モニタールームにて十戦目が終わった。最初は麗日さんに緑谷くんと八百万さんが居て、途中から終わった梅雨ちゃんに飯田くん、途中試合の人が出て行って戻ってきたりと様々な面々がモニタールームに出入りしていたが、一部の人たちはモニタールームには姿を現さなかった。
次は俺の十一戦目なので十戦目とは違う市街地演習場に向かっている。相手は俺のお母さんで個性も詳細不明の精霊と言うもの、病院で精霊を見せてもらって以来殆ど目にしていなかったので全く予想がつかない。強いて言うなら物を持つ事が出来る、俺の精霊と似たように栄養素を活動する為のエネルギーにしている事くらいか?
演習場に到着、中に入り所定の場所にて待機し演習の始まりを待つ。わからない事を考えすぎても仕方がない。相澤先生の言う通りなら後方支援、つまり遠距離攻撃に気を付けて立ち回るしかないな。と思ったところで演習開始のブザーが鳴り、
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「ちょ!?開始早々に!?」
開始の合図とともに回精を映していたモニターが空から降り注ぐ光の線を僅かに捉え、次の瞬間土埃に包まれ回精ごとモニターから姿を隠す。しかし次の瞬間土煙を破り回精の姿が見えるとモニタールームの全員は安堵するが。
「また降ってきたぞ!一体何なのだあの光線は!?」
「けろ、回精ちゃんは前にお母さんの個性が精霊と言っていたわ。これが精霊の攻撃なのかも」
「精霊か精霊で無いかはこの際置いといて、攻撃としては厄介だぞ。一発一発は大した事ねぇようだが回精に合わせて攻撃が動いているようにも見える。恐らくホーミング付きだ」
轟の言葉に全員がモニターに映る攻撃を見ると、確かに僅かではあるが回精の動きに合わせて攻撃が軌道を変更している。回精もそれを見越して動き回避をしているが、かなり行動がし辛そうだ。
「ここに緑谷が居ない事が悔やまれるな、アイツ程個性に関し精通している者もこのクラスにはいまい」
「そうですわね、精霊はともかく回精さんの苦手としている事は予測しか考えられていませんし・・・」
「ほぉ、その予測とやらを言ってみんさい」
「はい、回精さんは常闇さんとは真逆の、遠距離で立ち回られ続けては苦手なタイプです。今の戦闘を見るからに恐らくは姿を現さずに遠距離攻撃をする相手にどう立ち回るか、と言う課題かと」
「よく見てるね。ほぼ正解だよ、あの子は遠距離攻撃と範囲攻撃に弱い。それ故に姿を現さずに遠距離からの攻撃、そして範囲攻撃をしてくる相手にどう立ち回るか、そう言う課題さね」
リカバリーガールに言われ全員がモニターを見ると、確かに回精だけではなく周りごと光の線が降り注いでいる。行動がし辛いのもこれに誘導性能が追加され、どちらに回避しても光線が待ち構えているからであろう。
「あっ!回精くん上手く建物内に逃げ込めた!」
「けろ、確かにこれなら範囲攻撃もある程度防げるわ」
「・・・待て、何か様子が変だぞ」
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初手ぶっぱからの白色の光線をかわしたものの、何発かは当たり痛む体を動かしてなんとか建物内に逃げ込めた。物陰に身を潜めながらも精霊たちと相談を始める。
(みんな、攻撃を仕掛けている精霊たちについて何かわかる?)
〈お母さんの精霊の一部ー〉〈前に見た三人は頭ー〉〈今いるのは言わば兵隊アリー〉
(つまり・・・まだまだ数は増やせる?)
