「監視ねぇ……」
16唱目.雪音クリス監視
新たな敵、錬金術師が使役する自動人形とアルカ・ノイズの前に為す術もなく敗北した装者達。先の戦闘で翼の天羽々斬とクリスのイチイバルが破壊されてしまい、現状の戦力は響のガングニールのみ。
調や切歌もいるが、こちらは時限式。戦力に加えるには些か不安要素が多すぎる。
そんな状況だからこそ、いても経ってもいられない者は必ずいる。
「ってことで、クリスが無茶をしないように監視役が来たぞー」
「なーにが、"てことで"だよ。監視なんか要らねぇーってんだ」
クリスの献身的なサポートがあったおかげですっかり普段の調子を取り戻せていた。まぁ、錬金術師さん達のせいでまた忙しくなりそうだけどね!
そこで、まだ忙しさがピークに達していない俺だからこそ出来る任務を司令から直々に受け取った。
それこそがクリスの監視だ。
……監視って言うのは嫌な感じがするから"見守り隊"にしよう。
"雪音クリス見守り隊"
なかなかいいんじゃないか?
「だいたいあたしが監視でもされてないと勝手に飛び出す奴だとでも言う気か?」
あのバカみたいに、という付け足しが入る。
「自分の胸に聞いてみなさいよ」
自分の身を盾に月を穿つ一撃を逸らしたり、ソロモンの杖を取り返す為にたった一人で動いたり……。
「ぐっ……」
「どうやら何も言い返せないようだな。なら素直に従えよー」
「だ、だからって……常に監視する気なのかよ……」
「そこら辺の量は俺の独断で決めていいらしいし、そんな24時間監視とかはしないさ」
さすがに軽くストーカーになりかねないからな。
「ならいいけどよ……って、お前何してんだ」
「え? 寝泊まりの準備」
「───はぁ!?」
バッグから歯ブラシやら着替えやらを取り出していく。
ん、さっきからなんだかクリスが騒がしいな。
「ね、寝泊まりって……おま、そこまでやんのかよ!?」
もちろん監視役としての仕事の為でもあるが、ここ最近クリスの様子が変な事に疑問を持っての寝泊まりでもある。
何か一つのことに囚われすぎて、結果、周りが見えてない。今のクリスからはそんな感じがした。
そんな風に感じ始めたのは、やはりイチイバルが壊された後からだったな。
ただの勘違いならいいんだが、それが後々まで引きずって行くものならここで取り除いてやりたいと思ってる。
「一々俺の部屋から来るのもメンドーだしな」
「だ、だからって……あたしとその……いっ、いっっしょに暮ら……」
「お……。つまりは予行演習だな」
将来の……なんてからかい気味に言うと、クリスはトマトもびっくりな赤みを頬に浮かべて傍にあったクッションを投げつけてきやがった。
「か、家族とは言っちまったことはあったけど……いきなり……いきなり暮らすなんて恥ずかしいんだよ……」
「なるほどー。つまり"いきなり"じゃなければいいって事だ」
本当の意味で"家族"になる事があったらその時はちゃんと前もって伝えなくちゃ……。
などと思っているとまたクッションが飛んできた。
「……ぷいっ」
───それ、久しぶりに見たかもな……。
肌触りの良いクッションの感触がなんとも心地よかった。
拓真「おはよう太陽! いい朝だね!……って、疲れるなこのキャラ。とりあえずクリスが無茶しないように今日も一日監視頑張るか」
拓真「まずは寝室で寝てるクリスの寝顔を……」
クリス「……ぇへへ……ぱぱぁ……ままぁ……いっしょに……」
拓真「お、両親の夢か」
クリス「……ぐすっ……ひとり……は……やだぁ……」
拓真「…………そうだな」
クリス「……すぅ……すぅ」
拓真「異常無し……っと、朝飯作るか。うーんとあったかい味噌汁作ってやる」