合宿二日目の朝が来た、朝5時は一部の人には早い時間らしく眠そうだ。しかし相澤先生の話と、その後に行われた爆豪くんの個性アリのボール投げで全員の目が覚める。爆破の音や衝撃もそうだが、何より相澤先生の告げた記録が前回の記録と数メートルしか距離が伸びていない事による驚きが強いだろう。
「君たちは確かに成長している。だがそれは精神面や技術面、少しの体力と言ったところで個性に関してはそこまで成長していない」
「だから今日から君らの個性を伸ばす。死ぬほどキツイが、くれぐれも死なない様に」
「そして今回、彼女らの協力で君たちの個性を伸ばす。二人にはもうあったろうが、残りの二人にも挨拶しろ」
「「「「よろしくお願いします!!」」」」
「煌めく眼でロックオン!」「猫の手、手助けやってくる!」「どこからともなくやってくる」「キュートにキャットにスティンガー!」
「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!フルバージョン!!」
登場の名乗りも終わり、紹介されるワイプシ───緑谷くんから愛称を教わった───の残りのメンバー、黄色で目を見開いているラグドールさんと筋骨隆々の茶色の虎さん。個性で各々の訓練に合った場所を作りアドバイスをするという事で、相澤先生から個性を伸ばすメニューを聞き、実行していった。
「回精、お前の個性は結局のところ体がメインだ。なので増強型と近い事をやってもらう。今から昼まで森の中を全力で走れ、そんで昼になったら虎さんと組手だ。何かあったらマンダレイのテレパスで伝える」
「わかり、ました。行ってき、ます」
と言う事で俺の訓練は最初は森の中を全力で走るという事らしい。全力で走り続けるなんて久々だ、親類たちが集まった時に山の中で子供たちと一緒に走り回った時以来か?
しかしみんなが集まると大半が動物の個性を、哺乳類が多いのでちょっとした動物園気分になれる。しかしその場合展示されるのは俺達か、みんな優しいのでどんな猛獣でも触れ合い放題の動物園。快心さん大喜びじゃない?なんて変な事を考えつつも時々テレパスで方向転換を指示されつつ、森の中を走っていった。
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「うわ、あのケモミミの子はっやーい!この子は1時間半くらい?エンジンの子も慣れたら1時間くらいで落とした場所からここまでこれちゃうんじゃない?」
「え?ほんとに?エンジンの子はともかくあの子そこまで足が速いようには見えなかったけど」
「うん!あちきも見た目でそう思った!でも意外や意外!虎以上の力の持ち主だよ!」
「ほう?我以上とは中々腕がなるではないか・・・」
「回精は身体能力は良いですが、経験がありません。そしてアイツ自身がやって覚える派らしいので、思いっきりやっていただいて結構です」
「なるほど、了解した」
どうやら回精は言われた通りに走ってるみたいだ、アイツは年齢にしてはかなり落ち着いているし素直だ。朝はラグドールさんとマンダレイさん、昼からは虎さんに任せっきりで問題ないだろ。虎さんに回精の事で伝えるべき事は伝えたので、他の無茶しそうな生徒のところへ行こうとすると後ろから呼び止められた。
「ちょっと待ちなよ、イレイザーヘッド!」
「なんですか?ラグドールさん。俺も生徒の見回りに行きたいのですが・・・」
「うん!その生徒の事、あのケモミミの子について!」
「・・・回精がどうかしましたか?」
「あの子、あんな不安定な状態で良いの?あちきの個性で見てわかったんだけど、はっきり言ってかなり変な事になってる!」
「えぇ、大丈夫です。その事に関しては既に
「そうなの?ならそれも織り込み済みって事で良いのかな?」
「はい、お陰で訓練を途中で考え直す事になりましたが」
「あはははは!織り込み済みならいいや!」
そういうとラグドールさんは持ち場に戻るために背中を向け歩き出す、それを見て俺も生徒のところへと移動を始めつつも回精の事で考える。
あいつの個性はそんなに珍しいって程じゃない、結局のところ轟と同じく両親の個性を受け継いだというだけだ。そしてそれが轟と同じく戦闘能力に秀でている、それだけだ。
しかし問題は夏休み前に校長伝手で雄英と専属契約を結んでいるトライスターの個性研究所から、アイツの個性に関して簡易的な検査結果が届いたという事だ。まぁそれだけなら親の伝手で受けたんだろう程度しか思わない、だが結果が問題だった。
内容を簡潔に言えば中学生時代に調べた時と比べ、個性が
