学校に着くと下駄箱で二人と分かれた俺はコスチュームを返すために事務室に寄っていた、事務員さんに聞くと職場体験で多かれ少なかれコスチュームが傷つくから一旦コスチューム制作会社に直してもらい、その間は二着目のコスチュームを使うと言ったように何着かでローテーションしていくみたい。
次のコスチュームは教室にあるらしいのでそのまま向かう、流石に廊下は一週間来なかっただけでは特に懐かしさなんて感じる訳もなく教室に到着する。扉を開ければちらほら来ていない人は居るものの、みんなが居て戻ってこれたんだなぁと感傷に浸っていると轟くんの席に緑谷くんと飯田くんが集まっているので、自分の席に荷物を置き三人に近づいて行く。周りは自分たちの職場体験の話しで盛り上がっている中、三人は怪我の具合をお互い確認しているようだった。
「おはよ、三人、とも」
「おはよう回精くん、君もどうやら大事無いようで安心したよ」
「飯田、くんもね。緑谷、くんは?」
「うん、右腕のヒビも大丈夫だって」
「そっか、轟、くんは、あの後、どう、だった?」
「あぁ、アイツの顔が微妙な事になってて面白かった」
職場体験の事を聞きたかったんだけどなぁ・・・。微妙な変化だが嬉しそうな轟くんに指摘する訳にもいかず、他二人も苦笑している。どうしたものかと思っていると上鳴くんの声でみんなの注目がこちらに集まる、今話題の最中であるヒーロー殺し逮捕に表向きは巻き込まれた四人が集まっているのだ、聞きたくなるのも分かる。
そこからみんなに質問攻めにされる中、エンデヴァーさんの話題が出たときに思うところがあったのだろう。エンデヴァーさんを嫌っている轟くんが親父に助けられたと言った時には、家庭環境を知っている俺たち三人が轟くんを少し驚いた風に見てしまったが、緑谷くんは少し嬉しそうに相槌を打った。
その後、やはりと言うべきかヒーロー殺しの話題になるが上鳴くんがヒーロー殺しの動画と言うもので飯田くんの目の前でヒーロー殺しを褒めてしまう。しかし飯田くんはその言葉に理解は示しても、ヒーロー殺しの行った行為を間違っていると断言し自分の様な者を増やさない為にも改めてヒーローを志すと宣言した。しかしその後は委員長として何時もの騒がしいと言われてしまうような飯田くんではあったが、逆にそのくらいがとてもらしくて。
「くっくくく・・・」
「回精くん?」
「いや、しっかり、者の、飯田、くんに、戻った、なって」
「・・・うん、飯田くんはこのくらいが丁度いいんだと僕も思う」
「あぁ、あんときの顔より今の顔の方が全然いい」
飯田くんの声をバックに三人の内緒話、騒々しいと呟く常闇くん、耳郎さんに叱られる上鳴くん、朝礼の時間もそろそろなので飯田くんの指示に従い大人しく自分の席に戻るクラスメイト。俺も自分の席に戻りつつ何時ものA組だなぁ、と感じていた。
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ホームルームも午前授業も特に問題なく終わり、午後のオールマイト先生によるヒーロー基礎学が始まった。流石に何回も授業を行ってきたからか声にある程度の慣れとネタ切れなのか、ちょっとばかし雑な
今回は職場体験直後と言う事で遊びを兼ねた救助訓練レースを複雑な迷路の様な工場地帯を模した運動場で行う。各自スタート地点に到着したら合図と共に救難信号を出すので、そこに誰が一番早く到着するかを競う内容となっていた。
これがもしも相澤先生なら遊びとか無しでどんな内容になるんだろう、と関係のない事を思っているとオールマイト先生に直接名前は言われなかったが直接指を刺され、建物の被害は最小限にと注意を受けていた人もいたが今回に限って大規模爆破を使う事なんて・・・ショートカットする時にあるのか?ともかく爆豪くんもそこまで考えなしではないだろう。一組目がクジで発表されモニターの設置されているスペースに移動した。
最初の組には仲の良い緑谷くん、飯田くん、尾白くんの三人が居て誰を応援しようか迷う中、緑谷くんが怪我を克服したという情報を知らない他のクラスメイトは勝利予想で緑谷くん以外の名前が上がっていく。確かに芦戸さんも瀬呂くんの勝利予想と訳も理にかなっているので同じ情報を持つ人に聞いてみる事にした。
「轟、くん。誰が、勝つと、思う?」
「瀬呂か尾白、どっちかの一位争い。そっから下は飯田と芦戸の順で緑谷は運が良けりゃって感じじゃねぇか?」
