苦手なのでもっと物騒にしたい
「じゃ、さっきの赤い球は雪華が召喚される前に暮らしてた世界の創作物に出てきたアイテムってこと?」
「うん、そういう認識で問題ないよ」
ライセン大迷宮最奥部。ミレディ・ライセンの居室にて二人の少女が語らっていた。
一人は使徒の力を操り戦う少女、雪華。もう一人は、謎の赤い球に触れることで生前の身体を取り戻したミレディ。
先ほどまでのトータスについてをミレディが語っていた時とは真逆で、今度は雪華が己の世界と彼女の力の根源について語る番だった。
「ボクは鑑定ができる訳じゃないし、そもそもハジメ……あっ、ボクの友達のことね?彼の鑑定も弾かれちゃったから確定はできないんだけど。状況的にあの赤い球は生命の実で間違いないと思うんだ」
「ふむふむ……で、その生命の実が強大な力を有していたから、私のゴーレムに憑けてた魂が引っ張られてしまった、と……」
「うん。その解釈が一番しっくり来るんだ」
ミレディはまじまじと再構築された自分の体を眺める。手足の動きは問題なく、自分の技術……すなわち、重力魔法などの以前まで使えていた力がなくなっている感じもない。
前の身体との違いがあるとすれば、胸の中心にコアと思しき生命の実(仮)と同じ色の何かが露出していることくらいだ。
「まだいくつか気になることはあるんだけど……一番気になるのは寿命かな?断言できなくてもいいんだけど、心当たりとか予想とか、そういうのはある?」
ミレディは自らが最後の戦いの相手をする方式にてこの迷宮を守ってきた。そもそも最後の戦いまで辿り着けた者こそ雪華が初めてであったが、今後誰も来ないとは限らない。
定命なら定命で。ずっと続くならそれはそれで、この迷宮の在り方を考え直さねばならなかったのだ。
「多分……無限ではない、とは思うんだけど。相当長くはなるんじゃないかな。多分、ミレディちゃんにもボクと同じくS2機関が備わってるから」
「S2機関?」
難しい顔をして答える雪華に、首を傾げるミレディ。
「平たく言って仕舞えば、第一種永久機関。もしくはボクが撃ってた荷電粒子砲を何回撃っても残量に響かないくらいの、異常なエネルギー量を保有しているコア」
「…………」
今度はミレディが難しい顔をする番だった。私はそんなのを持ってる奴とやり合っていたのか、と先ほどの戦闘を思い出し一瞬身を震わせた。
「とまあ、こんな感じかな……重ね重ねごめんなさい!ボクの事情に巻き込んでしまって……」
「も〜、さっきから言ってるけど気にしなくていいんだよ?むしろ動きやすい身体が手に入ってラッキー☆ってくらいに思ってるんだから!」
俯く雪華にミレディが優しく返す。
事実そうなのだ。どんなに優れた技術を有していても、数百、数千年単位での動かしやすさと頑丈さを両立したボディなんてものはかつての天才にも作れなかった。
それを外的要因とはいえ、雪華の持ち込んだ生命の実(仮)は簡単に解決してみせた。
これはミレディからしてみたら革命的だ。託すこと、繋ぐことしかできなかった今までと違い、自分で動いて神へと挑むことができるようになったからだ。
「そう言うことだから、ウジウジしないの!で、私も雪華と同じような身体になったってことはさ、雪華みたいなことができるかもしれないってことでしょ?」
「……確かに。ボクとは天職が違うからまた別かもしれないけど、少なくともこの浮遊とA.T.フィールドは練習すればモノにできるかもしれない!」
芽生えた新たな選択肢に、新たな力。来訪手段こそ突飛で、一時は恐怖した相手だったが、その彼女が持ち込んだものは途轍もない可能性に満ちていた。
雪華と関わり、ミレディはこう思った。
まず会話からも優しい性格が滲み出ており、接しやすい。
目的も全く同じでないにせよ似通っている。
そもそもこの生命の実(仮)を自分にもたらした張本人であり、少なくともこの新たな力にまつわる知識、技術は自分以上。
そして何より……あたたかい。
変化が起こった時も、逃げ出さずにまずは自分を心配してくれた。
