位階序列十四位のヒーローアカデミア   作:生活常備薬第3類

59 / 70
 まずは遅れてごめんなさい、温度変化の気持ち悪さとか涙の出し過ぎで頭痛とかと戦ってました。でもちょこちょこと書いていてよかったです、想像より早めに出来ました。

 やっぱりこの話も独自設定、独自解釈の強い話です。ごめんなさい。

 感想+誤字報告ありがとうございます。


第五十七話:夜は明け、そして

 合宿がヴィランに襲撃され早くも三日が経った。あの後俺は眠ってしまったらしく、銃声を聞いた相澤先生によって救出されたらしい。その後は通報を受けた救急によって入院、胸の銃創と胸骨と言う心臓の真上にある骨にヒビが入っている以外外傷は問題ないとの診断を受けた。

 

 そう、外傷は、だ。俺は銃弾で薬物を投与されており、更には現場に残っていた拳銃の弾頭とヴィランの所持していた拳銃の弾倉に入っていた弾を一部分解、そうして手に入れた薬物から分析したところ、禁止薬物に指定されている通称トリガーと呼ばれる物を改造した物と判明。前者はトリガーとしての性質を強化したもの、後者は個性のブーストを抑え理性を弱くする効力を高めた物で快心さんの証言から俺は後者を撃ち込まれていたらしい。

 

 お陰で二日目で目が覚めたものの、精神に異常が無いかの確認で精神科医の先生に色々な検査をされたり、カウンセラーの先生と話をした結果。問題ないと診断されたものの、状況が状況なので外部との連絡は控える事になった。

 

 そうして二日目が終わり、三日目になると今度は個性の検査を行われる事になった。何故そうなったかと言えば俺があの場で倒したヴィラン達、その全員が()()()()()で握られて骨が折れたり全身に圧迫された跡があったりと、明らかに薬物の影響でお前の個性何か変わってるだろ、という事で馴染みの深いトライスターの個性研究所に再びお世話になる事となった。

 

