位階序列十四位のヒーローアカデミア   作:生活常備薬第3類

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 近い時間に二つ投稿しました、しおりの場所と比較して順番にお楽しみください。


第五十五話:生きたいと願ってしまった罪

 部屋の中に一人、小さな子供がいる。頭頂部から二つの獣の様な耳と腰辺りから同じく獣の様な尻尾を生やした子供。

 

 『ねぇ、だれか、いるの?』

 

 小さな子供は周りを見渡しながら居るであろう誰かに尋ねる、しかし誰もいなかったのか首をかしげていると。

 

 『おれの、なか?たすけて、ほしいの?』

 

 どうやら誰かは小さな子供の中で助けを求めているらしい、しかし小さな子供では対処出来なかったのだろう。必死に悩んでいると。

 

 『みんなは、なんて、いうの?』

 『せいれい?せいれい、なの?』

 

 小さな子供は自分の中に居る誰かに名を尋ねると、想定外の回答に驚きつつも。

 

 『そっか、せいれい、で、この、みため、なら、できる、かな』

 

 その想定外の回答故に、解決方法を見出したようで。

 

 『んー、んんん?んーーー・・・。あ、これ、かな?うん、わかった』

 『すぅー・・・はぁー・・・。よしっ、けっかい

 

 そうして、小さな子供は血の様に赤く染まっていく。幼い体に血の様に赤い獣を模した模様に、同じ色に染まる髪の毛と耳、尻尾。

 

 そこまで見て思い出す、これは初めて血壊を使ったあの日だと、そしてこれを見せているのは恐らく。

 

 ───みんな居るんでしょ?

 

