Q.前回の最後なんだよ
A.ふざけなきゃ書いてられねぇんだよ(涙)
目を覚ます。目の前に口の周りを血で汚した快心さんの顔があった事には驚いたが、それよりも殺気を感じた為に快心さんごと覆う様に“腕”を動かせば、銃声と何かを掴んだ感触。
「おいおい、今更になって外すなんて無しだぜ陰険野郎」
「まて、構えろヴァンデルン」
「・・・お前の目は節穴か、防がれた事すらわからんのか?」
「あ?防がれ・・・花びら?」
あぁ、お前たちはそこに居るんだな?快心さんの肩を掴み退かせば、ビクリと体を跳ねさせ驚く快心さん。しばらくして涙をこぼしながらも謝られる。
「獣狼、くん。ごめんなさい、私のせいで呼吸、止まっちゃって」
「全部、アイツら、が、悪い、気に、しないで」
どうやら気を失っている最中に意識の混濁は治っているらしい、スムーズに起き上がり両腕を脱力させながらも、今まで意識して向けなかった目を向ける。三人のヴィランを───特にサイエンスを目にした途端、本能が獲物を───怨敵を屠れ敵を取れと両腕に力を入れるが、理性でアイツらは刑務所に叩き込むと抑える。
視界には季節外れの桜の花弁が舞っているが、これが先ほどから感じる“腕”なのだろう、みんなからもらった精霊の力。その力を使い胸に埋まっている銃弾を掴んで取り出す。多少痛いが浅い部分、肋骨に当たったのだろうか?しかし痛むという事は折れているのだろう。
「おいサイエンス、こりゃどういう事だ?お前の改造した薬は個性のブーストよりも理性を弱める方に力を入れたって話だが?」
「・・・明らかに何かが変質している、これだから意思のある個性という不確定要素は嫌いだ」
「泣き言、は、終わりか?なら、さっさと、倒され、ろ」
「いいや、悪いがこのまま逃げ切らせてもらう」
マキナがケースの中身を取り出し人間にはありえない速度で組み立て、こちらに銃口を向ける。ちらりと金色に反射した銃弾の大きさとその長い銃身から、この世界で発展した大型のライフルと考えていいだろう。
「そのまま死ね」
「っ!獣狼く───」
「血壊」
血壊を発動と同時に全身を焼く様な熱さが発生したが、それを無視し花弁が血の様に真っ赤に染まった“腕”を前方に重ねる。それとほぼ同時に拳銃の銃声なんて目じゃない程の大きな炸裂音が二度三度と続く、“腕”に当たる衝撃で周囲に砂埃が舞い視界を悪くするがもう
怒りに染まる思考を落ち着かせつつ、砂埃の中から“腕”を伸す。何かを掴む感触と共に握れば、金属が拉げ何かが砕け散る音がした。しかし感触には生身が含まれていなかった、つまり腕を潰せなかったという事で反応が良いのか、それに先ほどの組み立てからしてそういった個性なのだろう。
「ハハハッ、トライアル段階とはいえ増強系や異形型を一撃でぶっ殺す為の銃弾を防ぐとか、どんなバケモンだよ」
「・・・我々が対処できる域を大幅に超えている、撤退が必要だ」
「ッヴァンデルン!逃げろ!!」
「は?がァ───ッ!!?」
「逃がすと、思うか?全員、ここで、沈め」
逃がすものかとヴァンデルンの気配に“腕”を伸ばせば、腕か脚を掴んだために握れば何かが連続で折れる音。距離によって“腕”の力は変わるのか?そのままヴァンデルンを引き摺りながらこちらに引き寄せ、徐々に力を込めて圧迫していけば。
「アァァァァァァ!!?がぁぁッ!?っーーー!!ーーーーッ!!?」
「騒ぐな、黙れ」
少し力を込めただけでコレか、脚を掴まれ逆さまになっているヴァンデルンの口を“腕”で塞ぎ、しばらく力を維持すれば白目をむいて気絶する。気絶したならもういいので適当に投げ、べちゃりと言う湿った音と共に砂埃が晴れていく。
「サイエンス、この状況どう見る?」
「・・・獣の部分が活性化し代謝を早め、精霊の部分があの花弁の正体だろう。しかしブーストを抑えたのに何故ここまで・・・」
「あぁ、髪の毛、伸びた、のか。それに、色も、桜、色」
風が吹いて視界の隅に映った物を掴めば。それは自分の髪の毛で、みんなが最後に選ぶほど大好きな場所にあった桜と同じ色で、まるでみんなが一緒に居るようで───。
