K2が下方修正食らってから3か月経ったある日のお話です。
寂しがり屋/成長
「3か月……かぁ」
15唱目.寂しがり屋、雪音クリスの成長
シャトルの救出任務から3ヶ月。大きな出来事といえば、二課がS.O.N.G.って名前の組織に再編成されたとかな。それであたし達の活動内容が、各地で起こる災害救助が主になった。
ノイズ無き今、あたし達シンフォギアが出来るのはそのくらいだ。
普通の生活……とは少し違うのかもしれねぇが、ノイズが現れて警報が鳴ることも無い。平和だ……。
「……あいつ、今日も来ないんだな」
ソファに横たわりボソッと呟く。いつもあたしの家に来ては世話を焼くあいつが居ない。かれこれ一週間ほど来ていないだろうか。
「仕方ないよな。あいつだって忙しいんだ」
国の直属の組織になった事でこれまで以上に仕事が増えたらしい。特にあいつが担当する資料作成、整理は特にだ。おかげであいつのサボり癖は無くなって、おっさんも嬉しいのか嬉しくないのか複雑な顔してたな。
だけど、
「もう少し……あたしに構ってくれたっていいじゃねぇかよ……」
初めて出会ってからこれまでの間、ずっとあいつはあたしの傍にいてくれてた。それがいつの間にか当たり前になってて、いつからか、ほんの少しでもあいつがいないと弱音を吐くようになっちまった。
柄にもないのは分かってる。それでも、どうしようもなくあいつはあたしの欲しいものをこれでもかってくらいくれる。それが嬉しくて、堪らなくて……縋っちまうんだ。
「はぁ……こんなんじゃ、後輩たちにいい格好見せれねぇじゃねぇか。もっとシャキッとしやがれってんだ」
脳裏に浮かぶのはいつだってあたしが最高に尊敬している先輩の後ろ姿。
あんなふうになりたい。なって後輩達を引っ張ってってやれる先輩になりたい。
そんなあたしがこんなんでどうする。女々しいあたしとはこれっきり。おさらばだ。
動く気配のないあたしの体へ鞭を打つ。
「あいつだって頑張ってんだ。今度はあたしがあいつを支えてやる番だろ」
家族って言葉をあたしにくれたあいつへの恩返し。ずっと甘えてた分を少しずつあいつに返すんだ。
「まずは……そうだな。飯作るか」
重い体を起こして、財布と通信機を持ってあたしは家を出た。
◇
「あ゛ぁ゛疲れた……」
国の上層部と正式な繋がりが出来てからというもの、二課の時と比べて4倍くらいの仕事の量。もうそろそろ体がボロボロ案件だ。
「いや、これまでが楽すぎたんだな……きっと」
あの頃はサボったりなんだりとしてたからこそ、適度に仕事が出来たんだ。けど、今となっては俺の職務的にかなり重要ポジションなため、逃げるなんて許されない。
それ故に全体的に自分の時間が無い。
「最近ろくなモノ食ってないかも……」
自炊もほとんど出来てない。コンビニ弁当、カップ麺とか不規則な食生活続きだ。
おかげで調子も出ず、藤尭先輩や友里先輩に心配をかけさせてしまっている。
「……なんとかしなきゃな」
いつもの様にコンビニ弁当の入ったビニール袋を手からぶら下げ、マンションの自室へと向かう。
「思えば最近クリスとも話す機会減ってるよな」
かれこれ家にも行けてない。ちゃんと飯食ってるんだろうか……って、今の俺が言えた事じゃないか。
歩きなれた廊下を歩き、家の前に立つ。ポケットから鍵を取り出してロックを解除する。扉を開けて中を潜って靴を脱ぎ捨てる。
「……ただいま」
返ってくるわけでもないが、とりあえず口にする。
しかし、予想外にも返ってきた。それは多分、今一番聞きたかった声だった。
「───お、おかえり。今日は遅かったんだな」
「クリス……。どうしてクリスが」
確かに合鍵は渡してる。でも何故こんな夜更けにクリスが俺の部屋に来ているのか。一瞬部屋を間違えたかと、一旦外に出てインターホン上の名前を確認する。
……確かに"春風拓真"とそう書かれてる。
「早く中入れよ……飯、作ったんだ。冷めちまうからさっさと来てくれ……」
「あ、あ……」
心做しか無意識に体が欲していたあったかさを実感した気がする。
支えてたはずが、気付かないうちにクリスは立派に成長していたんだな。
「なに作ってくれたんだ」
俺がそう聞くとクリスはくるりと体をこちらに向けて笑って見せた。
「あんたが教えてくれたハンバーグだっ」
クリス「うへっ……あいつ全然掃除してねぇじゃねぇか」
クリス「カップ麺やらコンビニ弁当のゴミが散乱してやがる……これほんとにあいつの部屋か……?」
クリス「ん、なんだこれ……本?」
クリス「…………な……なっ……!(18歳以上推奨なHな本)」
クリス「……で、でかい方が好きなのか……ふ、ふぅーん。へ、へぇー……」
クリス「こ、こんなのに頼るくらいなら、あ……あたしで……って、何考えんだあたしはっ!」
クリス「……」
クリス「さっさと片付けるか」