次こそはちゃんと遅くなるんじゃないだろうか
迷宮探索と聞いて何をイメージするだろうか。
昏く深い、謎に満ちた洞窟の探索。
強大な魔物との戦闘。
珍しい宝物に武器、それによってもたらされる新たな力。
トータスの民、それも冒険者ならばおおよそこのような答えが返ってきただろう。
食い扶持を稼ぐために。戦いを愉しむために。強くなるために。【オルクス大迷宮】を探索する多くの者たちは、こう言った気持ちを胸に日々探索に身を投じているのだろう。名誉欲だとか自己顕示欲だとか現実的な話は置いておいて。
雪華もまた、【オルクス大迷宮】の深奥に挑む者の一人だ。それも、今まで最奥とされていた100層よりもさらに深いところ。
あの2体の使徒との戦いののち、目が覚めた雪華は100層の廊下の先、未だ向こうを見ていない赤い扉に寄りかかっていた。
自分が入ったはずの白い扉はまるで最初からなかったかのように忽然と消えていて。でも上昇した適合率や、プログラムの過程で手に入れたシャムシエル、ラミエルの能力はそのまま。
記憶だって残っている。
一体何だったんだろうと疑問は残るが、それで揺らぐ彼女の決意ではない。新たなる強さを求めて先に進む判断を下すのに時間はかからなかった。
慎重に赤い扉を開く。両開きのその鉄扉の先にあったのは……石壁だった。
加工も整備もされていない、洞窟の岩肌。行き止まりだったかと残念に思うのも束の間、まるで生きているかのように岩が左右に開き始める。
……危険は感じられない。そうなれば彼女の選択は『先に進む』、ただ一つだ。
斯くして、雪華の迷宮探索は始まったのだ。
……いや、正直に言おう。これは迷宮探索なんかではない。今の彼女にとっては、これはただの舗装工事だった。
チートが自分の弱さを学習し、油断を可能な限り排除したらどうなるだろうか?まあ言うまでもない。
大抵の深層の魔物たちは、的確に急所を抉り取られその命を落とすことになったのだった。
さて、ある所に一匹の兎がいた。兎とは呼んだが、ただの兎ではなく魔物の兎。大きさも中型犬並みにあり、発達した後ろ足による蹴りで敵を仕留めることを得意とする、そんな兎だ。
彼は特別強くはなかった。同種の中では平均的な能力値であり、まあ生きるには困らないという程度だった。
しかし、ある日を境に事情が大きく変わる。近頃狩場付近を荒らしていた白髪のニンゲンがこの付近における最強、熊型の魔物を殺害し何処かへ去っていったからだ。
たまたま白髪のニンゲンの脅威を目の当たりにしており、たまたま回った頭でしばらく狩場を離れる判断をし、たまたまニンゲンが去ったタイミング、その直後に狩場へ帰還した。
これらの幸運が重なったことにより、彼は強くなる筋道を得たのだ。
兎の魔物は、熊さえいなければここいらでのヒエラルキーはそれなりに高い方である。天敵に怯えずに狩りができると言う素晴らしい環境で、彼は積極的に自らを鍛えた。
倒して、殺して、食う。倒して、殺して、食う。この繰り返しにより、以前と比べ物にならない強さを彼は得ることができたのだ。
そんな暮らしを続けていたある日のこと。彼は一人のニンゲンを目撃した。白い髪をしており、以前熊を殺したあのニンゲンが頭を過ぎるも、明らかに見た目が違ったので別人だと判断を下す。
……さて、自分が狩場にて頂点に近い位置まで上り詰めたと考える彼が、ノコノコ現れた新顔にやることと言ったら何だろうか?
