では少々珍しい(というかかなりレアだが)純白の長髪とスカイブルーの瞳の持ち主で、身長はかなり低め。その辺を気にしたりしている……というわけでもなく、基本にこやかにしながらも時折その姿からは想像がつかない程厨二臭い言動を放つこと以外は無害なクラスのペッt……愛されキャラである。クラスメイトの女子生徒達からことあるごとに頭を撫でつけられたり餌付けされたりしているが断じて仔犬扱いされているのではない。断じて。

 そんな日本人離れした容姿を持つ彼女は、まだ物心つく前に日本に帰化したヨーロッパ出身の両親に早逝され、孤児院で暮らしている。

 

 彼女がハジメに対して何かアクションを取ることもなく普段通りに接してくれる事に、彼は救われているのである。

 

 そんな彼らは、ハジメと雪華は、誰が見てもまごうことなき親友であった。誰かが文句をつける隙もない程に。なんでも相談でき、全幅の信頼を置いている彼ら。どうしてそこまでの関係に至ったのかにはまたエピソードがあるのだが、それはまた後日として今は割愛させてもらう。

 

 今日も二人は揃って帰路に着いている。孤児院とハジメの自宅はさほど遠くない所にあり、帰り道はいつも他愛無い話に花を咲かせているのだ。

 

「ハジメ、やっぱりボクは第十四使徒が一番強いと思う。火力、装甲などどれを取っても一級品!純粋な力押しでエヴァ三体を難なくいなして覚醒初号機でも無いと倒されることはない。正に最強……しゅき……」

「あきらかに理由がセツの趣味というか好みじゃないか……」

 

 目をキラッキラに輝かせながら“新世紀エヴァンゲリオン”シリーズに登場する第十四の使徒、ゼルエルの魅力を語るセツと、『あぁ、またいつもの発作が出た……』といった風に呆れつつもしっかりと話は聞いているハジメ。

 

「いいじゃん!ハジメこそ、どの使徒が一番強いと思う?」

「そうだなぁ、僕はやっぱり第六使徒ラミエルかな?確かに対エヴァとしてゼルエル以上に強い使徒はいないと思うけど、対地、対空等あらゆる方向に対する絶対的な防御とあのロマン火力!ポジトロンライフルなんて一般人には扱えないし、何より新劇のアレが……死ぬ程かっこいい……」

「わかる……あのぎゃーんてなってぐにょーんってなってきゃーって撃つの凄いかっこいいよね……」

「あれ、わかるけどわかんねぇ……」

 

 そんな他愛もない(?)をしながら歩くこと数分。ハジメと雪華は、ハジメの家の方と孤児院の方へと別れる角に差し掛かった。夕暮れが街を朱く染める中、二人は向かい合って手を振る。

 

「じゃあね、ハジメ。今日もなんか眠そうだったけどおじさんとおばさん、また修羅ってるの?」

「うん、今日も眠れそうにないや……」

 

 そう言うとハジメは少し疲れた顔で頭を掻く。

 

「お手伝いもいいけど無理はしないほうがいいよ?まあ、楽しんでやってるハジメに言ってもあんまり意味ないと思うけど……」

「はは、忘れるまで覚えておくよ。じゃ、また明日ね」

「それは忘れるということでは???また明日!」

 

 普段と変わらず軽口を言い合って別れる二人。毎日繰り返されているその行為はとても自然で、景色に溶け込んでいて。

 しかし彼らは知らない。ありふれた日常というのは、唐突に終わる儚い物、ということを。

 

「あぁ、リアルで使徒戦を一回見てみたいなぁ……」

 

 そんな雪華の呟きが現実に、すぐそこまで迫っているということを。

 

 彼らは当然、知る由もなかった。

 

 

※※※

 

 

 翌朝のことである。いつものように飽きることなくオタク談義に花を咲かせながら、チャイムまで間もない頃合いに二人は教室の扉をくぐった。その瞬間、ハジメはいつものように睨みやら舌打ちやらの負の感情のフルコースをいただく羽目になる。

 

「ハジメ、毎度毎度のことだけど大丈夫?」

 

「いや、もう慣れたよ。大丈夫さ、アハハ……」

 

 今年に入ってから雪華と同じクラスになり、彼女と普通に話している姿を見ている女子生徒達からの視線というものは幾分かマシにはなったのだが、逆に男子生徒の一部からのやっかみの感情は今年以降天元突破していた。

 

 じゃ、また昼に話そうね、と二人が別れると、早速ハジメに絡んでくる者が居た。

 

「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ〜。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん」

 