「緑谷、くんは、もっと、上だと、思った」
「正直経験が無さすぎる。良くて一位、悪けりゃ最下位だろ。飯田と芦戸に関しちゃ場所が悪すぎだが、移動力って意味じゃ飯田だろ」
「案外、みんなを、見てる、んだね」
「前の俺はそんな爆豪みてぇな風に見えてたか?」
「・・・ごめん、ちょっと。口の、悪さが、無い、感じ」
「・・・そこまで酷かったか・・・」
「聞こえてんぞォ!!クソ犬に半分野郎!!ぶっ殺されてェか!?あァ!?」
『スタートォ!!』
オールマイト先生の合図により全員がモニターに集中する。流石の爆豪くんもこの状況で騒ぐよりもモニターから地形を把握しようという魂胆なのだろう、こちらをひと睨みした後にモニターに視線を移した。しかしそのモニターでは力を制御した緑谷くんが自由自在に足場になりそうな場所から次の足場へと飛び回り、トップ予想の瀬呂くんを追い抜かしていた。緑谷くんの圧倒的なパワーによる機動力はモニター前も参加者も釘付けにする活躍を見せていた、が。
つるり、そのような表現が当てはまる滑落で。えっ、と言う声が聞こえてきそうな表情で落ちていく緑谷くん。轟くんの予想当たっちゃったなぁ・・・、それを見た他の参加者は今のうちにと、尾白くんは尻尾で地面を蹴りその勢いのまま前よりも激しく尻尾を動かす事で飛距離を伸ばし、芦戸さんは酸で足元を溶かしつつ時折壁を上る事で移動し、飯田くんは個性で走った勢いをつけ跳び上がり、瀬呂くんは個性のテープを勢いよく射出後に巻き取る事で加速した。
一組目の結果は怖い位に轟くんの予想通りで一位の瀬呂くんと僅差の尾白くん、そして一人倒れている事を心配する飯田くんと悔しがる芦戸さんに倒れ伏す緑谷くんとなった。その後も順調にレースを行っていくのだが、俺の行うレースで問題・・・と言うよりは不幸な組み合わせが発生してしまった。
「ねぇ・・・ウチ流石にこれどうしようも無いと思うんだけど・・・」
「うん、正直俺もこれに関しては組み合わせが最悪過ぎると思う」
「ってかこれアイツらの二位以下決定戦じゃね?」
これがモニター前で組み合わせが発表された時の周りのセリフだ、うんどうしようもないしどうすればいいんだろう。当事者なのに・・・いや、当事者
「い、一位、オメデトウ・・・」
「はい・・・ありがとう・・・ござい、ます・・・」
「きっ君たちも、ね!今回移動に適していなかったものの、手に汗握る熱い接戦だったな!楽しかったかい!?」
「いっ一位が取れないとしても、オイラ達で誰が先に着くかってレースだと思ったらまぁ楽しかったよな!?」
「うぐっ」
「で、でもでも!回精くんもほら!獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす!みたいで凄かったよ!」
「うぅっ」
「「・・・ドンマイ、回精」」
「・・・うん・・・」
勝手にそう感じているのはわかってはいるが、峰田くんはオールマイト先生のフォローに乗った形で場を和ませようとしたのだろう、しかし一位が取れないの部分がナイフの様に刺さり。葉隠さんも俺のフォローをしようとしたが、その表現では大人げないと言われているようで。砂藤くんと上鳴くんのフォローに折れそうな心が僅かだが持ち直したが、この後のレースを観戦する程持ち直せてはいなかった。
更衣室で落ち込みながら着替えていると飯田くんが峰田くんを注意する声で周りが壁に・・・正確には壁の穴に注目している。飯田くんの静止を無視し大声で己の欲望を口に出す峰田くん、でもそんな大声出すとその穴から隣の女子達に聞こえるんじゃ・・・。そう思ったのもつかの間、峰田くんの絶叫と緑谷くんの解説でどうやら耳郎さんのイヤホンジャックが奇襲したようだ。恐らくだがこの後は先生に相談して穴を潰すか八百万さんの個性で穴を潰すかの二択だろう、悪は潰えたという事でさっさと着替える事にした。
今回は妖目と快心さんの二人と一緒に帰れるらしく下駄箱で待っていると二人がやってくる、しかし二人は俺が微妙に落ち込んでいる事に気づいたのか理由を聞かれたので特に隠す必要がないのでバス停への道すがらに答えると。
「あぁ~獣狼ってばそういう所、変に正々堂々としてるよねぇー。勝てたんだから嬉しい!で良くない?」
「だって、やるなら、接戦、が、よくない?」
「獣狼くんは競技や運動会とか全然出れなかったもんね?」