もちろん、攻撃あるのみ。脅威になる可能性があるのだったら、その芽は摘んでおくに越したことはない。
背後に忍び寄り、近づいて、近づいて、近づいて……。
最高のタイミングで飛び出した、彼お得意の蹴りが人間の頭蓋を吹き飛ばす……ことはなかった。
「キュエ?」
「わ、なんか見られてると思ったら……」
八角系の波紋を形成する謎の輝く壁に攻撃は完全に無効化される。常識外の出来事に呆けている間に、彼を赤紫色のナニカが巻き取った。
「かわ……いくない!なにこの脚……血走っててこわ……」
それが死の間際、彼が最後に聞いた言葉だった。自らを巻き取ったその触腕によってそのまま腹のところを真っ二つに裁断されてしまったのだ。
「でもやっぱり上の魔物より強いなぁ。スニーキングアタックなんてしてきたの初めてだよ」
この後、階層におけるヒエラルキーにまた新たな変化が生まれたのは言うまでもない。強者は、全ての環境さえも塗り替える……。
※※※※※
雪華の迷宮踏破は至って順調に進んだ。油断せずに敵の攻撃を受け、いなし、叩けばおおよその魔物はすぐさま沈んだ。
唯一彼女の行手を阻んだのは、その広さだ。上部に比べてかなり階層一つ一つが広く、一層降りるのにもそれなりに時間がかかった。
だが魔物が脅威とならない以上、彼女の歩みは遅くこそあれど、さらに鈍化するようなことはない。S2機関により時折の睡眠を除いて休息を要さない雪華は、着実に、それでいて素早く迷宮の奥へと進んで行った。
さて、使徒の能力が更に出現した彼女だが、当然探索の途中でそれを試し、習熟せんとしている。
ラミエルに形態変化した際は、外骨格やパーカーの代わりに、雪華の外周を帯のように菱形のクリスタルが回転するようになった。メインウェポンである荷電粒子砲は……正直言って過剰火力すぎた。
加減しても浅めの階層の魔物は最低で消し炭、ひどい時は壁に大穴。こんなのを連発していては、ラミエルが保有していた攻撃検知の力もあってなんの訓練にもならない。どこかで使うときは来るだろうと、一旦この能力は封印された。
そしてなれるようになったのはこれだけではない。それが、『ニュートラル』モードである。
特定の使徒に特化しない、要するに火力やリーチが落ちる代わりに、技能を有する全ての使徒の能力が満遍なく使えると言う状態である。
もちろん、敵との相性の良い状態に変化しての戦闘の方が段違いに強いので、あくまでこれは最低限の即応力を残した非戦闘形態なのだろう。戦う際の姿ではない。
服装に関しても頭部にインターフェイス・ヘッドセット*1が出現するのみとシンプルだったので、このモードは休息時の彼女のよく取る姿となった。
そんな風にして、
石化、毒、麻痺などの厄介な状態異常を付与する敵をS2機関フル稼働による爆速新陳代謝で誤魔化すだとか、燃える液体を不可視の光線で着火してしまって死を覚悟するも思ったより熱くなかったりとか、せっかく見つけた美味しい果実を落とす魔物が
一筋縄でこそ行かなかったが、今の雪華の多彩な攻撃、技術によってどんどんと探索は進んだ。
順調な中で特別不思議だったのは、50層ほど降りたところにあった空間だろう。
聳え立つ巨大な扉、その門番と思しき巨体の魔物は既に微妙に腐っておりひどい匂いがした。扉の先も広い空間で、戦闘痕こそあったが何も襲ってこない。
こういうの、復活しないもんなのか?と一旦は軽く流して先を急いだ彼女であったが、程なくして既にここに誰かが到達している可能性に思い至る。
公にされている最高到達点とのズレもあって、やはり少々薄気味悪く感じたのだった。
さて、違和感があったとて迷宮探索は終わらない。違和感の正体も必要なら倒し自分の糧とすべしと雪華は更に突き進んだ。
道中、森+大量の雑魚というだいぶ面倒くさい空間に立ち会った際は一瞬デ○デ大王が乗り移ったり*2はしたが、彼女の動きを止める敵は全く存在しなかった。
彼女の足が、休息以外で一瞬でも止まったのは……100層。節目となる、おそらく一番底に該当する階層だ。
地下に似合わない豪奢な内装の広大な空間は、まるで訪れたものを歓迎し、そして更に誘い込んでいるかのようだった。