 

~~~~~

 

 

 そして現在、お父さんの案内で以前に行った物より詳細に調べている最中に事件が起きた。厳密には事件と言うほど切迫した状況ではないものの、俺の胸から出てきた存在によって個性の検査を一時中断する事になってしまっている。

 

 「〈キャーウ、キャウキャゥン〉」

 『・・・獣狼ちゃーん、そろそろ良いかしらー?』

 「ちょ、やめ、まっ、話せ、な、離、んっ」

 

 ガラスの向こうからマイクでお母さんに声をかけられるが、黒がメインで両脚の先と尻尾の先が茶色い毛のキツネに押し倒された後、顔を舐められ続けて返事を返せない。無理に引き離そうとすると、馴染みのある悲しそうな気配がキツネから感じる、まさか・・・。

 

 「君が、みんなの、後輩?」

 「〈キャゥ!キャゥン〉」

 「・・・そっか」

 

 キツネからの返答にみんなが好きなあの場所を思い出す、みんなとお別れしたあの場所を。そして一つの後悔も思い出し、キツネの翡翠色の目を見て考える。黒・・・キツネ・・・精霊・・・?

 

 「ねぇ、君の、名前、決めた、よ。君の、名前は、夜桜(よざくら)。夜の、様な、毛並み、と、みんなの、好きな、木の、名前、どうかな?」

 

 自分の名前と理解したのだろう、目を見開き驚いたかの様な表情をし、涙を一粒流して変化が始まった。足の先端から植物の蔦の様に赤いラインが伸びていく、肩辺りまで来た蔦はそこで止まり円を描き止まる。顔にも変化が表れ、まるで化粧の様に上瞼に赤いラインが引かれ、額には花弁が四枚しかない赤い桜が描かれる。

 

 「〈ワン!〉」

 「くくくっ、気に入った?」

 「〈キューン!〉」

 「よかった、じゃあ、みんなに、紹介、しないと、ね?」

 

 夜桜に言いたい事が伝わったのか、大人しく離れてくれる。体を起こして立ち上がると、何かを期待するかのように前足でアピールする夜桜。そんなアピールしなくても伝わるのに、若干みんなより幼いのかな?両手で抱えてあげれば、嬉しそうに鳴く夜桜をひと撫でしてお母さんたちのところへ向かう。

 

 「それで獣狼ちゃん、その子も精霊のようだけれど説明してくれるのよね?」

 「うん、でも、まずは、みんな、が。精霊、たち、が、どう、なった、のか、説明、するね」

 

 そうして、あの夜に起きた事だけを話す。みんなとの会話も、あの景色も、最後の時間も、俺の胸に仕舞っておく必要があると感じたから。かいつまんでみんなのお陰で不安定だったものが取り除けた事、そうして本来の力を取り戻した事、そのせいでみんなを俺が取り込み、消えてしまった事を話す。話を聞いたお母さんは悲しそうな顔をし、しかし次の瞬間には決心した顔になる。

 

 「獣狼ちゃん・・・、ごめんなさい」

 「・・・どうして、お母さん、謝る、の?」

 「私ね、てっきりあの子たちが獣狼ちゃんに悪さしていると思って脅したりしたのよ、でも違った」

 「私は息子を助けてくれた子たちを敵視していた、だからこれはその謝罪よ」

 

 そう言って深々と頭を下げるお母さん。・・・自分の事なのに、気付いてなかったのは俺だけだったのか・・・。

 

 「お母さん、みんなは、言わな、かった、でしょ?」

 「・・・えぇ、脅してもはぐらかすだけだったわ」

 「なら、みんなは、許し、てるよ。だって、消える、間際、まで、ずっと、俺の、心配、してた、んだよ?お母さん、に、話し、たら、心配、させる、でしょ?だから、誤魔化し、たんだよ」

 「・・・私、獣狼ちゃんの精霊に心配されてたのね・・・。これならもっと優しくしてあげればよかったなぁ・・・」

 

 お母さんの声に反応したのか、腕の中の夜桜はお母さんの方へ行きたいと訴える。なので床に降ろしてあげればトコトコとお母さんの方へ歩いて行く。

 

 「〈キュー、キュー〉」

 「その子、みんなの、後輩、名前は、夜桜。元気、出して、だって」

 「・・・そうね、こんな小さな子に心配させちゃダメよね」

 

 お母さんが足元の夜桜を持ち上げ、頭を撫でてあげれば嬉しそうに目を細める。いや、実際に嬉しいようだ。しかしこの状況についていけない人もいる訳で。

 

 「あー・・・そろそろお父さんに説明してもらっても?」

 「簡単に言っちゃえば、獣狼ちゃんの子供みたいなものよ」

 「・・・え、もしかして私もうお爺ちゃん・・・?」

 「多分、違う、と、思う」

 「あの・・・そろそろ時間が押してきているので検査に戻って貰ってもいいですか・・・?」

 「あ、はーい。今、行きます」

 「では私の方では獣狼の精霊を検査しておこう、夜桜くんは良いかね?」

 「〈キャゥ〉」

 

 元気よく返事をし、夜桜はお父さんの後を付いていく。俺も先ほどから中断されていた検査の続きを研究員の指示に従い手早く行う、幾ら俺の為に貸し切りとは言え、時間厳守なのは変わらなかった。

 

 

~~~~~

 

 

 検査も全て終わり、今は精霊の専門家であるお母さんの話を椅子に座って聞いていた。だがこの話は夜桜には退屈なようで、俺の膝の上でお腹を上にして撫でろと催促してくる。話を聞きながら流れ作業で撫でていると、お母さんの考えていた事と大きく違ったようで。

 

 「うーん、獣狼ちゃんの精霊ってかなり特別よね」

 「特別?例え、ば?」

 「私の精霊って、色々な事が出来たでしょ?アレって私が命令して、精霊たちがその命令に沿うように色々やってるのよ」

 「・・・色々、って?」

 「実は私でも把握しきれてないのよね、その手の本職には負けるけど扱えるーって感じよ」

 「万能、だね」

 「その分デメリットも酷いけどね。それで獣狼ちゃんの精霊だけど、夜桜ちゃん以外の彼らは獣狼ちゃんに動かされてるだけなのよね」

 

 俺に動かされているだけ・・・?何かが引っかかり考え込んでいると、お母さんはペットボトルを取り出し床に置く。

 

