保須総合病院、そこで傷ついた俺たちは運び込まれその日の内に手当が行われた。個性と言う超常があるお陰かはたまたヴィランと言う定期的に暴れる存在のお陰か医療設備や医療技術など、俺の知っている前世と比べかなり進んでいる。
その為頬を斬られ腕にナイフが二本刺さった轟くんと、肩を刀と足のスパイクで突き刺され腕にナイフが一本刺さった飯田くんは割と早めに退院出来るそうだ。
しかし怪我した足で無理して跳び殴る際に力加減を誤ったお陰で骨にヒビが入った緑谷くんと、ナイフが一本刺さっただけとは言え流石にお腹は不味かったらしい、しばらく入院することになってしまった。
ヒーロー殺しに関わった雄英生徒として他のヒーローやヴィランの襲撃に会った人と一緒の部屋は問題があるのか、四人で一つの部屋を使っている。そしてヒーロー殺しが逮捕された翌朝、麻酔の効果が切れしっかり受け答えが出来る状態になったので轟くんが緑谷くんに昨日の事を聞きたいのか口を開く。
緑谷くんも昨日のヒーロー殺し、特に最後の叫びを聞いた事で自分たちがよくヒーロー殺しに挑み生き延びられたと状況や傷から判断し、轟くんは俺達はあからさまに見逃されしかし殺意を向けられつつも立ち向かった飯田くんを称賛した。飯田くんは何か言い返そうとするも扉が開く音で口を閉ざした。
「おぉ、起きとるな。怪我人ども」
「グラントリノ!」
「マニュアルさん・・・」
二人が入室しグラントリノさんが緑谷くんに説教を始めようとするも、俺たちに来客があるから後にするとし入口に目を向ける。その合図を待っていたのか一人の大男が入ってくる、マニュアルさんと言う成人男性の平均身長はありそうな人が大男の肩ぐらいまでしかなく、白に黒ぶちのネクタイを付けたスーツ姿、そして何よりその顔は犬の顔をしていた。垂れ耳にそれなりの歳故か口元がたるんでいる。
「保須警察署、署長の
署長と言う肩書を聴き飯田くんと轟くんは立ち上がり、足を怪我した緑谷くんも立ち上がろうとするも犬嗣さんがそれを独特な語尾と共に掛けたままで結構と止める。
「君たちがヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね?」
「・・・はい」
「逮捕したヒーロー殺しだが、火傷に骨折と中々重傷で現在厳戒態勢の元、治療中だワン」
そして犬嗣さんが語る。警察は統率と規格の為に個性を武力として用いらず、そのために資格を持ったヒーローがその穴を埋めるために台頭した。個性と言う簡単に人を殺せてしまう力も先人たちがモラルとルールを順守してくれたお陰で今のヒーローが認められている。資格未取得者が保護観察者の指示無く個性で例え犯罪者であろうとも人に危害を加える行為は許されない犯罪行為である。
「
「っ!待ってくださいよ!」
轟くんは叫ぶ、飯田くんが居なければネイティブさんが、俺と緑谷くんが来なければ二人が殺されていた。誰もヒーロー殺しに気づいておらず規則を守り見殺しにしろと言うのか、と。
しかし犬嗣さんは結果オーライで済む話ではないと返す。その言葉に人を救う事がヒーローの仕事だと返すも犬嗣さんは目を瞑り轟くんを卵と言う、雄英ももっと現実を教えるべきだと、エンデヴァーさんもちゃんと教育したのかと。
「っ!この犬!!」
「やめたまえ!もっともな話だ!」
「まぁ待て、話は最後まで聞け」
「以上が警察からの公式見解。んで、処分云々はあくまで公表すればの話だワン」
罰を受けるグラントリノさんから止められ轟くんも止まる、止まった轟くんを確認し犬嗣さんが先ほどの剣呑な声音から親しみやすい声音に変わり話を続ける。公表すれば世間は君たちを称えるが処罰は免れず、汚い話公表せずに火傷後からエンデヴァーさんが捕まえたという事にすれば目撃者も少ない事から三人の違反は握りつぶせる。
「だが君たちの功績も公表されることは無い。どっちがいい?」
「一人の人間としては前途ある若者の、偉大なる過ちにケチをつけたくないんだワン」
「まぁ、どのみち監督不行き届きで俺たちは責任取らなきゃいけないしな」
「っ・・・!」
「って回精くん!?どうしたの突然!傷でも開いたの!?」
「うう、ん。だいじょ、ぶ・・・だいじょぶ」
いけない、笑うな、今は良い場面なんだ。でも犬嗣さん相変わらず決め顔する時舌が出る癖治ってない・・・!必死に笑いを堪えていると、飯田くんがマニュアルさんに深々と頭を下げ謝罪する。マニュアルさんも軽く頭をチョップし。
「よし!他人にも友達にも迷惑かかる、わかったら二度とするなよ」
「はい!」
「・・・すみませんでした」
「・・・よろしく、お願いします」
「大人のズルで君たちが受けるべき称賛は無くなってしまうが、せめて、共に平和を守る人間として、ありがとう」
「・・・最初から言ってくださいよ・・・」
その言葉にバツが悪そうに轟くんは目を逸らしつつ敬語に戻っていた、これでバッドではないもののベターかな、と思っていると。
「さて、これで私の公務はこれで終わり。これからは私用だワン」
「私用って・・・?」
「それはだな、緑谷くん。この事態の解決を押し付けた大馬鹿者な親類にお仕置きをする為だワン」
「っ!?あだだだ!!犬嗣、さん、ギブっ!暴力、反対!!傷が、開く!!」
「安心しろ獣狼くん、君はそもそも大事を取っての入院だし、私たちなら少し開くくらい問題ないワン」
いつの間にか近寄ってた犬嗣さんに両こぶしで頭を挟みグリグリとこぶしを捻られ鈍い痛みが頭を襲う、と言うか普通に痛い!?もしかしなくてもかなり怒ってる!?
