…いろいろ質問攻めされたが公安に教わった話術で上手いこと説明するのをはぐらかし、
残りは長座体前屈と腹筋、1500メートルだったが体前屈は一時的に腕切り離して無限に、腹筋と1500はまたもや先生からの脅しが掛かり全力でやらされる羽目になった。
途中でアイツ人間辞めてね?とかぼやいてるアホがいたからヘッドロック決めていたが考えてみたらあながち間違っていないことに気づいた。
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは面倒くさ……時間の無駄なので一括開示する」
アイツ今、面倒くさいって言いかけたぞ。本性が一瞬見えたぞあの教師。
「因みに除籍は嘘な」
「「「「………は?」」」」
「君たちの最大限を引き出すための合理的虚偽」
「「「「「はぁーーー!!??」」」」」
失笑混じりにそう言い放つ相澤の言葉に大部分の人間が驚愕を隠しきれないように大きく叫ぶ。
「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ」
「……あの人。俺のときガチで言ってた気がするんだが?」
「……………」
黙りは肯定と見なすぞ……?
「緑谷。
……俺がやんのか。あんまり治すのは得意じゃないんだよな。おいお前らこっちあんま見んな。見せ物じゃねぇーぞ。
「
「
「おい、アイツ馬鹿だぞ」
「成績と顔は良いのに頭はダメらしい」
「ざんねーん」
後ろでなにやらクスクス笑ってる阿保三人衆は後で地面に埋めておこう。そうしよう。
「あ、あの…」
「あん?」
緑のモジャモジャ改め、緑谷の指を両手で包み込むように覆い万象儀で繊維を修復しているとオドオドとしていた緑谷が突然俺の目をしっかり見て話しかけてきた。
「黒籍くん。…一年前くらいに折寺っていうところに来たことない?」
「………………」
…相澤先生がこの場に居ないことをぐるっと見回して確認しておく。ハッキリ言って今ヘドロの時のことをもし相澤に聞かれたら普通にとてつもなく厄介なことになる。よし、いない。
コイツ、まさか気付いたのか?おどおどしてんのに以外に鋭いところ付いてくるな。
「……なんでそう思う?」
「一年前に起こったヘドロ事件って分かるかな?…その時に僕の幼馴染が巻き込まれちゃってね」
「おう、あそこに居る爆発ヘアーの金髪だろ?」
「あ"ん!?」
丁度前を通りかかった金髪頭を指してみると目を釣り上がらせて吠えながらコッチに来た。が、切島、上鳴らに絡まれてどっかに連行されて行った。ナイスお前ら。
サムズアップしてやると勢いよくサムズアップし返してくれた。良い奴らかよ…。
「それで?」
「…う、うん。その時ね、僕、思わず何も考え無しで飛び込んで行っちゃたんだよ。気付いたら体が動いてたって言うか…何というか……今思えばつくづく無謀だったと思うよ…」
「…………」
「それでね。何とか捕まってる幼馴染の所まで行けたのは良かったんだけど…そこから何も出来なくてさ…。いよいよ不味い状況になった時に、黒籍くんの…黒いモヤに似たものが間一髪で僕と幼馴染を助けてくれたんだよ」
「……そうか」
「…出来ることなら助けてくれた人に会ってお礼を言いたい。助けてくれてありがとうって」
「…………案外、ソイツは…折寺印が付いた、たい焼きを食いたかっただけかも知れねーな」
「え?」
「お前らを助ける為じゃなくて、ただ単に帰り際ふと、たい焼きが食いたくなったただの通りすがりの人間かも知れないな」
治療が終わって万象儀を解除すると痛々しく血が滲んで紫ずんでいた指は他の指と比べても変わらない綺麗な指に戻っていた。治った指を見て驚いたように眺めている緑谷のデコに軽くデカピンを見舞ってやる。
突然、額に起きた衝撃に驚いている緑谷と目を合わせれば少し痒くなったこめかみを掻きながら話をする。
「だから礼なんて、あそこのたい焼きを奢ってくれるだけでソイツは満足すると思うぞ。そんな仰々しく礼なんかされても小っ恥ずかしいだけだ」
「黒籍くん…」
「あと、ソイツのこと先生に言うなよ。言ったら今度は額が凹むぐらいのデコピンしてやるからな!」
「……なんか色々台無しだよ、黒籍くん!!」
「当たり前だろ。世界最強なんだからな」
「…ははっ。なにそれ」
「なになに!二人ともなに話してんのー!?」
「おいコラてめーら!!いい加減離しやがれ!!ぶっ殺すぞ!!!」
「お、黒籍終わった!?。コイツ抑えるの手伝ってくれ!」
「お前と勝負するっていって聞かねーんだよ!!そーゆうの漢らしいけどっ!!」
遠くの方で孤児院のガキたち並みにギャーギャー騒ぐアイツらを見て、案外、楽しい高校生活になりそうだなと口角を上げながら立ち上がる。隣で何やらあわあわしてる緑谷に、首を回して俺たちはアイツらに近づいていった。
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「そう言えば黒籍くん!君の"個性"のこと教えてよ!!」(目をキラキラさせながら何処からともなくメモを取り出しにじり寄ってくる)
「緑谷の目がなんか怖え!!」
「お前、オタク系統の人間か!!」
「助けろ爆豪!!幼馴染なんだろ!?」
「誰が幼馴染だ!死ねッ!!!」
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「相澤君の嘘つき!」
個性把握テストも合理的に終わり、職員室に戻って終わっていない仕事をどう処理するかスケジュールを頭の中で組み込んでいると少し面倒くさい人が現れた。
「オールマイトさん…見てたんですか?暇なんですね」
「『合理的虚偽』てエイプリルフールはとっくに過ぎてるぞ!…君は去年の一クラス全員除籍処分にしてる!見込みがないと判断すれば迷わず切り捨てる。そんな男が前言撤回…それってさ」
ペラペラと喋り始めるこの人を見て少し嫌気が差す。本当にこんなおちゃらけた人がNo.1ヒーローなのか?