事故のようなものだったのに、誠実に謝ってくれた。
どんな姿でも、変わらぬ態度で接してくれた。
人との関わりに飢えていたミレディに、雪華の優しさは劇物も同然だったのだ。
「よし決めた!私、あなたの旅についていく!」
「…………へっ!?」
「色々と動けるようになったしそろそろ迷宮も自動化して出てこっかなって思ったタイミングで、自分よりこの新しい身体の扱いが上手い人間がいて、しかも目的もおおよそ同じときたら、一緒に行きたいに決まってるじゃない!」
初めての対面からさほど経っていないのにも関わらず、ミレディは雪華を信頼し切っていた。シチュエーションが大きく影響してしまっていたのは事実だが、それを抜きにしても雪華の態度はとても誠実で、根の優しさが窺い知れたのだ。
向けられた全幅の信頼。ミレディが雪華の誠実さに惹かれたのと同時に、雪華もまた、そのミレディの真っ直ぐさには心を動かされた。
「……いいの?ボクで。考えなしに一人旅に飛び出しちゃったような甘ちゃんだし、戦闘技術もまだ未熟だよ?」
「問題なし!一人で甘ちゃんなら、二人で考えればいいし!というかあの戦闘見せられて未熟とか何言っちゃってんのさ!」
「この力だって、少なくともエヒト神じゃなさそうなだけで何が根源か分からないよ?特大の厄介ネタが待ってるかもしれない」
「関係なし!一緒に強くなって、その厄介ネタまで叩き潰しちゃおうよ!」
お互いに足りないところがあれば補い合えばいい。単独じゃあ乗り越えられない強大な敵も、二人でなんとかすればいい。
今ここに雪華のミレディの想いは重なり、通じ合った。
「……わかったよ。一緒に旅して、もっと強くなって、世界の不条理に立ち向かえるようになろう、ミレディちゃん!」
「ええ!私のことはミレディでいい。その代わり、私にも貴方のことをセツって呼ばせて!」
「わかった、ミレディ!」
そう言って二人は、固く両手を握り合う。一人きりだった旅路に、雪華の弱さを補える新たな仲間が加わった。
「……っと、まさに旅の始まりみたいなことを言ってしまったけど」
「?」
「先ずは迷宮の修復からやんないとね〜、セツの友達のハジメ?くんもいつかここには来そうだし」
「えっと……その節は大変ご迷惑を……」
「全く、迷宮がこんなアリの巣みたいな穴だらけになるとは思ってなかったよ……」
「ひぃ!ごめんなさぁい!」
「早く旅に出たいし、セツも手伝ってね?」
「はぁい……」
※※※※※
「ところで、プラグスーツのカラーリングに心当たりある?実はそこだけ私も全く知らない要素なんだ」
ライセン大峡谷、その底にて。迷宮の改装を終えた雪華とミレディは、連れ立ってハルツィナ樹海側の峡谷の端を目指していた。
なお、二人ともふわふわと浮きながら移動している。最高スピードこそミレディの浮遊は雪華に追いつかないが、元々頭の良い人物だ。短い期間の練習のみでその技術をものにした。
「うーん……昔のことすぎてうろ覚えだけど、多分当時好んで着てた服の色じゃないかな」
「……なるほど。ボクのプラグスーツも初号機推しのおかげでこの色してるのか……」
深い意味があるかと思っていたカラーリングの理由が存外俗っぽい感じだと分かり、雪華は微妙な顔をした。
「まあ、何も裏にないならそれはそれでいいんじゃない?懸案事項は少ないに限るよ」
「そうだね」
緩やかな会話と共に二人の行軍は続く。
再三になるが、ライセン大峡谷の魔物程度なら今の雪華には全く問題にならない。ついでに言うなら、A.T.フィールドもある程度ものにできているミレディのおかげで、雪華は防御に割いていたリソースすら攻撃に回せている。
おかげさまでそこまで時間は経っていないのにも関わらず、二人は峡谷の端が目と鼻の先というところまで辿り着けていた。
「ところで、なんでハジメくんらと同じ樹海側に来たの?彼らと七大迷宮は別々に攻略することにしてたんでしょ?」