「私は怒っているぞ獣狼くん。縁が少ないとは言え血縁が無茶をしただけでなく、私の力も頼ってきただろう?君は律儀な性格だからな、何も言わずに私の世話になる事を許せなかった故のメールでの挨拶だろう?」
「ばれ、てた!?いだだだっ!!」
「バレバレだワン、全く。しかし今回に限っては事前に訪問先に伝え個性使用許可を得ていた事は褒めておく、お陰でプロヒーロー、マニュアルの罰を僅かだが減らせそうだ。わかったら返事と謝罪」
「・・・はい、ごめん、なさい・・・」
「よろしい、これでさっき笑おうとしていた事も含めちゃらにするワン」
その言葉と共にこぶしが離されあまりの痛みにそのままベッドにうつ伏せで倒れる、お腹の傷とかもう関係ない。純粋に頭が痛く何も考えたくない。そしてこの光景に黙って見てるだけ、なんて友人たちではない。
「あの・・・面構さんと回精くんってお知り合いなんですか・・・?」
「あぁ、色々と血縁や親類が居る為に簡単に言ってしまうと、獣狼くんにとっていとこ違い。つまり祖父の兄の息子が私になるワンね」
「ま、待ってください・・・さっきの話しからしてもしや回精くんはまさか俺の為に職場先を・・・?」
「あー・・・あの時は言わなかったけど、君が復讐で動いているって確信したのって回精くんから教えてもらったんだよね・・・。あっでも一応自分の為に選んだのも事実っぽいから、そこまで気に病む必要はないと思うよ」
「と言うか回精、お前だけ使用許可貰ってたのかよ・・・。ちゃっかりしてるっつーか、変なところで強かっつーか」
「あっ、だからさっき三人って言ったのか。でも回精くんのお陰でマニュアルさんの罰が減るそうだし、よかったよ」
「わしは良くねぇがな!お陰で給料減らされちまったじゃねぇか!」
「あわわ、ごめんなさい!」
轟くんと緑谷くんには尻尾を揺らして返答にする、ゴメンまだ痛い・・・。
「獣狼くんはこれで何も学んでいなければグリグリに加えてもっとお仕置きする必要があったワン」
「・・・?面構さん、それって・・・?」
「ふむ・・・、この病室内でなら語って構わない。これも勉強の一環だ」
うっ、その話をしなきゃいけないの・・・?尻尾での返事が無かった為か犬嗣さんが心配するように言ってくる。
「少しは自分の事も話しなさい、君はどうも自分の事を二の次三の次にする傾向がある。・・・流石にこれ以上長居するのも問題だろう、私たちはこれで帰らせてもらうよ」
「はい、それじゃあ飯田くんも回精くんも、元気でな」
「チッ・・・おい坊主、これに懲りたら次からはちゃんと一言言ってから動けよ」
犬嗣さんはまだ仕事が残っているのだろう、マニュアルさんも色々と犬嗣さんと話があるのか後を追う様に、グラントリノさんは緑谷くんへの説教を続けていたが流石に犬嗣さんの言葉に思うところがあったらしく、説教を切り上げ退出していく。
そして残された俺たち・・・特に三人から聞きたい事があります、と言う視線を目を向けなくても感じる。恥を晒す様であまり喋りたくはないが犬嗣さんが言った通り今回は握りつぶせたから良かったものの、握りつぶせなかった場合何が起きるかを知らなければならない。そういう意味で勉強の一環と思って割り切るしかないか、姿勢を正し俺は語った。二年前の夏に何が起きたか、そして俺の為に泥を被ったヒーローの事を。
次話は病院内での語り合いの予定です、と言うか想像より長くなってしまったので一話にまとめきれませんでした・・・。