幸い大きな外的要因も無ければ今すぐと言う事もなく、回精の身内に精霊のスペシャリストが居るので改善が見られなければ、最悪精霊を消して対処するという具体案も資料に書いてあった。正直に言えばそんな爆弾を抱えたくは無いが、身体強化を抜きにしても回精に素質があると判断したのと具体案に免じて残す事にしたし、今回の合宿にも連れて来た。
今年の一年は一部不安な連中もいるがかなり期待できる、だからだろう。
「回精、お前の個性と言う大きな壁、乗り越えて見せろよ」
俺が、こんな柄にもない事を呟いてしまうのは。
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途中に休憩を挟み、現在お昼。プロヒーローでは束先生以来の虎さんと組手をしていた。
「どうしたどうしたァ!攻撃が単調だぞもっと考えて攻撃をしろぉ!!」
「イエッ、サー!」
「守りばかり硬くてどうする!お前はヴィラン相手のサンドバックになるつもりか?もっと攻撃して来い!」
「イエッ、サー!!」
「守りが甘いッ!!両立しろォ!!」
「イエッ、サァー!!」
リーチが短い為に虎さんの攻撃をかいくぐって入ろうとするも、堅実な戦闘方法で中々入り込めない。単調な攻撃をした瞬間隙をついて蹴りが飛んでくるのでちゃんとガードしなければ危ないし、無理に突破しようとすれば軟体によって力の上がったパンチで後退させられる、そして虎さん自身も束先生レベルに素手戦闘の経験があるので経験の少ない俺には厳しい相手となっていた。
「ぐぅっ!!」
「ほう?良いのが入ったと思ったが、腕を間に入れ間一髪で防いだか」
「そしてすぐさま突撃、悪くはない」
蹴りを避けられずにギリギリ腕を間に入れて防ぐものの吹っ飛ばされる、だが腕は痛いが思ったよりダメージは無いのですぐさま立ち上がり再び接近。徐々になれたのか虎さんの腕や脚を逸らす事で少しではあるが近づき始めた、が。
「む、アラートが鳴ってしまったな・・・。他の連中の相手をするのでその間に水分補給を忘れるなよ」
「ふぅ・・・ふぅ・・・イエッ、サー!」
そうして虎さんが他の増強型生徒の相手をしている間に、個性訓練で沢山食べなければならない砂藤くんと八百万さんの近くに止まっているトラックからスポーツ飲料のペットボトルを取り出す。今は夏場で昼過ぎ、熱中症なども気にしなければいけないのだろう。飲み干したら空のペットボトルをゴミ箱に入れ、組手をしていた場所で虎さんが戻ってくるまで待機。戻ってきたら再び組手と日が沈むまでそれを繰り返した。
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「さぁ!昨日言った通り面倒見るのはもうおしまいだよ!」
「己の食らう飯くらい、己で作れぇ~!今晩はカレェーー!!」
全員が疲労困憊の中で晩御飯を作らなければならない事に真っ白になっていると、それを見たラグドールさんが爆笑し、雑に済ませるのはダメと釘を刺されてしまった。しかし飯田くんはこの晩御飯作りを災害時の料理訓練と思い、一気に委員長モードへ突入、みんなを率先し始めた。
さて料理かぁ、台所に身長が会わないから中々に大変だけど、嫌いではないんだよな。だって足りなかったら自分で作らなきゃいけないし。なので手伝おうと思ったが、火を使う所は身長が足りないので断念。しかし食材を切り分ける組が手が足らないという事なのでそちらを手伝う。
大体生徒の数が42人だから、大まかに人参と玉ねぎが14個でジャガイモが28個かな?でもみんなお腹空いてるだろうしもっと必要だろうなぁ。と必要数を考えつつも、とりあえず目の前にあるもの全部やっちゃえばいいかと考えを投げて、黙々と野菜にお肉を一口サイズに切っていった。
カレーが出来上がる頃には辺りもすっかり暗くなり、しかしお昼抜きではなかったからか、初日の晩御飯ほどみんなががっつくという事もなく食事が進む。やはりと言うべきか大目に作られたカレーも残すことなく完食された。その後は初日と同じくA組とB組で順番にお風呂に入り、就寝まで何しようというところでノックの後、扉を開けた相澤先生から無慈悲な宣告が下された。
「さて、上鳴、切島、砂藤、瀬呂はこれから補習だ。みっちりやっていくから覚悟しておけ」
言われた四人は真っ白になりつつも相澤先生の言葉に従い筆記用具とノートをもって準備をしていく、ちらりと見えた芦戸さんもあまり表情が優れてはいなかった。
「昨日は言い忘れたが、こちらの判断で疲労が激しい生徒には微睡の個性を使って回復させる。そして補習組は何度もお世話になるだろうから、後でちゃんと感謝しておけよ?態々お前たちに付き合ってもらうんだからな」