〈そういうことー〉〈同じ精霊だからわかったけどー〉〈随分と我らとは違うー〉
精霊たちの言葉に返答しようとするが、建物の外から今までの攻撃とは比べ物にならないレベルで個性発動時特有の感覚がする。不味い逃げなきゃ、急いで鉄扇を構え外に出ようとするが相手の方が一手早く、今までの光線がペン位の太さならこれは大木の丸太だろう、そんな自分の身長近くの白色の光線が窓を突き破り室内に入ってきた。
「嘘ッ、でしょ!?」
丸太の光線は室内に突入すると同時にこちらへペンの光線よりかは遅い速度で、しかし同じ光線だからかそれでも素早くホーミングしてきたので鉄扇で受け止めるが、確実に攻撃力が上がっている。光線を束ねて威力を上げている?光線を上にはね上げれば天井を貫きその更に天井も貫いたのであろう音がする。今のうちと入った方向とは別の方へ逃げると丁度裏口だったらしく、路地裏に出た。
〈白色の光線の精霊がー〉〈こっちを見失ってるー〉〈視界はそれぞれ別物ー?〉
(それじゃあ今のうちに出口を目指そう)
〈だねー〉〈流石に相手がなー〉〈悪すぎるー〉
スタートと出口はほぼ反対方向、ならこっちかと路地裏を走って進んでいると先の方で一瞬何かが光ったと同時に個性発動の兆候、壁を伝い上に逃げればすぐ下を赤色の光線が路地裏を横になりつつ通過していた。通過した路地裏の一部が焦げている事から当たれば大やけどは免れない。
〈また来るー〉〈今度は三本ー〉〈このままじゃ焼かれるー〉
路地裏の先から空中に居る俺に向かって三本、赤色の光線が横になって迫ってくる。どっかのホラーゲームや映画で見た様なシチュエーションだなぁ!と変な事を思いつつも一本目を壁を蹴る反動で跳び越え、二本目は逆に下をくぐると途中で軌道を変え上がっていったことから、三本目は上に行くとフェイントし下に行けば上手く引っかかってくれたが。
「あっつ!」
〈腕に掠ったー〉〈コスチュームには当たったー〉〈直撃は大やけどー〉
左腕に掠った際にコスチュームの袖にも当たり焦げてしまっていたが、袖に当たった時に少し引っ張られたことからあの赤色の光線にも白色の光線と同じように物理的な干渉が可能と分かった。だがこちらに合わせて動きを変える光線はいつか当たってしまう、それだけで大ダメージなので早々に壁を蹴って建築物の屋上へ出る。
上に出たことで出口に近づいている事が分かったが、次の光線が上空で待ち構えていた。色は空色、効果は白色の光線より高い追尾性能と速度で。
〈あっぶねー〉〈掠ったー〉〈また来るよー〉
曲がる時はとてもゆっくりなのだが、こちらを向いた瞬間に一気に加速するのでそれに合わせて避ける。しかし一定距離進むとまた曲がりこちらに向かってくるので面倒な事この上ない。
(とにかく移動!足を止めると多方向から向かってきて不味い、みんなは後ろを監視して!)
〈らじゃー〉〈体育祭のあれかー〉〈我らも頑張るぞいー〉
空色の光線が一気にこちらに向かってきたのでギリギリで伏せる事で回避、そのまま立ち上がり出口に向かって屋上から屋上へと走って跳ぶ。
〈後ろから三発ー〉〈その後に続けて四発ー〉〈カウントに、いちー〉
(今ッ!!)
〈四発目来るよー〉〈カウント開始ー〉〈さん、に、いちー〉
(これなら!)
直前で横に転がる事で三発を避ける、続けてカウントが始まるので態勢を立て直し次の攻撃は丁度いい位置に鉄製の扉があったのでそれを開けて盾にし、走ると後ろで何かがひしゃげる音がする。どうやら扉に当たったらしく回避できたと安堵していると。
〈四発が消えたー〉〈当たると消えるっぽいー〉〈他とは違うのねー〉
精霊たちの言葉で後ろを向けば、空色の光線は三発確認出来るが残りは確認できない。なら何かにぶつけて落とせばいいと物を探そうとすると。
〈不味いー〉〈左から白い丸太光線の精霊が来るー〉〈三発来るよー〉
精霊たちの言葉に左を向けば音もなく丸太の様な太さの白色の光線がこちらにやって来ていた。こうなればと白色の光線にあえて突っ込めばあちらもこちらに真っ直ぐ突っ込んでくる、急激に俺が横に移動したために空色の光線もこちらに微調整を行いそして。
〈空色回避ー〉〈カウントダウンー〉〈さん、に、いちー〉
「ここッ!」
白色の光線を左に受け流し、足場として更に跳躍する。そうする事で空色の光線は必然的に白色の光線に当たり消滅する、これで白色に気をつければいいと思って屋上を走っていると。
〈白色が空色にー〉〈やばいやばいー〉〈警告さん、に、いちー〉
「はぁ!?」
警告に従い横に飛べば丸太の様な太さの空色の光線がすぐいた場所を高速で通過していた。白色はどうなったと思い先ほどの場所を見れば白色も消えていた、つまり考えられるのは・・・。
(白色が空色に変わった!?)