 

~~~~~

 

 

 景色が流れていく、何時もの頭の中の会話の様に尋ねればこれだ。一体どう言う事なんだろうと思っていると、流れていた景色が止まる。足元も室内から草原に変わっており、いつの間にか靴も履いていた。

 

 辺りを見回せば何処か見覚えのある景色、しかし木々が生えている一定以上から先が真っ黒に染まっているから行けないという事だろう。なら行くべき場所は見えているあの丘かな、そう思って歩いていく。

 

 丘を登っていくと、先ほどは無かったはずの木が見える。枯れているのだろうか?花も葉も無い木は何処か寂しい雰囲気がある。とりあえずあの木を目指して歩いていくと、だんだんと既視感が強くなってきた。この既視感もあの木に関係するのだろうか?更に歩みを進めれば何時の間にか雪も降ってきた、という事はここには冬に来た?

 

 先ほどから雪は止まず、かといって降り積もる訳でもない不思議な雪だ。まぁ積もったら足がとられて面倒なので有難い、そうして丘の頂上へとたどり着く、寂しい木───桜の木の根元にはカラフルなレジャーシートが敷いてあり、ここから見える景色はどの季節でもとっても綺麗なんだってお爺ちゃんから教わったんだっけ。

 

 ───話があるんでしょ?じゃなきゃこんなところにみんなは呼ばないもんね。

 

 今度は景色が切り替わる。表と裏が入れ替わる様に、丘の周りが白く染まり桜の木も満開に咲き誇る、しかし雪だけは黒に染まってしまっていた景色がとても綺麗で見惚れていると。

 

 〈覚えてくれてたー〉〈やっぱり獣狼だねー〉〈ちょっと抜けてるけどー〉

 ───忘れないよ、ちょっと遅かったけど中学生最後の春と冬にみんなでここを見に来た。

 

 精霊たちの求める答えを言えたらしく、レジャーシートの上に現れた精霊たちがクスクスと笑いだす。ここまでくれば段々と思い出す、俺は林間合宿でヴィランと相対していた事も。最後に快心さんの俺を心配する声も。

 

 〈まずは説明ー〉〈と言ってもー〉〈獣狼に何が起きているかー〉

 ───ヴィランに撃たれたアレ、やっぱりなんか仕込まれてたの?

 〈簡単にはー〉〈個性が暴走する何かー〉〈お陰でしっちゃかめっちゃかー〉

 ───・・・個性が暴走しただけで、俺ってあんなに死にかけるの?

 

 そう尋ねれば、精霊たちはたちどころに口を閉ざす。まるで悪い事をしてしまった子供の様な表情で俯いてしまっていたので、元気づける為にも励まそうとするが。

 

 〈ううんー〉〈甘えちゃだめー〉〈これが我らのけじめー〉

 ───ケジメ?・・・もしかして、あの小さい頃に何かあったの?

 〈何かあったというよりー〉〈我らがしてしまったー〉〈それを謝らなきゃいけないのー〉

 

 そうして精霊たちは語りだす、あの時の真実を。

 

 〈我らは本来消えるべきものー〉〈でもあの時消えたくないと願ってしまったー〉〈そして獣狼にそれが届いてしまったー〉

 ───消えるべきモノって・・・どうして?みんなは悪い事してないでしょ?

 〈我ら精霊は一度宿主の為に再構築されるー〉〈自我が無いから問題ないはずなのにー〉〈我らは自我をもってしまい消えるのが怖くなったー〉

 〈怖くなった我らは助けを求めたー〉〈そしてそれが原因でー〉〈獣狼が外れてしまったー〉

 ───・・・外れた?

 〈獣狼の血壊で我らは生き延びたー〉〈あの場で精霊の力を強くする必要があったー〉〈でもそのせいで獣狼のバランスは崩れたー〉

 〈崩れたバランスでも獣狼は平気だったー〉〈でも崩れて成長してしまい徐々に外れて行ったー〉〈そして外れた影響が今になって出てきたー〉

 ───・・・つまり、俺の今は本来あるべき姿から外れてしまっている?その影響がヴィランの銃弾で悪化した?

 

 精霊たちは静かに頷く、とりあえず言いたいことはわかった。俺が瀕死になってしまったのは精霊たちのせいだという事、ため息と共に精霊たちに手を伸ばせば何かされると思ったのか震えだす、流石にそれは酷いと思うぞ?

 

 ───おー、ここならみんなに触れるんだねー。

 〈・・・獣狼怒ってないー?〉

 ───怒るもんか、確かに友達以上家族未満の付き合いの長さだよ?でも、それでも俺にとってはどれとも形容出来ないけど、家族なんだよ?

 

 そう言いつつ、初めて触る精霊たちの感触を楽しむ。耳ちゃんと反発して面白いなー、尻尾もふわっふわで自分の触るより気持ちいいかも。そうやって触っていると他の二人も撫でて撫でてと頭を手にこすりつけるので撫でる。

 

 〈おほぉー〉〈これが触れあいー〉〈楽しいー〉

 ───そうだよ?楽しいんだ、だからみんなが居て悪い事なんて無いんだよ。

 〈それじゃー〉〈我らも触っていいー?〉〈寧ろ触るー〉

 ───いいよ、ほらおいで?

 