長大な廊下を、奥の扉を目指して進んでいく。油断は禁物だ。敵の気配を拾うべく神経を集中させながら一歩一歩奥へと進んで行った。
そして扉の直前、最後の柱を通り過ぎた、その瞬間……。天井まで届きそうな巨大な魔法陣が出現した。
放たれる赤黒い光はどんどん増していき、その紋様はこの世界で見たどんな魔法陣よりも複雑。
「コード06!ラミエル!」
油断はしない。自らの全力を持って叩き潰す。その決意と共に、魔法陣から徐々に現れる影に最大出力をブチ込んだ。
※※※※※
「あー………えー………えー………?」
爬虫類の黒焼きってこんな感じだったっけ?と雪華は思った。ある程度の抵抗はあった。
出現した六つ首の化け物は、断ち切られた頭を修復したり、こちらの精神に干渉しようとしたり、最終的には防御に全力を裂いたりはしたのだったが、出力の暴力の前では流石に為すすべもなかったようだ。
何とまあかわいそうなことに、継続的な極大火力とその本質の一つが「心の壁」であるA.T.フィールドを扱うラミエルに対してこのヒュドラは相性が悪すぎた。
もし防御形態を取らずにヒュドラが攻めっ気を出していたら、黒焦げでは済まずに粉末になっていただろう。運が良いのだか悪いのだか。
雪華の最終戦闘はこんな形でまあ、不完全燃焼で終わってしまった。ただ死闘は既に上の100層で経験しているし、深層を降っていく過程で魔物相手の戦闘も十分に習熟した。きちんと彼女は強くなることができたのである。
「まあでも、強くなったのと今のこの微妙な気持ちは関係ないしなぁ……」
そう言って焼きヒュドラをつんつんする。まあそんなのでくよくよしていてもしょうがない、切り替えていこう!とその場で背伸びしたその瞬間。
その場で聞こえるはずのない、声が聞こえてきた。
「やっばい戦闘音聞こえてきたけど一体なんだ……ってうわ、ヒュドラが丸焦げになってる!?一体どんな出力の何をぶつけたらこんなことに……」
「へ?」
それぞれが聞こえてきた声の方を向き、二人は目を合わせる。
片や地球のそれとも、この世界のそれとも違った服装であるプラグスーツ姿。片や元々黒かった髪が真っ白に染まっており、眼帯、義手など元々の特徴を上書きするような特徴の数々を身に纏っている。
それぞれ成長し、姿や立ち振る舞いこそ多分に変化していたが……二人は、親友。
声まで聞いて、間違えるはずがない。
「セツ……?」
「ハジメ……?」
驚き。疑問。喜び。どんな顔をすればいいのかわからない。雪華とハジメはそのままたっぷり10秒ほどその場で立ちすくみ……そして、どちらからともなく近づき、その場で強く抱きしめ合った。
「ハジ、メ……!ボク、ボク……!!!」
「セツ………」
雪華の双眸からは止めどなく涙が流れ落ち、ハジメはそれが自らの肩に滴ることを全く気にする様子もなく優しく彼女の背を撫で続ける。
彼女が最も強く望んでいた再会は、戻ってこないハジメを心配したもう一人の少女が様子を見に来るまで続いた。
※※※※※
「誰かに奈落に落とされたぁ!?」
「ああ、でももう気にしちゃいねぇよ。どうでもいいし」
雪華の大声がベッドルームに響く。
【オルクス大迷宮】深層100層、踏破した者のみが踏み込める反逆者の住処。その一室で使徒、錬成師は語らっていた。
「………ハジメ、本当にごめんn「ああいいっていいって、さっきも言ってもらったし、状況も状況だったからしょうがない」……うん」
双方が落ち着いて雪華がまず最初にしたのは、親友へ己の気持ちを伝え謝ること。そして、心の底から後悔している彼女は、クラスメイトの誰かの凶行にすら責任を感じ謝罪を繰り返そうとしたが、ハジメはそれを止めた。
「まあ落ち着いて聞いてくれ。異世界に突然放り込まれるなんて俺たちが大好きなファンタジー小説みたいな状況に遭遇して、常に冷静になんていられない。おまけにこうして奈落に落ちるまでの俺は実際にめちゃくちゃ弱かった。相手がセツだからってのもありはするが……俺は怒っちゃいねえよ」
「…………ありがとう」