〈ようですなー〉〈当たった辺りから変色してー〉〈空色に染まり切ったらこのようにー〉
何それ白色は当たった色に染まるのか!?厄介過ぎだろ!?そんな事を考えていても状況は変わらず、今度は前から屋上を砕きつつ光線が迫ってくるので、このままではがれきに埋められるかもしれないと大通りに降りる事で避けた。
大通りでは最初にあった白色の光線がまた降り注ぐのかと警戒していたが特にそういった事もなく、走りだすと地面の方に違和感、咄嗟にジャンプすれば今までなかった場所に短い緑色の光線が複数本突如現れる。緑色はトラップか・・・、と思ったところで。
〈空色注意ー〉〈またこっちを捕捉してるー〉〈に、いちー〉
(あっぶね!?)
ジャンプ中に空色に捕捉されてしまったために、植木を蹴って避ければ凄まじい音と共に植木が引きちぎられる。元白色をどうにかしなければ・・・、恐らくは当たった色と同じ特性を持つようになるんだろうけど・・・。と思ったところで解決策を思いつく。
(ねぇ、みんなは緑色の場所わかる?)
〈おおよそくらいー〉〈隠れるのが上手いー〉〈でも近づけばわかるー〉
(じゃあ、緑色を探すのに二人、空色警戒に一人で空色を緑色にぶつけよう)
〈おぉー〉〈ナイスアイディアー〉〈やってみるかー〉
何時も一緒にいる為にすぐさま伝えたい事が伝わった、後は行動に移すのみ。
(走り出すタイミングはみんなに任せたよ)
〈空色がこっちを捕捉したー〉〈緑色発見ー〉〈十一時の方向ー〉
〈空色警戒さんー〉〈にー〉〈今だー〉
精霊たちの言葉で十一時の方向に走り出す、するとまたしても地面の方で違和感が表れる。それに合わせて先ほどよりも高くジャンプをすると空色の光線と緑色の光線がぶつかり合い、空色の光線が徐々に緑色へと変色していき緑色に染まり切った途端、光線が消えた。
〈おぉー〉〈道の先の方にー〉〈緑色が新たに表れたー〉
(動く気配はありそう?)
〈全然ー〉〈作戦成功だー〉〈無視しよー〉
(そうだね、これ以上元白色に邪魔されるのは面倒だ)
脚に力を籠め一気に窓枠に跳ぶ、僅かなでっぱりを足場にもう一度跳んで手すりを掴みそのまま屋上に着地、ちらりと出口を見ればかなり近づいており、屋上から屋上へとゴールを目指して進む。しかし前方上空でまたも個性発動が行われた、何が来るかわからないので物陰に隠れると短い青色の光線が先ほど発動が行われた場所から降り注ぐ。心なしか肌寒く感じるので。
(着弾すると少し寒くなった・・・と言う事は冷気か?)
〈当たれば動きが鈍るー〉〈厄介な攻撃ー〉〈足止めですなー〉
(だけどこの攻撃間隔なら平気だね)
次のビルの屋上へと渡るとまたも攻撃が来る兆候があったので物陰に隠れれば青色の光線が降り注いだ、しかし。
(・・・さっきより、感覚が短くなってない?)
