「卒業式か……」
14唱目.雪音クリスと卒業式
「翼ー卒業おめでとう」
本日はリディアンでの卒業式。そして3年の翼は今日で卒業となる。
そして俺は、二課の代表としてこうしてリディアンに来ていた。
「あ……春風さん、わざわざありがとうございます」
「いいって事よ……。って、翼……お前泣いて」
明らかに顔を背けていた翼。その顔を覗くと、目が赤くなっていた。まだ色が抜けきっていないところから先程まで泣いていたのが丸わかりだ。
しかしそこは防人、
「な、泣いてなんかいません……涙など、流していません。風鳴翼はその身を剣と鍛えた戦士です……だから」
「翼さん……」
どこかで丸々聞いたような台詞の応酬だが、この空気を吹き飛ばすのはいつだって(自称)居場所の無い人だ。
「先輩……何強がってんだよ。ほら、ハンカチ落としてたぞ」
クリスの手元には濡れまくったハンカチが握られていた。そこにはタグの部分にハッキリ"風鳴翼"と書かれている。紛れもなく翼の物だ。
そんな証拠品を思わぬ人物に晒されたため、翼は口をあわあわとして仏の喉元掻っ捌く血相でクリスに詰め寄る。
「雪音……」
「っ……な、なんだよ」
「ありがとう」
「……? お、おう」
来たばかりのクリスは意味がわからないと首を傾げ、翼の強がりを見ていた響はひっそりと笑いをこらえていた。
当の本人は羞恥に晒されたのが堪えているのか、「常在戦場」と呟きながら項垂れていた。
「ところで拓真さん、その手に持ってる花束どうしたんですか?」
笑いが収まったのであろう響が聞いてきた。
「あぁ、これ? もちろん今日卒業する翼への卒業祝いだよ」
「……私にですか?」
「正確には俺一人、じゃなくて二課のみんなから……だけどな」
本来ならもう少し贅沢にバイキングとか用意してあげたかったのだが、予想以上にフロンティア事変の事後処理に皆が皆追われている。
そこでいち早く資料まとめを終わらせていた俺が、みんなに代わって祝いの品を渡しに来たのだ。
「にしても卒業祝いに花束って随分と洒落てんな」
「そうかー、やっぱそうだよな……急に用意したもんだからさ」
「いえ、私は嬉しいですよ」
翼はそう言うと花束を両手で大事そうに抱える。その姿に、着物を着た翼が赤ん坊を抱えているところが想像出来た。
「春風さんが選んでくれたんですか?」
「……お、おう」
「綺麗ですね。ふふっ」
柔らかに微笑む翼に一瞬ドキッとした。
流石は歌姫だ。その名に恥じない美しさをお持ちだよ。
などと翼に心奪われかけていた所を引き止めたのは、やはりあの子だった。
「ん……」
「クリス?」
袖をちょこんと摘むその視線は俯いている。
「あ、あたしの卒業式も……こうして来てくれよ……」
クリスなりの甘えなのだろう。そんなクリスが可愛くて頭を撫でてしまう。
昔は撫でようとしただけで逃げられたのに、今はほんの少しならさせてくれるようになった。
……クリスが卒業したらその後どうするんだろうか。
「一年後なんてまだまだ先か」
「な、何の話だよ! てかもう撫でるな!」
翼「雪音! そういうことは……っと、司令から出動命令だ!行くぞ!」
響「クリスちゃん……って、わわわ!お取り込み中でしたか!」
クリス「……もうどうとでもなりやがれってんだ」
拓真「よーし! チームシンフォギア出動!!」
クリス「だせぇ……」
響「おおー!いいですね!」
翼「少々子どもっぽくはないですか……?」
未来「みんな、早く行かなくていいのかな……」