 件の檜山大介含む小悪党四人衆である。檜山を筆頭に斎藤良樹、近藤礼一、中野信治を擁するこのグループは、暇さえあればハジメに絡んでは馬鹿にする発言を繰り返している。

 

 はは……、と苦笑いしつつそれを流しながら席に着くと、ニコニコと微笑みながらハジメに近づく女子生徒があった。

 

「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

 この事態の原因にして、ハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない生徒の一人、白崎香織だ。彼女が一歩近づく度にハジメへの視線は刺々しくなり、ハジメは小悪党達の妬みの感情に縮こまっている

 

「お、おはよう、白崎さん……。またセツと話が盛り上がっちゃってね」

 

 ハジメにはいったい何故香織がここまで自分に構うのか甚だ疑問であった。整った顔立ちと艶やかな黒い長髪、美しいプロモーションを兼ね備えつつ万人に優しく、微笑を絶やさないで接する彼女の自分へ話しかけてくれる量はあきらかに他の人へのそれより多く、彼女の優しい性分以上のことを感じずには居られなかった。いやしかし恋愛感情など向けられるはずもないのにこれは一体……とセツに愚痴りつつ先日も首を傾げていた。

  内心、(いやハジメさん、それ恋愛感情やろ絶対……というかボク香織ちゃんの相談に普段から乗ってる……。)というのを言いたくて仕方がなかった雪華だったのだが、背後に般若を佇ませた香織に『ハジメくんには自分で言うから。告げ口したらどうなるか分かってるよね?よね?』と脅さ……頼まれていたのでその時は黙っていた。

 

「南雲くん、おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 順に八重樫雫、天之河光輝、坂上龍太郎だ。

 三人ともクラス内カーストでは最上位にいて、オタクで自分に自信のないハジメにとっては雲上人そのものだ。

 

 雫は、170cmを超える女子にしては高身長の引き締まった肉体を持つどこか侍を思わせる雰囲気を放っている美少女だ。事実、実家は八重樫道場という剣術道場を経営しておりその強さは小学生の頃から負けなし、という凄まじい物。

 香織と共に二大女神と呼称され、彼女に負けず劣らずの人気の彼女は所謂“お姉さま”タイプの人間で、熱烈なファンも多い。そのせいもあって『テメェ、誰に断って雫お姉様と話していやがる!』という視線がハジメにぶっ刺さりまくっている。

 そして実は可愛い物好きという裏の顔を持っている雫だが、何を隠そう雪華を一番猫可愛がりしているのは彼女だ。

 

 光輝は、ザ・好青年といった稀に見るイケメンである。180cmを超える高身長を含む神が本気出して整えたと言わんばかりの容姿と、つい二物を与えちゃったのかな?というレベルの好成績にお前何個長所持ってたら気が済むんだ!とつい言いたくなる事間違いなしの高い運動能力。この全てを併せ持つ彼は、正義感も強く(思い込みが激しいとも言うが)、惚れているという女子は数えきれない。

 

 最後に龍太郎。若干投げやり気味な発言をしている彼は、190cm越えで筋骨隆々、刈り上げた髪と、力強さに暖かさを兼ね備えた雰囲気を持っている。

 光輝の親友で、普段から彼と共にいるザ・脳筋の人間だ。熱血な性格もあってハジメへの心象はあまり良くない模様。

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 ハジメはこの針の筵の状況から脱却せんと雪華の方へヘルプサインを送ったが、彼女は香織に向けて綺麗なサムズアップをしていた。解せない。

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか?何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

「いや〜、あはは……」

 

 少々思い込みの激しい彼に下手に反論してもさらに面倒な事態に陥ることが分かっているハジメは、この場もなんとか流そうと作り笑いを浮かべた。が、しかし、その努力も虚しく香織によって更なる爆弾が投下されてしまう。

 

「?光輝くん、なに言ってるの?私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

 途端にざわつきだす男子生徒諸氏。突き刺さる視線の鋭さは増し、檜山たち小悪党四人衆に至ってはハジメの連行先の相談まで始めている。そして何故か雪華は爆笑寸前で口を押さえてなんとか堪えていた。ハジメはまた解せなかった。

 

「え?……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 どうやら彼の中ではこの発言は香織がハジメに気を遣ったと解釈されたらしい。いつもの厄介なパターンだ、何言っても意味ないなぁ……、とハジメは諦め顔で窓の外を眺め始めた。

 そしてその時雪華は笑いが堪えきれず「ぐ……ぐふっ……ふ…げほっ⁉︎ゲホゴホゲホォッ⁉︎」と完全に決壊して咽せていた。

 