それは遠回しに回復してもらえるという事で、それを聞いた補習組は先ほどよりかは気力を持ち直し、部屋から出て行った。そして残された男子はと言うと、流石に疲れている人もいたのでみんなで全員分の布団を敷き、やる気のある人だけで静かに時間が来るまで遊んでいた。虎さんが他の増強型を相手にしている間に休めた俺は、結局誰かが起きていれば話し声とかで眠れなさそうだったのでUNOを楽しむ事にした。
「はい、ドロー、2」
「ではこちらもドロー2だ」
「悪いな、ドロー4で上乗せさせるぞ」
「これだしゃいいのか?」
「うん、ドロー、4、ね。口田、くん、出せる?」
「む、無理・・・」
「それじゃ、12、枚、引いて、ね」
俺の言葉に頷き山札から引いていく口田くん。どうやら彼は内気な性格をどうにかするのも特訓に入っているらしく、今回のUNOでも無理のない程度に喋って特訓しようとしているが、やはりまだ恥ずかしさが上回るようで、それでも一言喋れるのは前進していると言っても過言ではないだろう。
「気になってたんだが、回精は微睡とは同じ中学だよな?」
「うん、そうだね。あっ、リバース、で」
「微睡の個性ってどんな感じだ?・・・これは出せるのか?」
「気持ち、良い、かな?うん、最初、が、同じ、色で、後が、同じ、数字、だから、出せる、よ」
「安眠・・・、確かに惹かれるものが多い個性だ」
「だがそういった事ではないのだろう?轟が知りたいのは。黄色にするぞ」
「うーん、短い、睡眠、時間、でも、長く、眠れた、感じ?無いから、引く、ね」
「なるほどな、確かに今回の合宿もだが今のヒーロー社会に重宝される個性だ。ドロー2で」
轟くんは聞きたい事を聞けて満足したようでドロー2を出した後は口を閉ざした。その後もUNOは進んでいき隣の口田くんが残り一枚にUNO宣言はちゃんと行っていた状況、常闇くんと障子くんがドロー2を重ねていき、隣の口田くんが焦った表情と視線を此方に向けてくる中俺は───。
「ごめん、無いです・・・」
「あっあがり・・・」
どうやら今日は、勝負運の無い日らしい。
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合宿三日目、午前の走り回りも終わり、お昼の組手が始まる頃。前日の経験とアドバイスを踏まえて新しい戦い方を試したいと虎さんに相談すると、まずはどんな戦い方なのか聞かれたので考えていた方法を伝えるとしばらく考えた後に。
「ふむ、相手は攻撃し辛く、こちらは攻撃がしやすい。腕力が必要になるが・・・問題は無いだろう。お前の体形に合った良い方法だ、では実際にやるとしよう」
組手でお互いに力や体の動きをそれなりに理解していたからこそ、すぐさま実戦形式で戦い方を形にしていくことになる。俺としてもこの戦い方は前例なんて無いだろうから、経験を積むしかないのは承知済みだ。
「お願い、します!」
「うむ、来いッ!」
虎さんが構え、早速こちらに拳を突き出すがそのスピードはそこまで速くはない、恐らく練習と言う事で加減をしてくれているのだろう。なのですぐさま姿勢を低くし片手を
「もっと手間取ると思ったが、中々良い動きだな。試した感想は?」
「やり、辛さは、あまり、感じ、ないです」
「いいだろう、これからはそのスタイル習得の訓練も行うぞ。だがそのスタイル一辺倒では問題もある、故にそのスタイルと直立の両方鍛える、さすれば幅広い状況に対応できるだろう」
「イエッ、サー!!」
俺の新しい戦闘方法、虎さんが他の生徒の様子を見に行った時に俺よりキレのあるパンチを出していたことから、相手の身長差があればあるほど攻撃はし辛くなるのでは?と思い考え付いたスタイル。やはり虎さんも地面スレスレまで伏せる俺を殴るのは慣れていないようで、やり辛そうにしている。
この戦い方ならば、獲物を失った時でもある程度は戦えそうだと虎さんの組手で多用する、が。
「甘いぞッ!!」
「あぶっ!?」
「姿勢を低くすれば攻撃が当たりにくいが、蹴りは普通に当てられるどころか、機動力が下がったままなら当てやすいぞ、機動力を上げろ!」
「イエッ、サー!!」
直立、伏せ───名前が決まっていないので仮称であるが───での戦闘を繰り返す。しかし伏せの方は体勢になれていないのか機動力が下がるので、今日は直立での戦闘を行い、明日の午前からは伏せの状態で森の中を走り込み機動力アップを図るという事になった。機動力が上がるまでは伏せの戦闘はお預けだが、仕方ないだろう。
そうして前日よりもちょっとついていける位にはなったところでその日の訓練が終わる。晩御飯も済ませ、夜になったので朝に言っていた夏のレクリエーション兼飴と鞭の飴である、クラス対抗の肝試しが始まった。
カレーの具材の量は大体です、ツッコまないでください。
次から肝試しですね!ドキドキですよ!主に叩かれないか不安で!!ある程度投稿するのに慣れたって言っても、この辺りは全然慣れませんね!!