 「それじゃあ獣狼ちゃん、精霊の腕を使って持ち上げてくれる?」

 「うん、ほら、おいで」

 「〈キャゥー〉」

 

 夜桜は身をよじってひっくり返り、俺の胸に飛び込んで()()()()()()()()()()()()()。その光景はまるでみんなの様で、でもこの子はこの子だ、みんなじゃない。ふと思ってしまった事を断ち切り、みんなのお陰で扱える“腕”でペットボトルを掴み持ち上げる。

 

 「これで、良い?」

 「・・・やっぱり、綺麗な目ね」

 「・・・茶化、さない、で」

 「ふふふ、ごめんね?それで今獣狼ちゃんが持ち上げてくれたけど、何か命令を出した?それにどうやって持ち上げた?」

 「特に、何も。ただ、横から、掴んで・・・あっ」

 「気づいたかしら?私の精霊は命令を受けて、ペットボトルの何処かを持ち上げるの。そしてここからが問題よ」

 「獣狼ちゃんの精霊ね、多分だけど何かを持ったり、掴んだりしか出来ないと思う」

 

 “腕”を試す必要もなくなったので夜桜が胸から顔を出し、それと同時に力が弱まり“腕”の中で舞っている花弁も減る。あの、それちょっと変な感じするからやめて欲しいんだけど・・・。上手く伝わってくれたのか、そのまま出て来てくれる。そして再び膝の上で今度は背中を撫でて、と催促されたので撫でると。

 

 「獣狼ちゃん?お母さんの話を聞いてくれないと拗ねちゃうわよー?」

 「あ、ちゃんと、聞く、よ」

 「全くもう・・・、いい?獣狼ちゃんが動かすって事は、獣狼ちゃん自身が私の精霊がやってる色々をやらなきゃいけないのよ?」

 「あー・・・、確かに、出来ない、ね」

 「でも、あの子たちのお陰で精霊の腕を使えるようになったんだし、大丈夫よ」

 

 何時までも名前が無いのは不便だったので、精霊の力で出来た腕、という事で精霊の腕と呼んでいる。あの時からずっと、何となく腕と言う認識はあったが、精霊の腕は自分の腕からではなく、体から出ているらしいので不思議である。しかしお母さんは優し気な顔から一転、少し険しい顔をしながら警告してくる。

 

 「でもね、獣狼ちゃんの言う霊骸の力は使うな、とは言わないけど気を付けなさい。アレはそもそもが在りえない物、獣狼ちゃん達はそれに適応しちゃって大丈夫だけど、他の人は大丈夫とも言い切れないわ」

 「・・・うん、だいじょぶ、霊骸、を、使う気は、ないよ」

 

 そう言って検査の報告書に目を通す、そこには前回調べたときと比べとても安定し、更に“腕”が扱える事以外にも血壊状態についても書かれていた、しかし知りたい事は書いていなかったのでページをめくっていけば欲しい情報、夜桜と融合した場合について書かれている部分を見つけた。

 

 夜桜はみんなと同じく俺と融合する事が出来た、厳密には違うらしいがまぁみんなを引き継いだという事で融合にした。そこには融合した場合の特徴が写真付きで解説されており、“腕”の出力上昇の他に両目の虹彩に四枚の桜の花弁がバツ印を描いている事も拡大した写真付きで解説されていた。これに関しては新しい家族との証、と思えば気にならない。

 

 他にも融合した血壊状態と融合しない血壊状態を比べた画像も乗っている、そこには髪の毛と尻尾、耳を桜色に変え“腕”にある桜も真紅に染まり身体能力に比例するかのように出力が大きく上がっていた。そうして次のページに目を向ければ霊骸について書かれていた。

 この力を使う事に忌避感はあったものの、お父さんの説得で霊骸の検査を行う事になった。そのページには桜色になった部分と“腕”の桜を黒く染めた写真が載っていた、しかしそこではなく霊骸の分析結果を探せば見つけた。

 

 そこには唯一霊骸と触れたマキナと言うヴィランの診断も乗っており、簡単にまとめるのなら「霊骸に触れた個性因子の流れを滅茶苦茶にし、そこが体の場合苦痛を伴う。だがこれは場合によって変わる可能性がある」と言ったもの。ただ霊骸自体は付着などしないで力を解けばすぐさま俺の中に引っ込むらしく、安心した。

