位階序列十四位のヒーローアカデミア   作:生活常備薬第3類

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 皆さんは大晦日元気に過ごしていますか?私は元気です。その前がもう大惨事でしたが大晦日は元気なのでノーカウントです、ノーカウント。

 大いに遅れてしまい、本当にごめんなさい。活動報告でも書きましたが、こちらでも謝罪を。

 後三話くらいでこのお話は完結になると思います。完結した時になんて言われるか怖すぎてもう手と胃が震えてきました。


第六十六話:何よりも試される演習

 良い報告と悪い報告。良く使われるフレーズだと思う、でも今回に限っては良い報告と悪い報告、そしてとても良い報告と言うこのフレーズの中でもかなりワクワク出来る物。だって報告する前に“とても”が付くなんてもうウッキウキに浮かれても仕方ない、良いと悪いでプラスマイナスゼロになってもとても良いで全然プラスだもの。

 

 「回精、大丈夫か……?」

 「だいじょぶ、寧ろ、ちょー、気分が、良いよ」

 

 障子くんが何かを心配してか、こちらに気を使ってくれる。やっぱり障子くんは優しいな、でも障子くんに答えた通りでとても気分がいい。少し冷えちゃった肉まんを、さっきまで受験者全員が戦っていた街が爆発によって崩れて行った光景をモニターから眺めつつ、口に入れる。中はまだ温かくて美味しい。

 

 「なぁなぁ轟くん、回精くんなんでさっきまで『もうだめだー!』みたいな雰囲気だしてたのにあんなもうウッキウキなん?」

 「試験が始まる前に回精の従兄が来てただろ?聞こえて来た話じゃ一次試験でその従兄に狙われたらしい。何とか逃げ切ったらしいが、次も戦闘系の試験だと従兄は確実に狙ってくるからって落ち込んでたのに、試験が救助演習ってわかってコレだ」

 「あぁ~……試験とは言え家族で戦うのってあんまり気が進まないもんね……」

 「回精は純粋に勝ち目が無いから戦いたくないって言ってたぞ」

 「えっそっち?」

 

 「〈キュゥー、キャァゥ〉」

 「んー」

 

 食べるだけなら片手でも出来る、空いている手で夜桜の頭を撫でまわし、手に取っていた物を食べ終え、最後の一つに手を伸ばす。

 

 放送では十分後に始まると言っていた、そしてトイレ“等”を済ませろとも。トイレと言われて真っ先に十分間は休憩タイムや次の試験までの猶予だと思う、けどその前に俺達を“仮免取得済みと仮定して”と言ってもいた。

 

 つまり、この十分間は緊急事態として休みのヒーローすら駆り出される非常時の中、ヒーローが現場に到着するまでの時間と考えた方が自然かな。二つ目を手早く口の中に入れてそこそこ噛んでから飲み込む、もし俺の考えが間違っていないなら少なくともクラス内でちゃんとチーム分けをしなきゃいけない。

 

 ……士傑の毛むくじゃらな人が爆豪くんに詫びを入れている、その事で爆豪くんはあまり気にしてないけど、轟くんと夜嵐くんの険呑な様子から二人の相性が最悪みたい。聞こえて来た話じゃ、夜嵐くんの一方的な嫌悪かまたは轟くんが無自覚に何かやらかしちゃったか。

 緑谷くんと士傑の女の人が話しただけで峰田くんと上鳴くんがただならぬ雰囲気で緑谷くんに詰め寄っている。こっちもこっちで緑谷くんは何をやったのやら……、あの二人って事は女性関係か何かか。

 

 うーん……、士傑を仲間に入れるのはアリだと思ったんだけどこの様子じゃ、仲間内でギクシャクしてあんまり良い結果に繋がらなさそう。クラスを理性的に引っぱれる飯田くんはモニターを見て何を思っているのか動かないし、八百万さんは峰田くん達の世話で忙しそう。

 

 こうなったら仕方がない、起点は俺が作るとしよう。幸い近くにみんな揃っている訳だしそこまで大声じゃなくてもいいでしょ。

 

 「雄英、しゅーごー!」

 

 こうやってわかりやすく呼びかければ、クラスのみんなは疑問に思うだろうけどしっかり集まってくれる。大声出したから他校の人もこっちに興味を示したけど、今は外に手を広げるより中を盤石にしなきゃ。

 

 「回精くん、どうかしたのか?君が集合をかけるなんて初めてだろう?」

 「うん、時間が、無いし、ちゃちゃっと、済ませる、ね。まず───」

 『ジリリリリリリリリリリリリ───』

 「〈キュゥー!?〉」

 