〈同意ー〉〈このままだとー〉〈出れなくなるー〉
しかしそれでも前に進まなければならず、大通りよりも屋上への入口と言う物陰がある屋上を進んでいくがとうとう頭を出して数秒で青色の光線が降り注ぐようになってしまった。
(どうやら、発動地点に近づけば近づく程感覚が短くなるみたいだね。それに横に動いても釣られてくるみたいだし)
〈どうするー〉〈このままだと失格ー〉〈林間合宿がー〉
(・・・しょうがない、あまり使えない手だけど使うしかなさそう)
一気に飛び出し出口の方向、つまり青色の光線を発射する方へと走り出す。かなり近づいているためかもう既に発射されそうなので鉄扇の地紙パーツを一つ、外して空中の発射地点に投げつければ凄まじい音と共に地紙パーツが大通りへと
(回収できないよね・・・)
〈無理ー〉〈さっきの緑色の地点ー〉〈危ないねー〉
しょうがない、終わったら回収するかな。それにもう出口は目と鼻の先だが・・・、この広い空間で待ち構えていないはずがないだろう。証拠に更に近づけば今までとは打って変わって黒い球体が夥しい数が出口を守る様に現れた。今までの光線とは雰囲気がかなり違う存在に警戒していると黒い球体が一斉に動き出す、こちらに来るかと警戒したがある一定の点を中心に回りだしたのだが・・・。これを突破しなければ出口からは出れないであろう。
(これが恐らくラスト、さっさと出口を通ってクリアしよう)
〈おー〉〈でも黒い球体が何なのかー〉〈わからないのが怖いですなー〉
(そうなんだよなぁ、とりあえず何k───)
何かが来る。思考を中断し咄嗟に横へ跳ぶと頭の位置辺りをギリギリ視認できる速度で通る黄色の光線、来た方向と角度から推測すると出口を一望できる大通りの先、開始地点の後ろにあるこの街を囲っている巨大な壁の上から狙われている。急いで屋上から降りて狙撃ポイントから隠れれば、こちらを視認できなければ撃たないのか攻撃が止んだ。
(最後の最後で足止めに狙撃かぁ・・・)
〈厄介過ぎるー〉〈いっそ一気に突破しちゃうー〉〈選択肢としてありよりのありー〉
(時間はどのくらい出来そう?)
〈五分くらいー〉〈油断は禁物ー〉〈同族同士の戦いは初めてー〉
(・・・そうなんだよなぁ)
この手の戦闘は恐らくお母さんは経験的にも上手、攻撃の配置がいやらしく俺でなければ回避出来ない様な攻撃も多々あった。そしてその攻撃が全て最初に配置されていれば何も出来ずに詰んでいた事からちゃんと手加減してもらえている事も分かる。お母さんが姿を消していた時に俺も精霊たちも全く気付かなかった事から同族、もしくは似たような個性との戦闘も経験済みで、対策済みの結果が緑色の光線の様なステルス性能だろう。
だが考察する時間も余裕もない、今どのくらい経っているかは把握していないが余裕がないと見て間違いないだろう。もうごり押しするしかない。
(みんな、使うよ───血壊)
発動と同時に一気に黒色の球体群に突っ込む、狙撃に気を付けつつ時間との勝負だと思っていたところで。
〈獣狼ストップー〉〈罠だー〉〈解除してー〉
「ッ罠!?」
〈黒色の球体に近づくほどー〉〈エネルギーが奪われるー〉〈現在残り四分ー〉
脚でブレーキをかけ止まる、これで平気と思いきや黒色の球体が今までの動きを辞めて一部がこちらに寄ってくる。寄られたら不味いと再び元居た死角に向かって下がるがそれでもこちらを追尾してきた。
〈獣狼の力に反応してるー〉〈解除しないと恐らくずっと追いかけるー〉〈現在残り三分半ー〉
(血壊対策!?ホンットチートだなぁ!!)
慌てて血壊を解除すれば黒色の球体はこちらを見失ったのか、その場で静止する。それに安堵して、黒色の球体から球体へと
〈獣狼大丈夫ー?〉〈痛くないー?〉〈右腕は動けそうー?〉
(うん、大丈夫だけど右腕はしばらく無理かも。痛みで力が入り辛い。けどそんな事も言ってられない)
再び跳弾で来た黄色の光線を避ける、ここはもう死角ではなくなってしまったからだ。だが今の攻防で特性は把握できた、黒色の球体は精霊の力を使えば寄ってきてエネルギーを奪うが力を使わなければ平気、そして黄色の光線は恐らく精霊の力で出来た物に跳弾するとても速い無誘導弾。黒色の球体に触れる事はなるべくしないで黄色の光線での狙撃を気を付ければいい。
そうと分かれば一気にゴールに向かって走り出す、途中狙撃が来るが加減速や姿勢を変える事で何とか避けて黒色の球体が回っている地帯に突入した。黒色の球体は考察通りこちらには近寄ってはこないで一定速度で回り続けているが、球体の間隔は意外に広く突破するだけならば簡単であろう。
(横、狙いは足ッ!)