峡谷端に整備されていた階段を登りながら、ミレディが雪華に尋ねる。迷宮改修で共に過ごしていた間、雪華は彼女に能力の話だけではなく、オルクス大迷宮探索での出来事やハジメ、ユエとの出会い、今後の方針についても細かく説明していた。
「うん、確かにそうだけどハジメ目的じゃないんだ。結構時間経ってるし一回クラスメイトの動向も確認しときたくて。最寄りの街はこっちが近いでしょ?」
「確かに」
既に勇者パーティーを離反してから月単位の時間が経過している。強くなってから戻ると宣言したとはいえ、向こうのことを何も知らないとあっては戻るも何もない。
雪華はどこかの街を訪ねてクラスメイトが今何をしているのか知りたかったのだ。
「まあ、あとは久しぶりに口に物を入れたいというのもあるかな。動力源はあるとはいえ毎日していた食事ができないとなんかこう、辛い」
「ソレに関しては全面的に同意かな……」
雪華が携帯糧食以外を口にしたのは文字通り離反したその日の朝以来一度もなかった。ミレディに至っては到底数えることなどできない程の年月が経過している。食事に対する欲求の高まりは当然のものと言えよう。
さて、つつがなく峡谷踏破を終え、二人は最寄りであるブルックの町を目指していた。
最寄りと言うだけあって、事実大した距離がある訳でもない。移動速度も幸いして、日が暮れる直前には二人はブルックの町、その入り口へと辿り着くことができていた。
町の門には幾人かの衛兵が立っており、ブルックへ辿り着いた者、帰ってきた者達を捌いているようだ。
「……セツ、軽い検問があるみたいだけど平気なの?」
「……何も考えてなかった」
「あほ……」
「うう、否定したいけど何も言い返せない……」
雪華は外の状況を知らなかったが、ほとんど何も言わず失踪した以上王国側から探されている可能性には思い至っていた。
思いついてはいたのだが、日本じゃあ町の出入りごときでは誰も何も言わないし止められることもない。ここは異世界だと言うことを完全に失念していた。
悩んでいたって状況が変わることはない。おまけに町の前まで辿り着いているのにも関わらず、入ろうとしない二人組のことを衛兵が若干不審そうに見ているときた。このままだと、ここを離れることしかできなくなる。
うんうんと唸っている雪華だったが、その間ミレディが何をしていたかと言うと……彼女の顔をじっと見つめていた。心配事を前に頭を捻っている最中ではあるが、そこまで見られていたら流石の雪華だって不審に思う。
「……ボクの顔に何かついてる?」
「……いや。行けるかなって」
「行けるって、どうやって……っちょ、ミレディ!?」
突然、ミレディが雪華の手を引いて門の方へと向かい始めた。驚く雪華だったが、ミレディが彼女の手を引く力は強く、間も無く衛兵達の前へ辿り着いてしまう。
「止まってくれ。ステータスプレートを……うおっ!?」
「衛兵さぁん、私たち外で魔物に襲われてぇ、ステータスプレートを入れてた荷物を奪われちゃったんですよぉ……」
上目遣いで衛兵を見るミレディ。雪華も彼女の意図を察して、合わせるように悲しげな顔を披露する。
「はい、二人でなら大丈夫だと思って外に出たのに……こんなことになるだなんて……なので、このまま中に入れてくれませんか……?」
「う、うむ。ならしょうがないな!ギルドに行って、再発行してもらうといい。だが一応来訪の目的を聞かせてくれ」
「はい、道中の宿泊です」
「わかった、通ってくれ」
そんなやり取りの後、二人は特に止められることもなく町へと入ることができた。
「チョロかったね〜☆」
「さすが異世界、この辺もガバかったか……」
雪華の感想は間違ってはいない。確かにここは異世界で、日本とは違ってどこにでも検問があり、日本とは違って筋の通った事情を説明すれば、身分が怪しくても検問を通過できてしまう。賄賂だって選択肢に入っただろう。
だが流石に、見るからに怪しい者をを通すほど衛兵も馬鹿ではない。しかし、小さいのに旅をしている二人組の少女という怪しいペアはこれを通過できた。一体何故か?