「それでいいんだ」
ハジメはゆっくりと頷き、雪華もまたそれに答えるように少し微笑む。
「……いやあ、誰かと思ったらハジメでびっくりしちゃった。ボクより先に迷宮を進んでる人がいたなんて」
「俺も後ろからセツが来てるとは思わなかった。武者修行に出るのは分かっちゃいたが、ここだったとはな」
和やかな談笑は進む。しかし、この状況がおもしろくない者が一人いる。
「ねえハジメ。こいつ誰」
吸血姫様だ。流れる金糸のような髪に小柄な体躯、美しい赤い瞳を持つこの可憐な少女は、自らの最愛が他の女とおしゃべりに興じているのが不満なのだ。
「あ、自己紹介がまだだったね!」
「俺もそういえばセツの話はあんまりしてなかったな」
彼女の不満を知ってか知らずか、雪華は少女に自らの素性を告げる。
「ボクは柚希雪華!ハジメと同じく異世界からの転移者で、『使徒』の天職を利用されないために勇者パーティーを抜けて武者修行中!ハジメとはお互いの一番恥ずかしいところまで知ってる仲です!よろしくね、ユエちゃん!」
「雪華ァァァ!?」
「…………ライバル出現!?」
探索を終え気が緩んだのか、言葉足らずと天然ボケが発動している雪華。あんまりな説明にハジメはあだ名も忘れて彼女の名を叫び、ユエは焦った顔でハジメの腕にしがみつく。
「な、なんか変なこと言ったかな?ボクたち各々の厨二病ノートまで見せ合った仲でしょ!?」
「そう言う意味にしてももっと言い方あるだろ!!!」
「よく分からないけど、恋のライバルではない……?」
今の状況を一言で言い表すなら『しっちゃかめっちゃか』である。相変わらず雪華は自分の言ったことのヤバさに気づいておらず、ユエはハジメの腕を更に力を入れて抱き締める。
「いやあ、ハジメにも春が来たんだねぇ……迷宮探索でこんなにかわいい彼女ができるなんて!」
「……ま、まあな」
「それに白髪オッドアイ眼帯義手、更には銃で魔物を攻撃だなんて!一人称だって"俺"になってるし!!」
「やめろぉ!!!俺が厨二病みたいじゃないかって悩んでる原因全部挙げるんじゃねぇ!!!!!」
「えー!めっちゃカッコいいじゃん!!!」
「…………そうだ、セツはこういう奴だった」
一瞬ハジメの心の傷が抉られることこそあったが、あの頃、地球で平穏な日々を過ごしていた頃のような会話ができたのだ。戦いの日々に荒んでいた彼らの心は何か温かいものに包まれた。
「それで……ユエちゃん。ボクが浅はかだったその時に、一番隣にいなきゃいけなかったその時に……ハジメの隣にいてくれて……ありがとね」
「………………うん」
困っている友を助ける。その当然のことができない間、ハジメを助けてくれたユエに、雪華は心から感謝していた。
「にしても、セツの天職は本当に『エヴァンゲリオン』の『使徒』だったんだな」
「そうだね。今もちょっとずつ新しい使徒の能力が増えてってるよ」
「エヒト神の使徒とかじゃなくてマジで良かったな」
「ほんとほんと!さっきの話聞いてびっくりしたよ!」
雪華より少し早くこの場に辿り着き、もうそれなりの期間この反逆者の住処に滞在しているハジメとユエは、人々が神の遊戯の駒にされていること、そしてここが神に逆らおうとしている反逆者の一人によって作られたものだということ、同様の迷宮が世界に【オルクス大迷宮】含め7つあることを、かつてのここの主人、オスカー・オルクスが残した魔術により知っていた。
だからこうして語らう少し前。最低限この事情は共有しておいた方が良いとして、ハジメたち同様、雪華もオスカー・オルクスの話を聞ける魔法陣へと赴いていたのだ。先行二人と違ったのは、解放者により授けられるはずの踏破報酬、生成魔法が受け取れなかったこと。雪華の成り立ちは根本からしてこの世界のシステムと違うのかもしれない。
「で、セツ。お前これからどうする?」
「ん。一緒に行くの?それともまた別れる?」
目下の課題はそれを決めることだった。雪華は強くなろうとはしているが【オルクス大迷宮】を踏破した現在目標がない。七大迷宮の存在を知らされた今、この世界で最も難しい7つのダンジョンとして鍛錬目的にそれらを目指すことはほぼ確定こそしたのだが、「どう」目指すのかは決まっていないのだ。