「どうにかして逃げるしかないな、生憎俺も命が惜しい」
「・・・ヴァンデルンがやられた状況でどうやって逃げると?」
「黒霧が来るまで耐えるか、僅かな希望にかけて逃げるかの二択だな」
「・・・実質一択ではないか・・・クソッ、役立たずめ・・・!」
「終わった、のなら、こちら、から、行くぞ」
「・・・!」
マキナが此方に構え、戦闘準備をした途端。乾いた───拳銃の銃声が鳴り響く、マキナは困惑した表情で後ろを振り向き拳銃を構えたサイエンスに問い詰める。
「サイエンスゥ・・・!何故だ、何故俺を撃った・・・!」
「・・・悪いね、お前の様な奴が戦ったところでアレに勝てる見込みがない。ならば僅かでも見込みを出すために暴走させるのは当然だろう?」
「グっ、あがががぁぁぁぁぁあああ・・・!!」
「・・・ヒヒッ、マキナが暴れている間に俺は逃走させてもらおう、チームプレイだ。頑張れよ?」
「最低、だな、お前は」
「ヒヒヒッ!お前と言うイレギュラーが悪いんだぞ?出なければこんな事はしない。マキナにはお前と違って個性のブーストを強めた物を投与した。それではな、獣畜生め」
捨て台詞を吐き走り去っていくサイエンス、追いたいのは山々だが暴走したマキナは全身を歪に変形させていく。ヴァンデルンが人をバケモノ呼ばわりしたが、今のマキナの方がよっぽどバケモノ染みているぞ。
「あ、あぁ、あああああ■■■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!」
「人の、言葉、すら、交わせ、ないか」
大男の右腕は肥大化しその肘には円柱状の装置が生えていた、逆に必要ないと左腕は僅かばかりの小さなものになってしまっている。両目は赤く輝き、体の至る所を金属が侵食しているかのように鈍色に光を反射する、下半身もそのむき出しの足は機械の様になってしまっている。
「■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーー!!!」
マキナは声とも呼べない何かを叫びつつ、右腕を突き出し機械の足で走り出す。明らかに人間を越えた速度に“腕”で真正面から迎撃するも。
「■■■■■■■■ッ!!!」
何かを叫んだと同時に右肘からジェットエンジンの様な排気音、まさかと思えば突然大幅な加速をし“腕”を弾いて突破された。まさか桜の花弁しか見えない“腕”を正確に弾かれるとは思ってもいなかった。
このままでは後ろの快心さんも危ない、幾ら自分の個性で意思のない者達と言っても亡骸を使うのは嫌だが仕方がない。考えが正しければコイツを止める事も出来るだろうと、体の中に存在する精霊から
「■■■■■!!■■■■■■■ーーーーー!!!」
右肘のジェットエンジンが止まり足も動かせなくなって転がりながらも、泣き叫ぶかのような声を出すマキナ。しばらくすれば糸が切れたかのように止まる、呼吸もしているので生きてはいるだろう。
霊骸は全ての生物にとって猛毒、しかし俺の霊骸は個性因子によって作られた存在が死んで発生した物。ならこの霊骸は個性を妨害する事の出来るだろうと思って使ってみたが、かなり有効だった。しかしそれでも、みんなとは違うとはいえ精霊の亡骸を進んでは使いたくはない。
すぐさま霊骸から精霊に切り替えれば桜は再び血に染まり、髪の毛は桜の色に染まった。それで後は一人だけ、そしてそいつは逃げ切れたと思っているのか立ち止まっている。
「逃がす、わけ、無い、だろう」
血壊で広がった知覚の中で立ち止まるサイエンス、疲れているのなら此方に引っ張ってやる。“腕”を伸ばす、伸ばして伸ばして伸ばして・・・
思いっきり引っ張り、弧を描くように自分たちの居る広間に叩きつける。その際に握っている場所から折れる感触がしたが、そんな事知った事ではないと引き寄せる。森の中で引っ張った際、枝にぶつかったのか皮膚が出ている場所は切り傷だらけで、全身は叩きつけられた衝撃と引きずられた事でボロボロだ。