 

 霊骸になった彼らは、恐らくは薬物で個性のバランスが崩れた際に死んでしまった意思のない精霊たちだろう。獣の力が強まり死んでしまい、そして精霊の力が強まって今いる新しい精霊たちが産まれた。しかし俺に悪影響を及ぼしていたとは言え、家族の親族と言っても過言ではないだろう存在の亡骸を、その辺りに放置しなくていいという事は喜ぶべきだろう。

 

 「さて、検査も終わって伝えたい事も伝え終わった。なら後は帰りましょっか?」

 「うん、みんなと、連絡、取りたい」

 「でも薬物の話は伏せるのよ?流石にヒーローを目指しているとはいえ、今の子たちには刺激が強いもの」

 「・・・快心、さん、言って、なきゃ、良いけど」

 「大丈夫よ、快心ちゃんには早めに釘を刺したって警察の方が言っていたわ」

 「なら、平気、だね」

 

 そう言って、荷物を纏め夜桜を抱えながらお母さんと一緒に会社を後にする。辺りはもうすっかり暗くなっているが、ちゃんと街灯が道を照らしてくれる。

 

 「そういえば獣狼ちゃん、みんなが居なくなったけど大丈夫?」

 「・・・うん、もう、乗り越え、た、から」

 

 うん、あの晩に沢山泣いた。初めて悲しくて泣いた、快心さんに抱きしめられながら───。と考えた辺りで気づいてしまう、俺結構恥ずかしい事をしてしまった?幾ら仲がいいからって女子の胸の中でわんわん泣くって結構・・・いやかなり恥ずかしい!?余計な事に気づいてしまい顔がどんどんと熱くなっていく、そしてそれに気づかないお母さんではない。

 

 「あら?どうしたの赤くなっちゃって、もしかして快心ちゃんと何かあっちゃった!?」

 「気に、しないで、うん、追及、しないで」

 「ふーん、わかったわ。獣狼ちゃんの頼みだもの、快心ちゃんに直接聞くから

 「やめてよ!?」

 「〈キューン・・・〉」

 

 スマホを取り出し快心さんに事情を聞こうとするお母さんを何とか止める事に成功したものの、代わりに俺が快心さんと話す事に。俺の無事を伝えれば喜んでくれたものの、何処から声に緊張がある。心配してその事を聞けばはぐらかされ、女の子には色々あるから!、と言われてしまえば引き下がるしかない。その後も今まで何があったかを話して通話は終了、しかしお母さんにスマホを渡せば、快心さんにまた連絡を取りそうなので没収していると。

 

 「あ、そう言えば夜桜ちゃんって寝るところやお手洗いどうするの?」

 「・・・あ」

 「〈キュゥッ〉」

 「お手、洗い、は、平気、だって」

 「なら寝るところね、ペット用のベッドで良いかしら?」

 「〈キュゥー・・・キャゥ〉」

 「気に、入ったら?って」

 「なら決まりね、帰る前に寄っていきましょ?」

 

 夜と言えど、ペットショップがまだやっていてよかった。夜桜は穴から入るタイプと普通のベッドを模して造られたタイプで悩んでいたが、狭い所が良い時は獣狼ちゃんのベッドに入れば?の一言で普通のベッドを模したタイプになった。

 そうして買い物を済ませ、興味深々の夜桜を落ち着かせつつ電車で移動、やっと家に帰ってこれた。でも今日は検査で血壊に霊骸も使って疲れた、明日みんなに連絡してもいいよね?と晩御飯も早々に済ませ、夜桜のベッドを自室の空いているスペースへと組み立てて設置する、初めての事で大はしゃぎする夜桜とお風呂を済ませた後、何時もより早い時間に眠りについた。

 

 そうしてみんなに連絡を取ろうとした朝にやっと気づく、オールマイト引退の報道に。




 やっぱり作者の言い訳が長くなりそうなので活動報告に獣狼くんの個性について、作者視点の考えを書いておきました。良ければご覧ください、「別にかまへんかまへん!」という方は大丈夫です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。