その言葉と共に快心さんの手がこちらに伸び、耳から後頭部に向けて何時も通り撫でられる。口田くんも撫でるのは上手く数多くの動物たちと触れ合った事で伸ばされた才能だろうが、快心さんは場数を踏んだ事による経験に裏打ちされた上手さだ。どちらも甲乙つけがたく思わず声が出てしまう。
「ふぁ、まぁ、しょうが、ない、よね。地力が、違う、し」
「珍しいねぇ、獣狼が大人しく撫でられるなんて。と言うかサラっと自然な流れで撫でる快心さんもアレだけど」
「心境、の、変化?たまには、撫でられ、るのもー、いいかもー・・・」
「その変化をもたらしたのってどーせA組のみんなだろ~?羨ましいぜ全く・・・」
「?まぁ、ねぇー・・・」
妖目が何か言っていたが快心さんの撫でる音で聞き逃してしまった、しかし妖目もこちらが聞こえていないタイミングを計って言っているのは大概聞かれたくない時の事だから気にしない。バス停で待っていると快心さんが無言で撫でる範囲が側頭部辺りまで広がっていき、どんどんエスカレートしていきそうだったのでやんわりと手を外すと。
「あっ・・・」
「そろそろ、止めない、と、エスカ、レート、する、でしょ。快心、さんは」
「あ、あはははは・・・、善処します・・・」
「でもでもー、快心さんはそう言いつつ獣狼を嗅いだりしたいんでしょー?」
「そっ、それはその・・・、だって少しの獣臭さと洗剤の匂いが混ざったいい匂いするんだもん・・・」
「「えっ」」
ごめん、流石に女子に獣臭いと言われるのはショックが大きい。ちょっとそれが真実なのか隣の親友に尋ねなければいけなくなり、それが事実なら俺は対策をしなければいけない。
「・・・妖目、俺、そんな、獣、臭い?」
「・・・多分快心さんだけが感じ取れる臭いだから気にしなくていいぞ」
「「・・・」」
「ちょっ!?二人とも一歩離れるのは酷くない!?」
「あ、バスが、来た、よ」
「そだねー、早く乗ろっかー」
「待って!弁解の余地を!弁護させて!」
流石にこれ以上快心さんで弄るのは弄られ慣れていない彼女にとっては辛いのでちゃんとお遊びだったとネタばらしする。しかし拗ねてしまった快心さんの為、妖目に俺の尻尾が売られた事は忘れないからな?
そんな日常を過ごした翌日、A組の教室にてあの時に言われた言葉が微妙に刺さっていたようで他人と、特に女子と無意識に距離を離してしまっていたらしく。
「回精ちゃん、今日はなんでそんなにみんなと距離をとっているの?」
「・・・あー・・・、聞いても、いい?」
「けろ、良いわよ?」
「ねぇ、梅雨、ちゃん。俺って、獣、臭い?」
「・・・けろ・・・、私はそうは思わないけど・・・」
「ぶはっ、回精お前自分の臭い気にしてたのかよ」
「女子に、臭い、って、言われ、ても、同じ、事、言える?」
「「「「・・・」」」」
「集合!!」
そして俺の発言を聞いたA組男子たち・・・主に上鳴くんと峰田くん主導の自分たちの臭いチェックが始まった。ヒーロー科と言えど男子高生、女子に嫌われたくないという者から助けに来た人が臭うなんて問題だと真面目に取り組む者も参加し、中には関係ねぇカスと無視を決め込む者も。そしてそんな事態を巻き起こした俺は事情聴取をされていた。
「なんで回精は獣臭いって言われてんのさ」
「あー・・・彼女の、名誉の、為、名前は、伏せる、けど、動物、好きで、臭いも、嗅ぐ、人で、洗剤、と、獣、臭さ、が、良い、って・・・」
「あー、たまに居るペットの臭いが良いって人かぁ。そうなると回精ってやっぱ動物扱いだったんだね。あ、アタシは全然気にならないと思うよ?」
「・・・ウチも回精を臭いとは思った事は無いけど、まぁ獣臭いって言われて気にしない訳ないか・・・」
「・・・そっかぁ、彼女が、変な、だけかぁー」
「(((その反応からほぼ一人特定されてるんだけど、気づかないんだろうなぁ・・・)))」
そうして今日みたいな変な事件(?)が時々起きるものの、特に問題と言った事は起こらずに衣替えが始まり夏直前まで来た。
すいません、春の陽気で眠くなってしまっています。19時の時点で眠いってお子様かな?
なので更新が前は1日でしたが、もしかすると2日や3日開ける事になるかもしれません。
今回はA組のノリだったらこんな事もあるかなー、と思い書いてみました。次は期末試験ですが、期末の間かこの次辺りにちょっとオリジナル話でも入れてみようかなーとか思ったりしています。でもあまり期待しないでください、名前を考えるのが苦手過ぎるんです。