「…………たくさん戦ったし、見ればわかるんだ。ハジメはすっっっっっごく強くなった。ユエちゃんもとっても強いから、技術面じゃあまだ拙いボクじゃあ多分二人に勝てない」
そうは言っているが、黒焦げのヒュドラを思い出したハジメの表情は若干引き攣っている。
「それに、できることならしたいねってくらいで、帰還に対する意志も特別強くないボクがハジメたちに同行したら、もしかしたら足を引っ張っちゃうかもしれない」
「俺は別に気にしないが……」
「ボクが気にするの!……だから、ここはそれぞれで迷宮踏破を目指そうよ。目的地が同じなんだからさ、きっと道の途中でまた会えるよ!」
「………………」
かつての浅かった考えとはまた違う、今の自分達をしっかり理解しての雪華の提案。出会ってまたすぐ解散という慌ただしさに、さらに言うなら彼らは親友。
お互い思うところは多分にあった。
「…………そうだな。だけど忘れんなよ?俺たちは一番の親友で、一番の理解者───────辛いこととか、迷ってることがあるなら、今度はちゃんと俺にも聞いてくれよ?」
「………うん、うん……うぅ……」
「だぁ、泣くなって、ほら……」
再び涙をこぼし始めた雪華の顔をハジメがゆっくりと拭う。
恋人同士とはまた違った関係性の二人のやりとりを、愛する人のまた違った一面を、その愛する人をとても大切に思っている少女を。
自分以外にも、彼を大事に思ってくれてる人はいるんだな。そう思いながら、吸血姫は穏やかな笑みと共に見つめていた。
※※※※※
「んじゃあ、俺たちは……どっちがいいかな、まあこっちでいいか」
「ならボクは……わざわざ同じ方向ってこともないかな、こっちを見てくるよ」
巨大な渓谷の底。とはいえ、しばらくぶりの太陽光が注ぐその大地を一通り楽しんだ彼らは、別れの時を迎えていた。
「共有できそうな迷宮の話は、会ったらするって感じでいいかな?」
「ああ、いいと思うぜ」
此度の別れは決別でも、今生の別れでもない。辿ろうとしている道が違うだけ、二人の信念がちょっぴり違うだけ。二人がぶつからないための、大切な別れだ。
「ってか、羨ましいなぁそのバイク!ボクも移動手段欲しいのに〜」
「…………お前、浮いたまま高速水平移動できんだからいらないだろ」
「でもロマンじゃん」
「それは同意」
雪華は多くの使徒が獲得している謎の空中移動方法、それを既に会得し使いこなせるようになっていた。
「……じゃあ、また会う日まで」
「……おう、また会う日まで」
「……ん。私もまた雪華に会うのを楽しみにしてる」
交わされる固い握手。一瞬離れてしまいかけた二人の絆はもう壊れることはないだろうし、迷宮の底で生まれた新たな絆もまた、彼らの今後を彩ることになるだろう。
「雪華に聞いたハジメの弱点、有効に活用する」
「おい待て」
「ふふ、ユエちゃんに教えてもらった地下でのハジメのあれこれも有効に活用させてもらうよ!からかえるネタが倍くらいになったなぁ……」
「ちょいちょいちょい雪華さんユエさん!?!?!?」
「よーし、行くぞー!!!」
「待てやゴラァ!!!」
そう言うと雪華は50cmほど宙に浮き、滑り出すように峡谷を進み始めた。
ハジメはそれを一瞬追おうとしたが……優しいため息をひとつついて、一言。
「行くぞ、ユエ」
「うん」
そう声をかけ、彼もまたバイクに跨った。
雪華の旅は。ハジメの旅は。
異世界に召喚された時でもなく、ホルアドの宿を出た時でもなく。この瞬間に始まったと言えるだろう。
まだ見ぬ力を得るために。自分の持つ信念のために。二人は新たな一歩を共に踏み出した。
今の雪華の強さはハジメ&ユエコンビに5回中4回勝てるってところでしょうか?
雪華は新たな使徒能力獲得で手札は増えるけど最大出力は適合率の限界を超えないと上がらない
そしてハジメとユエはまだステータス上昇の恩恵に与れる
この辺の差でバランス取ってます
なんとなくの強さの参考にドウゾ
いつも感想、高評価、お気に入りありがとうございますb