簡単である。顔だ。
一方は流れる銀糸のような髪にスカイブルーの美しい瞳が映える愛らしい美少女。もう一方はふんわりした金糸のような髪にマリンブルーの瞳の、快活そうな笑顔が似合う美少女。
人間、綺麗なものには弱いのである。それがつい触れたくなってしまうような美少女なら特に。
なお、美しい顔でもどうにもならない怪しさ満点装備であるプラグスーツに関しては、着込んだローブの下に隠れていたので特に見つからなかった。
「美人って罪だね☆」
「それ自分で言っちゃうんだ……」
「まあ事実だし」
そんなこんなで町に入ることができた二人。まずは今晩の宿を探そうと、比較的建物が小綺麗なエリアを目指して歩き出した。ある程度高い宿に泊まらないと、治安の観点で不安だからである。
「セツ、お金なんて持ってるの?」
「うん。王国から召喚者向けに配られてた分をごっそり持ってきてるから」
そういうと雪華はリュックサックから袋を取り出しジャラジャラと鳴らす。確かに、音からしてそれなりの金額が入ってるようだ。
「雪華、それ今後は禁止。お金持ってるアピールとかしてるとならず者に狙われるよ?……こんな風に」
「あちゃ〜、失態」
少女二人。金持ち。無警戒。
そんな二人が歩いていて、悪意を持った人物がそれを見逃す道理もない。雪華とミレディはいつの間にか複数人のガラの悪い男達に囲まれていた。周囲に他の人がいなかったわけではないが、関わり合いになりたくないとそのほとんどがその場を離れていく。
そして、男の集団の中でも特に筋肉質で肩のタトゥーが目立つ大柄な男が話しかけてくる。
「なぁ嬢ちゃんら、俺たち金と遊び相手にちょ〜っと困っててよ?付き合ってもらってもいいか?」
「う〜ん、こっちも忙しいしぃ……私たちじゃお兄さんに釣り合わないと思うんだ!」
ニコニコと笑うミレディに、底意地悪そうな笑みを浮かべる男。値踏みするような目をしながらこう続ける。
「そんなことねぇよ、俺たちは君らと遊びたいんだ」
「何か勘違いしてない?私達じゃかわいすぎて、お兄さんらには荷が重いよって意味で言ったんだよ☆」
「なんだとゴラァ!?」
満面の笑みでそう宣ったミレディに男はキレた。青筋が頭に浮いており、今にもこちらに殴りかかってきそうだ。
「……ぐふっ……ごめんミレディ、あまりにも向こうで読んだ小説そのまんまで……笑いが……ふふっ、あははは!」
「これはしょうがない。だって、向こうのお猿さん達も馬鹿丸出しだしぃ?」
「て、テメェら……言わせておけば……!」
我慢ならんと言わんばかりに男達が突撃してくる。通りがかった町民は、傷だらけになった少女らを幻視し目を瞑った……が、いつまで立っても肉に拳を打ち付けるような音は聞こえてこない。代わりに響いたのはロープか何かを強く打ち付けたような"パァン!"という音と、ドサドサと何かが崩れ落ちるような音。
予想と違い、恐る恐る目を開いた町人が目撃したのは、真ん中に立っている二人の少女と倒れ伏す男達だった。
「ミレディ、いくら全部倒せるからってそんなに煽ってわざわざ対立することないじゃん!」
「え〜?だってからかいがいがありそうだったし〜?」
「もぉ〜!目立たず行きたいのに〜!」
「容姿的に無理」
「なん……だと……?」
男達を放置して歩き出す二人。町人達はその様子をただ遠くから見守ることしかできなかった。
なお、男達の全身には
美しい少女のとんでもない実力が噂になるのに、そう時間はかからなかった。
※※※※※
翌朝。ゆっくり宿で疲れを取り、美味しい食事を摂った雪華とミレディは、町に来た本来の目的を果たそうと外へ繰り出していた。
割と早い時間なのにも関わらず町は活気に満ちており、店の前で呼び込みをする声や、冒険者の会話の声が響き渡っている。
久々に見た人の営みに、二人はどこか懐かしさを覚えた。ついその頬が緩む。
さて、意気揚々と飛び出したのはいいものの、今の二人には特に情報のアテがあるわけではない。一番それっぽい場所としてギルドの場所こそ聞いてはいたが、身分を明かしにくい以上そこを頼るのは最後の手段にしたかった。
