「尾白、くん。無事?」
「あぁ、回精か、大丈夫。そっちは?」
「平気、でも」
「あぁ、アイツらを何とかしなきゃな」
目線の先ではモヤによって配置されていたであろうヴィランを確認できる。今ここで見れるだけでも十数人、恐らくはまだいるだろう。
「へっへっへ・・・こっちは二人かぁ・・・他のところから別の奴が来る前にさっさと殺しちまおうぜ」
「いいなぁ、じゃあ俺はあっちの男をやる。潰しがいがありそうだ」
「じゃー俺はあっちの女をやるよ、いたぶって楽しんでやる」
・・・先ほど、殺しがどうのに怪我をさせる事に慣れるべきと言ったが、いきなり本番だとは。だがやるしかない。
「尾白、くん。相手、した、方が、良さ、そう、だけど」
「理由を教えてくれ」
「ここ、音が、響いて、る。密室、多分、USJ、内の、火災、ゾーン」
「・・・なるほど、ここで逃げ回るのもアリだが倒してUSJ内を逃げた方が可能性があるって事か」
「そういう、こと」
待ちきれなくなったのかヴィラン達が突っ込んでくる。あえて鉄扇は使わずに素手で戦う事で力加減を覚える為にそのまま相手───ナイフ持ちのヴィランに突っ込んでいく。
「おっ!いいねぇそのまま切り裂かれてくれよぉ!!」
「誰ッ!が!!」
「おぐぉ!!う、うで、腕がぁぁぁあ!!ぐほぉぉ!!」
ナイフを振るう前に一気に懐に入り込む、そのまま振りかぶっている方とは逆の前に突き出している腕に全力の半分くらい力を込めて裏拳を叩き込む。・・・何か越しに、ばきり、と嫌な感覚が伝わってくる。顔をしかめながらも痛みでひるんでいる間に先ほどより更に半分の半分くらいで腹に殴りこむ。痛みに耐えきれず意識を手放したのかそのまま倒れ込む。
「・・・次、だ」
「ひっ、ヒィ・・・」
「なんだよこれ・・・女は増強系じゃねぇか!!」
ヴィランが何か言っているが無視、鉄扇を手に取り細いパーツを取り付けリーチを伸ばす。流石のヴィランもこちらが獲物を持っているとは思っていなかったようで。
「ヒーローが獲物持ちってアリかよぉ!!?」
「ヴィラン、に、ルールを、問われ、たく、無いッ!」
「ぐがぁぁ!!」
今度は腹に殴りこんだ時の倍くらいで相手を鉄扇で横なぎにする。ヴィランは腕でガードをしつつも両腕に大ダメージが入ったのだろう、ぶつかったところが一目見てわかるほど変色している。もう抵抗出来ないと判断し、横なぎの時より更に弱めで顎をカチ上げる。そのままヴィランは後ろに倒れ沈黙した。・・・その際何処かを切ったのか、鼻血が出たのかは判断できないが、返り血が頬に着く。気色悪い、血の匂いに少し吐きそうになり眉間に皺が寄るが拭って隙を晒す様な事はしない。
〈獣狼ー〉〈大丈夫ー?〉〈無理してないー?〉
「あぁ、大丈、夫。続け、られる・・・。次」
「おい!女がやべぇって!このままじゃ殺されちまう!!」
「殺さ、ない。でも、力、加減を、間違え、たら、ごめんね」
そのまま鉄扇を太いパーツと組み合わせる。細いパーツの力加減は大体わかった。重傷から抑えなければと意識し走り出す。
「くっ、来るなぁ!」
「畜生!畜生!!」
「ざっけんじゃねぇぞこの野郎!!」
数名、火を操る個性なのだろう。火が飛んでくるが片方の鉄扇を広げ防ぐと同時に大体切島くんに投げたくらいで投擲、鉄扇が着弾した事に気を取られている隙に接近。
一人目、大体顎をカチ上げた際の力で足を殴る。武器を持ったヴィランが投げた鉄扇に気を取られて防御も取れずに足が変色し立てなくなった。どうやら足を狙うのが効率的と判断したところで倒れた音と絶叫の声が聞こえ他のヴィランが我に返る。
二人目、ちょっと力加減を間違えた。腕を殴った時と同じくらい力を込めてしまった。個性を使って対応しようと火を手のひらに集めていたがこちらの方が早く。ばきり、と鉄扇越しから嫌な感覚がやってくる。太いパーツを付けたままだとダメだな、取り外し帯に付ける手間すらかけたくなかったので、抵抗を封じる意味もかねて二人目の手のひらの上に落とす。嫌な音、恐らくはしばらく手が使えないだろう。その痛みで気を失っていた。
三人目、こちらのやっている事に顔を青ざめている。・・・嫌ならなんで雄英に侵入してきた、俺だって嫌だが加減を覚えなきゃ人を殺してしまう。それだけはもっと嫌だ。だから出来る限り力加減を間違えない様に致命的な部分は攻撃していない。親骨を伸ばしただけの鉄扇を恐怖で乱雑になった抵抗を避けつつ振るう。腕に当たり動きが止まった、そのまま両脛を強打。動きが止まり鉄扇を持っていない素手の方で顎を軽く殴る。・・・嫌だけど、大体わかってきた。
そこからはもう流れ作業になっていった。素手で、鉄扇で相手の四肢を殴打し行動不能にしていく。最初は骨を折ったりと重傷を負わせていたが徐々に酷い青あざ位に収まっていった。・・・尾白くんよりこちらがヤバいと判断したのだろう、こちらに多くのヴィランが来ていた。中には泣き叫びながら尾白くんに助けを求め自ら投降する者も現れ、逆に仲間を縛り投降してくるくらいだ。お陰で想定より早く終わった。もうヴィラン達は動けないだろう。
「なぁ・・・回精、大丈夫か・・・?」
