4話分しか無いって……これはいかほどに……。
「あいつ……怒ってるよな……」
18唱目.反省雪音クリス
錬金術師キャロルの引き起こした今回の事件──魔法少女事変は幕を閉じた。だと言うのに、誰もが皆笑って終われる結果にはならなかった。
そしてあたしは今日、ケジメをつけに来た。
深淵の竜宮でキャロルとその率いる自動人形と交戦した際、あたしは後輩の前で恥をかかされたことに頭に来て、本部との連絡でおっさんとあいつに八つ当たりしちまった。
『力を使うなと言ってるんじゃないッ! その使い方を考えろと言ってるんだッ!』
『新しくなったシンフォギアは、キャロルの錬金術に対抗する力だッ! 使いどころは今をおいて他にねぇッ! 眠てぇぞ、おっさんッ!』
『ここが深海の施設だと忘れるなと言っているッ!』
『ッ! 正論で超常と渡り合えるかッ!』
『クリス、何に縛られてるのか知らないが少し落ち着け。もっと周りを見渡せよ、一人で何でもかんでもできると思ったら大間違いだ』
『────ッ、お前に何がわかるってんだよッ! 戦場に立てないお前がッ!』
『クリス君ッ!』
あたしは一番言っちゃいけねぇことを吐いた。どんなに苛立ってても言っていいことと悪いことがある。それを知らないあたしじゃない……だって言うのに……。
すぐに謝りたかった。でもそんな暇もなく決戦は迫ってて、自動人形のでっかい奴に本部を叩かれた時、あたしは心底自分を殺したくなった。
────このままあいつに謝れなかったら……。
結果エルフナインが重症を負ってしまったが、誰一人死なないでいてくれた。
だからあたしは、
「ん、誰かと思ったらクリスか。ちょっと待っててくれ……」
「ああ……えっと、忙しかったか……?」
あいつが今個室で事件の資料を纏めていると聞いたあたしはすぐさま向かった。けれど、タイミングが悪かったようだ。
「気にすることはないよ。まぁ……ちょっと散らかってるがゆっくりしていきな」
あたしに笑みを向けたその顔は見るからに疲れ果てていた。
目の下に隈も出来てやがる……顔色も悪ぃし、髪もボサボサだ。
ここに来る時に二人が言っていたのにも頷ける。
『拓真君、ここのところずっと個室に閉じこもっててね。適度に休んでって言っても聞いてくれなくて……』
『エルフナインちゃんが怪我した時もほんとは俺が庇うべきだったって追い詰めてたし、なんとか出来ないかな……』
そんな二人に「あたしがなんとかしてくる」って啖呵切っちまったが、正直あたしでどうにかなるものか不安になってきた。
「クリスはもう夏休み入ったのか?」
「お、おう。後輩二人に毎日振り回されてばっかりだよ……」
「ははは、良い後輩を持ったじゃんか」
「うん……」
あいつらのおかげで今まで感じてきたことの無い日常ってものが徐々に手に入った気がする。小っ恥ずかしくて面と向かって言えねぇけど、感謝してるんだ。
不満はねぇ、でも、物足りない。ここ最近ずっとそうだ。
「なぁ」
「ん?」
「あの時のこと怒ってる……よな」
「あの時?」
動いていた手が止まった。覚えてねぇのか……?