 しまった、どうやら他人の事を気にし過ぎた事と想像よりも十分と言うのは短いようで俺も出遅れてしまった。驚いてじたばたと暴れる夜桜の耳を塞ぎつつも後ろから抱っこする様に押さえつければ、おずおずとこちらに目を合わせてくる。目をしっかりと見ながらゆっくりと撫でてあげれば暴れる事も無くなった。

 

 耳障りとも言えるベルが鳴りやみ、放送から演習シナリオが告げられる。

 そのシナリオを百人の受験者は全員集中して静かに聞いている為か、その控室は緊張感に包まれている。

 

 放送の途中で控室の壁と天井が開いていく、もうスタートまでの猶予はあまりないと思っていいだろう。落ち着いた夜桜から手を放し全員の次の行動に備えていれば、開ききった部屋とほぼ同時に演習開始の掛け声と共にブザーが鳴り響き、受験者たちは一斉に走り出しそれにつられる様に集まっていたみんなも走り出す。

 

 こうなったら仕方がない、走りながらでもこういった状況でクラスを引率する人と判断力のある人に話を聞いてもらうしかない。

 

 「飯田、くん、八百万、さん!災害、救助!重要、な、役割、は!?」

 「基本的には障害物を取り除く力と怪我人をその場で診断する判断力と知識、それから要救助者を運ぶスピードだ!」

 「付け加えるのなら、司令塔ともいえる人も必要でしょう!全員がバラバラに動いては救助に時間がかかってしまいますわ!」

 「緑谷、くん!聞こえ、た!?今の、条件。個性を、加味して、チーム分け、出来る?」

 「えっ、うん!ちょっと考える時間を頂戴!」

 

 今の掛け声だけで全員がまだ何も役割を決めていない事に気が付いたのか、一部のクラスメイトは一瞬呼吸が止まっていた。でも驚いている暇はない、既に賽は投げられている。

 

 しかし、その中でもやはり自分で考えて行動できる人は居る訳で。

 

 「チッ!なんでついてくんだクソモブどもォ!」

 「「なんとなくゥ!!」」

 

 爆豪くんはやっぱりと言うべきか、全員が向かっている方向からは“あえて”外した方へと走っていく。更に普段から仲の良い切島くんに上鳴くんがかなり曖昧な理由だけど彼についていく。

 

 これってある意味カリスマの一種と言えるのかもしれない、傲岸不遜なその態度も実績と能力があれば、それは寧ろ折れない一本の柱の様に頼もしくヒーローに必要なリーダーシップともいえるだろう。

 

 ただ、リーダーシップと言うにはついてくる他人に口が悪すぎるのが難点だと思う。アレが無ければきっとクラスのまとめ役にだって夢じゃない。

 

 っと、爆豪くんの評価をしている場合じゃない。

 

 「夜桜、上鳴、くんの、言う事、聞いて、あげて」

 「〈キュゥ?〉」

 「地面の、中に、居る人、助けを、求める、人を、探して、あげて」

 「〈キュー……キャゥ!〉」

 「上鳴、くん!夜桜、お願い、ね!!」

 「お?お、おう!?」

 「救助、犬!犬じゃ、無いけど!!」

 「あっ、なるほどなー。回精、ありがとよー!!」

 

 夜桜は走って上鳴くんに追いつき、彼に付き従う様に隣を走る。上鳴くんも夜桜の理由が分かったからか、大声でお礼を言ってくれる。ただ、ぱっと判断して上鳴くんが一番手の空きそうだったからと言う理由がある分、罪悪感が……。

 

 「っ!泣き声、あっち!」

 「回精くん、他に人の声はするか!?」

 「しない!けど、大声、出して、走った、方が、いいかも!反応、が、あるかも、しれない!後、耳が、良い人、聞き耳、立てて!」

 「うん、わかった!おーい!誰かいませんかー!」

 「助けに来ました!誰かいらっしゃいませんか!」

 

 俺の言葉に全員が走る向きを俺の指さした方向へと固定し、先ほどから一定間隔ごとに大声を出し俺や障子くんが反応が無いか意識を集中させる。

 

 走っていると隣に飯田くんが速度を合わせて並んでくる、どうしてと思う前に走っているからか少し大声で現状ではヒーロー志望が一番やりたい───俺にとっては残酷ともいえる提案だった。

 

 「回精くん、今のところ俺は回精くんがみんなの指揮を執るべきだと───」

 「無理!話す、速度が、遅い、から、速度と、情報、が、大事な、指揮は、俺には、出来ない!」

 「すまない!そこまで考えが及んでいなかった、引き続き俺に任せてくれ!」

 

 飯田くんの提案に被せる様にその言葉を否定し、そのまま俺が出来ない理由を伝える。

 

 普通の人なら数秒で終わる言葉も、俺だと十数秒かかってしまうし、今みたいな状況でも言葉を選んで言わないと俺の口は上手く発音してくれないか、単語の途中で途切れる変な言葉になってしまう。

