キネクリ先輩の〇〇   作:イチゴ侍

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以外にも高評価を頂けててびっくりです……。



甘やかし

「犯罪ってのはなんでこう絶えねぇのかね……」

 

 

 

 4唱目.甘やかす雪音クリス

 

 

 

「人間の欲がある限りは永遠に無くならないんだろうな」

 

「そうだな……てか、まーた勝手に家に上がり込みやがったな……」

 

 今日も今日とて、こいつはあたしの家に来ていた。もうそろそろ何も感じなくなってきた頃だ。というかこの状況に慣れてきたあたしもあたしでヤバいな。

 

 

「許可は取ったぞ。入る前に"入るぞー"って行ったし」

 

「誰が許可入れた! 誰が! あたしは一言も了承してねぇぞ!?」

 

「こう……なんて言うの? クリスの部屋から"入ってくれ"っていうオーラを感じたというかなんというか」

 

 身振り手振りで未知の気配を想像させようとしてるようだが、あたしは疑いの目を決して解かねぇ。

 そもそもオーラってなんだよ……そのオーラがあれば誰彼構わず入っていいのかよ。

 

 

「これ、不法侵入とかで警察呼べねぇかな……」

 

「俺が捕まると、もれなく藤尭先輩の仕事量が増えるぞ!」

 

「……それについてこの間あたしに助けてくれって呟いてたぞ。お前何した……?」

 

「ああールナアタックに関する詳細をまとめてくれって言われてたのを投げ捨てて仕事バックれた」

 

 うわぁ……よりにもよって一番めんどーな物を押し付けられたんだな。

 あたしはそっと心の中で合掌した。

 

 

「お前なぁ……ほんといつか職失うぞ……」

 

「そうなったらクリスに養ってもらう」

 

「はぁ? 誰が養うか」

 

「え? 養ってくれないの……。」

 

 死んでもこいつのお守りなんてごめんだ。……な、なんだよその捨てられた子犬みたいな顔は……そんな顔したってあたしは……絶対……、

 

 

 

「……ま、まぁ……気が向いたら……その……やらなくも……ない」

 

「クリスー!!」

 

 すると瞬く間に抱きつかれていた。

 

 

「う、うわぁ! お、おま!? 急に抱きつくなよ!」

 

「クリスー! 神様、仏様、クリス様!!」

 

「や、やめろ! ってか暑苦しいんだよっ!」

 

 くっ……引き剥がそうとしても頑なに離れねぇし、てか近い! 

 ったく、どうしてこう距離の近いやつが二課には多いんだよ……あのバカといいこいつといい……。

 

 

「あー可愛いクリス……ほんと可愛いな」

 

「────っ、な、何言って……」

 

「うん、クリスの為なら仕事頑張れるわ……」

 

「は、はぁー?」

 

 訳の分からん事言ってると思いきや、あいつが抱きつくのを辞めた。

 ……あれ? 

 なんであたし今残念がった……? いやいや、冗談だろ。

 

 

「ちょっくら仕事してくるわ……」

 

「まさかお前……今日もサボってたのかよ」

 

「……仕事が辛かった」

 

「二課ってそんなブラック企業だったか?」

 

 あたしの見た限りあそこの職員はみんないい人そうだし、おそらくあのおっさん選りすぐりのすげぇ人ばっかりだと思ってる。

 そんな中で大量の仕事に追われるなんて、そんな事はないんじゃないのか……? 

 

 

「……来る日も来る日も資料……資料……資料……他の部門の奴らは二人とか三人とかいて分担してるのに、俺のとこだけなんで俺だけなんだよ……」

 

「は……」

 

「もう疲れるんだよ……聖遺物、適合者、天羽々斬、ガングニール、イチイバル、ネフシュタン、ソロモンの杖、デュランダルにカ・ディンギル、フィーネ……これぞ専門用語のどしゃぶりな十億連発……」

 

「あ、あぁ……」

 

 ブツブツと独り言のように用語を並べている。こりゃあ相当逝ってるな。

 

 

「もう字を見るだけでも嫌なんだぁ……だから本能的に誰かに甘えたくなる……」

 

「そ、そうか……」

 

「でもさ、俺大人だからちゃんとしなくちゃ……戦場で戦うクリス達に顔向けできねぇよ」

 

「……。」

 

 こいつもこいつで色々抱えてるもんがあるんだな。あたしから見ればいっつもおちゃらけてて、お気楽なやつにしか見えなかった。

 でも、今でも覚えてる。

 

『傷なんてないから大丈夫だ? そんな顔してる女の子をまた道端で気失わせる訳にはいかないだろ。ほら、あったかい物でも食べてあったまれ』

 

 なんてことない一時だったけど、あたしにとっては久しぶりのあったかさだったんだ。

 

 

「よっし、クリスに元気貰ったし、行ってくるわ。あーどんな言い訳するかな……────」

 

「────待てよ」

 

「ん……どうしたクリ────っ!?」

 

 ちょっとずつ、あの時の恩返しをしたっていいよな。

 

 

「クリスさん……? これはどういう……」

 

「こっちみんな」

 

「あの、背中に特大の柔らかさが……」

 

「……今日は、その……特別……だからな」

 

「────恩に着る」

 

 あたしの意図を摘み取ったのかどうか分からないが、ほんの少しだけこいつから貰ったあったかさを返せた気がする。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「雪音クリスの包容力は人をダメにする完全聖遺物だ……」

 

 クリス家を出た拓真はそう呟いた。

 そしてのちに"クリスが拓真に抱きついた"という噂は二課の職員全員に知れ渡ったという。

 




クリス「おいっ!あたしがその……お、お前に……ごにょごにょ……した事は誰にも言うんじゃねぇぞ!」
響「えっ!? クリスちゃん拓真さんと……ごにょごにょ……したの!?」
未来「えっ!? クリス……拓真さんと……したの?」
翼「雪音……逸る気持ちも分からないでもないが、将来のことも考えるんだぞ……?」
拓真「クリスなんか変な風に噂が広まってるぞ」
クリス「はぁ!? あ、あたしがしたのはそんな……じゃねぇよ! ただ抱きついてやっただけ……あ」

一同「「「「あ……」」」」
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