〈お見事ー〉〈次が来るまでー〉〈大体五秒ー〉
先ほどから球体を使った跳弾で狙ってくる狙撃が無ければだが。黒色の球体が回っている地帯はそこまで広くはない、30mもあればいい方だろうが狙撃のせいで10m位までしか進めていない。球体の間隔が広いのは恐らく跳弾がしやすい様にしているのだろう。
〈獣狼止まってー〉〈次の狙撃が来るよー〉〈いち、きたー〉
精霊たちの声で止まれば跳弾時の独特な音、視界と音を頼りに黄色の光線を追いつつも球体を避けていると。光線がこちらに向かう、場所は胴体。ジャンプをするわけにもいかず咄嗟に四つん這いになれば光線は地面とぶつかり消滅する。そしてまた移動が始まるが、それでも球体は絶え間なく動き続けているので新しいルートを探してから移動した。
その後も三度、跳弾を使った攻撃を回避し漸く出口まで後少しと来た。しかし一番大きく動く外周部の為に移動が更に辛くなっている、そして狙撃もまた単純に攻撃するだけではなくなっていた。
〈獣狼来るよー〉〈今度は二発同時ー〉〈警戒してー〉
精霊たちの声で一気に警戒を高める、鳴り響く跳弾の音と視界を横切る光線。一方を追うともう一方が追えないので跳弾したタイミングで何時でも避けれる様に準備するが、しばらく跳弾した後に光線は消えた。
〈二発とも跳弾しただけー〉〈純粋な足止めだねー〉〈手段がえぐいー〉
(何とかしなきゃ時間だけが使われていくね・・・)
〈どうにか跳弾を止めたいー〉〈このままじゃ時間切れだー〉〈私にいい考えが無いー〉
先ほどからこんな状態が続いているのだ、二発飛んできては二発とも狙ってくるか、一発は狙って一発は跳弾、二発とも跳弾だけ、見事に翻弄されている。これに加えて球体も避けているので中々に厳しい。・・・策はあるにはある、だが失敗すれば即リタイアだが・・・、このままじゃ時間切れでリタイアなので。
(みんな、策はあるよ。かなり危険だけどね)
〈良いね獣狼に賭けるよー〉〈オールオアナッシングー〉〈勝つか負けるかー〉
(よし、俺の策はね───)
精霊たちに策を伝える、この策は精霊たちがミスると勝っても負けても大変な事になるので是非失敗しない様にしてもらわなければならない。
〈失敗が許されないねー〉〈緊張してきたー〉〈でも我らが緊張って中々無かったようなー〉
(それじゃ、みんな調整を失敗しないでね?)
〈アイアイサー〉〈イエスマムー〉〈あらほらさっさー〉
・・・ツッコまないぞ。とりあえず策は伝わったという事で、既に放たれ跳弾している光線に備えている。そして腕に来た一発をギリギリで避けたタイミングで来た光線が脇腹を掠る。
「いっつぅ・・・!」
〈やばいやばいー〉〈段々と対処されてるー?〉〈次は確実に来るよー〉
(うん、だからタイミングよろしくね?)
脇腹を掠った痛みに耐えつつも、直撃で無かったために姿勢を崩すことは無かった事は幸いか。攻撃がしばらく来ない為に球体の間隔が一際広い場所に移動する、少し出口と離れてしまうが仕方ない。そしてその場所を陣取り攻撃を待っていると。
〈来るよー〉〈獣狼の感覚頼りー〉〈さぁ勝って笑おうー〉
(もちろん!)
黄色の光線が三発、やってくるのを視認しまだ増えるのかよと思いつつもそれも無駄だと笑う。確かに狙撃は跳弾込みで正確で恐らくもう全弾命中か半数命中だろう。だがもしも、もしも跳弾の為の球体が
「血壊!そして、解除ッ!!」
俺の精霊の力に全ての球体たちが反応し、こちらに寄ってくる。しかしすぐさま解除し動きが止まった事で、
〈こちらの残存エネルギー〉〈残り十秒ー〉〈ホント危ないー〉
(でも、これで俺たちの勝利だ)
ふらつきながらも止まった球体には目もくれずに、ゴールに転がり込む事で勝利を告げるアナウンスが鳴り響く。そのアナウンスを仰向けになりつつも耳にし、久々の接戦を乗り越えた感覚にただ満足していた。
モニタールームには轟くんと常闇くんが追加されています。前者は宣戦布告された相手を見る為に、後者は精霊が気になった為にです。
獣狼の弱点は前々から思っていたところではあったんです、ただ大規模攻撃を行う人が居なかったために露呈しなかっただけで。大規模攻撃+初見殺しには弱いんです。