 

 普段の会話ならともかく、こういった緊急時には大きなデメリットになってしまう。何せさっきの泣き声もどんな声で泣いているか、何を言いながら泣いているか、と言った情報が抜けている。ただ、それを長々と伝えるのも憚られる一刻も争う状況、むやみやたらと話せない。

 

 「あっち、どんどん、近く、なってる!」

 「あぁ、子供の泣き声のようだが叫んでいる声が何かおかしい、それに助けを呼ぶ他に何かを言っているようだ」

 「お爺ちゃん、って、言ってた。多分、他に、居るの、かも」

 「そのお爺ちゃんの声は聞こえないのか?」

 「さっきから聞こえてくるのは子供の泣き声だけだ」

 「と言う事はお爺さんは声が出せない状況なのかもしれない!みんな急ぐぞ!」

 

 新たな要救助者がいるという情報に全員の走る速度が上がる、そうして走っていけば耳が良い人以外にも泣き声が聞こえて来たみたいでちらほらと反応する人も増えて来た。

 

 要救助者まであと少し───っ!

 

 「ちょ、回精何処行くの!?」

 「物が、壊れる、音!確認、してくる!」

 「待っ、って速!もうあんなところまで……」

 「みんなは先に要救助者のところへ行ってくれ!足の速い俺が一緒についていく!」

 

 爆発で発生した瓦礫や衝撃で沈降した足元の中でも走りやすいルートを全速力で走り抜ける。その途中で半壊したビルを見つけたので窓枠を使って一気に登りきる、少し前までなら背の低くめだったと思われるビルも、辺り一帯が瓦礫の山になった場所では背の高い建築物の仲間入りだ。

 

 寧ろ半分とは言え形を保っているのは奇跡に近い、ただこの建物からは人のニオイも音もしないから誰もいないのは試験だから楽な場所にはいない、と少し捻くれた考えが出てくるもそんなことより早くみんなと合流しないと、と言う考えで切り捨てる。

 

 辺り一帯は控室で見た光景の延長線上の様に一面瓦礫と崩れかけた建築物、もしもこれが試験会場ではなく人の往来があった場所ならば、怪我人や親しい人を探す叫び声に炎が何もかもを焼き焦がし、血のニオイが充満する惨状になっていただろう。

 

 「────!」

 

 緑谷くん達が爆豪くんを救う為に向かった神野区、そこでオールマイトが街を守る余裕もなくやっとの思いで勝てたヴィランが居たらしい。

 

 「────!───た──!?回───!」

 

 結局自分の事で忙しかったからあの時テレビは少ししか見れてなかったけど、テレビ越しでもその光景は覚えている。

 

 「回精──!返──して──!─精く─!」

 

 燃え盛る街、ヒーローたちが瓦礫を撤去しながら必死に人々を救っていく、けれども取りこぼしてしまう命。

 

 「回精くん!何があったんだ!?回精くん!」

 「あっ、ごめん、少し、考え、事、してた!」

 「そうか?だが幾ら喋るのが遅いからと言って説明不足で行くのは良くないぞ!」

 「うっ……、ごめん……」

 「まぁ良い、ともかく確認は出来たのか?」

 「うん、あっち、空き地に、なってる。誰かが、瓦礫を、撤去、した、と思う。それに、あの、方角、人が、集め、られてる。多分、怪我人、を、集めてる」

 「恐らくは要救助者に応急手当を行うスペースだろう、良い情報だ回精くん!みんなに伝える為にも俺は先に戻っているぞ!」

 

 そう言いつつ、間髪入れずに後ろを向き来た道を走っていく。俺もビルから飛び降りて地面を砕きつつも飯田くんの後を追いながらも少し考えてしまう。

 

 多分俺は、まだ後を引いているんだと思う。だから命が失われる光景を、そうなり得たかもしれない光景を見て足を止めて考えてしまったんだと思う。でも今は試験の真っ最中だし、似たような事態になってまた足を止める訳にもいかない。

 

 あんまりこういうのは性に合わないけど、とりあえず前に進んでそこから考えるのもいい。流石に文字通り、なんて事はしないけどそういう気持ちも今の俺には大事かもしれない。

 

 とりあえずまず先にすべきことは、変な道にそれて行ってる飯田くんの足止めと腕に抱えた子供にダメ出しされながらも必死に声をかけている緑谷くんに救助スペースの話をすることから始めよう。

 

 飯田くんも全速力じゃないみたいだし、全力で走れば追いつける。緑谷くんも身体強化しているけど、俺と飯田くんにはスピードで劣っているから余裕で追いつける。まずは飯田くんからだな、と脚に更に力を入れてスピードを上げて行った。




 面白いネタを思いついた!早速メモに書かなきゃ!

 メモを開いている間に忘れる。

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