 それからしばらく、お互いに触れ合ったりニオイを嗅いだり、舐められたりと今まで精霊たちが出来なかった五感の内、触覚、味覚、嗅覚を始めて楽しむ様に体感していった。

 

 〈ちょっとしょっぱいー?〉〈獣狼いいにおいー〉〈耳硬いー〉

 ───しょっぱいのは汗かな、ニオイに関してはノーコメント。

 〈我らがこうやって楽しむなんてー〉〈出来ないと思ってたー〉〈何があるかわからないねー〉

 ───もしかして、俺が外れたからみんなが何も能力持ってなかったりしたの?

 〈そこは我らのー〉〈自業自得ー〉〈寂しいけど不満は無しー〉

 ───そんな事言わないでよ、今ならちゃーんとみんなと触れ合えるでしょ?

 

 寂しいという言葉を紛らわせるために言ったのに、反応が無い。なんだろうと思っていると精霊たちが離れて行った。

 

 〈じゃあ獣狼ー〉〈打開策を提示しましょー〉〈転んでもただでは起きないー〉

 ───打開策?それって現状の?

 〈現状でもあるしー〉〈我らの事でもあるしー〉〈獣狼の事でもあるー〉

 〈今は獣狼の獣の部分が暴走してるのー〉〈小さい時に精霊を上げ過ぎて元に戻そうとする反動ー〉〈だから精霊の部分を上げてあげればいいんだけどー〉

 ───だけど?

 〈それじゃあ前と変わらないー〉〈でもある程度成長出来た我らならー〉〈完璧ではないけど元に戻せそうー〉

 

 おぉ、拍手し凄いと褒めれば精霊たちが照れているのだろう、恥ずかしそうに笑っている。

 

 ───じゃあ前と同じで血壊をすればいいの?

 〈それじゃだめー〉〈前と変わらないよー〉〈獣狼は脳筋ー〉

 ───ぐっ・・・じゃあどうすればいいっていうのさ。

 〈拗ねないのー〉〈だから可愛いって言われるー〉〈快心さんの餌食ー〉

 ───ほら、早く打開策を言って!

 〈しょうがないなー〉〈打開策は簡単だよー〉〈我らを()()()()()ー〉

 ───・・・え?

 

 精霊たちが聞きなれない言葉を聞いて血が止まってしまったのかの様に寒気がする、しかしそんな俺の状況なんて知らないとばかりに精霊たちは話を続ける。

 

 〈まず最初の間違いが我らの生存ー〉〈だったらそれを正してしまえばー〉〈崩れた部分も戻って外れた分も治せるー〉

 ───待って。

 〈だから我らを殺すー〉〈正確には取り込むー〉〈そうすれば精霊の部分が上がるー〉

 ───待ってよ。

 〈我らは獣狼の精霊であって違う存在ー〉〈元々カウントされていないイレギュラー〉〈ならそれを取り込めばいいって事よー〉

 ───待ってよ!?なんでみんなを殺さなきゃいけないの!?それに外れたままだって平気だったんだからみんなが居なくなる必要もないでしょ!?

 

 いきなり声を荒げるとは思っていなかったのだろう、精霊たちの話が一旦止まり悲しそうに現実を告げる。

 

 〈・・・もう時間が無いのー〉〈獣狼が血壊を使いすぎてー〉〈幼児退行したでしょー?〉

 ───・・・うん、したって聞いた。

 〈あれは本当は違うのー〉〈意思のない精霊による精神汚染ー〉〈まだ幼児退行で済んでるってだけー〉

 ───・・・精神汚染って事は・・・。

 〈いつかは獣狼の精神がー〉〈滅茶苦茶になるかー〉〈それとも消えるかー〉

 ───じゃあ、血壊が勝手に発動しだしたのは。

 〈ここ最近になってー〉〈体のダメージが増えすぎたー〉〈ドンドン進行していったー〉

 〈でもステインとの戦闘でー〉〈我らが血壊を制御して止められたー〉〈つまり精霊も制御が出来る様になったー〉

 ───それで進行を止める事は出来ないの・・・?

 〈言ったでしょー?〉〈我らはイレギュラー故に力が少ないー〉〈止められた出来ただけでも奇跡ー〉

 

 他に、精霊たちを止める言葉無いのか、案は無いのだろうか。しかしそれを見越していた精霊たちによって止められてしまった。

 

 〈それにね獣狼ー〉〈もうやっちゃってたりー〉〈その為にこの場所を選んでいるんだよー?〉

 ───・・・それは・・・。

 〈うふふー〉〈獣狼は我らのヒーローだからねー〉〈今度は我らが助けたいのさー〉

 ───俺は・・・、ヒーローなんて柄じゃないよ・・・。ただ助けを求める手を取りたかっただけで・・・。

 〈それがヒーローなんだよー〉〈ほらほら最後位笑って笑ってー〉〈獣狼の泣き顔でお別れは嫌だよー?〉

 ───・・・うん、そうだね。泣き別れより笑ってお別れ、したいよね。

 〈そーそー!〉〈んじゃ座ってー〉〈語り合おうではないかー〉

 

 靴を脱いでレジャーシートに座れば、遠くは見えなくとも桜吹雪と黒い雪のコントラストはとても神秘的で、幻想的だった。みんなは俺の膝の上や頭の上など好きな場所に座って話す姿勢を取っている。

 

 〈初めて目を覚ました時はー〉〈とってもおいしかったよねー〉〈さてなんでしょうー!〉

 ───えーっと確か・・・何時も家にある赤い箱のクッキー?

 〈〈〈正解ー!!〉〉〉