「くそっ!お前の、お前のせいだ。お前のせいで俺はぁぁぁぁぁ!!」
「・・・言いたい、事は、それだけ、か?」
「ぎぃ───ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わめくな、お前が、一番、怪我、してない」
「───ッ!────ッ!?」
此方を見て、まるで自分が悪くないお前が全て悪いんだ。と言う様な叫びと共に銃を乱射されるも全て“腕”で防ぐ、弾が切れた後も引き金を引く姿は無様としか言いようがない。拳銃ごと手を潰せば三人の中で一番煩く叫ぶので口を“腕”で塞ぐ。
「不思議、だよ。お前に、嫌な、気配を、感じて、恐怖、していた、のが、嘘の、様だ」
「──────────!!!!」
脚を踏みつぶせば目を見開き叫ぼうとするも、口を押えられてくぐもった叫びにしかならない。あぁ、本当に不思議だ。コイツは一番怖かったはずなのに今じゃ
「どうした?お前の、個性、使って、みろよ。状況、が、打開、される、かもだぞ」
「───────、──────」
「それじゃ、わから、ないぞ」
「─────ッ」
必死に首を横に振るが、何を伝えたいのかがわからないので腕を蹴れば乾いた枝を折るかのようにアッサリと折れる。痛みに麻痺したのか叫ばなくなったのは良い事だ。
「くくくっ、このまま、殺して、しまう、のも、いいかも、な?」
「──────!─────!!」
あぁ、それもいいかもしれない。コイツはみんなを殺した元凶で、今はヴィランに襲撃されている状況、力加減を失敗して殺したって問題ないんじゃないか?俺の考えに反応したのか“腕”がサイエンスの体を抑え、顔を潰そうと徐々に近づいて行く、サイエンスも状況を理解したのか顔を青くしながらもがく、だがお前の力じゃ抜け出せるわけないだろう?
「くくくくくくっ、悪い、事、したんだ、こんな、末路も、あって、当然、だろ?」
「─────っ!!─────────・・・」
気絶したが、別に構わないだろう。どうせ殺すんだと“腕”を動かそうとすれば、周りが見えていなかった為に。後ろから抱きしめられるまで気づけなかった。
「だめだよ、獣狼くん・・・。ヒーロー、目指すんでしょ?」
「快心、さん・・・?」
「殺しちゃダメ、ヒーローになりたいんでしょ?なりたいものになってよ、ヒーローが人を殺しちゃだめだよ」
───だから獣狼、お願い。なりたいものになって。
───あいつ等、全員、捕まえ、てやる。
快心さんの言葉で思考の靄が晴れ、みんなとの約束を思い出す。徐々に視界が歪んでいき、血に染まった桜は色を取り戻していった。
「・・・ごめん、ごめん、快心、さん」
「・・・よかった、何時もの獣狼くんだね」
「ごめん、みんな、居なく、なって、平気、だった、のに、周りが、見えなく、なって」
「うん、とりあえず移動しよっか」
快心さんに手を引かれて俺が倒れていた場所まで戻る。そこで震える声で、歪む視界を手で拭いつつも何があったのかを包み隠さず快心さんに話すと。
「・・・よし、思いっきり泣いちゃおう?」
「え・・・?」
「獣狼くんは抱え込み過ぎたんだよ。それに思いっきり泣いちゃおう?」
「・・・良いの、かな・・・」
「うん、良いんだよ。獣狼くんは悪くないよ」
その言葉と共に蓋をしていた悲しさが溢れ出し再確認してしまった、みんなが居なくなっちゃったんだ、と。そうなってしまったらもう涙が止まらない、声を出すつもりが無くても自然と声が出てしまう。まるでキツネが甘えるときの声だな、なんて頭の片隅で考えていると、快心さんに引き寄せられ抵抗も出来ずに胸に収まってしまう。
「ほら、泣いていいんだよ。悲しかったんでしょ?辛かったんでしょ?なら泣いて良いんだよ」
抱きしめられ、頭をゆっくり撫でられる。声も抑えきれず、もう会えないみんなを想い笑顔で見送った分、月の光が辺りを包む中で産まれて初めて大きな声で泣いた。
弁明というか、獣狼がどうなっているのか、どうなっていたのかは次のお話でします。なので深く追求するのは許して。