「ほ、ほら……あたしが深淵の竜宮で暴走しかけてた時……」
「うーん…………あっ、そうだ思い出した。でも俺が怒るようなことあったか?」
「あっただろ! あたしは……お前に言っちゃいけねぇこと言ったんだぞ」
────本当なら俺らがあいつらの代わりに戦ってやりたいんですけどね。
────仕方あるまい。戦いの場で何も出来ないなら、出来る奴らを全力でバックアップする。それが俺たち銃後の守りだ。
あいつとおっさんが話しているのをいつだったかに聞いちまった。
だからこそあいつの想いを知っていたはずなのに、あたしは"戦場に立てない奴が"と罵った。おっさんはどっちも気にしてないって言ってたけど、どうしても本人に謝りたかった。
「……ほんとに、ごめんなさい」
「クリス……」
「お前がどういう気持ちで、戦ってるあたしらをいつも見ていてくれてたのかよく分かってたつもりだったのに……なのにあたしは……」
「なんだ────そんなの気にしてないよ」
あったかい手のひらの感触が頭に伝わった。おっさんにもされちまったが、やっぱりおっさんの手とは違うんだな。ゴツゴツしてなくて少し頼りない手のひら。なのに、とっても安心する。
それは多分、相手がこいつだからなんだろうな。
「クリスが本心から言ってるわけじゃないって俺は知ってるから。大方、後輩前でみっともない所を見せたくなかったんだろ?」
「な────なんでそれ……」
「分かるよ。クリスのことだから。憧れの先輩の背中を見続けてきたお前だからこそ、先輩らしく居ようって気張ってたんだろ」
「……」
「クリスが憧れてる先輩だって、後輩に助けられたことあるんだぞ」
「先輩が? ……まさか」
「まぁ響だな」
あたしがまだフィーネの所にいた時か。そうか、だからあの日、絶唱を放ったあの夜とは急に空気が変わってたわけか。
「後輩が先輩を助けるってことは慕われてる証拠だ。クリスをかっこいいと思ってるから切歌や調はお前を守るし、一人になんてさせない。先輩に向き不向きもあったもんか」
「ああ……嫌というほど教わったよ」
「お前が拒絶しない限り、みんなは傍にいてくれる。頼って頼られて人はそうやって繋がるんだから。それを覚えておくんだな」
ああ、だからもう怖くない。避けてきた道をあたしは、ようやく踏み出せる。
「……じゃあ、頼ってもいいのか……?」
「早速だな。まぁ、俺が出来る範囲でなら……って、今はちょっと待ってくれ、仕事が一段落したら────」
「────拓真」
「……ッ!」
な、なんだよ鳩がなんとかみたいな顔しやがって……。
でもそんなの知ったことか。
「あたしだって、拓真に頼って欲しいんだ。だから……」
「……クリス」
拓真はそう呟くとあたしの手を掴んで紙だらけのベッドに押し倒された。
「流石に我慢ならないわ」
「は!?」
「おま、俺がどれだけ溜め込んでるか分かってんのかッ!」
「分かるわけねぇだろッ! てかさっきまでのシリアスムードどーすんだよッ!」
「知るかッ! クリスが可愛いのが悪いんだよッ!」
「可愛いとか言うなぁッ!」
「可愛い愛してる好きだァッ!」
「────う、うわぁっっっっっ!!!!」
あたしは逃げ出した。やっと一歩踏み出せたはずなのに、逃げ出した。これはあいつが……拓真が悪いんだ……。あたしは……
「────あたしは悪くねぇー!!」
クリス「……ったく、もう少し清潔感保てよ……」
拓真「悪いなクリス。ついつい(仕事に)本気出しちゃってさ」
クリス「頑張るのも良いが……少しは自分のこと考えろよ」
拓真「ああ……またクリスに心配かけさせたくないからな」
クリス「ん……そうしてくれ。ほら背中は洗ったぞ」
拓真「ありがと」
クリス「……おう」
未来さん「ただ背中を流してるだけなのに、どうしてヤることやった事後みたいな会話してるんだろう……」
響「未来はまず、どうして2人が自然と一緒にお風呂に入ってるのかを疑問に思うべきだと思う」
マリア「なんのつもりの当てこすりッ!」
翼「……わ、私のセリフが……」
切歌「私も入るデース!」
調「切ちゃん……常識人でしょ」
エルフナイン「今日はいい天気だなぁ」
GX編後日談、完!
AXZ〜XV、XDは今のところ未定なんですが、希望があれば……