 〈割とあのクッキー〉〈我らの好物だったりー〉〈知ってたー?〉

 ───そこまでは知らなかったなぁ・・・。みんな次はアレ食べたいコレ食べたいだもん。

 〈ねぇ知ってたんだよー?〉〈獣狼が味覚を感じていなかったのー〉〈だって我らはイレギュラーだけど一心同体だよー〉

 ───そっか、気を使って言わなかったのに気を使われてたんだ・・・。

 〈でねでねー〉〈その後みんなで行ったー〉〈桜が綺麗だったんだー〉

 ───そうなの?てっきり花より団子かと思ってた。

 〈ちゃーんと桜を楽しんでましたー〉〈冬の桜も綺麗だったねー〉〈桜の花の雪化粧が見れないのは残念だったー〉

 ───中々そういうのはタイミングが大事だからねぇ・・・。

 

 

 〈初めての修学旅行ー〉〈何コレ何アレで一杯いっぱいー!〉

 ───あの時は大変だったよ、みんなが聞いてくるから修学旅行先の事がちっとも頭に入らなかったよ?

 〈だって初めて見るものなんだもんー〉〈楽しませてよー〉

 ───全くもう・・・。・・・そういえばある日を境に聞かなくなったのってもしかして。

 〈迷惑かけてごめんねー?〉〈私たちもある程度自重する事にしましたのですー〉

 ───そっか、ありがとう。

 〈文化祭も楽しかったー!〉〈獣狼の女装がいっちばーんー!!〉

 ───アレは、その・・・快心さんに押し切られて・・・。

 〈でも獣狼も楽しんでたでしょー?〉〈体は正直よのぉー?〉

 ───ぐっ・・・、何時もと違う恰好は楽しんでました!

 〈素直でよろしー〉〈最近の獣狼って素直でいいよー〉

 

 

 〈雄英高校はまだ半年も居ないけど大変だよねー〉

 ───そうだね、ヴィランにもう二回も襲撃されてるんだもん。

 〈でも毎日が新しい事で一杯って楽しいんだよー?特にヒーロー基礎学ー!〉

 ───そう言ってもらえると頑張ってきた甲斐があったかな?

 〈それによく体力を使うから食べ放題にも行ったしねー〉

 ───お陰でトライスターの人たちにお小遣いまた貰わなきゃいけないよ。

 〈うふふふ、食べ放題と言えばスイーツバイキング行けなかったねー〉

 ───そう、だね。

 〈でも快心と一緒に行ったのとっても楽しくて嬉しかったんだよー?〉

 ───そうなの?

 〈うん、だって名前を決めてもらえるなんて嬉しい事でしょー〉

 ───あれ?ならなんで断ったの?

 〈だって獣狼、名前決めちゃったらお別れの時に泣いちゃうでしょー?〉

 ───・・・態々、気にしなくてもよかったのに。

 

 

 〈ねぇ獣狼ー〉

 ───なに?

 〈そろそろ、さよならだよ〉

 ───・・・そっか。

 〈ねぇ獣狼、獣狼だから僕たちは手を貸すんだよ。大好きな獣狼だから僕たちは消えてもいいって思えたんだよ〉

 〈だから獣狼、お願い。なりたいものになって。僕たちはそれを、それだけを獣狼に願うよ〉

 〈転生とか、獣人(ワービースト)とか、何も関係ない。獣狼は獣狼なんだから、素っ気無くて、でも困った人は見過ごせない優しい獣狼なんだよ?だから獣狼、僕たちの後輩と一緒に───〉

 

 黒い雪・・・精霊の死骸である霊骸と桜の花弁が降り続ける。やっぱりみんな、俺が前世の記憶持ってるの気づいてたんだ、だから時々変なタイミングでネタに走ってたんだね、寂しくない様にって。みんなが消えたって事は、つまり俺が取り込んだという事で、みんなの言う通りならこれでもう俺のバランスはとれたという事だ。

 

 「最後、まで、笑えた、かな」

 

 俺のつぶやきに応えるものは居ない、当然だ。俺がみんなを取り込んだ、それが俺の責任とは思わない。だっていつかはこうなる運命で、みんなも俺に責任が無いというだろう。

 

 でも、この運命を早めた者が居るのは事実だ。この際主義主張なんてどうでもいい、今わかっているのはただ一つ、アイツらがこのまま、逃げ切るのが許せない、誰かの手で捕まるのが許せないだけだ、だから。

 

 「だから、さっさと、戻る」

 

 立ち上がり、桜の木に近づく。みんなを取り込んだからわかる、これが要なんだろう、これを破壊すれば戻れると。

 

 「あいつ等、全員、捕まえ、てやる」

 

 何時もよりスムーズに行われる血壊、そして俺の“腕”を振るえば桜の木は何の抵抗もなく砕け散る。この空間の終わりなのだろう、全体が形を崩していく中、俺の意識は暗い闇の中から浮上していった。




 回精獣狼ゥ!
 何故君が勝手に血壊を発動させてしまうのか。
 何故精霊たちに血壊を止められたのか。
 何故胸の模様と精霊が一致しないのくわァ!
 その答えはただ一つ・・・。
 アハァー・・・♡
 回精獣狼ゥ!
 君の個性が、間違った方向に進んでいるからだァァァァァァァァ!!
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