「……ごめんなさいね?二人とも悪気はないのだけれど……」

 

 この場において最も各人の性格や心情を把握している雫に、ハジメはこっそり謝罪される。普段の彼女の苦労が想像できるハジメは、無言で申し訳なさそうに礼を返した。

 

 そうこうしているうちに始業のチャイムが鳴り、教師が教室に入ってきた。騒がしかった教室は朝礼の開始と共に徐々に静まっていき、普段と変わらない1日が始まった。ハジメは時間割を確認すると、いつものように夢の世界へと旅立って行った。

 

 

※※※

 

 

 長い午前の授業も終わり、教室内が慌ただしくなってきた。「クリエイター志すなら知識は多いに越したことはないよ?」との雪華からの進言を受けて社会科は真面目に受けていたハジメ(当然小悪党四人衆にはやらしい目で見ているんだろうと詰られた)は、いつもと同じように鞄から10秒でチャージが可能な例のアレを取り出すと、教室を見渡しながら咽せないようにゆっくりと飲み込んだ。

 

 弁当持参者の多いこのクラスでは、購買組が立ち去っても3分の2程度の生徒達は残留しており、それに加えて四限で社会科を教えていた畑山愛子先生が数人の生徒と教壇で談笑していた。

 ふと右手を見るといつものように雪華が弁当を掲げながら隣の席へとやってきた。さぁ、談笑タイムだ、今日は何の話題で話そうか?と口を開いたハジメだったが、その口から声が発されることはなかった。

 雪華が誰かを手招きしている。その視線の先には……些か彼女には大きすぎる、そんな感想を抱かずにはいられない弁当箱を持った香織がいた。

 

 雪華さん何やっちゃてくれてんですか〜⁉︎という視線を向けるが、雪華は口をすぼめながら惚けて見せた。ハジメは『口笛吹けてないよ⁉︎』というツッコミを香織の手前、なんとか飲み込んだ。

 

「雪華ちゃん、誘ってくれてありがと!ハジメくんも、ちょっとだけここいいかな?」

「ど、どうぞ?僕はもう食べ終わってるし、二人で自由に使ってよ」

 

 完食済みのゼリー飲料の袋をひらひらさせながら席を立とうとする。しかしここから離れようというハジメの目論見は女神の追撃により叩き壊される。

 

「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」

 

 弁当箱と何故か二膳あった箸を押し付けようとしている香織とT◯itterで尊いマンガを発見した時みたいな顔をしている雪華にしどろもどろしていると、救世主が現れた。光輝と龍太郎だ。

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲は用事があるみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい料理を心を別のどこかに向けたまま食べるなんて俺が許さないよ?雪華も南雲なんかほっといてで一緒に食べよう」

 

 爽やかに気障なセリフを吐いてのける光輝に対して香織はキョトンとし、雪華はP◯xivで百合の間に入る男のイラストを発見した時みたいな無表情になっている。

 

「え?何で、光輝くんの許しがいるの?」

 

 素で聞き返す香織に「ブフッ」と雫と雪華が同時に爆発した。光輝は困ったように笑いながらあれこれ言っているが、学校の人気者が何人もハジメの周りに集まり続けている状況に一部の生徒たちもいい顔はしない。

 

(はぁ、光輝はもう異世界召喚されちまわないかなぁ……。この勇者顔とカリスマ、龍太郎や八重樫さんに白崎さんも一緒なら完全に勇者パーティーじゃん……)

 

 変わらない状況に憂鬱そうに妄想の世界へ旅立ちながら机に突っ伏したハジメは……床の変化を見て、凍りついた。

 

 ハジメの目の前、光輝の足元を中心に白銀に輝く円環と幾何学模様が広がり始めたのだ。周囲の生徒たちも一瞬凍りついていたが、広がる輪が自分の足元へと到達したところで、我に帰って悲鳴をあげたり外へ逃げ出そうと動き始める。

 

「皆、教室から出て!」

 

 そう愛子先生が叫ぶのと、輝きが最高潮に達し彼らの視界が真っ白に染まるのはほぼ同時だった。教室全域を包み込んだ白銀は数瞬の後に静かに消え去り……残ったのは開かれた弁当箱や水筒などばかり。生徒や先生の姿はどこにも残されていなかった。

 人間だけが白昼堂々消失するという異変に、世間は集団神隠しとして大いに盛り上がったが、それはまた、別の話。

 




ハジメに別にべったりついていく訳ではないけどハジメと同じサイドの主人公が読みたくて書いた、後悔はしていない
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