「君も緑谷くんに可能性を感じたからだろ!?」
「…君も?まるで肩入れしてるような言い方ですね?教師としてそれはどうなんですか…」
俺がそう言うと大きな体がピクッと跳ねる。存外、分かりやすいなこの人…。
「ゼロでは無かった。それだけです。見込みがないと判断すればいつでも切ります。…半端に夢を追わせること程辛いものはない」
そう言ってオールマイトさんに背を向けて歩き始める。しかし、ある事を思い出し足を止めた。
「オールマイトさん。テスト見てたんでしょ?…どう思いました、アイツを……」
「アイツ?……黒籍少年のことか」
分かりやすいこの人は後ろを見なくても手を真っ直ぐ此方に向けている姿が想像できた。それも少し険しそうな顔で。
「はい。私は黒籍と昔、手合わせをしたことが有ります。…ハッキリ言って得体が知れない」
「…私も悔しいが同意見だよ。彼のことを初めて見たとき、本当に16の少年かと疑ってしまったよ。…それが纏っている王者の風格と言うやつかな?それに今日のテストでも彼はずっと
「……………」
探りを入れるようなオールマイトさんの問いに思い出すのは入試前に突然開かれた臨時会議だ。それは、雄英教師陣とヒーロー公安委員会会長を交えた、ある種特別な会議だった。
『廻り者?初めて聞きますね』
『その通りだと思います。廻り者と呼ばれる人間達は情報規制がかけられてる本来、危険な存在なのですから…』
『そんな人間が我が校の入試試験を受けると…?』
『…正確には公安が受けさせるのです。もっとも、本人も本校の進学を希望しているようですしね。私が本日、雄英に依頼するのはヒーロー科入試定員の増員と黒籍項羽の監視です』
『………?監視の件は理由はまだ分かりますが…増員は何故、彼にわざわざ一般入試を受けさせるのですか?実力があるのなら推薦入試という手も……』
『…貴方方には彼の実力と異常さを直で見て欲しいのです。そして考えて欲しい。…彼が敵に陥った時、どう対処するのかを……』
そう言った公安の会長の顔が忘れられない。
異常さは入試と今回で良く分かったがアイツの実力は全く分からなかった。
『それに彼が一般や推薦を取ったとしても必ず将来有望な卵が一つ潰れてしまったらもったいないじゃありませんか?』
「…どうもしませんよ。私は教師です。ヤツらにヒーローになる為の術を教え、道を間違ってしまった生徒をを正しい道に導くのが、俺の仕事です」
止めた足を前に進ませる。今度こそ仕事に取り掛かれそうだ。
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「どうしたの死柄木クン。そんなに楽しそうにして?何しようっての?気持ち悪いよ?」
「黙れニカ。…そうだ、お前はどう思う」
いつも通り、僕たち以外誰も居ない薄暗ーいお店の中、新聞見ながらニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべてる唯一のお友達、兼先輩にあたる人に先生に渡された宿題を解きながら話しかける。
「何が?」
「平和の象徴が…敵に殺されたら」
…今日の死柄木クンは機嫌が良いみたいだ。いつもなら1に罵倒。2に崩壊が返ってくるのに…今日は背中越しでも簡単に上機嫌で僕の返事を待っているのが分かる。僕は黒板に文字を書いていた腕を下ろして話始める。
「世間は恐怖と混乱の渦に巻き込まれるだろうね。不倒のNo.1が倒れたんだ。民衆は怯え、敵達は調子ずくだろうね…それがどうかしたの?」
「…違うんだよ。そーゆうことじゃない!」
「……ならどういうこと?」
僕は模範解答を言ったつもりだ。なのに死柄木クンは不満そうな声を上げて顔にくっ付いてる手が邪魔で見えないけど怒った顔をする。相変わらず短気だな〜。
「社会のゴミが消えるんだぜ…どう思う?部屋の中で大きくふんぞり返ってるゴミが消えたら……最っ高にスッキリしないか…?」
「……確かにそうだね…。彼はゴミに違いないよ」
思わない盲点だった。やっぱり先生の言った通り、口は悪いけど死柄木クンから僕が考えもつかないことを学ぶのは多そうだ…。
「だから、消そうと思うんだ……。社会のゴミを、お前の一番大っ嫌いな化け物と一緒にな!!」
無邪気な笑顔で言い放った死柄木クンの言葉に素早く顔を向ける。気持ち悪く歪んだ死柄木クンの目は子供のように一片の憂いなく輝いていて、まるで昔の先生の目を見ているようだった。いや…きっと僕もおんなじような目をしてるんだろうな……。
そう思うと、途端に嬉しくなってきて持っていたチョークと黒板を埋め尽くす程に羅列された解きかけの問題達をほっぽり出して僕は彼の隣に座ると花弁の舞う首を摩りながら彼の言う作戦を聞き始める。
いいよ……。ボクも大っ嫌いだよ…君のことが………。
ねぇ、項羽クン。