「ふぅーっ、ふぅーっ、・・・うん、大丈、夫。まだ、動ける」
「そっか・・・。俺は回精の事を友達だと思ってるから安心しろよ」
「っ!・・・ありがと」
疲れよりも気持ち悪さで息が荒くなっているのを抑える。そしてヴィランに重傷を負わせた事に拒絶されるのではと心配していたが、尾白くんに態々友達と言われ気遣われてしまった。・・・ホント、優しいな・・・。
「早く、ここから、出よう。扉も、外から、壊して」
「そうだな。それにみんなの事も気になる」
そして燃え盛る街の中を歩き、丁度大通りの道の先が出口だったのでそこから出る。扉を閉め外から蹴り込み歪ませる事で開かなくさせた。・・・恐らくだが、炎が燃え続けているという事は中で空気が循環しているという事だろう。でなければ入ったらすぐに行動不能となり死んでしまう。大丈夫だと自分に言い聞かせて近くの林の中に逃げ込もうとすると広場から聞こえた。・・・聞こえてしまった。相澤先生の叫び声が。怖い、けど相澤先生がそれ以上に心配で。
「尾白、くん、君は、林の、中に!」
「回精!?どうしたんだ、おい!」
尾白くんに林の中に行くように言葉少なく伝え走り出す。急げ、急げ急げ急げ───!
広場が見えてくるとそこには、相澤先生の頭を掴み叩きつける脳みそと、それを見て嘲笑する手だらけの奴が。
体が熱い、この先の悲劇を想定してしまう。血の匂い、恐らく相澤先生はもう瀕死だ。早く助けなければ、目の前が明滅する。息が荒くなる。しかしそれでも事態は進行する。手だらけの奴といつの間にかいたモヤが何かを話し込んでいる。そして───水面に顔を出していた梅雨ちゃんに、悪意をぶつけた。
だめだ、ダメだ、駄目だ!!何をするかわからないが感覚で理解する。アレを止めなければ確実に梅雨ちゃんは死んでしまうと。感情の高ぶりで体の中に流れる何かが動きを速める。そしてそれに合わせて感覚が広げられていく。
「血壊!!」
なりふり構っていられない、一瞬で体を地面と水平に
「なんっ、でっ!?」
「・・・」
「おー危ない危ない」
さっきまで相澤先生のところに居た脳みそが一瞬でこちらに来て足を掴まれる寸前のところで空気を蹴る事でギリギリ避けた。幾ら別の事に集中していたとはいえ血壊中で俺が後手に回る。この事に相手は一体何なのだと固まっていると。
「危ないから、どっか行ってもらおうか。やれ、脳無」
今度は逃さなかった、だが視界に捉えるのでやっとの状況。脳無と呼ばれた存在の拳を避けるので手一杯だった。
「おーおー、脳無の攻撃を避けるのかぁ。やっぱ最近の子供ってすげぇや。だめだなぁ、大人としてはっずかしいなぁ・・・。相手をしてやれ、脳無」
その声と同時に脳無の攻撃が掴み主体に変わる。右手を大きく後ろに跳び後退する事で避けるがそのまま左手が追撃の伸びてきた。空気を蹴り脳無から更に離れる。
「はっやいなぁ、でもぉ・・・そこからならもう間に合わないよなぁぁぁぁああ?」
「っ!梅雨、ちゃん!!」
状況の激変に固まっていた梅雨ちゃんたちに手が伸びる。今度は峰田くんにも手が伸びていた。一瞬の判断で脳無を追い越しそのまま手だらけの奴を止めようとするも。
「くっそぉ!!」
「・・・」
何も言わず脳無はこちらに回り込みこちらを掴もうとする手を蹴って大きく移動し避けようとしたが。
「なっ!?ぐぅぅ!!」
蹴りが効かないどころか蹴りの衝撃すら関係ないと言わんばかりに足を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。叩きつけられた衝撃と痛みで気を失いそうになるが。
「うぐッ!?」
相手は関係ないとばかりに更に叩きつけてくる。血壊だと防御力も上がるのか、などと変な事を考えつつ次の衝撃で考えが中断された。
痛みで意識がとびそうになる。次の叩きつけが来るはずだ、どうにか逃げなければ。と薄れる意識の中思った矢先にUSJ全体を揺るがす大きな衝撃。それと共に足が解放されていた。何故と考えていると入口の方から破壊音。そして誰かに抱えられている事を感じ意識を手放した。
ぶっつけ本番で力加減を覚える事になりましたね。誰だって人を殴り慣れてなければ力加減なんてできません。獣狼は未だ対人経験がテロ事件時の黒タイツとワイヤードと切島くらいなんですよね。
そういう意味では人を殴れないという事でアニメ1期の緑谷と同じ感じです。
今回は原作に少し変更点がでます。まぁ獣狼が居る事でのバタフライ効果と言ったことでしょうか。
獣狼の個性ですが、強化できるとしたらします?
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このまま他と一緒に強くなる
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もっと強くてもいいんじゃない?
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寧ろ弱くした方がいいんじゃ?
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原作キャラが不当に扱われなきゃいい