「……どこ行こっか」
「離反の話とか多少誇張入ってるかなと思ってたけど、セツってマジでノープランで飛び出しちゃうタイプだったか……」
そんな話をしながらぶらぶらしていると、道の先に人混みが見えてきた。見たところ、誰かを何十人もの男達が囲んでいるようだ。
「見てミレディ。また昨晩みたいなおもしろ……すごいことになってるよ」
「ほんとだ、おもし……すごいことになってる」
「道塞いでて邪魔だね」
「どかす?」
「どかそっか」
後ろで物騒な会話が執り行われているとは露知らず、男達は一生懸命に輪の中央の誰かに向かって話しかけている。
雪華とミレディが人混みまであと数歩というところまで辿り着いたところで、男達の叫びの大合唱が始まった。
「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」
「「「「「「シアちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」」
そのあんまりな内容に雪華とミレディは顔を顰めた。
おおよそ取り囲まれているのは女性だろう。なんなら名前のうち片方には非常に聞き覚えがある。
「……シア、道具屋はこっち」
「あ、はい。一軒で全部揃うといいですね」
雪華に至っては声まで聞き覚えがあった。
そして男達の発言は完全スルー。ハジメへの惚れ込み具合からして、ユエが他に靡かないだろうことは予想していたが、まさかもう一人誑し込んでいたとは。
予想外にプレイボーイだったハジメに雪華は勝手に感心していた。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!返事は!?返事を聞かせてく『『断る(ります)』』……ぐぅ……」
崩れ落ちる男達。途端に雪華たちとユエたちの間にあった壁が低くなり、お互いの顔を認識できるようになった。
「ユエちゃ〜ん、また会ったね!」
「…………!雪華!」
地面に落ちた男達を、光る鞭で無理やり押し退けて雪華はユエに駆け寄った。
ユエの背後では、長きに渡り地下暮らしだったはずのユエに知り合いがいたのが疑問だったのだろう。ウサミミ少女が不思議そうな顔をしている。
「ハジメたちもこっちに来てたんだね!」
「樹海の探索に資格が足りなくて……ライセンに行く前にここに寄った」
和気藹々と話す二人の少女。それぞれの背後で少し不思議そうにしている少女達。
これで、都合4人の美少女がここに集ったわけだ。
さて、そんな状況を先ほどまで幼気な女の子二人を取り囲んで交際を迫っていた男達が放置するだろうか?
否、そんなはずはない。
血走った目で我先にと倒れていたはずの男が4人に突撃してくる!……ことはなかった。
「いやぁ、こういうのトラブル誘因体質って言うの?すごいねぇ」
「ん、面倒……私はハジメ以外見てないのに」
突撃して来ていたはずの男は、そのうち幾人かは光る鞭に絡め取られ、幾人かは氷漬けにされていた。
汚いオブジェである。
「今なんか用事の途中?ハジメも交えてボクの仲間を紹介したいんだけど……」
「今は買い物中。終わったら一回宿に戻るから、その時に私たちもシアを紹介する」
「OK!」
宙ぶらりんの男に、カチンコチンの男。それを見て震える男達に、真ん中で普通におしゃべりに興じている少女達。
どんな空間にも似合わないカオスがそこに顕現していた。
「これを処理したら買い物してくるから、先に宿に行ってて。私たちは"マサカの宿"に泊まってる」
「りょーかい!」
そんな会話を経て、少女達は解散した。
鞭から解放された男は、ほっと胸を撫で下ろす……が、そんな間も無く氷漬けにされた。
「君たち二人は、みせしめ」
その瞬間、今まで天使だと思っていたはずの少女の顔が、氷漬けの二人には悪魔に見えた。
股間を執拗に責められ、この町に新たな二人の漢女が生まれるのは、およそ15分後のこと……。
使いやすすぎてシャムシエルの能力が頻出しちゃうのどうにかしたいですね
鞭、便利